軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百二十四話

フィオリーナの訓練にメルも参加させ、身の危険に対処する講義も行うことにした。男性の撃退方法と言葉にしてしまったことで、フィオリーナが物凄くやる気になってしまったが、二人ともある程度の身の危険なら余裕で対処できるようになった。そして注文していた最初の家も完成した。

フィオリーナの訓練もとりあえず終わり、迷宮都市でも用事もほとんど終わったので、身近な人への挨拶を終えて迷宮都市を旅立つ。

昨晩はフィオリーナの訓練終了と家の完成を祝ってどんちゃん騒ぎをして、今日の出発が少し遅れてしまったが、まあ、今日は家を受け取って楽園に戻るだけなので大丈夫だろう。

建築現場も家が完成して、次の建築に取り掛かる前のお休みになっているからフィオリーナも問題ない。

さて、設計図は見せてもらっているし、何度か作業を見学したからある程度イメージできているが、完成してどうなったのかがとても楽しみだ。

いつもの場所に着陸し、軽く門番に頭を下げて村の中に入る。フィオリーナの送り迎えで何度も通っているので最近は顔パスだ。

あ、そうだ、楽園に戻ったらしばらくこの村に訪問することもなくなるな。帰りに村長さんにラフバードを提供しておこう。

顔なじみになった村の人達に挨拶をしながら村を通り抜け飯場に到着し、フィオリーナの護衛の冒険者と合流する。

ハンマー商会は消滅したのだが、残党や利害関係がある相手に恨まれている可能性があるのでしばらく護衛は付ける予定だ。

まあ、いまだとフィオリーナの方が護衛の冒険者達よりも強い可能性があるけどね。

それと、護衛の女性冒険者達には完全にビビられていて、毎日挨拶をしているのにいっこうに仲良くなれる気配がない。

たぶん最後まで仲良くなることはないのだと思う。王様直通は流石にやり過ぎだったようだ。

女性冒険者達と距離がある挨拶をして、飯場を通り抜けて工事現場に到着する。

さて、いよいよ完成した建物とのご対面だ。

「お師匠様、こちらです」

「おお」

「これが師匠が頼んだ建物か? ずいぶんと可愛らしいな」

「う、うん、かなり可愛いね」

ジーナのツッコミに俺も少し言葉が詰まってしまう。

たしかに精霊の村の雰囲気に合わせて外観を可愛らしくとリクエストしただけでお任せしたのだけど、想像以上に可愛らしい。

なんというか、こう、想像でしかないのだが、沢山の色レンガを利用していて、外国のカラフルなキャンディーショップとかファンシーショップですって感じの外観になっている。

男の俺としてはちょっと戸惑うレベルの可愛らしさで、感性が俺に近いジーナも戸惑っている。

そしてシルフィは興味がないようで、へー、派手な建物ねーといった感じで反応が薄い。

だがしかし、チビッ子達には大人気!

やっぱこういうカラフルな雰囲気は子供心に突き刺さるのだろう。ベル達は楽しそうに建物の外観を観察しながら飛び回り、マルコとキッカも凄い凄いと騒いでいる。

そして予想外なことにサラの目がキラキラと輝き、マルコとキッカの後ろでソワソワしている。

サラは大人びているけどやっぱり女の子なんだな。可愛らしい服とかアクセサリーを買ってあげた方がいいのかもしれない。

ただ、ここで単純にサラって可愛らしい物が好きなの? なんて聞いてはいけない。

サラは普段からしっかりしていて、マルコとキッカの姉的な役割を自任しているから、マルコとキッカの前でそのイメージを崩すようなことはNGだ。

迷宮都市の買い物あたりで、違和感なく購入できるように誘導しよう。

「いかがですか?」

おっと、サラのことに気を取られていたが、今は建物を確認する時間だったな。

「最初は少しビックリしたけど、とても可愛らしくて外観に文句はないよ。色レンガの配置もそうだけど、レンガの模様や形もとても凝っている物がいくつもあるね。面白いよ」

レンガってこんな加工できたんだなって少しビックリしている。

「これはお師匠様に教えていただいた加工方法でテクトと一緒に作ったんですよ」

まさかの手作りだった。いや、そのために教えたのは確かだけど、習ったばかりなのにこのクオリティはセンスと言うほかないな。俺やノモスには一生身につかない感覚だと思う。

「それは凄いですね。困ったことはありませんでしたか?」

「いえ、それがですね、レンガに絵を描くとテクトがその通りに削ってくれるんですよ。面白くて沢山レンガを削っちゃいました」

「な、なるほど」

その絵を描くのが素人には難しいのだとか、元々はもう少し大人しいデザインだったんだなとか色々と思ったが、まあチビッ子達が気に入ったのであればなんの問題もない。

精霊の村を利用するのは基本的にチビッ子達なので、チビッ子達が喜ぶデザインこそが正義だ。

まあ、両替所だから中に入ってもキャンディは売っていないのだけどね。あ、シトリンが気に入るのかも重要なのか……それは今更どうしようもないな。

でも、可愛いデザインにするとは伝えてあるから、たぶん大丈夫。

「では、中をご案内しますね」

水色に塗られた木製のドアを開け中に入る。ドアもパステル系なのでフィオリーナの可愛らしさへの追及は確かだな。

おお、雰囲気がガラリと変わった。

シトリンのリクエストが、外観は可愛らしくて構わないが中は少し落ち着く感じが良いとのことだったので、フィオリーナにはそういうふうにお願いしていた。

そのリクエストが見事に実現されている。

外観のカラフルから一転、中は木材を中心に組み立てられており、塗料の色も暗めでシックな内装になっている。

こちらも俺のリクエストで、昔の銀行っぽい色彩をお願いしたから、両替所としてはピッタリだと思う。

まあ、外と中のギャップは凄いが、働くシトリンが落ち着ける空間であることが大切だからこれで良いと思う。

カウンターも木製でしっかりしているし、精霊石のなりそこないや銅貨をしまっておく引き出しもしっかり作ってくれている。

まあ、さすがに他の家具はこちらで揃えなければならないが、基本的に必要な物は揃っているので後はシトリンと相談して快適にしていけばいいだろう。

両替所の奥に進むと、十畳程度で落ち着いた雰囲気の広々とした部屋が一つ。ここがシトリンの部屋になるのか。

前のシトリンの部屋よりも広くなっているから、物を移してもだいぶ余裕があるだろう。

「ありがとうフィオリーナ、イメージ通りの内装だし、イメージ以上の外観だったよ」

「本当ですか? ありがとうございますお師匠様」

ホッとした顔をした後に、笑顔でお礼を言ってくれるフィオリーナ。お礼を言ったのは俺なんだけどね。まあいいか。

中でキャッキャと騒いでいるチビッ子達を外に出し、魔法の鞄に両替所を収納する。

周囲からオーッという声が聞こえる。建物を収納できる魔法の鞄は珍しいよね。

「じゃあ次を見せてくれる?」

「はい、こちらにどうぞ」

フィオリーナの案内で向かう次の建物。近くで造っていたので視界の隅に映ってはいたのだが、あえて目を逸らしていた。

その建物が目の前に。

「お、こっちは落ち着いた感じだな」

こちらは俺のレストランというイメージを反映したから、ジーナの言葉通り落ち着いた雰囲気の佇まいをしている。

レストランという言葉からなんとなく洋食店をイメージして、レンガ造りの古い建物のレストランってカッコいいよねという単純な思考。

でも精霊の村はパステル系だから東京駅みたいなレンガ造りは雰囲気が重いという考えになり、じゃあ茶色系のパステルレンガとオーソドックスなレンガを組み合わせ、モザイクのようにすれば雰囲気が軽くなって精霊の村の雰囲気に合うだろうという考えの元に完成したのが目の前の建物だ。

ただ、チビッ子達の反応は先程よりも控えめで、マルコなんかはほへー……大きいなーと言った感じだ。

俺の趣味を前面に押し出し過ぎて、チビッ子達を少し蔑ろにしてしまったかもしれない。でも、後悔はしていない。だってカッコいいもの。

自己満足に浸りながら中に入るが、何かが足りない。

ドアか?

いや、ドアは木目を生かした重厚感がある感じでカッコ良かった。

……なんだ? あ、ドアベルか。うーん、レトロな洋食店ならドアベルはアリだけど、精霊の村だとちょっと違うかな。

チビッ子達が基本だし、食堂が一軒しかないからお客さんの出入りが多い。そうなると常にチリンチリン音が鳴って煩そうだ。残念だけど、ドアベルは諦めよう。

そして内装。

フィオリーナは家を建てるのが専門なので、家具は専門外らしいのだが食堂とテーブルと椅子の一体感が欲しかったので無理を言った。

ただ、その甲斐があって、内装は俺のイメージ通りで、艶のある木目を生かした茶色のテーブルとイス、まあこれもレトロなレストランの定番をイメージした単純な考えなのだけど、テンプレだからこその雰囲気の良さがある。

そしてオープンキッチンスタイルは継続している。

これはルビーの要望で、チビッ子精霊達が自分が注文した料理ができあがるのをキラキラした目で見つめてくれるのがとても嬉しいのだそうだ。

そしてルビーが拘ったのはキッチンの中。

動線から収納、キッチン台の広さ、コンロの位置と数等、かなり細かくルビーから注文されたが、見た感じ全部注文通りに作り上げてくれているようだ。

これならルビーも納得してくれるだろう。

そしてついでに料理を運ぶカートも作ってもらった。料理を運ぶカートはチビッ子達に大人気だから、今までの三台だと少し足りなかった。

それに今まで使っていたカートだと、この食堂の雰囲気には少し合わないので新しく作ってもらったカート五台でやりくりしていく形にしようと思う。

ただ、こうなってくるとお店の雰囲気に合わせて食器も拘りたくなってくるが、チビッ子達が使う物だから、そこらへんの塩梅が少し難しい。

まあ、それを言ったらレトロな洋食店をイメージした造りはチビッ子達にどうなの? という話になるのだが……それはもう、俺の趣味だ。

チビッ子達の為の精霊の村なのだからチビッ子達を優先するのが正しいはずなのだけど……趣味を抑えきれない弱い自分を許してほしい。