軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百二十六話 ルビーとシトリンの反応、あとテント

新築の両替所と楽園食堂を受け取り、色々と訓練について注意をしてフィオリーナと別れる。楽園に到着したのが夕方だったので建物の設置は明日にして……なんて考えていると、シルフィからこの一ヶ月色々と忙しかったことへの報酬を要求され、安請け合いをしたら微妙に恥ずかしく面倒な事態に追い込まれた。この面倒は予想外だ。

シルフィ達に地味に面倒な報酬を要求された翌朝、俺達は精霊の村に集まっている。

「新しい食堂なんだぞ!」

「両替所、どんなのか楽しみ」

そして今回の建物をメインで使うルビーとシトリンも、ワクワクしているようだ。その周りではサフィ、エメ、オニキスも興味深そうに話している。

「そして俺達が集まっているので、遊びに来ているチビッ子達も何事かと様子を見に集まってきていて非常に賑やかだ」

ある意味お祭りみたいなので、新しい建物のお披露目にはピッタリな雰囲気だろう。

今回建物を設置するのは、パステルカラーが賑やかな精霊の村の広場。

ここを中心地として広場の周囲をお店で囲っていく予定だ。まあ、囲うほど沢山のお店が用意できない気がするが、精霊は沢山いるのだから楽園でお店をやりたいという精霊が現れるかもしれない。

そうやって少しずつでも楽園の広場が賑やかになると面白いと思う。いずれ、この広場で本当にお祭りができたら楽しそうだ。

そんな楽しそうな未来を想像しながら、まずは両替所を所定の位置に設置する。

建物が姿を現すと、その華やかな見た目にチビッ子達から歓声が上がる。

「予想以上に可愛い」

そんな歓声の中、ポツリとシトリンがつぶやく。可愛らしい建物を造ると事前に伝えていたが、その予想を大幅に超えたからか、ちょっと引き気味だ。

「内装はシックにまとめてあるから安心していいよ」

シトリンがホント? 絶対? という顔で見上げてくるので、大丈夫だともう一度頷いておく。

そこまで? と思わなくもないが、自分の身に置き換えると気持ちがとてもよく分かる。可愛いのが好きでも、毎日遊園地の派手な建物で生活となったら、ごく一部の人を除いて辛いだろう。

極一部の人は狂喜乱舞しそうだけど……。

現にほら、チビッ子達は大喜びだよ?

「食堂は少しおとなしめと聞いているけど、心配になってきたんだぞ」

連鎖してルビーも不安になってきたようだ。

楽園食堂は俺の趣味を優先したから大丈夫だと思うが、こちらでも駄目だったら俺を不安そうな目で見つめているサフィ、エメ、オニキスから色々と相談されそうだ。

まあ、宿と雑貨屋の建設は昨日から始まっているんだけどね。

「とりあえず中を確認しよう」

シトリン達を連れて両替所の中に入ると、上級精霊の店主達の表情が明るくなる。

大人になるにつれてシックな雰囲気を好むようになりやすいのは、精霊も人も変わらないのかもしれない。

「これなら生活できる」

シトリンがホッとしたように頷きながらつぶやく。精霊の口から生活って言葉を聞くとなんだか少し違和感があるな。

「裕太の兄貴、楽園食堂の方も見たいんだぞ!」

一通り両替所の内部を確認したあと、ルビーが早く早くと急かしてくる。食堂に対する期待値が上がったようでなによりだ。

「おお、こっちは外観もまともなんだぞ!」

ルビー、その言い方は語弊がある。

両替所も派手だけどセンスが良くて可愛らしい精霊の村に空間にしっかりとマッチしているんだ。派手だけど。

こちらは上級精霊の反応が良好で、チビッ子達の反応はまあ悪くないといった感じだ。やはりチビッ子は遊園地スタイルがお好みなようだ。

まあ、全部が派手だとそれはそれでごちゃごちゃしてしまいそうなので、いろんなタイプの建物を用意してバランスを取るのが良いのだろう。

あと、エメとサフィがこちらを見ているのは、自分達も落ち着いたタイプの建物が良いと言いたいのだろう。

……ごめんね、エメ、サフィ、雑貨屋は両替所に近いタイプで、宿は両替所と食堂の中間くらいの派手さの予定なんだ。

「中も広いしカッコいいんだぞ。あ、厨房もお願い通りになっているぞ!」

ルビーがベル達を引き連れて子供のようにはしゃいでいるが、自分の新たな城になるのだから無理もないだろう。

ちなみにベル達はテンションが高いルビーを面白がってついていっているだけで、店内を視察しているという訳ではない。

「こんな感じだけど、修正点があるなら対応するから言ってね」

まあ、最悪だと再び魔法の鞄に収納してフィオリーナのところに持っていくことになるけどね。

「分かったんだぞ。明日の休みでさっそく引っ越して色々と確認してみるんだぞ!」

さすがに今日利用するのは無理か。楽園食堂のごはんはチビッ子達も楽しみにしているから、休むのは可哀想だよね。

一通り建物を確認し、ルビー達はそれぞれの仕事に戻っていく。それに伴い見学していたチビッ子達も解散していく。

うん、二軒建物が増えただけだが、やはり広場周りに建物があると場の華やかさが増すな。

ここにあと二軒建物が増えて、奥まったところには図書館が……もう少し建物が欲しい気がするが、それは追々だな。

いや、職業体験施設もフィオリーナに発注しようかな?

体験施設だから場所を離して真面目な雰囲気の方が良いかと迷っていたが、村全体のバランスを考えると統一して広場に設置するのもアリかもしれない。

職業体験と言っても、精霊達にとっては娯楽と変わらないからな。

「裕太、これからどうするの?」

建物の設置に付き合ってくれていたシルフィが、この後の予定を聞いてきた。

帰ってきたばかりだしのんびりしても構わないのだが……ウッドデッキにグランピング施設を設置するか。

シルフィに予定を伝え、ベル達やジーナ達を訓練と遊びに行かせて、俺はそのままウッドデッキに向かう。

さて、まずは何から行くかな。

……やはりテントか。

このテントも手に入れるのが結構大変だったんだよね。ソニアさんが……。

マリーさんの暴走に付き合うどころか平気で焚きつけるソニアさんがうんざりした顔をするくらいだから、相当大変だったのだと思う。

職人さんに色々と無茶を言われたようで、俺が訪ねるたびにアレはないのか、こういう改良はどうだろう? ドラゴンの骨が大量にあるなら真ん中の支柱は排除できるとか、ソニアさん越しに質問や提案をされる俺も結構大変だったくらいだからな。

ただ、素材の見事さと面白い依頼ということで職人さん達が張り切りまくり、グリーンドラゴン、ライトドラゴン、ダークドラゴンのテント三張りを見事に完成させてくれた。

工賃がビックリするくらい高かったが、素材持ち込みでなければ稼いでいる俺でも躊躇うレベルの値段になっただろう。

まあ、持ち込みじゃないと属性竜でテントを作ろうなんて思う人はいないし、そもそも素材が手に入らないか。

さて、テントを設置する場所を考えないとな。

テントは三張りあるのだが……広いウッドデッキにバラバラに配置するのはちょっと違うな。

グランピング等の商売ならスペースを離してプライベート空間を確保するのだが、ここでテントを利用するのはほとんどが身内だ。

それならある程度近くに設置したほうが、みんなで楽しめるだろう。

ウッドデッキの真ん中あたりに、三角形になるように配置しよう。駄目だったら移動させればいいだけだ。

まずはグリーンドラゴンのテント。

これはオーソドックスと言うか、ピラミッド型のテントにした。大きさはかなりのものだけどね。

魔法の鞄からグリーンドラゴンのテントを取り出す。

……テントを受け取った時は緑の被膜が美しいと思ったのだが、青空の下で見るとちょっと派手だな。

革の加工の影響か、日の光に反射してエメラルドグリーンの被膜が本物の宝石のように輝いている。

テントが完成した時が少し怖いな。

まあ、ここで戸惑っていてもしょうがないから、そろそろ組み立てるか。えーっと、テントの組み立て方は羊皮紙に絵付きで描いてもらっているから大丈夫なはずだが……手順が結構多いな。

工房で組み立ててもらったやつを、そのまま魔法の鞄に収納して来ればよかった。

まずシートを広げて……今更だけど、グリーンドラゴンの革を踏みつけることになるんだな。中に布を敷くつもりではあるが、相当バカなことをしていると実感するよ。

続いて骨組み、文字通りグリーンドラゴンの骨を使って作ったポールなのだが、強靭なドラゴンの骨を使用したことで、骨の数を減らしつつも頑丈なテントが完成したと職人のお墨付きを頂いている。

それでも大きなテントなのでポールの数は多いんだけどね。

えーっと最初は……うん? この穴にポールを通せばいいのか? いや、最初はこっちか。手順をちゃんと描いてくれてはいるが、穴とポールが沢山あって判別が難しい。

テントとポールに番号を振ってもらうべきだったかな。一番には一番とかそんな感じにしてくれたらもっと組み立てが簡単だった気がする。

ただ、本当に頼んだら職人さんにブチ切れられそうな気がする。

ソニアさんから聞いたのだが、芸術ともいえるテントが完成したと胸を張っていたらしいので、芸術品に番号を振れと言ったら高確率でキレられることが予想される。

……結局慣れるしかないか。というか一度組み立てたらほとんど移動させないし、移動させる時は魔法の鞄で丸ごと持ち運べばいいよね。

「これで……完成?」

不安になって周囲を見渡すが、余っているのはペグと予備のポールしかない。

大丈夫だな。最初からウッドデッキの上に設置する予定だったから、板に結び付けられるようにもしてもらっているのでペグが大量に余っているのは問題ない。

テントに変な歪みもないし、うん、大丈夫だ。

「これで完成!」

もう一度、今度は大きな声で完成を宣言する。

そんな俺をシルフィが白けた目で見ている。時間がかかり過ぎだと言いたいのだろう。

しょうがないんだよ。

途中で間違えて三分の二くらいの工程をやり直すことになっちゃったんだから、時間がかからない方がおかしい。

そして、それだけ苦労したからこそ、完成した時に大きな声で宣言したくなるくらいに嬉しいんだ。

それにしても、完成したテントを見て思う。これ、エメラルドのピラミッドですか?