軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百九十九話 歓迎

エルフの集団の美貌に情緒を振り回されながら、精霊樹が育てた森に突入。知らない間にエルフ達に守られていたらしく、ピクニック気分でエルフの国に到着した。巨大な木々に沢山のツリーハウスという、ロマンあふれる首都にテンションも急上昇だ。

「裕太様、お待たせして申し訳ありません。どうぞこちらに」

エルフの国を目前にしてオアズケされてしまい、ソワソワしたりなんでエルフが集まってきているのと疑問に思ったりしていると、ようやくエルハートさんが迎えにきた。

エルハートさんの案内に従い歩いていくと、エルフが集まっている場所に向かっていく。

どうやら二本の大木の間が門になっているようだ。でも……国が森そのものだから侵入を阻む壁すらないよね。

門の意味は?

「裕太、風の結界が張られているのよ」

俺が疑問に首を傾げていると、シルフィが説明してくれた。風の結界?

「ベルが使う風壁の強化版がこの街を包んでいるのよ。他にも精霊の力を借りて色々としているようね」

俺が再度疑問に思っているのが伝わったのか、シルフィが詳しく説明してくれた。なるほど、森の奥なのに無防備だなと思っていたが、見えないけど警備はちゃんとしているらしい。

巨木に挟まれた門に到着すると、エルフなのに凄くお年を召した外見の方が先頭で出迎えてくれた。

エルフで老人だと分かる外見って相当な年齢だよな。

さすがに目を奪われるとか嫉妬にかられるとかキラキラしているとは思わないが、昔美男子でした臭はプンプンと感じる。というか老人なのに普通に今もカッコ良くて悔しい。

そして、その隣にはハヤブサに似た精霊がふわふわと浮いている。あれがお爺さんの契約精霊なのかな?

「ようこそ裕太様、依頼をお受け下さりありがとうございます。私はエルフの国の長老、ファネモスと申します。お会いできて光栄です」

ハヤブサの精霊を見ていると、いきなり不思議なことを言われた。

光栄? なに? どういうこと? 明らかに扱いがおかしい。VIPを通り越しています。

「ふぁ、ファネモスさん、こちらこそお会いできて光栄です。裕太と申します。よろしくお願いします」

あれ? 俺はさん付けで正解だったのか? 長老がエルフの国でどのような立場かは分からないが、俺も様付けの方がよかったのでは?

というかエルハートさんからの様付けは、俺の怯む心に力をくれていたから否定しなかったけど、この場合は否定するべきだったのでは?

どうしようか悩んでいる間に、長老の視線がジーナ達へ向いてしまったので、俺からジーナ達を紹介する。

「みなさん、よろしくお願いします。では、まずは落ち着いて話せる場所に移動しましょう」

「は、はい」

長老の案内でエルフの国に入ると、沢山のエルフが両サイドに並んでいる。たぶん歓迎してくれているんだよね。

赤いじゅうたんは敷かれていないが、どこかの映画祭のようになっている。しかも俺達が出演者の立場だ。意味が分からない。

両サイドから歓迎の言葉が次々に飛んでくる。エルフって俺がイメージしていたよりもミーハーなのかもしれない。

もっと人嫌いとか孤高の精神を持っているプライドが高い種族だと思っていたが、この世界のエルフは違うようだ。

そうなると歓迎に応えたくなるが、両サイドに並ぶエルフ達を見るのは止めておく。

エルハートさん達、男の集団でも危険だったのに、女性エルフが混ざっている集団を見たら自我が保てるかどうかも疑問だ。

およ? 歓迎の言葉の合間に、興味深い内容が聞こえた。

「本当に長老の契約精霊よりも存在感を感じるぞ」

「あぁ、あきらかに格が違う存在だ」

「どういうことだ。本当に我々エルフを超える精霊術師なのか?」

等々、この歓迎は俺に敬意を払うというよりも、シルフィとドリー、大精霊の二人に向けられたもののようだ。

ふむ、最初に会った時のエルハートさんの反応で予想できたことだったな。でもまあ、俺やジーナ達に対するこの扱いは明らかにやり過ぎだけど、大精霊の歓迎としては間違ってはいない。

ただ、シルフィとドリーはこの大歓迎にまったく興味を示してはいないんだけどね。むしろベル達がワクワクしまくっている。

まあ、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ残念な気持ちもないことはない。

これだけ歓迎されちゃうと、エルフの美女集団におもてなしされてウハウハ! なんて夢を見てしまうのが男という生き物だから、あれ? もしかしてエルフの美女にモテモテ? という期待がなかったとは言えない。

……暴走して恥をかく前に現実が見えたことに、感謝だけはしておこう。

それにしても、長老の契約精霊よりも偉大って声が聞こえたけど、長老の隣に浮いているハヤブサのような精霊のことだよな?

でもあの精霊、子供っぽいフォルムはしていないけど、大きさは普通のハヤブサより少し大きいくらいにしか思えない。

酒島に来る上級精霊なんかは大きい精霊が多いから、少し違和感がある。こういう時は精霊の気配を感じられないのは不便だな。

精霊の大きさを考察しながら前だけを見つめて歩いていると、立派な巨木が立ち並ぶエルフの国の中でも一際目を引く巨木の前で長老が立ち止まった。

「どうぞこちらに」

巨木の前にある手すり付きの木の台の上に乗れということのようだ。

かなり立派な木だし、この木のツリーハウスが国の役所、もしくは迎賓館のような役割があるのだろう。

巨木の幹にロープや階段らしきものがあるが、木の台はそれとは別の移動手段かな?

エルフの国に外国の要人が来訪するかどうかは知らないが、お客や長老のような老人を階段やロープで登らせるには、目の前の木は大きすぎる。

指示に従って台の上に乗ると、長老がモゴモゴと詠唱を始めた。

エルフの国を守護する偉大なる風の精霊、みたいな厨二心溢れる詠唱がエルフの老人の口からつむがれるのは衝撃的だが、これはこれで悪くない。

詠唱も唱える人次第ということなんだろうな。俺が唱えると痛いけど、エルフが唱えるならセーフみたいな理不尽な法則が成り立つ気がする。

ハヤブサの精霊がパタリと羽ばたくと、木の台が浮かび上がり緩やかに上昇を始めた。

やっぱりこのハヤブサ型の精霊が偉大なる精霊らしい。シルフィ達よりも格下っぽいから上級精霊なのだろう。

周囲のエルフ達の反応から考えると、上級精霊はやっぱり凄いんだよな。

……楽園ではルビー達に食堂やら宿屋やらで働いてもらっているんだけど、バレたらエルフにガチギレされそうだな、内緒にしておこう。

上昇する台に乗りながら上からエルフの国を観察しようとしたが、残念なことに周囲も巨木ばかりなので木々で視界が遮られて景色はそれほど綺麗ではない。

ただ、目線が上がると下からでは分からなかったいくつかのツリーハウスと、木と木を繋ぐ枝の通路や吊り橋が見えてテンションが上がる。

木々を渡りながらエルフの国の観光とか、絶対に楽しいに決まっている。時間を見つけて絶対に観光しよう。

現在、俺と同じくめちゃくちゃ興奮しているマルコとキッカが落ちないかが少し心配だが、あらかじめシルフィにお願いしておけば対応してくれるだろう。

観光プランを検討していると、ドスンと音がして浮遊感がなくなった。どうやら目的地に到着したようだ。

振り返ると、これをツリーハウスとひとくくりにしていいのか迷うタイプの豪邸が目に飛び込んできた。

ただ、迷宮都市や王都で見た貴族感丸出しの建物とは違い、どことなく神聖な雰囲気を感じる。

木造だし鳥居はないけど神社っぽいからだろうか? ……エルフと神社……微妙にミスマッチな気がする。

「あの、裕太様?」

なぜか長老がおそるおそるといった様子で話しかけてきた。どうしたのかと思ったが、長老の視線の行方で何を言いたいのかすぐに理解できた。

今まで俺の傍でキョロキョロしていただけだったベル達が、神社っぽい建物を見て好奇心が抑えられなくなったのか、俺の周りでブンブン飛び回っている。

エルフの契約精霊達はあまり契約者から離れないようなので、エルハートさんの時と同様に活発に動く精霊の気配を感じ取って、長老も不安になったのだろう。

「問題ありません。気にしなくて大丈夫です」

「そ、そうですか?」

「はい、大丈夫です」

エルフの精霊術がどんなものか分からないから、とりあえず断言することで無理矢理にでも安心してもらう。

うちの子達、ちょっと自由過ぎるのだろうか? でも、ベル達の行動を縛るのは嫌だし、俺はこのままのスタイルを貫こう。よそはよそ、うちはうちってやつだな。

「……そうですか。では、こちらに」

ちょっと納得できていなさそうな長老の案内で神社っぽい建物に向かう。

「へー、なかなか面白い建物ね。風と水に光と闇と植物、精霊が好む作りになっているわ。まあ、私達の家の方が快適だけどね」

建物に向かっているとシルフィが楽しそうに説明してくれた。

どうやら目の前の建物は精霊のことを意識して作られているようだ。火に関する物がないのはエルフだからというよりも、木造だし森の中だからかな?

今のエルフ達からは精霊の意志を確認する様子が見受けられないが、もしかしたらもっと昔は精霊との意思疎通が活発だったのかもしれない。

あとシルフィ、シルフィ達の家が快適なのは当然だと思うよ。だってシルフィ達の要望を直接聞き取って注文したんだもん。これで負けていたら、普通に悲しい。

そんなことを考えながら扉を通って中に入る。

土足のままでOKなのか。やっぱり神社とは違うんだな。

あと、室内が地味だ。

絵もなければ壺もない。高そうな絨毯が敷いてあることもなく、照明が派手なこともない。

廊下は広く取られているし、お客を迎えるような設備がないこともないが、それにお金を掛けている雰囲気もない。

たぶん国賓を迎える迎賓館のような役割ではなく、エルフ達が集まるための集会場みたいな役割なんだろう。

まあ道も造らないエルフ達だし、他国から国賓を迎えるという考えがないんだろうな。

廊下を歩いて奥の部屋に通される。

巨木の幹に近い部屋のようで、大きく取られた窓から巨木の幹がハッキリ見える。風が吹くと木の良い匂いがして、地味に癒される空間だ。

このままのんびりしたいところだけど……たぶんこれから依頼の話をするんだよね。観光がしたい。