軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四十四話 野生の勘?

んー、朝? 砂のベッドの上で目が覚めると胸元に僅かな重みを感じる。そうだった。昨日はタマモがくっ付いて離れなかったから一緒に寝たんだよな。

みんなに帰還の挨拶を終えて、興奮するタマモをあやしながら畑を見に行ったんだ。四種類の種の内、二つ目の収穫が間近になっていて喜んだ。明日には収穫できるそうなので楽しみだ。

森の予定地もタマモがしっかり管理してくれていて、いくつかは芽吹いた物もあった。シルフィと契約が成功したんだから、町で野菜が食べられるんだけど、それはそれ、これはこれだよね。タマモが頑張って育てた野菜は美味しくいただかないと。

まあ、ディーネが俺の白々しい芝居を受けて毎日拠点に水を撒いてくれたし、影でドリーやノモスも協力していたみたいだが、メインで頑張ったのはタマモで間違いない。頑張っていたタマモを俺達で全力で褒めまくった。

久しぶりの再会と全員からの誉め言葉に、タマモは有頂天ではしゃぎまわる。最終的にはベル。レイン。トゥル。タマモでお団子みたいに絡み合って揉みくちゃになっていた。

ん? 俺が起きたのに気が付いたのかモゾモゾとタマモが動き出した。暗いけど夜目があるのでタマモの姿が良く見える。目元をクシクシとこすっている姿が良い。

完全に目が覚めたのかあいさつ代わりに、じゃれついて来たタマモを抱えて寝室を出る。

「おっ。みんなおはよう」

「おはよー」

「キューー」

「おはよう」

既にキッチンに集まっていたベル達と朝食を取り、久しぶりの泉の家での一日が始まる。久しぶりで甘えまくるタマモに触発されたのか、ベルが頭にしがみついてきた。まあ重くもないし問題無い、外に出るか。泉の前で大精霊達と合流。挨拶をして畑に向かう。

「レイン。水撒きをお願いね」

「キュー」

畑の食物は青々と立派に育っているので、レインは普通に水球を打ち上げ雨のように水を撒く。雨かー。死の大地を開拓すればいずれは雨も降るようになるのか? まあ流石にそこまで壮大な事は俺には無理だろうな。

「レイン、お疲れ様。次は森予定地だけど大丈夫?」

「キュキュー」

右のヒレを上げて任せてって感じで自信満々なレイン。いつもはレインの上に乗っているベルが居ないのがチョット違和感。まあ、俺の頭にしがみついているんだが。

「おっ。やる気満々だな。頼むぞレイン。次はタマモの出番だ。頑張ってな」

「クーー」

タマモのやる気満々で俺の腕から飛び出し、作物の前で魔法を使う。青々と茂った葉っぱがわずかにピョコンと伸びた気がする。得意げに戻って来たタマモを抱きかかえ、モフモフしながらドリーに質問する。

「ドリー。あの野菜は明日には食べられるんだよね」

「ええ。明日の朝が収穫に適した時間です。フォレストラディッシュは美味しいですから、楽しみにしてくださいね」

……葉っぱがダイコンっぽいとは思ったけど、フォレストラディッシュって大森林ダイコン? 英語圏の転移者でも居たのかな?

まあいいダイコンは葉っぱも食べられる美味しい野菜だ。葉っぱはお漬物が作れたら最高だな。後は大根おろしで焼き魚が最高に美味しくなる。テンション上がるよね。

「明日の朝に収穫か。楽しみだ」

ワクワクしながら森予定地に移動する。

「昨日も見たんだけど、やっぱりこの光景を見ると驚くよね。いくつか芽が生えていて、本当に森になるんだって実感が湧いて来るよ」

「ふふ。そうですね。森の大精霊として、死の大地に森を作る計画に関われて、とても嬉しいです」

実際は森を作る計画なんてまったく無かったんだけどね。ノモスが作れって言ったから作っただけで、完全にノモスのおかげなんだよね。

「ここに森が出来たら少しは死の大地の気候は変わるかな?」

「ここだけだと無理だと思います。泉があり森が出来れば素晴らしい事ですが、死の大地の中では本当に僅かなスペースでしかありません」

「そう上手くはいかないか」

確かに町に行くのに徒歩で百日掛かるほど広い死の大地。チョボチョボと植物が生えても気候は変わらないよな。

「ですが。自然を増やす切っ掛けにはなります。ここを拠点に植物が増えれば、いずれ死の大地を森で埋め尽くす日が来るかもしれませんね」

流石精霊、考えるスパンが長い。俺が生きている間にどこまで進むんだろうな。森がでっかくなったら他国の侵攻とかもありそうだし難しいか。

「そうなったら、この地はとても貴重な場所になるね。そう言えばここに生える木は実がなったりするの?」

「実がなる木もありますよ。ですが受粉が必要なので送粉者(花粉を運ぶ動物)が必要ですね」

「この世界でも花粉を運ぶのは蜜を集める虫が多いの?」

「そうなりますね。この地に木の実が成るかは裕太さんに掛かっています」

虫を連れてこいって事なんだろうな。蜂とかいるんだろうか? なんか居たとしてもバカでっかい魔物になっていそうで嫌だ。

「出来るだけ前向きに善処します」

「ええ、裕太さんなら大丈夫です。楽しみにしていますね」

……この世界では政治家の玉虫色の解答が通用しないらしい。完全にポジティブな言葉として理解されたな。しょうがない美少女との約束。頑張らないと罰が当たる。

レインの水撒きとタマモの成長の魔法を見学しながら、森になったこの場所を想像してみる。……想像できんな。森になる実感は湧いても、想像するには赤茶けた大地の印象が強すぎる。

「ゆーた。もりできるー?」

「森が出来るように頑張るけど、どうかな? ベルは森が出来ると嬉しい?」

「うん。もりをとぶとおもしろいの」

「そうか。なら頑張って森を作ろうな」

「つくるー」

頭の上ではしゃぐベル。契約者としては頑張りどころなんだろうな。ドリーの期待とベルの期待。出来る力があるのなら、やってやりましょう。密かに決意を固めて気合を入れる。

「裕太ちゃん。お姉ちゃん考えたんだけど、契約の条件を変えようと思うの」

気合を入れていると、気合を抜く声が聞こえて来た。突然何を言い出すんだ?

「えーっと、ディーネが契約するか選ぶ立場だから、ディーネの自由だけど突然どうしたんだ?」

「うん。お姉ちゃんとしてはシルフィちゃんはしょうがないとしても、二番目に契約するのはお姉ちゃんであるべきだと思うのよ」

「……ノモス。契約に順番とか関係あるのか?」

契約が先の方が偉いとか、なんか順位付けがあるのかもしれない。

「そんなもん無いぞ」

キッパリとしたノモスの否定。

「じゃあ、なんでディーネは契約の順番に 拘(こだわ) っているんだ?」

「そんなもん知るか! だいたいあ奴の謎の理論に答えなんぞあるものか。謎の拘りと気分で行動しとる奴じゃ。真面目に考えるだけ無駄じゃぞ」

ディーネ……外見は完璧なんだけどな。なんであんな性格なんだろう。悲しくなってくる。

「あー。ディーネの言いたい事は何となく分かった。シルフィの次に契約出来る条件に変更するんだな。どんな条件なんだ?」

「それは今から考えるわ。だから裕太ちゃん。少し待っててね」

「……分かったけど。町に行く前に条件を決めて貰わないと、対応出来なくなる可能性はあるぞ」

「そうよね。お姉ちゃんちょっと泉で考えて来るから、また後でね」

「あ、ああ。後でな」

完全にいれた気合が抜けてしまった。ディーネの性格が読めない。

「なあ、シルフィ。ノモス。ドリー。ディーネは精霊としてどうなんだ? なんか特殊な気がするんだが」

「まあ、特殊な性格をしていると思うわ。でも色々な精霊がいるんだもの。特別ディーネがおかしいわけでもないのよ?」

シルフィは自信なさげに答える。仲は良さそうなんだけど、色々とディーネに関しては 諦(あきら) めた雰囲気だったからな。しょうがないか。

「人型の精霊としては、特殊な部類に入ると思うぞ。どちらかと言うと行動原理が動物型の精霊と似ておるな。まあ、行動を予想しても無駄なタイプじゃ。本能で動いておる」

ノモスはバッサリと切り捨てた。しかしノモスの言うとおりだな。野生の勘みたいな物を持っているタイプだ。どう考えても左が近道なのに、右に行って左で起こった崖崩れを避けるみたいな、意味の分からない奴っているよね。理屈じゃないんだ。

「ディーネは良い子ですよ。ただちょっと考えがみんなとズレているだけです。ですがそのズレた意見が皆に良い結果を与えたりと、とても役に立つ子なんですよ」

褒めているんだけど、あんまり誉め言葉になってはいない気がする。みんなの意見をまとめてみると、良く分からない行動をするんだけど、何故か結果を出すってタイプか……馬鹿と天才は紙一重って言葉が思い浮かぶ。

大精霊達と話をしていると作業が終わったレインとタマモが戻って来た。これで今日やるべき作業は全部終わったな。

「裕太。これからどうするの?」

「うーん。シルフィには夜に時間を取って貰って、町に行く計画を具体的に進めたいから、日がある内はノモスの条件を達成する為に、拠点の拡張をしておくよ」

「分かったわ。それなら私は色々な場所の情報を整理しておくわね。夕飯が終わったら話し合いましょう」

「うん。よろしく頼むね。おそらく冒険者になると思うから、冒険者に向いた町で、戦争が起こる可能性が低い所をピックアップしてくれたら助かるよ」

「探しておくわ。裕太も拠点拡張を頑張ってね」

大精霊達と別れて、俺はベル、レイン、トゥル、タマモを連れて拠点拡張工事を始める。今回の場合はトゥルの協力が大変助かるが、他の子達には向かない仕事だ。

俺とトゥルは拡張するスペースを岩で区切り、せっせと穴を掘っては岩を敷く。少しでも進めておかないと終わらないよな。

なんせノモスの要求を達成するには、全部で二十五万平方メートルのスペースが必要だ。うなれ開拓ツール。お前があれば目標達成なんて楽勝だ。