軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百四十話

マリーさんの襲撃、もといマリーさんの来訪により面倒な事態に巻き込まれた。機転を利かせた俺はピンチをチャンスに変え、マリーさんの面倒事を利用して王様に対して面目を立たせることにする。ついでに精霊術師ギルドも迷宮都市限定復活なんて面白い可能性も見えてきた。

「裕太さん、考えはまとまりましたか?」

昨日、マリーさんの提案を聞いた後、じっくり考えたいとマリーさん達を追い返した。

ただマリーさん達を焦らすのが目的なので、その後はジーナ達とベル達を連れて王都を一日観光した。

ベルたちが興味を持った屋台も回ったし、シルフィのリクエストで酒屋も回った、ジーナ達は得に行きたいところはないが服屋は当分遠慮したいとのことで、マルコのリクエストで王都の武器屋を見に行ったりもした。

フィオリーナのところに顔を出すことも考えたが、王様との対面を終わらせて気楽な気分で会いに行くことにした。

昨日は割と楽しい一日だったな。

「裕太さん?」

焦らすのもそろそろ終わらせるか。

「分かりました。マッサージチェアについてはマリーさんにお任せします」

「ありがとうございます!」

無邪気に喜ぶマリーさんとソニアさん。この光景は微笑ましいんだけどね。

「じゃあこの後は王様に会いに行きましょうか」

「「へ?」」

お、マリーさんとソニアさんのキョトン顔を頂きました。

「心配しなくても大丈夫ですよ。王様にはマリーさん達と一緒に行くと伝えてあります」

昨日の内に宿の人にお願いしてお城に伝言を届けてもらった。割とすぐに問題ないとこの前の騎士さんが返事を届けてくれて申し訳なくなったのは内緒だ。

最初はマリーさん達にも伝言を届けようかと思ったが、時間を与えると王様相手に余計なことを考えそうなのでいきなり連れていくことにした。

マリーさん達は普段から身嗜みを整えているし、王都の高級宿に足を踏み入れるということで普段よりもしっかりと身なりを整えているので大丈夫との判断だ。

現に目の前の二人は上品な装いをしているので、この判断は間違いなかったと思っている。別に嫌がらせじゃないよ?

「いやいやいや、心配でしかないのですが? なんで王様に会うなんて話に?」

「王妃様にマッサージチェアを献上するのに王様に献上しない訳にはいかないですよね? それに特殊な魔道具ですから、事前に説明が必要でしょう?」

本当はマリーさんと会う前から面会は決まっていたが、さも、マリーさんのせいで王様と面会することになったんですよ? 的な雰囲気で話す。俺だって大人、この程度の責任転嫁はお手の物だ。まあ、あんまり意味がある責任転嫁ではないけどね。

「いや、だからといってそんなに簡単に会える、いえ、そこではありません、いえ面会も重大な問題なのですが、あんなとんでも魔道具がもう一台あるってことですか?」

ああ、説明の時には一台しか見せていなかったな。後でもう一台増えるのは確実だが、現在この世界に存在するマッサージチェアは二台だけだろう。

「……も、もしかしてですが簡単に手に入るんですか?」

マリーさんがおそるおそる質問してくる。

「そんな訳ないじゃないですか。おそらくですが、マッサージチェアが発見される可能性は精霊樹の果実が発見されるよりも低いですよ」

マッサージチェアの作成は迷宮のコアからしても困難なようで、色々と素材を提供してなんとか作ってもらった物だ。

コアに直接頼まないかぎり無理。宝箱から手に入る可能性は無いと言って良いだろう。

「ふう、少し残念ではありますが、安心しました。あんなとんでも魔道具がそれなりに手に入るとなると、戦争すらあり得ますよ。まあ、この国はかなり戦力も外交の立場も強めているので安心ではありますが、人でも国でも嫉妬は怖いです」

なるほど、迷宮から色々と希少な素材が確保できるようになっているから、地球で言うところの天然資源、油田やレアメタルの鉱脈が新たに発見されたみたいな感じに近そうだ。そりゃあ羨ましがられるし嫉妬もされる。

「裕太さん、確実に入手方法を聞かれると思いますので、しっかりと入手が難しいことも伝えてくださいね」

「了解です」

コアに頼む必要があるから激難だけど、それを素直に伝えたら余計な騒動が持ち上がるのは確実、未踏の階層で凄くレアな宝箱からセットで手に入れた、くらいの解答が無難だろう。

マリーさん達と色々と打ち合わせをしていると、応接室のドアがノックされた。迎えの馬車が到着したようだ。

ちなみに王様と会うのは俺とシルフィ、マリーさん達だけだ。ベル達とジーナ達はドリーを護衛に王都観光中。

俺と同行する大精霊を増やすことも考えたが、今回は殴り込みではなく交渉なのでシルフィだけにした。

というのは建前で、お酒の交渉をする時に大精霊を増やして収拾がつかなくなることを恐れたからだ。

現にシルフィ、無表情ながら気合が入った雰囲気を漂わせている。おそらく狙いのお酒があるのだろう。まあ、その狙いのお酒を引き出すのは俺の仕事なんだけどね。プレッシャーが酷い。

「マリーさん、ソニアさん、緊張しているんですか」

「「あたりまえです!」」

ハモリつつ睨まれた。仲が良い二人だ。

まあ、前回王様に会った時は乱入みたいな感じだったし、あ、今回も二人的には乱入みたいなものか。心の準備が無ければ緊張するよね。

馬車の中ではほとんど会話もなくお城に登城。待合室で待たされることもなく直接王様のところに案内されるようだ。

何度か来ているから分かる。この通路は落とし穴部屋への通路だ。

予想通り落とし穴部屋に通される。すでに王様も席についており、周囲もいつものメンバーが勢ぞろいしている。バロッタさんと土の中級精霊も当然居る。

座るがよい、失礼します、的なテンプレートなやり取りを経て交渉が始まる。

「今回はポルリウス商会の者達も伴っておるが、どのような用件なのだ?」

王様が口火を切る。ハンマー商会の時のことを考えると、これも短剣を下賜した相手への特別待遇なのだろう。

「はい、今回迷宮の深層で特別な宝を入手し、それをポルリウス商会に卸そうかと相談したのですが、特別な品ということで陛下に献上するべきとなり面会をお願いしました。ポルリウス商会を伴ったのは、その品が二つあり、王妃様にも献上をとポルリウス商会に強く望まれたからにございます」

一応、マリーさんの面目も立たせる説明ができた……ような気がする。たぶん。

「ほう、迷宮の深層でか。興味深い」

「ありがとうございます。ただ、見た目がかなり特殊で、こちらに居るマリーなど、初めて見た時は拷問器具と勘違いしたほどです」

拷問器具のくだりで周囲がざわついた。本当に拷問器具ではないから落ち着いてね?

「こちらで披露しても構いませんか?」

「うむ」

王様がスーパー執事さんに目線を送った後に頷く。

「裕太様、台などは必要ございませんか?」

スーパー執事さんが近づいてきて質問してくる。

「大きなものですが、台は必要ありません」

「なるほど、ではこちらに」

執事さんが指示した場所はガッツリ落とし穴圏内。何かあったら俺達ごと落とし穴に落とす気満々だな。

とはいえこちらに疚しいことはないので、指示された場所にマッサージチェアを設置する。

マッサージチェアの姿を見た王様とその周囲にざわつきが起こる。やはりこの世界ではマッサージチェアが拷問器具に見えるのか。

「では、説明させていただきます。まず、これはマッサージチェアと言う名の魔道具で、体を隅々まで癒すと同時に心まで癒してくれる優れ物です。まず基本機能として―――」

事前に練習してあったこととマリーさんにも説明したので、スムーズにマッサージチェアについての説明が口から出る。

深夜のショッピング番組レベルとまでは言えないが、素人レベルとしては中々な説明ができていると思う。

まあ、俺の拘りが詰め込まれたマッサージチェアゆえに、説明に熱が入り過ぎて周囲が若干引いていた気がしないでもないが、俺の熱意は伝わったと思う。

さすがに揉み玉、エアーバッグ、ストレッチ、リクライニング機能の詳細まで説明する必要はなかったかな?

でも、俺の拘りの一つ、発熱する揉み玉は先に説明しておかないと驚かれる可能性も高いし……。

「ふむ、機能はある程度理解できたと思うが、想像がつかぬな」

王様に俺の熱意までは届かなかったようだ。

「では陛下、私が試しても?」

ハンマー商会の職員をガンガンに詰めていた偉そうなおじさんが立候補してきた。一般兵士とか、もっと身分が低そうな人で試さなくてもいいのだろうか?

あ、ちょっと緊張気味……もしかしてこういう場合も王様の短剣を与えた者の献上品を身分の低い者にうんぬん的な制約があるのかもしれない。でなければ確実に一般人、いや、犯罪者とかで安全確認されそうだよね。

「まあ、良かろう」

王様の許可の後、おじさんがこちらに歩いてきたので着席を促す。

「あ、手と足はこの間に挟むように置いてください」

「う、うむ、こうか?」

「はい、大丈夫です。ではお試しということで、全身揉み解しコースで始めますね」

当然コースもリモコンも作成している。

機械だと複雑な仕組みが必要だろうが、魔道具だとボタン一つでオートで発動、揉み玉などの位置も最適な場所に移動してくれる便利さだ。ファンタジー万歳。

まあ、俺の要求にコアが点滅しまくっていたから、地球の最先端技術並みの魔法技術が組み込まれている可能性もあるが、どちらにせよ俺には理解できないので考えるだけ無駄だ。地球の最先端技術だって俺からしたらファンタジーと変わらない。

「うおっ! 手足に腰まで圧迫され……な、なるほど、これは気持ちが……」

おじさんが、手足と腰がエアーバッグで圧迫されたことに驚いたが、マッサージが始まったことでその効果を理解したらしい。

周囲を静寂が支配し、聞こえてくるのは揉み玉の振動音や動く音、そして……偉そうなおじさんの気持ち悪い喘ぎ声……最悪だ。

いや、気持ちは分かるのだけど、オホッとか言わないでほしい。でも、ある意味地球のマッサージチェアよりも高性能だから仕方がないか。内臓まで癒すレベルのマッサージだもんな。

リクライニング機能が発動した時とかは、かなりいい感じの歓声が上がったがそれ以外は王様を含めて観客に引かれている気がする。

……これはコースにせずに部分機能ごとに簡単に体験してもらった方が良かったかも。

どうしようこの空気……。