軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百四十四話 コンニャク

雪の大精霊のスカウト成功。さっそく雪を降らせてほしい浮き島に案内し住居を定めてもらった。雪の大精霊の本来の姿は巨大な雪豹で、さすが大精霊と思える威厳と力を持っていたように思う。すぐに小さくなって威厳も何もなくなってしまったけど……。

「さて、今日もやっちゃいますか!」

「楽しそうなのはいいけど、裕太は努力する方向を間違っている気がするわ」

朝食を済ませてベル達を送り出し、今日も頑張ろうと気合を入れると、シルフィから呆れた声でツッコミが入った。

「自覚しているから大丈夫」

自分でも努力の方向が間違っているのは十分に自覚している。

今やっていることも悪いことではないが、他にもっとやることがあるだろうと言われたら否定はできない。

でも、俺がやりたいからいいんだ。そう、芋煮会を!

雪の大精霊に天辺の浮島を雪島にしてもらい、そこはベル達や楽園を訪れている精霊達の良い遊び場になった。

雪の大精霊は巨大カマクラの奥に引っ込んで、魔性のクッションに魅了されてゴロゴロしているだけだが、いい仕事をしてくれたと満足している。

そして、雪まみれになりながら遊ぶチビッ子達を見ていると、鍋への欲求がとても高まった。

この子達を驚かせ、そして寒い中で熱々の芋にハフハフと一緒に噛り付きたい。

まあ、芋煮は秋とかに野外で食べることが多いらしいから、雪が降りまくっている場所でやるのは違うかもしれないが、この暑い大陸で、楽園だからこそできる最高の贅沢だと思う。

だからこそ難しいと躊躇していたコンニャク作りに成功しなければならないんだ!

今のところ、三日連続で失敗しているけど……。

でも、コンニャク以外は順調だ。里芋もドリーが知っていたので簡単に用意できた。他の野菜も問題ない。味噌も醤油も完成している。

コンニャク芋は自分も良く知らなかったので説明に苦労したが、変な形で毒があるという薄い知識でなんとか辿り着いた。

この世界ではただの毒芋で、食料になるとは考えられていない芋らしい。一瞬商売になるのでは? と思ったが、味噌も醤油も流通していないこの世界で、美味しいコンニャク料理を広めるのは難しいと断念した。

鍋もメルとノモスに確認したところ、巨大な芋煮用の鍋でもノモスの補助があればメルが作れるらしいので発注は済んでいる。

まあ、ダマスカスの修行+終わってからの堕落クッションの作成+巨大鍋の作成ということで負担をかけまくってしまっていて、結果メラルに、メルが楽しそうにしているから文句は言わないが、メルの体調のことも考えてやってくれと頼まれ、メリルセリオにはメッとされてしまった。

これは芋煮のことしか考えていなかった俺のミスだ。メラルの真剣な言葉は心に響いたし、赤ん坊からのメッは想像以上にダメージがあった。

最悪コンニャクは無くても作れるけど、いずれオデンも作りたいしなんだか色々な物を失った気がするからこそ、芋煮会はなんとか完璧に成功させたい。

というわけで、現在の俺の挑戦は他に力を注ぐところがあったとしても重要なんだ。

「……まあ、好きにしたらいいわ」

決意に満ちたやる気満々の俺を見たからか、シルフィが応援してくれた。若干投げやりな様子に見えた気がするが、たぶん気のせいだろう。

という訳で今日も元気にコンニャク作りだ。

テレビで見たあやふやな知識での無謀な挑戦だけど、昨日はルビーの協力を得られたので成功に近づいている手応えはある。

今日こそ完成させるぞ!

***

厨房に移動し、今までの手順を思い返しながら準備をする。

まずは当然コンニャク芋。

最初はドリーに毒を抜いて育ててもらっていたが、毒の何かしらの成分がコンニャクを作るために必要かもしれないので、自然そのままの状態の芋だ。

そして藁の灰を入れた後にディーネに濾してもらった水。

なんで藁の灰を入れた水が必要なのかはサッパリ分からないが、テレビではそうやっていたので用意している。

山菜とかであく抜きにも使うらしいし、たぶん何か効果があるのだろう。

ここまでは最初から辿り着いていた。

あとはすりおろすのと灰汁を混ぜるくらいしか覚えておらず、分量もタイミングも分からず試行錯誤の結果、絶望した。

そこに楽園に訪問者の来ない日で時間があったルビーの登場。俺のあやふやな知識と完成品の説明を聞いて、あと一歩のところまでこぎつけてくれた。

あとはコンニャクを完成させるだけなんだけど、心強い助っ人のルビーは時間切れとなり楽園食堂で腕を振るっている。

つまり、自力で頑張るしかないということだ。手順はメモしてあるしその通りにやるだけなのだが不安でしかない。

まあ、自力と言っても精霊の力は借りるんだけどね。

「シルフィ先生、お願いします」

「しょうがないわね」

シルフィがちょっと嫌そうだ。まあ、先日質問されたから、理由は分かっている。

裕太、最近裕太は私の力を移動か料理にしか使っていない気がするのだけど、気のせいかしら?

そう言われた時、俺はその通りですとしか答えられなかった。

今回もコンニャク芋の皮むきをお願いしているが、大精霊の力でやることか? と問われれば違うと答えるだろう。

でも、仕方がないんだ。

最初は自力でやろうとしたけど、コンニャク芋に触っていたら手が猛烈に痒くなってしまったんだ。

ムーンに頼んだらすぐに治療してくれたけど、もうあの痒さは味わいたくない。レベルが上がっているのに、なんでかぶれるのかが疑問でしかない。

シルフィが軽く手を振ると、コンニャク芋が風に包まれて浮かび上がり、シュルシュルと解けるように皮がむかれていく。

素晴らしく便利だ。だからついつい頼んじゃうんだよね。

「お姉ちゃんの出番ねー」

まだ呼んでないけどディーネが現れた。

たしかにディーネの出番ではあるが、こちらは大精霊の力で料理をすることにあまり疑問を持っていない。

性格的な問題か、お願いする頻度の違いか、どちらだろう?

ん? そういえば藁の灰を作る時、近くに居たイフに燃やしてもらったな。

コンニャク芋はドリーが育てたし、あれ? 今作っているコンニャクって、風の大精霊、水の大精霊、火の大精霊、森の大精霊の力が集結したコンニャク?

……味は変わらないだろうが、なんか凄そうなコンニャクだな。是非とも完成させねば!

「ディーネ、お願い」

「ぶぅ、お姉ちゃんのことも先生って言わないとダメー」

先生? ……そういえば最初にシルフィに先生って言ったな。ディーネ、いつから待機していたの?

「……ディーネ先生、お願いします」

「先生にお任せー」

むふんと胸を張るディーネ。楽しそうだけど、お姉ちゃんキャラに先生キャラまで追加したら、属性が溢れると思うぞ。

まあ、楽しそうだからいいけど……。

ディーネが手を振ると綺麗に皮が剥かれたコンニャク芋を水が包み、竜巻のように回転を始める。

その水流でコンニャク芋が粉々に砕かれていく……まあ要するにミキサーだ。

「ふいー。いい仕事したわー」

水と混ざって砕かれたコンニャク芋の液体が器にトプンと入り、ディーネが腕で額の汗を拭う仕草をする。

さすがに汗は掻いてないだろうとツッコミを入れたくなるが、いい仕事をしたのは確かなのでここは黙っておこう。

さて、俺の出番だ。

コンニャク芋の液体に灰汁を少しずつ注ぎ入れながらヘラでひたすら掻き混ぜる。

この工程もシルフィやディーネに頼めば簡単に終わるのだが、このくらいは自分でやらないと達成感をまるで得られそうにないので自分でやる。

灰汁を混ぜながら練ると、どんどん液体に粘り気が出てくる。地味に大変な作業だが、レベルが上がり体力もアップした俺なら問題ない。

しっかり練り続けると、最後には液体がプルプルになる。

昨日の失敗はここからだった。これで完成だと大喜びし、あれ? 何か白いし違うな? そうか茹でるんだ! と試行錯誤の結果、なんか微妙に違う物が完成してしまった。

そこでルビーに頼りながら原因を追究し、茹でるのは間違いないが液体がまだ馴染んでいなかったのでは? という結果をルビーが導きだした。

俺にはサッパリだが、信じられないほど長い料理経験を持つルビーの言うことなら間違いないだろう。

色が白いのはたぶんイフが藁を真っ白になるまで完璧に焼き尽くしてくれたから、コンニャクに色が出なかったのだと思う。たぶん……。

という訳で、お昼まで休憩だ。

***

「これで……いいのかな? たぶん大丈夫……ぽい?」

あまり見た目は変わっていないが、なんとなく落ち着いた雰囲気を感じないこともない。

お湯は沸かしてあるから、あとは切り分けて茹でるだけだ。まだ直接触るのは怖いので、シルフィに長方形に切ってもらおう。

「シルフィ、お願い」

「先生は?」

……シルフィも意外と先生と呼ばれることを気に入っていたらしい。

「シルフィ先生、お願いします」

「しょうがないわね。はい」

風でスパスパとコンニャクが長方形に切り分けられる。器に一切傷がつかないあたり流石だと思う。

「ありがとうシルフィ」

あとはお湯に投入して茹でたらたぶん完成。

茹で時間は前回の失敗でだいたいめどが付いている。膨れて浮かんできたら上げ時だ。

「完成! 見て、シルフィ、ディーネ、思ったよりも白いけど、かなりいい感じだよ!」

「……おめでとう?」

「裕太ちゃんが嬉しそうで良かったわー」

「あれ? なんか反応が薄くない?」

二人とも反応が鈍い。

「作っている時から思っていたのだけど、まったく美味しそうに見えないのよね」

「お姉ちゃんもそう思うわー」

「あー、うん。美味しいのは美味しいんだよ? でも、メインを張るというのとは少し違う……のかな?」

群馬で食べたコンニャクは本気で美味しかったし、オデンにはなくてはならない大切な食材だ。

ワサビ醤油で食べてもとても美味しいのだが、ドラゴンステーキや各種揚げ物なんかと比べると弱いと言わざるを得ない。

「……なんで作ったの?」

「メインではないけど、脇役としてはとても優秀な食材なんだよ」

俺は大好きだ。

「ふーん」

まったく興味がないようだ。

「たしかに華がある食材とは言えないかもしれないけど、コンニャクはお酒にとても合うんだよ?」

「さあ裕太、さっそく試食よ」

「お姉ちゃんもつきあうわー」

……精霊ってとっても簡単だよね。