軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百二十三話 ちょっとした自慢

自分の罪と向き合うために冒険者ギルドの訓練場に向かい自分の罪と向き合ったら、その罪の相手が取り返しがつかないほどに突っ走っていたので、落ち着くべきところに落ち着いたのだと気持ちが楽になった。

心配していたジーナ達への影響も、マルコを除けば問題なさそうだった。マルコとは……しっかり話し合おうと思う。

「さて、なにをしようかな?」

迷宮都市で目的を果たし、ついでにマリーさん達に会ったり迷宮のコアにご飯を届けたり、リシュリーさんやベティさんと精霊術師講習等の細々とした用事をすませ、ヴィクトーさんにサラを会わせに来た。

遺跡に到着してヴィクトーさんと挨拶をしてサラを預け、ベル達はイノシシ狩りに、ジーナ、マルコ、キッカは発掘のお手伝いに行って、俺は前回の訪問と同じようにシルフィとムーンと行動することになった。

前回はのんびり遺跡を見て回り、次の日にはラフバードの丸焼きで調理テロをしてしまったし、今回は少しくらい役に立つ行動をしておきたいと思う。

単純に考えると遺跡の発掘をお手伝いすればいい。ノモスに頼めばすぐに終わるが、それではロマンがないし、ヴィクトーさん達も施しを受ける様で気分が良くないだろう。

取り分とか面倒な事になりそうだし、ジーナ達ならともかく俺が発掘に関わるべきではないだろう。

考え事をしながら周囲を見渡すと、発掘と日常生活で周囲はある程度切り開かれ、木の柵で囲われてはいるがかなり殺風景な雰囲気だ。

生活空間は俺が最初に発掘した遺跡といくつかのテント。生活できないほどでもなさそうだが、窮屈そうなのは否めない。

生活環境の改善……こういう時こそ開拓ツールの出番じゃないだろうか?

最近精霊達の大活躍で魔法の鞄以外が日の目を見ることも少なくなった。

スキルに意志があるのかは分からないが、なんとなくもっと出番をと訴えかけられているような気もする。

ふむ……やっちゃうか。

とはいえ、俺がなんとなく必要そうな物を作っても、それが喜ばれるとは限らない。まずは情報収集が必要だな。

サプライズは嫌いではないが、影響が長期間にわたる場合は使い手の要望が重要だ。

おっ、ちょうどいいところに、おばちゃんが歩いてきた。

見た感じ話し好きな雰囲気だし色々と質問をすれば教えてくれそうだな。日常の細かな不満を解決すれば喜んでもらえるだろう。

***

……沢山の情報が手に入った。

どうやらおばちゃんの御子息は現在反抗期中らしく、触る物すべてを傷つける的な状態なのだが、周囲が強すぎて凹まされる毎日をおくっているらしい。

周囲が強者ばかりの空間で、それでも反抗しているご子息は将来大物になりそうだ。俺ならベッカーさんの軽い威圧だけで尻尾を巻くだろう。

あとは、ご子息の年上のお友達が性の目覚めを迎えているらしく、この男だらけの空間に涙しているそうだ。

俺としても思春期をマッソーな男達に囲まれて過ごす彼に深い同情を覚えるが、さすがにそれはどうにもできないので、イマジネーションで頑張ってほしい。

他にも土木作業なので洗濯が大変だとか、発掘品の中で価値がそれほど高くない装飾品が手に入るとか様々な情報を貰った。

食事の準備の時間にならなければ、もっと沢山の情報を手に入れることができただろう。

今の俺にはまったく役に立たない情報だけど……。

話し好きに見えたのは間違ってなかったけど、まさか最初の軽い質問からおばちゃんのマシンガントークが始まって、必要な情報が手に入らないのは予想外だった。

おばちゃんは手強い。

シルフィが、なにがしたかったの? という目で俺を見ているが、俺としては奮戦した結果なので胸を張りたいと思う。

あっ、ベッカーさんだ。クラン『シュティールの星』のナンバー2のベッカーさんなら、必要な情報を得られるだろう。

遠慮はされたものの、暇つぶしと趣味を兼ねた作業だと伝えると、とても役に立つ情報をたくさん貰えた。

最初からベッカーさんを探せばよかったと思う。

まあ、結論としては、遺跡の発掘現場で魔物が出る森の中だから、足りないと言えばすべてが足りないので、なんでも喜んでもらえそうだ。

とりあえず、おばちゃんの話でも洗濯が大変だって言葉が出ていたし、毎日の肉体労働で汗もかく。

水場が遠いのは大変だと思うので、そこら辺を解決したいと思う。

というわけで、ディーネ、ノモス、ドリーを召喚。

「裕太ちゃん。お姉ちゃんの力が必要になったのねー!」

「なんの用じゃ?」

「ふふ、この森は相変わらず居心地が良いですね」

ディーネは久しぶりの召喚にやる気満々な様子で、ノモスは酒造りで忙しいのかソワソワしている。ドリーは豊かな森に召喚されて、とても嬉しそうだ。

「えーっと、水場を造りたいんだけど、この周辺で遺跡がなくて水脈が通っている場所を探してほしい。ドリーはその場所の木々の移動をお願い」

木々は開拓ツールでサクッと伐採できるしヴィクトーさん達も利用するとは思うが、森の大精霊と下級精霊と契約している身なので、できるだけ傷つけない方向で対処したい。

「ふふー。お姉ちゃんにお任せよー」

「ふむ、遺跡が潰れてどうしようもなくなっておる場所でも構わんか?」

「……うん、発掘する意味がない場所なら構わないよ」

胸を張ってやる気をみなぎらせているディーネの、揺れる豊かな部分に視線が吸い込まれそうになるのをこらえてノモスに返事をする。

歴史的などうのこうのも、潰れてどうしようもなくなっているならしょうがないよね。

周囲に歴史的な遺物は沢山あるし、今現在の生活を優先しよう。

「ほれディーネ、あの周辺と、その先の少し先、あと、反対のあそこと、背後の建物の向こう側が遺跡としては終わっておる。近くで利用できそうな水脈を探すんじゃ」

ノモスが指示した場所の土がボコりと盛り上がり目印になる。あの範囲内は遺跡が潰れているんだろう。なかなか芸が細かい。

「むー。ノモスちゃんはせっかちねー。お姉ちゃんはもっとのんびりしたほうが良いと思うわー」

「そんなこと知らん」

ディーネとノモスのテンポがまったく合ってないな。まあ、仲が悪い訳でもないし、仕事はちゃんとしてくれるんだから問題はないだろう。

むーっといいつつもディーネが目を瞑り、水脈を探し始める。

「あったわー。あっちの柵の向こう側に水脈が流れているわー」

ノモスが指示した場所の一つに水脈が通っていたようだ。

柵の向こう側ではあるが、現在発掘している場所の通り道だし、立地としては申し分ないだろう。

「裕太。水脈まで穴を掘ればいいのか?」

「えっ? いや、後は俺がやるから大丈夫だよ」

ノモスがテキパキと作業を進めようとするので、慌てて止める。

ノモスがあっという間に水場を造ってしまったら、俺の暇つぶしも開拓ツールの出番もなくなってしまう。

「む? そうか? 儂の仕事が終わったなら、そろそろ帰る。あぁ、裕太。酒は多めに仕入れて戻ってくるんじゃぞ」

「う、うん。ありがと?」

さっさと送還しろというノモスの視線に負けて送還してしまったが、お酒の増量まで承諾させられてしまった気がする。

「では、あの場所の木々に移動してもらいますね。裕太さん、広さはどれくらいですか?」

広さか……土が盛り上がった範囲は……だいたい体育館くらいのスペースがある。

利用できる場所は広い方がいいだろうし、この際、全部を移動させてもらうか。

「範囲内全部をお願い」

「分かりました」

ドリーが軽く右手を振ると、指定された範囲内の植物が振動を始め、やがて根が自由になったのか土から抜け出し歩きはじめる。

木がドシンドシンと立派な根を動かし、小さな草はチョコチョコ、茂みはガサガサと音を立てて移動する。

様々な種類の植物が移動する光景は、なかなか迫力があって面白い。

このまま眺めていたいけど……周辺から人の焦った声が聞こえるのでその対処が先だろう。

先に説明してから行動に移すべきだったな。

慌てて近くの人に声を掛け、事情を説明して周知してもらうが、ゾロゾロと人が集まってくる。

「裕太殿」

「お師匠様」

ヴィクトーさんとサラまで出てきてしまった。邪魔をしてごめんね。

***

さて、色々と説明をして時間を取られてしまったが、気を取り直して作業を始めよう。

いよいよ開拓ツールの出番だ。

騒ぎを大きくしてしまった結果、見学者がわらわら集まってきてしまったのは予定外だが、みんなに開拓ツールの凄さを披露できるのは悪くない。

ヴィクトーさん達には色々とぶっちゃけているし、開拓ツールのお披露目としてはいい機会だよね。

今回の作業は楽園で飽きるほど繰り返した作業だから、俺の熟練の技をしっかり目に焼き付けてほしい。

みんなの見ている前で魔法のシャベルを巨大化させて取り出す。

ギャラリーのどよめきが気持ちいい。

ん? ……毎日発掘作業で頑張っているヴィクトーさん達に、開拓ツールのチートを見せつけるのは嫌味なんじゃ……まあ、生活が楽になるんだから、そこは呑み込んでもらおう。

***

飽きるほど繰り返した作業もギャラリーが居ると気分が違う。

巨大なシャベルで土を掬い魔法の鞄に収納。

水場の補強の為に岩を取り出し、魔法のノコギリと魔法のサバイバルナイフで岩をスパスパと加工。

ハンドオーガーでの怒涛の掘削。

そのどれもが驚きをもって迎えられ、日が暮れる前には水場が完成した。

楽園で作った泉に比べると二回りほど小さいが、この規模の泉ならたっぷり水が使えるようになるだろう。

(ディーネ。一定の高さで水がとどまるように調整できる?)

「できるわー」

自信満々に頷くディーネ。さすが水の大精霊、ゆるゆるふわふわな感じでも頼りになる。

(じゃあ、上の岩の半分くらいの水位でお願い)

「ふふー。まかせなさいー。えい!」

ディーネの掛け声と同時に、ドーンと水柱が立ち周囲からは歓声ではなく悲鳴があがる。

……そういえば楽園で泉が完成した時もこんな感じだったな。

ゆっくりと水を溜めるようにお願いするべきだったかもしれない。

……とりあえず泉は完成したんだし、みんなに楽しんでもらって色々と有耶無耶にしよう。