軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百七十九話 話題逸らし?

久しぶりの楽園でのんびりスローライフを嗜んでいると、ディーネのお昼寝スポットを海底火山の噴火から守ることになった。お昼寝スポットの為に噴火阻止? とか、お昼寝スポットが超巨大クラゲなこととかツッコミどころが沢山あるのに、酒樽の山の方が気になってしまう俺は、相当精霊に毒されていると思う。

「それでディーネ、俺はどうすればいいの?」

海水がマグマに触れて蒸発し、モクモクと水蒸気をあげている海底火山を見ながら尋ねる。

海底火山の噴火を阻止する方法なんて俺にはサッパリだから、ディーネの指示に従うだけだ。

「えーっとー、まずはノモスちゃんとイフちゃんの召喚をお願いー」

「分かった……ん?」

海底火山の噴火というインパクトに押されていたけど、もっと単純な解決方法があるよね?

「なあディーネ、噴火を止めるんじゃなくてクラゲを別の場所に移動させればいいんじゃないか?」

あの巨体だから自力で海底の亀裂から出られないが、亀裂を広げる方が噴火の対処よりも簡単なはずだ。

それに、そうした方が自然の営みを阻害しないと思う。

「裕太ちゃんがそう考えるのも無理ないけどー。あのクラゲちゃんはとってもデリケートだから、環境を変えると死んでしまうわー」

「あの巨大な体でデリケートなの?」

そもそもクラゲって図太いイメージがあるんだけど、いや、繁殖力が強いから図太いイメージがあるだけで、普通に砂浜に打ち上げられて干からびるクラゲも居るから、生存力はそれほど強くないのかもしれない。

「そうよー。あれだけ大きく育つ子は稀なのよ。お姉ちゃんのお昼寝スポットは凄いんだからー」

ディーネが子供のような笑顔で自慢している。お昼寝スポットというよりも愛犬を自慢する飼い主のような顔だ。

あぁなるほど、あのクラゲはお昼寝スポットという名のディーネのペットなのか。あれだけ育っているんだし、ずいぶん長い付き合いなのだろう。

そういうことなら俺も頑張らないとな。まあ、ノモスとイフを召喚するだけだけど。

「分かった。じゃあ召喚するね」

「おねがいねー」

ディーネに断りを入れてノモスとイフを召喚する。

「ふむ、たしかに噴火が近いな」

「あぁ、このままだとかなり規模が大きな噴火になりそうだぜ」

ノモスとイフを召喚すると、二人はすぐに現状を把握したようだ。

若干イフが嫌そうな顔をしているのは、海の中だからかな?

近くに火山があっても、火の精霊にとって海中はアウェーだからあまり居心地が良くないのかもしれない。

「どうする? 完全に抑え込むか?」

「いや、ここでため込んでも仕方あるまい。こっちは塞いで別の場所に新たに噴火口を造る」

「ならそっちが終わったら、マグマ道の熱を完全に奪って固める。あと、マグマだまりの熱も奪うか?」

「……そうじゃな。じゃが多少で構わん。あまり奪い過ぎるなよ?」

「当然だ」

ノモスとイフがプロフェッショナルのような会話をしている。

いや、ノモスとイフが土と火に関してプロフェッショナルは当然か。でも、言葉少なに計画がまとまっていくのはちょっとカッコいい。

まあ、噴火口を別に造るとか、マグマだまりの熱を奪うとか、内容が凄まじくファンタジーだけどな。

「裕太、それで構わんか?」

「へ?」

「じゃから噴火の対処は今言った通りで構わんか?」

あっ、一応俺が命令する形だから、許可を求めたのか。

「うん、いい感じにやっちゃって」

「うむ」

「ならさっさと終わらせるぜ」

許可を出すと、ノモスとイフが動き出した。

「そうじゃなあのあたりが良かろう。海底に亀裂を造るよりも山にしてしまうか。その方がコントロールしやすい」

「ノモス、山を造るの? 見たいんだけどどこに造るの?」

邪魔をするつもりはなかったけど、海底に山を造るとなると見逃す訳にはいかない。

「……見る分には構わんが、見るなら少し移動するか。ディーネ、向こうの平たくなっている場所まで裕太を運んでやれ」

「はーい」

俺の体が水流に押されて移動する。

「では始めるぞ」

ノモスの言葉と同時に、ゴゴゴっと鈍い音をたてながら地面が盛り上がっていく。ノモスが土を操作するのを見るのは初めてじゃないが、山と言うだけあって規模が段違いだ。

数分も経たずに見上げるような山が完成した。

山としては小さいのだろうが、綺麗な形の独立峰なので気品を感じるたたずまいをしている。

シンプルな形だからか、ノモスの壊滅的な美的センスが仕事をしなかったのは喜ばしい結果だろう。

「……今更だけど、海底に居た生物とか大丈夫なの?」

暗視がなければ何も見えないくらい深い場所だけど、それでも生物は居るよね。

「ふん、儂がむやみに生き物の命を奪う訳ないじゃろ。ちゃんと場所も選んでおるし、生物も避けておる。むしろ山ができて環境が豊かになるわい」

「あっ、そうなんだ。えーっと、凄いね」

さすがノモスって言いたいけど、山ができるほど地面を動かして、それで生き物を避けるとか、凄すぎて少し引く。

「次は噴火口を通す。ついでに少しマグマを抜いておくかの。イフ、熱の調整を頼む。爆発させんようにな」

「任せろ」

俺が見たいと言ったからか、作業の前にちゃんと説明してくれるノモス。不愛想だけど、優しいよね。

再びゴゴゴっと音が鳴ると、今度は山頂から激しい水蒸気と共にマグマが噴き出した。

かなり激しく水が蒸発しているけど、あれで本当に熱がコントロールされているんだろうか?

イフの顔を見ると、ちょっと楽しそうに笑っている。なんとなくだけど、ギリギリを攻めているように思える。

海底火山の噴火か……綺麗だと思うと同時に普通に怖い。

シルフィ達が傍に居るから普通に見ていられるけど、精霊の庇護がなかったら泣きながら逃げ出すか腰を抜かしてご臨終してしまいそうだ。

自然の前では人間は無力……ん? 山を造ってマグマを減らすために適度に噴火させた状態を自然と言っていいのだろうか?

……まあ、精霊も自然の一部ということにしておこう。

「これくらいで良いじゃろう。イフ、後は頼む」

ノモスがそういうと、山頂から流れ出していたマグマの勢いがおさまり、爆発的な水蒸気も小さくなっていった。

「あいよ」

ノモスが力を抜き、次はイフがメインなようだ。

「終わったぜ」

……えっ?

「えーっと、イフ、何か変わったの?」

「あん? あぁ、そりゃあ見えねえから分からないよな。さっき言ったように元々の噴出口のマグマは完全に冷やして固めた。あとはマグマだまりの熱をある程度奪ったから、しばらくは突然噴火するようなことにはならないだろうぜ」

なんてことないように言うが、シレっと凄いことが行われていた。

でも、凄く地味だ。

「なるほど、そうなんだ」

地味だけど、地味だねと言うのは違うよな。

ノモスの行動が派手だったからワクワクしていたけど、イフの場合は地味な作業が必要だったから地味な訳でイフに非がある訳じゃない。

それに派手なことが偉い訳じゃないよね。

「ノモスちゃん、イフちゃん、ありがとー。お姉ちゃんとっても嬉しいわー」

一人で納得していると、ディーネがノモスとイフに抱きついた。お昼寝スポットが守れて嬉しかったのだろう。

イフは少し面倒そうな顔をしているがそれほど嫌がっている様子はない。ただ、ノモスがとてつもなく嫌そうな顔をしている。

俺だったら表面上は嫌がりつつも内心では喜ぶシチュエーションなのだけど、ノモスは本気で嫌がっているようにしか見えない。ノモスは特異体質なのか?

「おい裕太、仕事は終わりじゃろう、さっさと送還せい。儂は忙しいんじゃ」

これを本気で言うノモスが俺には理解できない。でも、良い機会だし送還は少し待ってもらおう。

「送還の前に聞きたいことがあるんだ」

「なんじゃ? くだらんことじゃったら許さんぞ」

「俺的にはくだらないことじゃないよ。あのね、さっきディーネのお昼寝スポットで見たんだけど、ノモス達ってお酒を造り過ぎじゃない?」

俺の言葉にピタリと固まる大精霊の四人。

固まるってことは自覚があったってことだよね?

醸造所の魔窟具合に今までは目を逸らしていたけど、さすがにアレを見て放置はできない。

「俺もねノモス達に任せたスペースは自由にしても良いって言ったよ? でもね、いくつもある保管所の一つなのに、蒸留酒の樽があれだけあるのは造りすぎだと思うんだ」

精霊がお酒で体を壊すのかは知らないが、俺のせいでお酒に呑まれる精霊が増えてしまったら申し訳が立たない。

元々は数少ない聖域で細々と続けられていた酒造り。そこで完成したお酒を大切に呑んでいた精霊達。

古式ゆかしい酒造りをしていた精霊達に酒工場を与えたようなものだから、与えた者としての責任がある。

というか俺は生きていないだろうけど、ベル達の将来が心配だから制限は付けておきたい。

「うぅー。お姉ちゃんは悪くないわー」

ディーネがシルフィ、ノモス、イフにものすごくニラまれている。おそらく、なんでお酒を隠しておかなかったんだ! ってところだろう。

「あっ、そういえば裕太、死の大地というか、死の大地近くの開拓村が大変なことになりそうなのだけど、どうする?」

「いやシルフィ、いくらなんでもそれはないんじゃない?」

露骨に話題を逸らし過ぎだろう。

「ち、違うわよ。別に嘘なんかついてないわ。今思い出しただけよ」

普段冷静なシルフィが慌てている時点でダメだろう。精霊ってアレなのかな? お酒が絡むとポンコツになるのかな?

「シルフィ、俺と開拓村にはなんの関係もないよね。別に酒造りを全面禁止にするつもりはないから、無理矢理話題を逸らそうとしなくてもいいよ」

お酒を造る量を少し、いや半分……三分の一くらいに減らすだけだ。

「そう? 楽園の影響で開拓村を襲うアンデッドが増えているのだけど、裕太は気にしないのね? それならそれで私は構わないわ」

あれ? 話題逸らしは間違いないのだろうけど、俺にとって聞き逃せない内容をぶち込んできた感じ?

「えーっと、本当に?」

シルフィが悪趣味な嘘を言うとは思えないが、お酒が関わっているから念のために確認しておこう。

「本当よ」

……本当なんだ。知らなかったり、俺に関係なかったりすれば無視するんだけど、俺が原因となると聞かずにはいられない。

俺ってチョロいよね。