軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百十八話 大宴会の翌日

楽園の拡張と中級精霊達の歓迎会を兼ねて盛大な宴会をおこなった。その中で計画していた大精霊達の演劇と、ベル達、ジーナ達、フクちゃん達、サクラによるハンドベルの演奏会も大成功に終わり、宴会も無事に終了した。これから飲み始める精霊王様達と大精霊達を除いて。

「ふぅぅー。ムーン、ありがとう。楽になったよ」

「…………」

お手伝いができて喜んでいるのか、いつもよりも多めにプルプル震えているムーンを撫でくり回し、お礼を言う。

二日酔いの治療にはムーンの癒しが一番だよね。

ベッドから起き上がるとムーンが俺の頭の上に乗った。どうやら一緒に行動するつもりのようだ。

「急に召喚しちゃったのは俺だけど、元の場所に戻らなくていいの?」

俺の質問の後も頭の上で震えたままなので、元の場所に戻る必要はないのだろう。

「あら裕太、おはよう。もう朝食の時間はとっくに過ぎているわよ」

「うふふー、裕太ちゃんおはよー。でも、おねぼーはダメなのよー」

リビングに行くと、俺を寝坊させた原因の一部であるシルフィとディーネが、優雅に紅茶を飲みながら朝の挨拶をしてきた。

「おはようシルフィ、ディーネ。俺は人間だからお酒をたくさん飲まされて明け方近くまで付き合わされたら、寝坊するのはしょうがないんだよ」

予想通りジーナには恨めしい目で見られてしまったが、有志達による演奏はアンコールも大好評に終わった。

夜もふけてきたので、浮遊精霊達と下級精霊達はお休みの時間として宴会から撤収させ、ちゃんとしているのが楽しい中級精霊達も、下の子達の面倒を見ながら宴会から離脱した。

そして始まるのが大人の時間。

精霊王様達や大精霊達、お手伝いをしてくれたルビー達上級精霊も交えての、お酒を含んだ本物の宴会が始まる。

まだまだ残っている宴会料理をつまみに、俺がマリーさんに集めてもらった大陸各国のお酒や、楽園の酒造で作られたお酒が振舞われて大盛り上がりになる。

楽園の拡張も中級精霊達の参加も、俺にとってもめでたいことなので大盤振る舞いをした。

宴会の為に色々と協力してくれたルビー達への感謝もあるから、本当に大盤振る舞いだったと思う。

まあ、ルビー達にはお酒だけでは申し訳ないので、後で別にお礼をするつもりだが、それでも大盤振る舞いをした。

お酒の飲み比べや料理とお酒の相性で盛り上がるウワバミな精霊達。

俺も少し付き合ったら撤収するつもりだったのに、帰してもらえずに明け方まで付き合わされた。

大盤振る舞いは構わないが、次からはお酒を出す条件として俺の自由離脱を認めさせてから大盤振る舞いをすることにしたい。

あぁ、ちゃんと契約書も用意しておこうと思う。

久しぶりにたらふく飲まされて、目が覚めて瞬間にムーンを召喚して二日酔いの治療をしてもらって今に至る。

「そういえば精霊王様方は?」

宴会の最後の方はへべれけだったので、自分の部屋に戻ってきた記憶すらないから、当然、精霊王様達がどうなったのかも分からない。

ジーナ達やベル達はたぶん問題ないはずだ。

誰かがちゃんとご飯を食べさせ、今頃は訓練や遊びで楽園の中を縦横無尽に駆けまわっているだろう。

だが、精霊王様方をほったらかしなのはホストとして不味いと思う。どうしようもなかったんだけど……。

「裕太が潰れちゃったら宴会はお開きにして、精霊王様達はそのまま帰ったわよ」

潰れたんじゃなくて潰されたんだけどね。

そうか、精霊王様方はそのまま帰ったのか。

洒落にならないくらい飲んでいたはずなんだが、もはやウワバミというよりもバケモノなんじゃないだろうか?

「そっか、じゃあ悪いけどお見送りできなかったお詫びを、精霊王様方に伝えておいて」

「必要ないと思うけど、一応伝えておくわ」

「ありがとう。じゃあ俺はちょっと外の様子を見てくるよ」

コーヒーで一服したい気持ちもあるが、宴会の後片付けや中級精霊達の様子も気になる。散歩がてら見て回っておこう。

「裕太ちゃん、朝ごはんは食べないのー?」

ディーネが不思議そうに聞いてくる。

俺がいつもベル達やジーナ達に、朝食は大切だと教育しているから気になったんだろう。

食事を取る必要がない精霊に食事の心配されるのも不思議な気分だな。

「さすがに明け方まで飲み食いしていたから、体調は回復したけどお腹は空いてないよ」

体調は回復しても、胃の中身はすべて消化されていないように感じる。

だいたい、一人暮らしの時は普通に朝食を抜くこともあった。

朝食に拘るのもベル達やジーナ達が傍に居るからであって、自分だけならそこまでこだわっていなかっただろう。

まあ、ベル達は朝食どころか食事自体が必要ないんだけど、小さい子達が何も食べないのは心臓に悪いよね。

シルフィとディーネはお茶を続けるようなので、俺は二人に手を振って家から出る。

サクラの大元である常に桜の花を咲かせている巨大な精霊樹を眺め、ゆっくりと歩き出す。

楽園の中を元気に飛び回って遊んでいる浮遊精霊や下級精霊達。偶に振られる手に、手を振り返しながら散歩を続ける。

飛び回っている精霊達の中に中級精霊が見当たらなかった。

たぶん、ちゃんとしながら楽園を楽しんでいるんだろう。

居そうな場所は……楽園の店と新しく作った施設。そして、拡張した中級精霊が自由にできるスペースあたりかな?

宴会の後始末が終わったら、見て回ろう。

宴会場に到着すると、スッキリと片付いていた。

残っているのは宴会の為に生長させた様々な植物達と、巨大な舞台と水盃と篝火くらいだ。

おっ、あそこに居るのはドリーだな。たぶん、成長させた植物達の状態を確認しているんだろう。

ちょうどいい。宴会場が片付けられている理由を教えてもらおう。

「ドリー、おはよう」

「裕太さん、おはようございます。体調は大丈夫ですか?」

心配そうに声を掛けてくれるドリーに、頭上を指して返事をする。

俺の頭の上でプルプルしているムーンを見て、苦笑いをするドリー。

俺が二日酔いになってムーンのお世話になったことを理解したのだろう。

「宴会場が随分と綺麗になっているけど、みんなが片付けてくれたの?」

「はい。宴会が終わった後、みんなが協力して片づけました。ふふ、精霊王様達もお手伝いしてくださったんですよ」

精霊王様達も手伝ってくれたのか。

申し訳ない気持ちもあるが、俺が潰れた原因でもあるからなんとも微妙な気持ちだ。

だが、ライト様とダーク様がお片付けをしている様子は、是非とも見てみたかった。

二人とも、違う意味にはなるが、たいそう魅力的なシーンだっただろう。

「残っていた料理や酒樽は?」

「料理はルビー達が食堂に持ち帰りました。手を加えて朝の食堂で出したそうです。ジーナさん達やベルちゃん達、サクラちゃんも食べに行っていましたよ」

なるほど、今朝の楽園食堂は特別メニューが並んでいたんだろう。ベル達もジーナ達もサクラも大喜びしただろうな。俺も行きたかった。

「酒樽は?」

「全員で責任をもって飲み干しました」

笑顔のドリーには言い辛いが、それを責任とは言わないと思う。

「えーっと、じゃあ空樽は?」

「ノモスとイフ、酒造りの職人達が全部回収していきました。お酒の詰め放題だと喜んでいましたよ」

どれだけお酒を詰めるつもりなのか、そもそも、詰め放題だと喜べるほどに酒樽を消費したのかと、ドリーの言葉を聞いて酷く不安になる。

最後の方は記憶もあやふやだし、大盤振る舞いの後に、更に大盤振る舞いをしている可能性も否定できない。

魔法の鞄で酒樽の在庫を確認するのが怖い。

「そ、そうなんだ。ドリーも片づけのお手伝いをしてくれたんだよね。ありがとう」

怖いことは後回しにするのが俺のスタイルだ。

今は消費された酒樽のことは忘れよう。

「いえ、私達もとても楽しい時間が過ごせました。雰囲気も料理もお酒も、みんなの演奏も素晴らしかったですし、劇も楽しかったです。お片付けくらいなんの苦でもありませんよ」

ドリーの表情がとてもキラキラしている。

今回の宴会が楽しかったのは本当のようだ。

「劇が楽しかったって言っていたけど、ドリーも劇が気に入ったの?」

ディーネやイフは感情が素直に表に出るから知っていたけど、ドリーはいつも上品に微笑んでいることが多いから、無表情タイプのシルフィと並んで感情が分かりにくかったりする。

いや、シルフィは無表情だけど、行動と目に感情が出るからある意味分かりやすいんだった。

もしかしたら、俺が契約している大精霊達の中で一番感情が分かり辛いのはドリーなのかもしれないな。

ちなみに、契約精霊達の中で一番感情が分かり辛いのが、現在俺の頭上に居るムーンだったりする。

表情もないし、振動数で喜んでいるのかな? くらいしか分からないから、周囲の状況を見ながら色々と判断している。

サラはプルちゃんの気持ちをしっかり理解しているようなので、俺の修行不足なのだろう。

「はい。最初は声をだすのが恥ずかしかったのですが、みんなで相談しながら一つの絵本を劇にするのがとても楽しかったんです」

なんだか部活に青春を捧げる高校生みたいなことを言っているな。

でも、本当に高校生のような気分で楽しかったのかもしれない。

「そうなんだ。楽園に遊びに来た子達も喜ぶし、また新しい劇を練習するのもいいかもね。あっ、俺は楽園に居ないことも多いから、キャスティングからは外してね」

小悪党も小悪党で、小悪党っぽい声と抑揚をつけるのがとても難しかった。

劇は見ている側で楽しみたい。

「ふふ、裕太さんがキャスティングから外れるかは分かりませんが、私もディーネもイフも次の劇をやるつもりですよ。それで舞台も残してもらったんです」

なるほど、だから舞台と篝火、水盃が残っていたのか。

俺が思っていた以上にドリーはやる気だったようだ。

シルフィとヴィータは平気だろうけど、巻き込まれるのが確定しているノモスは少し可哀想だな。

人数が足りなくなって、声優までやらされる未来が見える。

嫌だと拒否をしても、間違いなく押し切られてしまうだろう。

でも、シルフィ以外の大精霊達は、楽園の管理と酒造り以外はのんびりしていることが多いし、趣味としては悪くないのかもしれない。

いつの日か、楽園に劇団ができるかもしれないな。

楽しそうな未来に頬が緩むが、宴会場の片づけが終わったら中級精霊達の様子を確認するつもりだったんだ。

片付けが終わっているのなら。次に行こう。