軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百七話 ドラゴン系統三種盛り

思い付きで始まったベル達やジーナ達の手形を残すプロジェクト、シルフィ達大精霊の手形もゲットし、あとはメル達とラエティティアさんに手形を押してもらえば完成ということになった。手形に目途が付いたので、中止していた作業を再開する。ウッドデッキの建築場所を決定し、ノモスに土台を作ってもらった。

さて、一人になった寂しさを忘れるためにも作業を始めるか。

まず、ノモスが作ってくれた石の土台に、釘を打つ場所になる木の土台を作る。

ノリと勢いと想像で作っているから酷く不安になるが、資材の品質が最高級な上に土台や床板の木材の厚みが全部マシマシプラスマシマシなので大丈夫なはず。

そう信じてノモスが作ってくれた十字のへこみに、土台用の木をはめ込んでいく。

お、ピタリとハマった。さすがノモス。正確に計った訳ではないのに一ミリの狂いもない。

たぶん大工さんとかDIYが上手な人は、ホゾとか作って噛み合わせるようにハメていくのだと思うが、俺は資材の良さを信じてストロングスタイルの直置きだ。

ぶっちゃけ、開拓ツールのナイフであればホゾを作るのも割と簡単なんだけど、数が数だし、なにより、ホゾ穴の位置を決める計測が面倒で諦めた。

プロならピタリとはまるように作れるかもしれないが、俺がやったら百パーセントホゾの位置がずれてストレスにしかならない。

高望みすると完成する前に挫折するだけだ。

心の中で言い訳を完了し、再び木材をハメていく。魔法の鞄から取り出して直置きなので肉体的な疲労はないほぼない。

「あ、ちょっと長い」

木材が長くピタリとハマらなかったが、魔法のノコギリがあれば修復はとても簡単。サクッと切り落とせば十秒だ。

木材を置く、置く、置く、置く、置く、置く、長かったら切る、置く、置く、置く、置く、短かったら長いのに変える、置く、置く、置く、置く、単純作業を繰り返す。

単純作業を続けていると、何でこんなことをしているのだろう? って気分になってくる。

「おぉ、こうしてみると結構壮観だな」

無心で木材を置き続け、最後の一つを置いて顔を上げるとなんだか風景がカッコよくなっていた。

ただ石の土台に木材を繋がるように置いただけなのに、不思議とカッコいい。やはり男は規模が大きなものにあこがれを抱くのだろう。

五十メートルプールクラスの大きさだからこその感動で、これが五メートル四方程度ではここまでの感動を得られなかったと思う。

……ただ、これだけの規模の土台の上に床板を置いてクギで打つことを考えると、ちょっとアレだ、端的に言って嫌だ。

まあ、それでもやるんだけどね。ベル達やジーナ達に途中で物事を投げ出す姿を見せる訳にはいかない。

まず、床板を置く。

……で、もう釘を打っていいのか? 先にちょっと位置を確認しておくか。たぶん最初の一枚が基準になる気がする。

これで大丈夫だな。

よし……床板に打つ釘は一本でいいのか? いや、台の間隔的に床板を三ヶ所で釘止めをするのだが、その一ヶ所の真ん中に一本ずつの計三本……一本だと止める力が弱そうだな。

ホゾとか組んでいないから、念のために一ヶ所に二本打つ形にしよう。手間が増えるが壊れるよりかはマシだ。

よし、今度こそ釘を打つぞ。

魔法のハンマーを取り出し、適切な大きさに変更。軽く釘の頭を持ち、コンコンと釘を床板にめり込ませる。釘が安定したら一気に『スパーン』と……。

「すごく気持ちいいな」

ビックリして一人なのに感想を述べてしまう。

一発で釘がスパーンと床板にめり込むとは思わなかった。強めに打ったが、日本で釘を打った時の経験を考えると、何回か打ち付けなければならなかった。それが一発で……。

基本、魔法のハンマーでは魔物しか叩いたことがなかったが、大工道具だけあって真骨頂は釘を打つことにあったようだ。

先の長さに嫌気がさしていたが、楽しくなってきた。

スパーン、スパーンと釘を打ちまくってやる。

いかに魔法のハンマーが凄かろうとも、さすがに一日では十分の一も終わらなかった。

床板と床板の隙間を五ミリほど開けたのだが、その作業が地味に面倒で時間がかかった。

そして、大きな問題も見えてきた。釘が全く足りない。大量に仕入れてきたはずなんだけど、ウッドデッキが馬鹿みたいに大きいから、ソニアさんのこれだけあれば十分だろうという想定を軽々と超えてしまった。

ぶっちゃけ、今日作った部分だけでもウッドデッキとしてはかなり大きな部類に入る。

それをあと二回くらい繰り返せそうな釘の量だから、ソニアさんの想定の甘さを責める訳にはいかない。

しょうがないから釘を使いきったらもう一度買い物に行こう。ついでに透明な塗料も買わないとな。

***

「びえーーん、裕太さん、だすげでくだしゃいーー」

迷宮都市に到着し、使い切った資材の補給のためにのんびりマリーさんの雑貨屋に向かっていると、ちょうど汗だくで歩いているベティさんとばったり出会ってしまった。

汗だくで死にそうな顔をしていたベティさんは、俺を見るなり滝のような涙を流し始め、汚い声で助けを求めてきた。

ウッドデッキの作成工程が順調だから油断した。シルフィ、何で教えてくれなかったの?

「そんな責めるような目で見ないでよ。ベティに注意するように言われていなかったし、面白そうだったんだもの」

面白そうって言った。

俺が頼まなかったから、好奇心を優先したな。シルフィは基本的に優秀で優しくて気が利くのだけど、偶にこういう時がある。

俺としてはできればベティさんとは、ダイエットが完了するまで会いたくなかった。

そして、ベティさんの監視要員の冒険者がベティさんを囲みつつも困った顔で見守っている。

俺としては見守っていないで連行してほしいんだけど……。

思いよ届けと冒険者の顔を見るが、そっと視線を逸らされた。どうやらだみ声で泣くベティさんの面倒をみるのは嫌なようだ。

知らない人のふりをして、逃げるか。

「あ、ちょっと、縋りつかないで、鼻水が……」

俺が逃げ出そうとしたのを感じたのか、ベティさんがしがみついてくる。なんだこれ、女性に抱き着かれているのに全然嬉しくないぞ。

「えーっと、何から助ければ良いんですか?」

諦めてベティさんの話を聞くことにする。

「管理されているんです。食べる物から歩く時間、睡眠時間まで全部! しかも家まで監視がついてくるんですよ。夜中に何も食べないようにって! 逃げようとするとみんな怒るんです。私、何も悪いことしていないのに!」

そこまで管理されていたのか。

商業ギルドはダイエットに関して商売に利用しようとしているから、ガチな対応だな。

料理ギルドもダイエットメニューに興味を示していたから、ベティさんで実験している可能性が高い。

リシュリーさんも気合が入っていたから、監視の冒険者も迂闊な仕事はできないだろうし……八方塞がりだな。

もはや、ゲージに入れられて観察される実験動物、地球なら大問題に発展する行為だ。さすがに少し可哀想に思えてきた。俺が切っ掛けだしね。

でも、助けるといってもどうすればいいのか……状況を考えるに迷宮都市の大きいところがいくつも関わっている大プロジェクトだよね。

その実験動物を可哀想だからと解放していいものか……駄目だな。

そうなると、ご褒美でやる気を出してもらうのが正解か。

「えーっと、ベティさんが痩せるのは俺も賛成です」

不健康な痩せ方ではなくしっかり管理されて健康的に痩せているから、精神的にはともかく肉体的にはかなりいい感じに見える。

まだまだ太ってはいるが、少し痩せてさらに健康的に見えるようになった。

「いや、そんな裏切られたみたいな顔をしないでください」

酷く悪いことをした気持ちになる。

「でも……」

「俺もベティさんのことを応援していますので、今の状況を止めることはできませんが、他の方々が納得するところまでベティさんが痩せたらご褒美を用意します」

「ご褒美ですか?」

「そうです。アサルトドラゴン、ワイバーン、ファイアードラゴンのドラゴン系統三種盛りはいかがですか?」

他にも迷宮の奥で手に入れたドラゴンのお肉はあるけど、それを出すのは流石に過剰だろう。

「さささ三種? つまり一度に三種類のお肉が食べられるということですか? しかもドドドドラゴンのお肉が……」

おお、物凄く動揺している。

「そうですね。食べられます」

お腹いっぱいと言いそうになったが、それを言ったらリバウンド確定な気がしたから、分量はそれなりで抑えるつもりだ。

前に一度ご馳走した気がする。あの時はアサルトドラゴンだったかな?

「裕太さん、私……頑張ります!」

凄いな、漫画みたいに目に炎が灯っている幻覚が見える。いや、炎じゃなくて炎の中で美味しそうにお肉が焼けているな。

「が、頑張ってください」

「はい! 頑張ります!」

見違えるように元気になったベティさんは、ポテンポテンと走りながら去っていった。運動強度を上げて早く痩せるつもりらしい。

あ、護衛の冒険者さんが、困ります! 予定外の運動はデータに乱れがとか言っている。もしかして悪いことをしてしまったかもしれない。

運動量についても厳密に管理しているところに、目の前にニンジンをぶら下げてしまうと、色々と計画が狂う可能性が高い。

ベティさんVS管理者。

ベティさんの暴走を抑え、見事正確なデータを入手することができるのか! といった感じだな。

(で、シルフィ。今はウッドデッキの製作に集中したいから、面白そうでも面倒に巻き込まれそうな相手と会いそうなら教えてね)

今回も日帰り旅行の予定だから、面倒事には巻き込まれたくない。

「了解、今のところ他に会いそうな人は居ないけど、居たら教えるわね」

(ありがとう)

さて、あとは買い物をしてサクッと帰るだけだな。あれ? 変なフラグを立てちゃった?

マリーさんの雑貨屋に到着する前にシルフィの指示で何度か道を変えた。

なぜ道を変えたのか聞いたら、そのまま進んでいたらカルク君とリシュリーさん、ワルキューレと会うことになっていたそうだ。

カルク君はともかくリシュリーさんとワルキューレは危険な感じだな。特にリシュリーさんはベティさんのことがあるから気まずい。

でも凄いなシルフィ、シルフィにかかればフラグすら回避が可能みたいだ。

あ、またフラグを立てちゃったかも。

無事に塗料も釘もその他諸々も大量購入できた。雑貨屋ではマリーさんどころかソニアさんも不在で、きわめて平穏な時間だった。

二人が居ないだけで店の雰囲気がこれほど違うのかと驚いたくらいだ。

あとは帰るだけ……メル達に手形を押してもらって帰ろうかな? まあ、次の機会で良いか。メルの工房はみんなで訪ねたいよね。