軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百二十話 え? 可愛いけど……

フィオリーナの歓迎会を開き、フィオリーナが食に興味があるという情報を得て無事に終了。その後、フィオリーナのレベル上げの為に迷宮に突入する。レベル上げはキッカと同じ方式を選択したので、安全に効率よくレベルを上げられるだろう。

「フィオリーナ、明日あたり精霊と契約しようと思っているんだけど、土の精霊との契約で構わないのかな?」

キッカ式レベルアップを続けて二日、それなりにレベルが上がったので次のステップに進むことにした。

今回の確認はどの属性と契約するかの最終確認だ。

当初は色々と迷っていて、俺だけでなくメルやジーナ、サラ、マルコ、キッカにも色々と精霊についての話を聞いていた。

その中で第一候補になったのが土の精霊。地盤の改良と共に、石などの加工ができるところも魅力的に感じたようだ。

俺は木材を大量に確保しているが、この国の建築の基本は石なので建築家のフィオリーナには、土の精霊がピッタリだと思う。

「はい、土の精霊でお願いします」

真剣な顔で答えるフィオリーナだが、その顔は少しやつれている。

それほど厳しい訓練を施した訳でもなく、迷宮内でのジェットコースターも割とすぐに慣れていた。

ただ一つフィオリーナが慣れることができなかったのが、魔物に短剣を突き刺す時の感触。

相手は魔物なので命を奪うという忌避感は、この世界の住人らしくすぐに克服できていたのだが、感触だけは駄目だったらしい。

「分かった。じゃあ明日の仕事終わりに契約に向かうね」

「よろしくお願いします」

ホッとしたように頷くフィオリーナ。精霊術師になっても戦闘訓練は続くのだけど、精霊と契約すれば遠距離攻撃になるから、だいぶ楽になるのは確かだろう。

「ししょう。おれもフィオねえちゃんがけいやくするところをみたい」

近くで話を聞いていたマルコが契約に同行したいと言ってきた。楽園で契約する訳じゃないから一緒に来ても見られないのだが、その場に立ち会ってお祝いしたいのだろう。

他の弟子達も俺の方を見ているし、同じ気持ちのようだ。最近はフィオリーナの育成に集中してあまり一緒に居られなかったし、いい機会ではあるな。

ベル達もお昼は迷宮都市の探索、夜はフィオリーナの護衛と頑張ってくれていたし。契約したら、その場所で軽い宴会でもするか。

「分かった。じゃあ明日はジーナ達も迷宮に潜らず、一緒に行くことにしよう。あ、メルも誘おうね」

やったーと騒ぐ弟子達。数日共に生活しているが、もめ事もなく順調に仲良くなっているので結構ホッとしている。

仲間内でギスギスするのは辛いし、ジーナの性格上あり得なさそうだが、フィオリーナと主導権争いなんかが起こったらと想像するとゾッとする。

俺に女性同士の仲裁なんて無理ゲー過ぎる。

明日の予定も決まり、弟子達がそれぞれの部屋に戻る。

「シルフィ。悪いけど明日は俺達の送り迎えと、フィオリーナに合いそうな土の精霊の探索をお願いするね」

「ええ、土の浮遊精霊よね。問題ないわ」

「ありがとう。そういえば、浮遊精霊で建築に向いた子とか分かるの?」

下級精霊となると、それなりに強い自我を持っているが、浮遊精霊となると人との相性はともかく技能に関しては判別が難しそうだ。

いきなり下級精霊と契約もできないことはないが、俺みたいに特殊な体質でないのなら浮遊精霊から契約し、共に成長していくのが無難らしいんだよな。

浮遊精霊から下級精霊への進化は割とあるが、下級精霊から中級精霊、中級精霊から上級精霊となると、相当な時間がかかるらしい。

それに、幼い浮遊精霊がちゃんと成長できるのは、精霊にとっても良いことなので、弟子達には浮遊精霊をしっかり育ててほしい。

「ある程度はね。メリルセリオなんかも分かりやすかったでしょ?」

「そういえばメリルセリオは見ただけで職人ぽかったよね。赤ん坊なのに」

たしかメリルセリオは楽園でメルが直接スカウトしてきたんだけど、メルと契約することになんの疑問も抱かないほどにピッタリだった。

「自然がある場所なら浮遊精霊は無数に居るから、ちゃんと合いそうな子を選んでくるから任せなさい」

「ありがとう、シルフィ」

さすがシルフィ、頼りになる。

「それで裕太、明日頑張るには今日が重要だと思うの」

……お酒が必要ってことですね。それくらいなら無問題です。たっぷり酒樽を提供しますので明日はお願いします。

……俺もご相伴に与りたいところだが、弟子の大切な契約にお酒の匂いをさせて立ち会うのはアウトだから、ベル達と戯れてから早めに寝ることにしよう。

***

「お師匠様、ここで立っているだけで大丈夫なんですか? 精霊と契約するには何か儀式が必要だと聞いたことがあるのですが……」

フィオリーナの仕事が終わり、村から比較的近い豊かな森にやってきた。

そしてシルフィがフィオリーナに合う浮遊精霊を探しに行っている間、ベル達はキャッキャと森の中を飛び回り、ジーナ達は警戒しつつも森の植物を確認している。

ぶっちゃけていうと、ちょっと山奥にキャンプに来ましたって感じだ。

今日は精霊と契約の日だと、一日緊張して過ごしたであろうフィオリーナが拍子抜けするのも仕方がないのかもしれない。

「腕がいい精霊術師が手を貸せば、精霊との契約に儀式は必要ないんだよ。もう少し待てば、フィオリーナに相応しい精霊と契約できると思うからリラックスして待っているといい」

シルフィの力がほとんどだが、その探してきた精霊をフィオリーナに紹介する役目も必要不可欠。

そしてそれに関しては俺の右に出る人は存在しないと確信している。だって俺、精霊を直接見て会話もできるから、精霊限定のネゴシエーターとしては一流だと思う。

お、シルフィが戻ってきた。

……マジか。

シルフィの隣でふよふよ浮いている小さくて可愛らしい子がフィオリーナの契約相手?

明らかにモグラ。

それはいい。前にもモグラの精霊は見たことがあるし、地中の生き物だから土の精霊だということには納得できる。

納得できないのは、その姿がデフォルメされたモグラ。ヘルメットを被らせスコップを持たせたら、日本のモグラのキャラクターに居そうな姿をしていることだ。

普通のモグラの精霊が居るのに、精霊にはデフォルメキャラが存在するのか?

「えーっと、ちょっと待っていてね」

フィオリーナに断りを入れてその場を離れると、ちゃんとシルフィもモグラもついて来てくれる。

「裕太、どうしたの?」

「いや、その子ってモグラの姿を写し取った精霊だよね? なんか知っている姿と違ったから、気になっちゃったんだ」

素晴らしく可愛らしいから、別に構わないと言えば構わないのだが、でも、気になる。

「あら? この子はモグラだけどモグラじゃないわよ?」

とんちですか?

でも、その子、『モグ?』って首を傾げているよ?

「この子は地中の建築家と言われる、アーキテクトモールという魔物の姿になった土の精霊だから、純粋なモグラではなくモグラの魔物の姿になった精霊ということになるわね」

魔物だったのか。

「……魔物にしては可愛らし過ぎない?」

基本的に魔物は問答無用で襲い掛かってくるイメージだ。まあ、人と共存できる魔物も存在するのかもしれないが、それにしても可愛らしさが凄まじい気がする。

「そう見えないこともないわね。でも、アーキテクトモールって、別名死を誘う建築家と言われるほど恐れられている魔物でもあるのよ?」

「へ?」

こんなに可愛らしい姿の魔物が? 浮遊精霊だから赤ん坊の姿だということを差し引いてもそんな風には見えない。

シルフィに詳しく話を聞くと、アーキテクトモールというのは想像以上に危険な魔物だった。

地中に芸術的とさえいえる空間を造るのと同時に、その一帯を拠点化して無数の罠を設置する。

その拠点に迷い込んだら、人は無論魔物でさえも死に誘われる。そんな魔物らしい。

普通に怖い。

自分から攻めていくことは少なさそうだが、攻められたら準備万端整えてボコボコにするタイプだ。

まあ、本来の魔物ではなく姿を写し取った精霊だから、そこは気にすることはないか。

「ん? でも精霊って姿を写し取っただけなんだよね? なら建築家のフィオリーナと相性がいいとは限らないんじゃないの?」

「精霊は生まれた場所に影響を受けることが多いのよ。この子は浮遊精霊として生まれたのがアーキテクトモールの巣だったんでしょうね。形づくられていく地中の空間の中で育った子だから、建築にとても興味がある子よ」

「そうなの?」

「モグ!」

俺の確認に元気にお返事をしてくれる土の浮遊精霊。そういうことなら問題はなさそうだな。フィオリーナのところに戻ろう。

いや、その前に確認しておかないといけないことがある。

「この子の性別は?」

「男の子ね」

「了解」

性別が分からないと名前を付ける時に困るからね。

「お待たせ。それでフィオリーナ、今この場にフィオリーナと契約する精霊が来ているのだけど、どこにいるか分かる?」

「は、はい。巨大な気配の隣に浮いている小さい気配のことであれば、分かっていると思います」

やはり大精霊の気配は巨大なんだな。相変わらず俺には全然分からないけど。

「うん。その子が土の浮遊精霊。アーキテクトモールという魔物の姿を写し取った子なんだけど、知っているかな?」

「え? 魔物? 姿? 子?」

いかんフィオリーナがテンパっている。

「難しいことは考えなくていいよ。アーキテクトモールを知っているならその赤ん坊の姿を想像して、知らないのであればモグラの赤ん坊をもっと丸っこくしてモフモフにした姿を想像すればいいかな?」

「へ? はい、私も建築家ですからアーキテクトモールの存在も姿も絵姿でなら知っています」

「なら、その赤ん坊の姿を想像して、君の相棒として相応しいと思う名前を付けてあげて。詳しいことは後でしっかり説明するからね。あと、ちゃんと建築に興味がある子を連れてきてくれたから、その点を含めてあげると良いかもね。あと、この子は男の子だよ」

赤ん坊、建築に興味? 男の子? と更に混乱が深まったようだ。名前が決まるまで少し時間がかかりそうだな。バーベキューの準備でもしておくか。