軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百十六話 精霊王様方の評価

精霊王様方の演出と同時に楽園が拡張された。いままで遠慮して楽園にやってこなかった中級精霊達もついにやってきた。あとは、その歓迎の意も込めて、盛大に宴会でおもてなししてあげようと思う。

「今宵は裕太が楽園の拡張と中級精霊達のもてなしを兼ねて、盛大な宴を開いてくれた。皆の者、裕太に感謝しつつ、今日は思う存分楽しむがよい! 乾杯!」

イフに頼んで点火してもらった巨大な篝火と、ディーネが張り切って用意した巨大な水の盃に挟まれた、ノモスが用意してくれた巨大な円柱の舞台の上で、ライト様が乾杯の音頭をとってくれた。

ただ、真ん丸な兎型の精霊であるライト様が、目立つ為なのか自分の体を光らせているので、俺からしたら電球にしか見えなくて、気合で笑いをこらえつつなんとか乾杯のグラスを掲げることになってしまった。

本来は楽園の主である俺が挨拶をと言われていたが、そういうのが好きそうなライト様に押し付けた手前、笑う訳にはいかない。

乾杯の挨拶が終わると、宴会に参加している本日のメインである中級精霊達と、遊びに来ている下級精霊達と浮遊精霊達が、巨大なテーブルに並べられている料理の数々に集まる。

今回も人数が多いのでバイキング形式だが、ルビーが腕を振るった料理と、トルクさんがこだわって作った料理と、ベル達お気に入りの屋台料理が並んでいるから、思う存分楽しんでいってほしい。

夜の闇の中、巨大な篝火とうっすらと青い光を放つ巨大な水盃、そして提灯のようにいたるところに打ち上げられた光球の光に照らされ、様々な姿形をした精霊達が飛び交う。

素晴らしく幻想的な光景だ。

そんな幻想的な光景に負けないように咲き誇る花を愛でながら、宴会のホストとして精霊王様方のところに挨拶に向かう。

「あっ、裕太。良いねこれ、カレー、美味しいよ」

精霊王様方の集まるテーブルに行くと、ウインド様がカレーを頬張りながら感想を教えてくれた。

「……あの、ウインド様、カレーがホッペについてるよ?」

下級精霊くらいに体を小さくしているし、小さなドラゴンが頬にカレーを付けてわんぱく食いしている姿は微笑ましいが、風の精霊王様だよね?

ホント? と小さな手で自分の頬を触る姿を見ると、ベル達のように撫でくり回したくなる。

「やあ、裕太、ご馳走になっているよ。この魚の……スープ? 味が濃厚でとても美味しいよ」

ウインド様の次はウォータ様が声を掛けてくれた。

でも、サバの味噌煮はスープじゃない……よね? あれ? 煮込んでいるってことは、スープと言えないこともないのか?

この問題は俺では解決できそうにないから、スープではないということにしておこう。

「その料理はサバの味噌煮って言う料理です。味が濃いのは、ご飯と合わせて食べると美味しい料理だからですね」

まあ、厳密に言えば、サバっぽい味の魚の味噌煮込みだけどね。

「そうなんだ。じゃあご飯を貰ってくるよ」

ウォータ様が精霊王なのに気軽にご飯を貰いに行ってしまった。あと、ウォータ様、箸の使い方が上手になっていたな。練習したんだろうか?

「それなら俺はこれだな。なんかよく分からんが、いろんな味が交ざって美味い!」

ファイア様はどうやら豚汁をお気に召したようだ。

味噌の良さが分かりやすいのは味噌汁だと思ったけど、宴会に出す料理なので豪華さが増す豚汁にした。

コンニャクがないからどうしようかと思ったが、豚汁にして正解だったな。

まあ、実際に使っているのは豚肉じゃなくてオーク肉なんだけど、呼び方は豚汁で統一することに決めている。

オーク汁だと、あまり美味しくなさそうだよね。

「うふふ、よく分からないのはそのスープじゃなくてこれね。宝石みたいに綺麗だけど、これは卵黄よね? どうしたらこうなるのかしら? 味もシンプルだけど、ネットリと濃厚でとても美味しいわ」

ダーク様がとても色っぽくて饒舌だ。卵黄の醤油漬けをかなり気に入ってくれたようだ。

正直、醤油を押し出すのに、卵黄の醤油漬けは少しインパクトが弱いかとも思ったが、単純に俺が食べたいから作ってもらった。

でも、ダーク様が気に入ってくれるなら、卵黄の醤油漬けを選んだ俺の選択は間違っていなかったということになるだろう。

「ダーク様が食べているのは卵黄の醤油漬けですね。それも白いご飯に抜群に合います」

俺もルビーに作ってもらった時、ご飯を三杯も食べてしまった。

「あら、じゃあご飯を貰ってこないといけないわね」

あぁ、ダーク様が行ってしまわれた。なんでだろう? ウォータ様が居なくなった時の数倍の喪失感を感じる。

……さて、冗談で目を逸らしていたかったが、いつまでも目を逸らし続ける訳にはいかないだろう。

問題は、どちらから、先に声を掛けるかだな。

黙々と新メニューを食べ続けるアース様と、威厳を大切にしているのにこちらにまったく気がつかずに、可愛らしく甘味に夢中なライト様。

別に声を掛けても怒られることはないだろうが、非常に声が掛けづらい雰囲気だ。

……アース様が先だな。アース様はどのタイミングでもモクモクと食べ続けそうだが、ライト様なら俺がアース様と話している間に気がついて、体裁を整えてくれる可能性がある。

少し大きめの声で話そう。

「アース様、美味しいですか?」

コクコクと頷きながら、オークの角煮を口に入れ、ごはんを掻きこむアース様。

手が止まらないくらいに気に入ってくれたようだ。

しかも、ちゃんと白いご飯を確保しているところが、さすがだ。

「それなら良かったです! 他の新メニューも自信がありますので、試してみてくださいね!」

当然といった様子で頷くアース様。

まあ、言わなくても試してくれるのは分かっている。

ただ、ライト様が全然俺に気がついてくれなかったから、さらに大きな声で俺が居ることをアピールしたかっただけだ。

チラッとライト様を見ると、ようやくこちらに気がついた様子で、若干あたふたした後に偉そうに胸を張った。準備が整ったようだ。

「ライト様、甘味はいかがですか?」

まあ、横眼で見ていたから気に入っていたことは知っている。

俺も新しい甘味を選ぶのが一番大変だったから、気に入ってもらえたのは素直に嬉しい。

今まで作ったのはプリンにアイスにクレープ。

だがこの次を出すのが難しかった。

ケーキ各種、クッキー等の焼き菓子、和菓子、甘い食べ物は色々と思い浮かぶが、作り方が分からない。

無論、大まかな材料はなんとなく分かっているから、ルビーに頼めばいずれはなんとかしてくれると思うが、忙しい上に時間も足りないと断念した。

餡子なら砂糖水で小豆を煮ればなんとかなりそうだけど、日本人としてはちゃんと研究して満足が行くものを皆に食べてほしかった。

そんな訳で、行き詰った俺は大いに悩み、そして自分でも作ったことがある簡単で美味しいデザートの存在を思いだした。

そうゼリーだ。

ゼラチンの作り方は詳しく知らないが、俺は天草から寒天ゼリーを作ったことがある。

ありがとう夏休みの自由研究。

ありがとう、釣りに行って釣れなかったからと天草を持って帰ってきて、俺に押し付けた親父。あの時は嫌な顔をしてごめん、今は感謝している。

ディーネに頼むと、この世界でも天草はいたるところに生えているらしく、すぐに赤紫色の色鮮やかな天草が大量に手に入った。

その天草をディーネに徹底的に水洗いしてもらい天日に晒す。

乾いたらまた水に晒してまた天日に晒す。それを何度も繰り返す。

一般的な手順の他にも、ディーネに水分を抜いてもらったり、シルフィに風で乾かしてもらったりと色々と実験的な方法も試したし、トコロテン用に色素がまだ若干残っている天草も確保した。

宴会の準備作業の合間に何度も同じ工程を繰り返すと、五日後には、あれ? 前に作った時はここまで白くならなかった気がするんだけど? と疑問に思うほど色素が抜けたさらし天草が完成した。

小学生の頃の俺ならここで満足していただろう。

だが、精霊術師となった俺は次の工程に進む。

天草を酢と一緒に煮込み、裏ごしをし、固めて寒天を作る。

ディーネがその寒天を一瞬でカチカチに凍らせ、シルフィがその寒天を真空状態にした風の繭で包み込む。

そう、精霊術でのフリーズドライ作業だ。

フリーズドライを繰り返せば、純白の棒寒天が完成した……はずだったのだが、やり過ぎたのか、粉末寒天が完成してしまった。

そして、粉末寒天ができたら後は簡単だ。

各種フルーツ寒天、ミルク寒天、コーヒー寒天と、様々なタイプの寒天をルビーに作ってもらう。

研究熱心なルビーの手に掛かれば、寒天らしい食感を残したハードタイプの寒天や、粉末寒天の分量を調整し、できるだけゼリーに近づけたソフトタイプの寒天、ジュースのみ、果実入り、ミルク&果実、さまざまなバリエーションの寒天が完成する。

そうなると……。

「う、うむ、なかなかじゃな。妾にとってはいささか子供っぽい味わいじゃが、楽園に遊びに来るような幼い精霊達には喜ばれるじゃろう」

偉そうに言いながらも、まだ食べていない種類の寒天ゼリーが気になってしょうがない、可愛らしいライト様を見ることができる。

「そうですか。ライト様のお墨付きがあれば安心ですね」

「うむ。じゃがまだ全種類試した訳ではない。妾は責任ある立場じゃから、すべてを味わい、きちんとした評価を下さねばならぬ。分かるな?」

「はい、よろしくお願いします」

「うむ!」

ライト様を喜ばせるミッションを完璧に遂行できたし、カレーもサバの味噌煮も豚汁も角煮も卵黄の醤油漬けも、全部高評価だ。

試食でシルフィ達やベル達、ジーナ達も大喜びだったから手応えはあったが、実際に喜んでもらえると達成感がある。

これで精霊王様達への挨拶が終わった。食べ物の話しかしていない気がするが、会話を交わしたということが重要だということにしておこう。

さて、次は今回の主役であるはずの中級精霊達の様子を見に行かないとな。楽しんでくれているといいんだけど……。