軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四百六十九話 イフとオニキスの家

大精霊達の家が完成し、出来上がった家を大精霊達を召喚して確認しているんだけど、最初に見たノモスの家は……家の部分が付属品で酒樽を収める地下室がメインのなんとも言えない家だった。俺が注文したから知ってはいたんだけど、現実で見るとなんか違う気がする。

ノモスの家を確認し、家って言うよりも酒蔵だよね?

といった気持ちを心の奥に押し込んで次のイフとオニキスの家に向かう。こっちはまあ、ちゃんと家として注文しているから、極一部分を除いて変な気持ちになることは無いだろう。

こちらも地下室にあたる部分を簡易の臨時階段で上がり、家の中に入る。

「お、裕太も見にきたのか。なかなかいい出来だな!」

「なかなかだぜ!」

家の中に入ると、イフとフレアがこちらに気がついて声を掛けてきた。

窓が小さくて薄暗い空間。バーカウンターが備え付けられている。うん、まさしくバーだ。注文した通りの完璧な造りだな。

イフの隣に座っているフレアの違和感が凄いけど。

イフはちょっとオラオラ系に見える美女だから、バーがこの上なく似合っている。だが、幼女とバーカウンターの相性は良くないようだ。

まあ、イフの隣で得意満面のフレアには口が裂けても言えないけどね。

しかしイフがご機嫌なのも分かる。酒島にもバーを作ったけど、こっちの方がなんとなくいい感じだ。

何が違うのかはよく分からないが、日曜大工が得意な人の作品と、本職の人の作品くらいの違いが……って、そうか、こっちが本職の大工の仕事だからか。

ノモスが地下室に満足していたように、バーを作ったのも本職の大工さんだもんね。

精霊達の仕事も俺としては見事としか言えなかったけど、ドワーフの本物の職人の方が腕が上だったってことだろう。

酒島のバーは精霊全体で利用して、このバーはオニキスが仕切ってシルフィ達とルビー達が利用する私的バー。

私的なバーの方が出来が良いって大丈夫なのか? 他の精霊達から文句を言われそうな気がするんだけど?

……まあ、そこらへんはシルフィ達がなんとかする問題だよね。シルフィ達は大精霊だし、たぶんなんとでもなるはずだ。

(イフ、フレア、何か問題はなかった? 今ならジルさんに手直ししてもらえるよ?)

バーを見渡しながらイフとフレアに近づき、小声で声を掛ける。

本来であればイフに声を掛けるだけで十分なんだけど、フレアにも一緒に声を掛けるのが凄腕精霊術師たる俺のテクニックだ。

ふふっ、予想通りだ。イフが考えこむ姿をマネして、フレアも偉そうに腕を組みながら考え込んでいるフリをしだした。

考え込んでいるフリをしているのに、嬉しくてニマニマしてしまっているフレアが生意気可愛い。

これぞ、憧れの人(精霊)と同じ扱いをされて、自尊心が満たされてご機嫌なフレアの術。

精霊を視認できて会話もできる俺にしかできない超絶技巧。楽園ならジーナ達にも可能だけど、聖域以外では今のところ俺にしかできない技だ。

……単なる子供のご機嫌取りとは違うと信じたい。

「んー、今のところ気になる部分は無いな」

「ないぜ!」

考え込んでいたイフの答えに合わせるフレア。

とりあえずイフもフレアも大満足ってことで良いらしい。

(ここだけじゃなくて、他の部屋も問題はなかったの?)

イフとフレアの性格からすると、すでに全部の部屋を見て回ったからここに座っているはずだ。

「あぁ、他の部屋も問題は無い。オニキスの部屋も殺風景だったが、そこらへんは裕太が力を貸してやるんだろ?」

(うん、その予定だよ)

家具やらなんやらは家を注文した時に、ディーネに連れられて買いあさったから十分な余裕がある。

その中に好みの家具が無かったとしても、その時はオーダーメイドで注文すれば良いだろう。契約はしていないけど、ルビー達には力を貸してもらっているから、家具くらい安い物だ。

「なら、十分だな。あとはここを酒で満たすだけだ。裕太、たのむぞ!」

「たのむぜ!」

酒で満たすのも俺の役割ってことなんだろうな。いや、醸造所がフル稼働しているから、全部俺の役割ってこともないか。

俺の役割はマリーさんが各国から集めたお酒を運ぶだけ。今までと大して違いはないだろう。

イフとフレアに問題が無いのであれば、俺もさっくりこの家を見て回ってシルフィ達の家を見に行こう。

まずは上のイフの部屋を見てから、地下の2部屋を見て回るか。

バーカウンターの奥にある階段からまずは上に向かう。

うん、家具を置いていないから、部屋の中央に備え付けられた物体を除けば単なる殺風景な部屋だな。

「なあ、言われたとおりに設置したが、なんでこんなもんが必要なんじゃ? 灯台に使う奴だぞ? しかも、魔法じゃなくて火を使う灯台じゃ」

ジルさんの疑問はとてもよく理解できる。普通とは言えないかもしれないが、民家に灯台に使うような焚火台は必要ないよね。

お椀を逆さにしたような形の巨大な石造りの焚火台。こんなのをフル活用したら部屋の中は地獄だ。

でも、火の精霊は大喜びする設備なんです。

イフは満足気に焚火台を見ているし、フレアもトゥルにここで大きな火が燃えるんだと自慢げに説明しているくらいに嬉しい設備なんです。

俺も注文する時には暖炉で十分だろって思ってはいたけど、火の大精霊のイフさん曰く、火は派手に燃やせた方が良いとのことでした。

もう、自分の魔法で火をどうにかすればとも思ったけど、魔力が燃える火と自然の物が燃える火は違うそうなんです。火も奥が深いですね。

「……まあ、危険な場所ですから色々あるんですよ。これが必要なんです」

「そうなのか……儂にはサッパリ理解できんが、お主が住んでいる場所には行きたくないな」

前まで、どんな危険な場所に住んでるんじゃ? と言いながらも興味深そうな目をしていたジルさんの目から光が消えた。どんな場所に住んでると思われたんだろう?

「えーっと、住んでみると意外と良い場所なんですよ?」

ただ、住人が精霊だから、少し特殊な設備が必要になるだけなんです。

「住人が気に入っているなら良い場所なんじゃろう。儂に理解できんだけじゃから気にするな」

気になります。いや、気にしない方が良いのか?

別に注文を拒否するつもりもないみたいだし、これから変な家を注文することがあっても、裕太の注文じゃし変なのも当然って感じでスルーしてくれるのなら、苦しい嘘をつかなくて済む。

お互いに深く関わらないビジネスだけの関係……なんの問題も無いな。うん。気にしないことにしよう。

簡単に心の中で決着がついたし、次は地下室を見に行こう。

……地下室も問題は無いようだ。

1部屋目はお酒の貯蔵室。

ノモスの家と違って樽で保存するのではなく瓶で保存するタイプの貯蔵室で、作業台以外の場所はワイン棚のような棚が部屋を埋め尽くしている。

長期保存が目的ではなく、気に入ったお酒を瓶で管理してすぐに飲めるように保存する部屋って言っていたけど、結局すぐに全部飲み干しそうだから意味がない気もする。

俺が宴会で差し入れする分以外のお酒は、お金で量を制限しているけど、も少し厳しめに制限しないと駄目だな。楽園に戻ったらシルフィ達と話し合おう。

次はオニキスの部屋。窓もないただ真っ暗なだけの部屋だけど、闇の精霊であるオニキスには居心地が良い部屋なんだろうな。家具もないから特に見どころもない。次のシルフィ達の家を見に行くか。

***

「裕太。ようやく来たわね。窓を開けてちょうだい」

「ゆーた、まどあけるー」

「裕太ちゃん。お姉ちゃんは滝が流れているところが見たいわー。お水、流してみてもいいー?」

「キュー!」

「植物を置ける棚は注文通りです。家具とのバランスを考えて植物を配置するのが楽しみです。ね、タマモ」

「クー!」

シルフィ達の家に到着すると、輝く笑顔のシルフィ、ディーネ、ドリーが出迎えてくれた。

ベルもレインもタマモも自分達の属性が関わる場所がとても気になるようで、それぞれの大精霊にくっついてとても楽しそうだ。

シルフィとベルの要求。窓を開けるのは当然試すべきことだから問題は無い。

ドリーとタマモは植物の配置を考えるだけだから、俺がやることは無い。

問題はディーネとレイン。ここで水を流すのはありなのか? でも、試してみないと確認できないことでもある。楽園に持って帰って失敗していましたじゃ困るのも確かだ。

レインも楽しみにしているみたいだし、ディーネも俺が来るまで待っていたのは大きな成長に思える。ここはなんとかしてあげたいところだ。

「ジルさん。滝に水は流せますか?」

「ん? あぁ、滝の確認か。うむ、見なければ分からんな。……水を用意するのに時間が掛かるが構わんか?」

非常識なお願いかと思ったけど、特に問題は無いようだ。

「水はこちらですぐに準備できます」

ディーネもレインも待ちきれない様子だから、こっちで手早く用意してしまおう。魔法については今更だもんね。

「そうか? ……ふむ、どうするのか分からんが、裕太ならなんとでもするんじゃろうな。魔道具は外じゃ。案内しよう」

ジルさん、信頼というよりも考えるのをやめたな。これがビジネスライクな関係か……悪くないな。

ジルさんの案内で家の裏に回ると、楽園にある俺の家にもついている魔道具。その一回り大きな水を吸い上げる魔道具が付いていた。

……滝だけの為にこの魔道具を付けたんだよね。ディーネにとっては譲れない一線かもしれないけど、ジルさんが呆れるのもしょうがないな。