軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四百二十七話 お土産選び完了

王都に屋台巡りと観光のために遊びに来た。ベル達は屋台の下見に行き、俺とシルフィ、ジーナ達はサクラのお土産にファンシーショップっぽいお店に入ることになった。

「おししょうさま。はいらないの?」

可愛らしいお店の雰囲気に、なんの違和感も覚えていないキッカが不思議そうに聞いてくる。これがジェネレーションギャップってやつなんだな。

「……そうだね。サラ、キッカが先に入るといい」

「分かりました」

「わかった」

いつまでも店に入るのを躊躇っていてもしょうがない。なんの躊躇いもなく店に入ったサラとキッカを追い、保護者ですよといった様子で、ジーナとマルコを連れて店の中に入る。

一瞬、王都のお嬢さん方の視線が集まったが、作戦が功を奏したようで直ぐに注目は薄れた。ふー、こんなに緊張したのは、初めてファイアードラゴンを見たとき以来かもしれない。少なくともスケルトンよりは怖かったな。

緊張から解放されて店内を見渡すと、可愛らしい小物が並んでいる。でも、王都のお嬢さん方は店の一角に集まっているようだ。あそこには王都で流行っている物が売られているんだろうな。

「えーっと、ジーナ。あそこで売られている物が何か確認してきてくれない?」

喜ばれるお土産を手に入れるためには、マーケティングが大切だ。

「えっ、なんであたしなんだよ!」

俺の言葉にジーナが露骨に嫌そうな顔をする。面倒な作業も積極的に手伝ってくれるとってもいい子であるジーナにしては珍しい表情だ。気持ちは分からないでもないけど、少し大げさじゃないか?

「ジーナもマーサさんから女性としての教育を受けているよね。その成果を試す時がきたんだよ」

頑張って!

「いや、だからといってあの集団に交ざるのは……それに、マーサさんの教育とこれは関係ないぞ」

ぬぅ。予想外に抵抗するな。ゾンビと戦うよりも抵抗するのはどうなんだと問いたい気分だ。

「ジーナ。師匠命令だよ」

師匠らしく威厳を持ってジーナに命令する。俺だってあの集団に交ざる度胸は無いから、悪いけど犠牲になってもらおう。

「……師匠って、変なところで師匠命令を出すよな。ちょっとずるいぞ」

誰だって我が身が一番可愛いのだよ。許せ弟子よ。

「別に私が見てきてもよかったのだけど?」

シブシブといった様子を隠すことなく、不満タラタラで集団に向かったジーナを見送っていると、シルフィが話しかけてきた。……そうだった。俺には頼りになる風の大精霊が付いていたんだよな。落ち着いたと思っていたんだけど、まだこのお店の雰囲気に呑まれているようだ。

うーん。無意味なことで弟子からの株を下げてしまった。でも、ここでシルフィのことを忘れていたって言ったら、シルフィからの株も下げてしまうことになるな。

(……分かっているけど、ジーナの苦手意識を克服するためには大切なことなんだよ)

あえてジーナに試練を課したって方向で話を進めよう。

「ふーん。まあ、師匠として弟子のことをちゃんと考えるのはいいことよね」

半分くらい思考を読まれている気もするけど、見逃してくれたのなら気にしないことにしよう。藪をつついて蛇を出すのはごめんだ。

「あー、なんか精霊貨を使ったアクセサリーとか小物が並べてあったぞ」

疲れ切った表情のジーナが、弱弱しく報告してきた。体力的にはまったく問題ないはずだから、精神的に削られたんだろう。なんかゴメンね。

しかし精霊貨か……家具や小物に使われているって聞いていたけど、王都で流行るほど広まっているのか。気が付かなかったけど、迷宮都市にも同じような店があるのかもしれないな。

最近、マリーさんのお店で雑貨を仕入れていなかったけど、店を見て回れば同じような商品が並べてあったかもしれない。

「うーん、サクラに精霊貨を使った小物をお土産にするのってどう思う?」

精霊貨って綺麗だけど、楽園ではありふれたものなんだよな。お土産の特別感が出ない気がする。

「サクラならなんでも喜びそうだし、いいと思うぞ」

食事のメニューを考える主婦ではないけど、なんでも喜びそうってのが逆に難しい。シルフィ達みたいにお酒を買っておけば問題無いのが一番楽だ。とはいえ、どうせなら大喜びするサクラが見たい。

……自分のセンスに自信はないし、こうなれば数で勝負しよう。

「ジーナ。全員に一つずつサクラのお土産を選ぶようにサラ達にも伝えてくれ。もちろんジーナも選んでね。あと、自分でも欲しいものを選ぶようように言っておいて」

「えっ? あたしも選ぶのか?」

「もちろん」

「んー、なんだか今日の師匠って、弟子入りしてから一番厳しいな。何かあったのか?」

……お土産を選ばせるだけで一番厳しいとか言われてしまった。俺はどれだけ弟子達を甘やかしているんだろう? リーさんとかマーサさんとか、別の先生をお願いしたのは俺の師匠としての最高の功績かもしれない。

「何もないよ。ただ、サクラが喜ぶ物が想像できないから、数で勝負しようって思っただけ」

「ああ、たしかにサクラならなんでも喜びそうで、逆に何を選べばいいのか想像できないな。分かった。サラ達にも伝えておくよ」

「お願いね」

(シルフィもお願いね)

「私も? ……しょうがないわね。風の大精霊の実力を見せてあげるわ」

数は力だと思ってシルフィも巻き込んだら、結構やる気になってくれた。こういうイベントが何気に好きなようだ。よし、俺もみんなに負けないようにお土産を選ぶか。

……思っていた以上に商品の種類があるな。マリーさんの雑貨屋もそうだけど、俺が想像していた中世よりも物が豊富だ。たぶん、魔物の素材や魔法があるから、地球の同じような時代よりも応用が利くんだろう。

でも、数が多いから色々と目移りしちゃって困る。自分が興味があるものなら見極めも付くんだけど、ファンシーグッズは専門外だ。

指輪やネックレス等のアクセサリー類は、お嬢さん方がキャピキャピしているので近寄れない。あのジャンルは、お嬢さん方に負けずに侵入できるサラとキッカにお任せしよう。

おっ、この一角は人が居ないな。落ち着く場所なんだけど、ここは人気が無い商品が置いてあるのか?

不思議に思って商品を確認すると、なかなか可愛らしいぬいぐるみが並んでいる。なんでこの商品の人気がないんだ? 女の子からすればかなり好きそうなジャンルだよな。……あぁ、値段が高いのか。お小遣いだとこの値段は手が出ないだろう。

だが、大人な俺としては手が出る値段だから問題無い。一番良さげなのは、可愛らしいウサギのぬいぐるみなんだけど……このウサギのぬいぐるみ、触った感触が本物なんだよな。

サクラはタマモのモフモフがお気に入りだから喜びそうな気もするけど、嫌な言い方をすれば可愛い動物の毛皮を剥ぎ取ったぬいぐるみは、情操教育としてありなのか? 理解した時に泣いちゃったりしない?

うーん、顔の部分は布張りでリアルさよりも可愛さを追求しているから、可愛らしいウサギのぬいぐるみなのは間違い無い。特に、目の部分に闇の精霊の精霊貨を使っていて、クリッとした黒い瞳がキュートだ。

……悩みどころだけど、他に候補がある訳でもないし、このぬいぐるみで勝負するか。ベル達が普段遊んでいるボールなんかも魔物素材で出来ているんだし、この世界で生き物の素材を否定したら選択肢が無くなってしまう。

ついでにベル達も欲しがるかもしれないし、人数分買っておこう。必要なかったらエメの雑貨屋に並べればいい。あっ、このお店の雑貨の商品を仕入れておくか。

お土産だけ買って帰ると、このお店の商品をエメに沢山仕入れてきてって頼まれそうな気がする。もう一度この店に来るくらいなら、先に仕入れておいた方がマシだ。

「ようやく決まったみたいね。裕太がぬいぐるみをジッと見つめて考え込むのは、ちょっと場違いだから気をつけなさい」

自分の中で納得をして顔をあげると、シルフィから注意されてしまった。なかなかキツイ言葉だけど、おっさんに片足を突っ込んだ俺が、真剣な顔でぬいぐるみを見ているのは、たしかにちょっと場違いだよね。

まあ、娘へのプレゼント的な感覚で流してもらえるだろうから、今回はセーフなはずだ。未婚だけど。

(そんなに考え込んでた?)

「ジーナ達が飽きるくらいにはね」

シルフィに言われてジーナ達を探すと、すでにお土産を選び終わった様子のジーナ達が、商品も見ずにおしゃべりしている。結構な時間悩んでいたようだ。お土産やジーナ達が欲しい物は別にして、雑貨屋用の商品を集めるのも手伝ってもらおう。

***

「おにいちゃん、にあう?」

大量にファンシーグッズを手に入れて店を出ると、さっそく購入した髪飾りを身に着けたキッカが、マルコに難しい質問をする。マルコ、この質問は男の器量が問われるから、慎重に答えるんだぞ。

「う、うん。にあうぞキッカ。かってもらえてよかったな。ちゃんと師匠にお礼をいうんだぞ」

「うん。おししょうさま、ありがとう」

無難な褒め言葉だけど、キッカは喜んでいる様子だから合格だ。ただ、俺に話題を振るのは勘弁してほしい。キッカが誉め言葉を待つように俺を見ているじゃないか。

「あぁ……よく似合っているぞキッカ。精霊貨の花の髪飾り、可愛らしくてキッカにピッタリだ」

ファッションセンスに自信はないが、精霊貨を組み合わせた髪飾りは綺麗だし、可愛らしい狼耳と合わさってとても可愛らしい。っていうか、可愛いしか言葉が無いな。可愛いって言葉を、他にセンス良く表現できるのが、カッコイイ男ってやつな気がする。

恥ずかしそうにはにかむキッカの隣で、サラが購入したネックレスを首から下げて俺を見る。もしかして褒めろってことですか?

「……サラのネックレスもとても似合っているよ。少しシンプルかなって思ったけど、青の単色が爽やかだね」

「お師匠様、ありがとうございます」

俺のつたない褒め言葉でも満足してくれたのか、優しく笑うサラ。あっ、ジーナ。自分も買ってもらったアクセサリーを身に着けた方がいいのかって迷わないで。子供を褒めるのはまだしも、街中で年頃の女の子を褒めるのは敷居が高い。

「ふふ。裕太、モテモテね」

(シルフィ。この場合もモテモテって言うの?)

「言うんじゃない? ベル達にもプレゼントを渡したら、もっとモテモテになるわね」

どうやら俺とシルフィではモテモテの定義が違うようだ。俺の場合は綺麗な女性に囲まれてウハウハな状態とかなんだけど、シルフィの場合は人気があればモテモテらしい。

俺が望んでいるモテモテとはちょっと違うが、弟子達や契約精霊達にモテモテなのも悪くはないよね。目の前で嬉しそうなサラやキッカを見ると俺も嬉しいし、喜ぶベル達やサクラを想像すると、ちょっとホッコリする。

さて、地味に苦労したけど、重要なお土産選びは終わったし、ベル達と合流して屋台巡りだな。もう大変なことは起こらないだろうから、リラックスして楽しもう。