軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

六百三十一話 どこも丸投げ

ジーナ達の迷宮探索。四十九層にたどり着き隠し部屋を発見し、宝箱の罠解除に失敗し大騒ぎになる。それをディーネの力を借りて乗り越えお宝とご対面。そのお宝がどう考えても厄介ごとにしかならない逸品で、ついでに翌朝隠し部屋から出ると冒険者に囲まれた。←いまここ。

「それで、なにをどうしたらあんなことになるか教えてくれないか?」

宝箱の件が終わったと思ったら、砦の代表らしき男が話を続けた。

「あんなこととは?」

「栄光の影が君達がワイバーンやアサルトドラゴンを虐殺していたのを確認している。血の池が生まれるほどの惨状だったそうだな」

宝箱に注目が集まったから話が流れるかと思ったが、有耶無耶のままにはならないようだ。

それにしても虐殺か……否定できないのが辛い。

あれはたしかに虐殺だった。それは認めよう。でも、それがあたし達の仕業だと思われるのは避けなければいけない。

あんなのをあたし達の実力だと勘違いされたら色々と不都合が生じる可能性が高まるし、なにより、可愛いサラ達までバケモノ扱いされてしまう。そんなことは許されない。

やはり師匠に泥をかぶってもらうしかないようだ。まあ、師匠も丸投げできる時は丸投げするのが、快適な人生を送るためのコツだと呟いていたから納得してくれるだろう。

「あれはあたし達の仕業ではないが、師匠の精霊術師としての秘術が関係している」

秘術というか大精霊なんだけど、大精霊なんて精霊術師の秘術以上に洒落にならない存在だから、あながち間違ってはいない。

そんな大精霊と契約しまくっている師匠が異常なだけだ。

「どういうことだ? 俺も冒険者ギルドにこの砦の管理を任されている身として、秘術だからで済まされてしまっては困る。せめてある程度報告できる情報が欲しい」

……さすがに秘術というだけでは納得してくれないか。

師匠の場合、異常なことが多すぎて迂闊に表沙汰にできないから、こういう時に困るよな。やはり丸投げか。

「あたし達の師匠が関係しているから、その疑問は師匠に質問してくれ。知ってるだろ?」

師匠を持ち出すと、砦の管理を任されていると言っていた責任感が強そうな冒険者と、その周囲に居る冒険者達の表情が引きつった。

冒険者ギルドの一件で、師匠と敵対していた職員や冒険者達は迷宮都市を去ったはずなのだが、どんな噂が流れているのだろう?

師匠、最近迷宮都市での自分の評価が上向いているとか言っていたけど、もしかしたら勘違いなのかもしれないな。

「……いや、ギルドから君達の師匠にはできるだけ関わらないように言われているんだ」

冒険者なはずなのに冒険者ギルドから疎外される師匠。余計なちょっかいを掛けないようにという配慮なのは分かるが、師匠がちょっと可哀想になってくるな。

師匠、結構良い人なのに……。

「じゃあ、冒険者ギルドにそのまま報告して、関わらないように言われているから、追及は冒険者ギルドからお願いしますとでも言えばいいんじゃ?」

あたしも丸投げ、あなたも丸投げ。これで平等だ。

「ふむ。そうだな、俺達が無理して責任を負う必要もないな。分かった、今回のことは報告して冒険者ギルドに対応を任せる。君達の師匠に、我々に含むところがないことをくれぐれも伝えておいてくれ」

「分かった」

砦の責任者は清々しい表情で冒険者達と共に去って行った。

冒険者ギルドは師匠に確認するだろうか?

……ないな。

まあ、念のために冒険者ギルドから問い合わせがあるかもくらいは師匠に伝えておこう。

「あー、改めて言うが、ここからが本番だ。焦らず慎重にアサルトドラゴンを倒そう」

出発前に気合を入れたのが間延びしてグダグダになってしまったが、目的は変わっていないのだから気合を入れ直さなければならない。

「ジーナお姉さん」

「ん? サラ、困った顔をしてどうした?」

「ここでのんびり話していても魔物が寄ってきませんし、遠目にも姿が見えません。アサルトドラゴンは生き残っているんでしょうか?」

「え?」

いや、迷宮の魔物が絶滅したなんて聞いたことはないが……そういえば師匠が暴れすぎて迷宮のコアが絶望していたなんてことを聞いたことがある。

迷宮も簡単に魔物を再補充できない可能性があるな。

「……数が少ないのはある意味安全だ。四十九層でアサルトドラゴンを探して、居なかったら四十八層に移動しよう」

なんか四十九層に到達してから予想外のことが頻発するな。師匠が冒険にはイレギュラーがつきものだと言っていたが、これ以上は勘弁してほしい。

***

かなり時間がかかったがアサルトドラゴンを四十九層で発見することができた。

あれだけ魔物の死骸があったから当然と言えば当然だが、音の罠を途中で破壊しても連鎖して魔物が集まってしまったらしい。

そうなると発見したアサルトドラゴンはのんびりやなんだろう。今も地面に寝そべって眠っているし、初めて戦う相手としては適任かもしれないな。

「よし。当初の作戦通り、まず足を潰すぞ。ここから狙えるのは左後ろ足だな。師匠に習った魔力上乗せの全力攻撃を関節部分に集中する。その後は距離を取りつつ出血を大きくするように。あたしのシバは炎攻撃だから目を狙ってかく乱する」

「分かりました」

「まかせろ!」

「うん」

みんな落ち着いた様子だし、アサルトドラゴンも寝ているから緊張なく行けそうだな。こっちが坂の下側なのも場所として良い。

師匠に習ったハンドサインで開始を告げ、シバに提供する魔力を増やす。最初は繋がりを認識してそこに魔力を流すと言われても意味が分からなかったが、練習を重ねてどうにかできるようになった。

シバとも更に仲良くなれた気がするし攻撃の威力も上がって万々歳な技術だ。師匠には必要ないらしいけど、シルフィ姉さん達の攻撃力が上がったら洒落にならないから納得でもある。

ゆっくり右手を上げて振り下ろすと、まずはシバの炎の玉が発現しアサルトドラゴンに向かう。

それを追いかけるように土の槍が生まれ飛んでいく。姿は見えないがその後を二本の風の刃が追いかけていき、同時にアサルトドラゴンの左後ろ足に命中。炎が風にあおられ大爆発を起こす。

「ギャオォォォォ!」

寝ていたアサルトドラゴンが叫びをあげて飛び起きる。何度も訓練した甲斐があり、同時に目標に直撃できたようだ。

「あれ? 足、動いてる?」

立ち上がったアサルトドラゴンがこちらを向いて見えなくなったが、攻撃した左後ろ足も動いていたように見えた。

アサルトドラゴンを倒すコツは機動力を奪うこと、師匠はそう言っていたが、奪えなかった場合はどうすればいいんだ?

いや、その場合も考えているし訓練もしたけど、攻撃力が上がったから奪えるものだと思い込んでいた。

師匠。機動力を奪えば楽勝、楽勝、って笑っていたけど、奪えないと楽勝じゃないよな。

「シバ! アサルトドラゴンの目を狙って攻撃。サラ達は散開、他の魔物にも注意しながらアサルトドラゴンの左後ろ足を狙え!」

こちらに向かって突進してくるアサルトドラゴン。巨大なその姿に膝が震えるが、突進にぎこちなさを感じて冷静になる。

さすがに無傷とはいかなかったらしく、少しはダメージを与えることに成功していたようだ。

「シバ。攻撃中止! サラ達もあたしが避けた後に攻撃するようにしてくれ」

シバの攻撃をアサルトドラゴンは嫌がっていたが、その嫌がり方が問題だった。顔に攻撃が来るたびにアサルトドラゴンの軌道がズレる。ギリギリで躱そうとしているのにそれは困る。

焦って攻撃中止を告げ、突進してくるアサルトドラゴンを待ち構える。

あっ、マルコに土壁でも作ってもらっても良かったな。こんな簡単なことを今思いつくなんて、平常心を心がけていたつもりだが冷静さを保っていなかったようだ。

場違いなことを考えながら、横っ飛びでアサルトドラゴンの突進を躱す。

「攻撃は成功した? アサルトドラゴンの足は?」

師匠が言った通り、アサルトドラゴンは止まらずに走り抜けていく。

「私とキッカの攻撃は当たりました。傷は深いようで、動きに合わせて血が噴き出しています」

サラの言うとおりなら、あと何度か攻撃すれば動けなくなりそうだな。

何度もあの突進を躱すのは神経が削れるから、次あたりでなんとかしてほしい。

「マルコ。ウリに頼んで妨害になるように壁や穴を作ってもらってくれ。あたしの近くは困るから、できるだけ離れた場所に頼む!」

さて、我慢比べだ。

「ギャオォォン」

アサルトドラゴンが悲鳴のような鳴き声を上げながらズシンと音をたて転がる。

アサルトドラゴンはあたし達の攻撃を四回耐えた。その度に神経を削られつつ思った、師匠の開拓ツールってズルい。

あれだけ頑丈なアサルトドラゴンの足をスッパリ一撃とか、意味が分からないよな。まあ、それがなくても大精霊が攻撃すれば一瞬なんだけど。

「後は巻き込まれないように攻撃だ。首元を狙うぞ」

サラ達は元気よく返事をしてくれたが、時間がかかるんだろうな。

「よし。色々あったけど目標は達成した。今日はもう疲れたから、一泊してから帰るぞ」

ドラゴンの耐久力をいかんなく発揮したアサルトドラゴンをようやく討伐し、安心したことで気が少し抜ける。

迷宮から出るのにも時間がかかるから完全に気を抜くわけにもいかないが、今日くらいは少し贅沢をしても良いだろう。

隠し部屋に戻って今日は少し凝った料理でも作ろう。

あと、お世話になったディーネ姉さんに少しだけだけどお酒も出すか。

……師匠は今頃何をしているのかな?

***

いやー。あっはは。死ぬかと思ったけど前回よりかはマシだったな。エルフの秘薬って凄い。

でも、今回のベリル王国ツアーはこれでお終いだな。回復に努めないと怒られる。

それにしてもサキュバスのお姉さん達には程々という言葉を覚えてほしい。

美人だしスタイル抜群だし、凄く尽くしてくれてエッチだし、最高なんだけれど、俺が美味しいらしく途中で止まってくれないのが問題だ。