軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百十五話 メルが頼りだ

フィオリーナさんの簡単な過去を聞き、期間を開けてもあまり意味がないと思いメルと一緒に会いに行くことにした。かなり男に不信感を持っているようなので、メルのフォローに多大な期待を持っている。村に到着し村長に挨拶し、いよいよ工事現場……凄く緊張する。

「あ、あ、あ……」

工事現場に入ると見たことがある女性冒険者と目が合う。女性冒険者が何かを言おうとして、言葉が出てこずに固まってしまう。

いきなり巻き込まれて王様とご対面、その後マリーさんに扱き使われていたから色々と大変だったのだろう。

「こんにちは。フィオリーナさんはいらっしゃいますか?」

「あ、あ、あ、こここちらでございます」

前回、お城に連れて行った時よりも態度が酷くなっているな。いや、酷いというよりもどう対応していいか分からない感じかな?

でも、その態度はできれば止めてほしい。弟子達の視線が、師匠、何かしたの? って感じだから困る。

あと、メルはともかく、他のメンバーは一緒にお城に行ったから、大体の理由は分かるよね?

「ありがとう」

女性冒険者の案内で工事現場を進むと、ソニアさんの言葉通り作業の人員が増えているのが分かった。なんか三倍くらいに増えている気がする。

「マリーさんが護衛を手配すると言っていましたが、護衛は集まりましたか?」

話して少しは落ち着いてもらおうと思ったが、ビクっとして動きがぎこちなくなってしまった。逆効果だな、大人しくしておこう。

「ここ、こちらでふ」

噛んでしまったことにもツッコミは入れないでおく。

それにしても、本当に工事が急速に進んでいるんだな。飯場にはまだ何もなかったのに、案内された場所には事務所のような物が建てられている。

早いし、結構立派だな。

「一応、先に入って俺達が挨拶に来たことを伝えてもらえますか?」

いきなり中に入ったらフィオリーナさんがパニックを起こす可能性がある。

「わ、分かりました」

俺から離れられるのが嬉しいのか、そそくさと事務所の中に入っていく女性冒険者。

王様の御前に連行したのがトラウマになっているのかもしれない。

「こ、こんにちは、裕太様。この度はハンマー商会とのもめ事を解決していただき、あ……ありがとうございます」

建物から出てきたフィオリーナさんが、俺を見て頑張ってお礼を言っている。

依然高い警戒心を感じるが、恩を受けたのだからお礼はちゃんと言おうとしているのだろう。

良いことだ。たぶん。

「えーっと、まあ、成り行きですから気にしないでください」

フィオリーナさんに恩着せがましい言い方は逆効果になる可能性が高いので、控えめな人物を演出する。

ガツガツ行かない、今回の主役は俺ではなくメルだ。

こっそりとメルの背中を押す。

「フィオリーナさん、お久しぶりです」

「え? あ、メルさん? なんでここに? いえ、あ、お久しぶりです」

メルに気が付いていなかったんだな。まあ、余裕がなさそうだったし、メルは小さいからしょうがないね。

「ふふ、お久しぶりです。お師匠様からフィオリーナさんにお仕事を頼んだことを聞いて、私もフィオリーナさんと会いたかったのでついてきちゃいました」

ユニスとは長い付き合いだから姉妹のような気安さがあったけど、フィオリーナさんが相手だとまだ探り探りな感じだな。

それほど頻繁に会うことはないみたいだから仕方がないが、もっと距離を詰めて俺への警戒心を解いてほしい。

「へ? お師匠様?」

「はい、お師匠様です。前に話したことがあったと思うのですが、家の精霊と契約するためにお師匠様に弟子入りしたんですよ」

「あ、そういえば言っていましたね。もしかして精霊との契約が成功したんですか?」

「はい、お師匠様のお陰で無事に精霊との契約ができました」

「まあ、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「あ、すみません。皆さんを表で立たせたままにして、どうぞ中にお入りください」

メルが一緒だったからか、少し警戒心が薄れて事務所の中に迎え入れようとしてくれるフィオリーナさん。

ここはちょっと悩みどころだな。一緒に中に入れば、おそらく無難な会話で挨拶が終わり、少し事務的なお話をして終わりという形になる気がする。

それでも十分な成果といえるが、メルともっと話してもらったら、会話の中で俺の誤解が解けるかもしれない。メルは俺に感謝してくれているから、悪いことは言わないはずだし……。

「いえ、ちょっと村や現場を見て回りたいので、メルとゆっくり話してください。久しぶりなんですよね?」

「え? あ、はい……たしかに久しぶりですけど、お仕事中ですし……」

ん? あれ? 建築家の仕事を甘く見ている依頼主みたいになっている?

……もう言っちゃった、メルの話術に期待するしかないな。

「えーっと、そこは俺が依頼主ですし、ソニアさんからかなり状況が好転したと聞いています。少しメルと話してあげてください」

「あ、はい……では、お言葉に甘えさせていただきます」

ちょっと不信感があるようだが、なんとか納得してくれたようだ。これ以上いるとボロが出そうだし、サクッと周囲の視察に出よう。

***

「メルさん、本当にお久しぶりですね」

お師匠様が私を置いて去ってしまいました。久しぶりに会う私達に気を遣ってくれたのでしょう。

「はい、私も色々とあって、なかなか会う機会がありませんでしたから、本当にお久しぶりです」

久しぶりに会ったフィオリーナさんは、昔よりもずっと大人っぽく綺麗になっていました。

背が高く肉付きの良い体、ドワーフの私から見ても魅力的な方だと思います。ただ、その魅力がフィオリーナさんに苦難を与えたのだと思うと、生きることの難しさをヒシヒシと感じてしまいます。

「それで……その……」

フィオリーナさんが何かを聞きたそうにして躊躇っていますね。そういえば、元々男性不信のところにお師匠様の噂を聞いて、かなり警戒されているとお師匠様が言っていましたね。

「お師匠様のことですか?」

「はい。色々と噂がある方ですし、この前なんてハンマー商会の従業員を捕まえてそのまま王城に乗り込んだと聞きました。そして、数日後にはハンマー商会は消え去っていました……」

お師匠様、そんなことをしていたんですね。もしかしたらドルゲム様が王宮に呼び戻されたのもお師匠様の件が関係しているのかもしれません。

「お師匠様は悪い人ではありませんよ。ただ、精霊術師の評判が悪く、そのせいで冒険者ギルドの前ギルドマスターを筆頭に、色々と嫌がらせを受けたらしいです。お師匠様は凄腕の精霊術師ですから、そのすべてを返り討ちにしている間に悪評が立ってしまったみたいですね」

「え? じゃあ悪魔みたいに冒険者達を罠に掛けて掛け金を巻き上げたとか、冒険者ギルドをすべて植物で覆いつくしてしまったとか聞いたのですが、全部理由があったのですか?」

冒険者ギルドを植物で埋め尽くす……ユニスちゃんが巻き込まれたやつですね。ユニスちゃん、傷だらけで散々だったと愚痴っていたので覚えています。

それまではお師匠様に失礼な態度をとって、私も申し訳なかったのですが、あれ以降、迂闊にお師匠様に絡むようなことがなくなったので、私も一安心でした。

「賭けのことは知りませんが、植物でギルドを覆いつくした話は知っています。あの時、前冒険者ギルドのマスターが、お師匠様をハメようとした結果だと聞いています。現にその後、冒険者ギルドのグランドマスターから謝罪を受けています」

「グ、グランドマスターですか。それも謝罪なんて……」

フィオリーナさんが驚いています。まあ、驚いて当然の内容なのですが。

「あの方はいったいどのような方なのですか?」

「凄い人だとは知っていますが、それ以上は私も知りたいです」

大精霊様と沢山契約していて、聖域なんてとんでもない場所を所有しているお師匠様ですが、自分のことをあまり話されず、基本ベルちゃん達やジーナさん達のお話ばかりですから謎に包まれているんですよね。

「……それって、大丈夫なんですか? メルさん、騙されたりしていません?」

「ふふ、お師匠様が私を騙してもなんの意味もありませんよ。精霊との契約に悩んでいた私を導いてくれて、そのうえ、こんな技術も授けていただいたんですよ。今日、フィオリーナさんに会うと思って持ってきたんです、見てください」

これが私の努力の証。お師匠様にお膳立てしていただいたことは否定できないけど、それでも必死に習得した技術の結晶。

「これは……ダマスカス。最近出回り始めて興味はあったのですが、建材と考えるには高価過ぎて、でも、なぜメルさんがこれを? ……まさか?」

「はい、私がお師匠様に教えていただいて作れるようになったダマスカスです。本物と比べるとまだまだで劣化という文字が頭に付きますけどね。いま、私は精霊鍛冶師と呼ばれているんですよ」

少し、いえ、かなり恥ずかしいのですが、それでもメラル様とメリルセリオと共同で得られた名称、恥ずかしくも誇りに思っています。

「精霊術というのはそんなこともできるのですか?」

「はい、色々と難しいので誤解を受けていますが、しっかり習得すれば精霊術師は凄いんです」

そういえばお師匠様がフィオリーナさんにも精霊術師の才能があると言っていましたね。

精霊術師のアピールをしておいてもいいかもしれません。職人の精霊術師仲間が増えたら嬉しいですからね。

「例えばですが、建築にだって精霊術師の力はとても役に立つんですよ?」

「本当ですか?」

フィオリーナさんの興味を引けたようです。

「はい、土の精霊と契約できれば地盤の改良ができたり、植物の精霊と契約できれば木材の加工や変質ができたりすると聞きました」

「地盤の改良ですか? どの程度のことができるのでしょう?」

「……すみません。私はそういうことをやったことがありませんから詳しい話までは分かりません。でも、お師匠様に聞けば分かると思いますよ。戻ってきたら聞いてみますか?」

「………………そうですね……お願いしてみます」

ものすごく迷ったようですが、建築家としての興味が不安を上回ったようですね。私も職人とはそうあるべきだと思います。

あとはお師匠様がしっかり説明してくれるでしょう。