軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百九話 ウッドデッキ完成

迷宮都市の買い物から戻りウッドデッキの板張り作業を再開すると、ベル達がお手伝いを申し出てくれた。申し出てくれたのだが、さすがに作業が遅くなり困っていると、シルフィが手を打ってくれた。大精霊、弟子達、ラエティティアさん集合の人海戦術。急激に作業が進み始める。

「これで最後!」

皆に宣言しながら最後の床板に最後の釘を打つ。

魔法のハンマーも既に釘を打つことに慣れ、最後の一本は一発で綺麗に床板に打ち付けられる。

あと一週間はかかると思っていたのだが、わずか二日で完了した、というかしてしまった。

早くできることは良いことなのだけど、達成感が若干弱い。

でもジーナ達やベル達とサクラに加え、大精霊やラエティティアさんまで参加してくれたので、大勢でイベントのように楽しめたのは良かったと思う。

俺が立ち上がると、みんなが拍手をして完成を祝ってくれる。

「ありがとう。みんなが協力してくれたから、作業が早く終わったよ。今夜はここで宴会をするから、みんな楽しみにしていてね」

宴会という言葉に皆の歓声が更に大きくなる。大人組もチビッ子組に負けずに盛り上がっているのは、確実にお酒が呑めるから嬉しいのだろう。

でも、今回はチビッ子組の面倒をよく見てくれたから、大盤振る舞いをするつもりだ。

完成したウッドデッキを改めて確認する。

普通なら完成した喜びや達成感が湧き上がってくるものなのだろうが、改めて見た感想は、広っ! だった。

作る前から薄々は分かってはいたのだが、完成したウッドデッキを見ると見切り発車は良くないということが凄くよく分かる。

五十メートルプールクラスのウッドデッキは、都会でも住人が多い訳でもない楽園には必要ない。

精霊王様達が来た時のような大宴会で使うなんて自分を誤魔化していたが、その為だけにこんな巨大なウッドデッキを作るなんて無駄でしかない。

……でも……カッコいいんだよなー。

巨大なウッドデッキの向こうにそびえる巨大な精霊樹、その間の芝生も生き生きとしていて、一枚の絵のような美しさがある。

確かハワイだったかな? この木なんの木ってCMのヤツ、あの雰囲気で、木が桜の木に変わりその手前に巨大なウッドデッキがあると表現すればいいのか……とりあえずそんな感じだ。

大きいことは良いことだという言葉を聞いたことがあるけど、大きすぎると無駄が生まれる。でも、その存在感は確かなもので、引き付けられるような魅力も感じる。

そうか、これがロマンということなのかもしれない。

無駄だろうが、途中でやり過ぎだと気が付いていようがやりきった。その結果、ロマンが生まれた。そんな気がする。

近くに家があるけど、テントやターフを張ったりして、ウッドデッキをお洒落に演出するのも楽しいかもしれない。

一度グランピングに行ったことがあるが、あんな感じに整備できたら凄く楽しい気がしてきた。

グランピングまで徒歩三分。悪くないキャッチフレーズだ。入居申し込みが沢山……駄目だな。

家からグランピングまでは徒歩三分だけど、家から人里まで徒歩百日だった。

しかも水も食料もなく、魔物や夜にはゾンビやスケルトンやレイスが闊歩する死の大地を抜けなければならない。奇特な人や世捨て人でも選択肢から外れる立地だ。

そう考えると、自分が住んでいる場所が秘境なのだと強く実感する。

本当に精霊、特に移動に関してはシルフィに大感謝しなくてはならない。今夜の宴会は予定よりも酒樽の数を増やそう。

「じゃあ俺は少し休んでから準備をするから、みんなは自由にしていて、日が暮れたら集まってね」

「師匠、手伝わなくていいのか?」

「私もお手伝いしたいです」

「ベルもー」

ジーナとサラがお手伝いを申し出てくれた。お手伝いという言葉につられてベル達までやってきてしまった。

ベル達は存在だけで助かるのだが、細かい準備となるとベル達に気を取られて準備が進まなくなるという欠点がある。

「今回は新たに準備することもなくて物を置くだけだから、特にお手伝いは必要ないよ。でも、ありがとうね」

お礼を言ってお手伝いは断る。今回は本当に並べるだけなので簡単なんだ。

ちょっと残念そうなベル達を見送り、何かあったら呼んでと言ってくれるジーナ達とも別れる。

「あ、ラエティティアさん、ちょっと良いですか?」

大精霊達と話していたラエティティアさんに声をかける。今のうち手形を貰っておこう。お酒が入ると忘れる可能性が高いからな。

かくかくしかじかとラエティティアさんに手形について説明し、沢山の手形がスタンプされたマホガニーの輪切りを見せる。

「まあ、これは面白いですね。あ、これがサクラちゃんの手ですね。可愛らしいわー」

大人の魅力ムンムンなラエティティアさんが少女のようにはしゃぎ、サクラの手形を発見して感心する。良い反応だ。

「ラエティティアさんにもサクラの手形の隣に手形を残してほしいんですが、構いませんか?」

「ええ、もちろんです。でも、私はそれほど楽園に関わっていないのに参加しても良いんですか?」

「ラエティティアさんにはサクラが大変お世話になっていますし、サクラがお世話になっているということは精霊樹に助けられている俺達もお世話になっているということです。それに、今はそれほど関わっていなくても、これから沢山関わってくれますよね」

「ふふ、それはとても楽しい未来ですね。喜んで関わらせていただきます」

なんかプロポーズに近いことを言ってしまった気がするが、普通に受け入れてもらえたので結果オーライだ。

塗料を取り出し、ラエティティアさんの前に置く。

「ふふ、少し緊張します」

ラエティティアさんが塗料に手を付け、サクラの手形のとなりにゆっくりと慎重に手を押し付ける。

「綺麗にできました」

ラエティティアさん、凄く嬉しそうだ。

「裕太様、とても楽しい体験をありがとうございます。一度は消滅を覚悟したのですが、消えずに良かったです」

喜んでくれるのは嬉しいけど、いきなり重い話をぶち込んでこないでほしい。

しばらく手形を眺めていたいとのことで、俺は近くでコーヒータイム。のんびりしてから準備を始めよう。

コーヒーを飲み終わるころにはラエティティアさんも満足してくれて、今はのんびり楽園を散策してもらっている。

さて……まずは宴会の位置決めだな。

ぶっちゃけ、かなり広いからスペースが余りまくる。

精霊樹に一番近い位置かウッドデッキの中心が無難だな。今日の主役は精霊樹ではなくウッドデッキだし、ウッドデッキの中心に準備をしよう。

食事や飲み物は宴会の寸前に出せばいいし、快適に過ごせるように場所を整えれば良いだろう。

テーブルはみんなが集まる大きなものを中心に二つ、一つはお酒を呑むメンバー用だ。当然椅子も置く。

周囲に料理を置くテーブルと、酒樽は……配置を考えなくても良いな。あるだけ全部大精霊が近くに確保するから……。

ふむ、やはり中心に少し物を置いた程度では殺風景だな。周囲は綺麗なのだが、ウッドデッキはもう少し賑やかな方が楽しい。

グランピングに行った時は、お洒落な松明が周囲に配置されていたな。光球を浮かべれば灯りには困らないのだが、火の精霊も居るし火の松明のような物を作るのも良いかもしれない。

あと燃えているのは炭ではなく薪だったけど、囲炉裏みたいなのがあった気がする。

……囲炉裏……良いかも。薪だけではなく炭を燃やして魚の串焼きとか焼きたい。

あと、テントがあったな。俺が行ったところは三角の大きなテントだったけど、モンゴルのゲルみたいなテントも画像で見たことがある。

こちらもマリーさんに注文してみよう。

あ、あとハンモックがあった。ハンモックの台くらいなら自分で作れそうだし網の部分だけ注文しよう。

なんか凄く楽しくなってきた。こういうのって想像するだけでワクワクするよね。

ハンモックとかターフとかテントとか、絶対にベル達もジーナ達も喜ぶはずだ。

そういえばテントどうしようかな? オーソドックスな三角テントかゲルタイプのテント、どちらも有ったら両方設置しちゃうか。スペースなら十分にある。

おっと、夢が膨らむが、まずは今日の宴会の準備をしないとな。

***

「では、皆様、色々とお手伝いありがとうございました。おかげさまで見事なウッドデッキが完成しました。せっかくなので今日は完成したウッドデッキで思う存分宴を楽しんでください。では、乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」

グラスを掲げて宣言すると、仲間達もグラスを掲げて唱和してくれる。無論、大人組はお酒で子供組はフルーツジュースだ。

子供組も俺が宴会を定期的に開くから宴会慣れしており、周囲の仲間達と木製カップをぶつけあって喜んでいる。

これがあるから子供組のカップは木製にしている。

乾杯が終われば集団が綺麗に二つに分かれる。ご馳走に突撃する組と、お酒に突撃する組だ。お酒組は酒樽を運び、料理はおつまみ中心。凄く分かりやすい。

子供組のように楽しく料理を選んでいる無邪気さを少しは見習ってほしい。魔法の鞄に沢山料理を収納してあるから、突発的な宴会でも沢山の種類の料理を用意してあるのにね。

魔法の鞄って本当に便利だ。というか、開拓ツールがチートだ。

さて、俺も食べて呑むか。

「ゆーたー、あれだしてー」

しっかり飲み食いをして若干まったりしていると、ベルがふわふわとご機嫌に飛んできた。

「あれ?」

「ぺったんってしたやつー」

ああ、手形を押したマホガニーの輪切りか。そういえばこれってなんて呼べばいいのかな?

名前がないと地味に不便だ。……輪切り手形とでもいいか? なんか商売に使われそうな名前だけど、まあ、俺達だけ理解できればいいか。

ベルのリクエストどおりに輪切り手形を出すと、子供組が集まってくる。大人組はお酒の傍から離れない。

あ、サクラがラエティティアさんを引っ張ってきた。

「あう!」

サクラが小さな指で自分の手形をラエティティアさんに教える。

「ふふ、サクラちゃんの手形は可愛らしいですね。では、そのお隣にある手形が誰のものか分かりますか?」

「う?」

ラエティティアさんの言葉に、サクラがそういえばと俺の方も見る。

「俺の手形じゃないよ」

そういえば自分の手形を押していなかったな。……まあ、タイミングを見てコッソリ手形を押しておこう。仲間外れは寂しい。

「あら? ピッタリですね」

ラエティティアさんが自分の手形に手を合わせる。サクラがいつの間に! て顔をしてラエティティアさんの胸に飛び込んでいく。あの二人の関係って素晴らしいな。