軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三百五十九話 鑑定

ルビー達にライトドラゴンの解体を頼み、楽園が見える一番下の重力石の島で解体を開始した。水の上級精霊であるサフィの華麗な血抜きは見事だったが、ファイアードラゴンの短剣でジーナ達が解体を手伝うことになったのが少し心配だ。

「そうなんだぞ。ドラゴンの皮を傷つけないように、そっとなんだぞ。そう、その短剣なら刃の部分を当てるだけでウロコは剥がれるから、力を入れるのは少しでいいんだぞ!」

「こうですね……あっ、ウロコが少し剥がれました!」

ルビーの教えにそってサラがファイアードラゴンの短剣を動かしている。そんなに難しい感じではなさそうだな。まあ、子供にやらせるんだからそこまで難しい作業を選ばないか。

「ゆーたー。べる、もってきたー」

自分の顔よりも大きなウロコを掲げ、満面の笑みでふよふよと飛んでくるベル。こういう時にはベルが一番に持ってくることが多いよな。無理して急いでいるって感じでもないし、天然で行動が素早いのかも。風の精霊の特性かな。

「ありがとう」

お礼を言ってベルからウロコを受け取り、撫でくり回して褒めまくる。そのあと、次からは横に置いたテーブルの上に持ってきてもらうことをお願いしておく。

野菜と違ってウロコの数は相当あるから、1枚ごとに受け取っていたら大変すぎるからな。わかったーと次のウロコを確保しに行くベルを見送り、次に頭?の上に器用にウロコを載せたムーンからウロコを受け取り撫でまくって褒めまくる。

とりあえず最初の一回、全員からウロコを受け取って、褒めまくったら財宝の鑑定をしてもらおう。あっ、鑑定前にジーナ達の様子も一応確認しておかないとな。

「へー、キッカも上手だね。ジーナとサラに負けてないよ」

俺の目の前で綺麗にウロコを剥がしたキッカに声をかける。キッカも料理のお手伝いをしているからか、結構器用にナイフを扱う。

「ほんと?」

「うん、本当だよ。えーっと、これがジーナとサラが剥がしたウロコ。キッカが剥がしたウロコも負けないくらい綺麗だろ?」

厳密に言えばキッカがウロコを1枚剥がす間に、ジーナとサラは3枚くらい剥がしているけど、綺麗さで負けてないのは本当だ。ちなみにメルは解体には慣れているようで、ジーナとサラの更に倍くらいのウロコを剥がしている。

「うん、きれいにできた! ……おにいちゃんは?」

マルコの名前が出てきてないことに気がついたキッカが、喜びの表情から不思議そうな表情に変わり聞いてくる。

「あー……うん、マルコはもう少し練習が必要だな」

「おししょうさま、キッカ、おにいちゃんのぶんまでがんばる」

「ああ、頼んだぞ!」

キッカもお兄ちゃんの役に立ちたいんだろう。最近は違うけど、俺の弟子になった頃はマルコが居ないと話もできなかった。キッカの成長に胸が熱くなる。

まあ、マルコにもお兄ちゃんとしてのプライドがあるだろうから、ガタガタのウロコは秘匿しておくか。ちびっ子軍団に任せられている場所は、イフが攻撃した周辺だからガタガタでもそこまで問題は無い。

ただ……ウロコがガタガタになってるのって、マルコの教師役のオニキスの影響もある気がするんだよな。あれってどう考えてもルビーの人選ミスだ。

普段はまったく女性に興味がなく、花より団子を地で行くマルコが、オニキスの溢れるような色気に戸惑いまくってあたふたしている。教師役のオニキスもそのことが気付いているようだが……なんか更に色気を増して教育をしている気がする。

ダーク様もそうだけど、闇の精霊の色香ってかなりヤバいよな。しかも、俺が契約している精霊の中には妖艶なタイプの精霊が居ないから、マルコに妖艶耐性はまったくない。

……戦闘面でも楽園の運営面でも手伝いの精霊はともかく契約精霊を増やす必要はないんだが……ただ単に超絶妖艶な闇の大精霊と契約したいって思うのは、間違ってるんだろうか?

ものすごく難しい悩みを抱えてしまった気がする。今までは必要だから精霊と契約してきた。開拓した拠点が聖域になり、洒落にならないくらい強い大精霊と6人も契約している。

もはや無敵モードと言っても過言じゃないから、必要もないのに闇の大精霊を連れてきてって言い辛い。あと、そんなよこしまな気持ちでお願いしたら、ものすごく妖艶な男の精霊がきそうな気がして怖い。

こういう時の勘って外れてほしいのに当たるんだよな。……この思いは忘れよう。人間、欲を掻いたらろくなことにならない。みんなの様子も確認したし、そろそろノモスを召喚して鑑定をしてもらおう。

***

「…………という訳で、鑑定をお願いします」

「まあ、外で鑑定するのは構わんのじゃが、ドラゴンが隣で解体されておる場所で鑑定することになろうとはな」

「はは、ウロコは1ヶ所に集めてもらうようにしたから、離れられないこともないんだけど、お肉とかを切り出した時にすぐに収納できた方が鮮度がいいんだ」

ラフバードのお肉やオークのお肉なんかだと、熟成に向いてたりするからそこまで気にしないんだけど、強い魔物のお肉は魔力が抜けると味が落ちるらしいから早めに収納したい。

実際にはマリーさんのところで解体してもらった、ある程度時間が経った属性竜のお肉でもビックリするくらい美味しいから、味の違いが判るかは疑問だけどな。

「裕太は食い物に拘りすぎじゃと思うぞ?」

「美味しい食事は楽しい人生に必要不可欠なんだよ。ノモスだってお酒に拘るだろ。それと同じだよ」

……いや、同じじゃないな。だって俺、美味しいものは好きだけど、味覚が鋭いわけじゃないし、なんとなく美味しければ満足できる。それに、ノモス達みたいに俺が食事に拘ったら、洒落にならないことになると思うぞ。

たぶん、料理人を札束……金貨で引き抜いて、和、洋、中の料理を覚えて楽園に店を出してもらうな。それと、日本で好きだったファーストフード各種に、ケーキやらドーナツやらのチェーン店。焼き鳥屋にパスタ屋、他にも思いつく限りの店を……なんかすごく楽しそうだ。

今居る重力石の島をフードコートみたいにするのはどうだろう? 名付けて食島……ものすごく楽しそうだ。……ぶっちゃけ挑戦したくなるが大きな問題がある。

幸いなことに資金は豊富だ。人間を連れてくる覚悟があれば料理人の引き抜きも可能だろう。でも、各種ファーストフードやケーキやドーナツのレシピが分からない。

ちくしょう! 日本にいる時はお金があればやりたいことが腐るほどあった。今はお金が腐るほどにあるのに日本じゃないからやりたいことがやれない。

「裕太、いきなり悶えてどうしたんじゃ?」

「ああ、ノモス。人生ってままならないな。こうなったらコツコツとルビーやトルクさんに協力を頼んで、食べたいメニューを完成させるよ」

「病気か? 会話が繋がっとらんぞ。儂、醸造所に戻っていいか?」

ノモスが気持ち悪そうに俺を見ている。ノモスも酒にギラついてるときは結構アル中っぽいけどな! ……いかんな、この場にはちびっ子軍団達も勢ぞろいしているし、くだらないことで口喧嘩をしている場合じゃない。

「悪かった。とりあえず鑑定を頼む」

迷宮で手に入れた各種財宝を魔法の鞄から取りだし、ノモスの目の前に並べる。改めて見るとキラキラと輝きまくってるな。

「えーっと、とりあえずこっち側の山はベル達が欲しがったものなんだ。子供部屋に飾ることになると思うから、危険そうなのは弾いてくれ。それでこっち側は単なる財宝と魔道具。薬、装備品や効果がついているアクセサリーなんかで分けてもらえると助かる。俺やジーナ達の装備品を更新するつもりなんだ」

いい装備があると嬉しいな。あとは箒と絨毯が本当に空を飛ぶ魔道具なのかがとても気になる。

「ふむ……裕太、装備品はどういう基準で分けるんじゃ? 儂はそこまで人間に詳しい訳じゃないが、軽く見ただけで、ここにある装備品を子供が身に着けておったら襲われると思うぞ。仮にも迷宮深層の装備なんじゃからな」

んー、それもそうか。ジーナ達なら大抵の奴らには負けないと思うけど、人間に襲われるような経験はなるべくさせない方がいい。でも、迷宮に潜るんだから、武器はともかく防具はある程度いい物を装備しておいてほしい。これも境目が難しいな。

「じゃあ、ジーナ達の装備は見ただけではすごい装備だって分からない物の中から選んでほしい。俺は……少しはいい装備をしないとAランクの冒険者って気づいてもらえないから、派手じゃない装備の中で高級っぽくて、すごいやつを選んでくれ」

威厳が身につかないのなら身に着ける物で威厳を補おう大作戦だ。さすがにキラキラを通り越してギラギラしているのは装備したくないが、ちょっとくらいのキラメキは望むところだ。

「……儂に目立つとか目立たないとか、服や装備に関しての選択を押し付けるな。お主が後悔することになるぞ」

ノモスがちょっと不愉快気に言う。そういえばノモスの美的感覚って結構アレだったな。自分でセンスがないのを認めるのが嫌だったのかノモスがソッポを向いている。

「分かった。とりあえずセンスは気にしないで、効果や能力で装備品を選んでくれ」

財宝の鑑定が終わったら、シルフィ達やジーナ、メルに聞いて装備を決定しよう。……正直、美的感覚で一番頼りになりそうなのがメルって時点で、少し不安だ。

「ふむ、それくらいならええじゃろ。まずはちびっ子共の物から鑑定するぞ」

ノモスが財宝を1つ手に取り、真剣な表情で見つめる。

「あっ、それあたいのおたからだぜ!」

声の方を向くと、フレアが数枚のウロコを抱えたまま、ノモスが手に取った財宝を見つめていた。あれは大きめのルビーが目立つ金の腕輪、たしかにフレアが好みそうなお宝だな。

「いま、ノモスに鑑定してもらってるんだ。危険な物でなかったら、あとで子供部屋に運ぶね」

「きけんはじんせいのすぱいすなんだぜ!」

怪しげなことをドヤ顔でのたまうフレア……意味を分かって言ってるんだろうか? 確実にイフの受け売りなんだろうけど、そんなことばかり言ってると将来が心配になる。

イフに似るのは……まあ、少しがさつだけどカッコよくて魅力的でもあるから構わない。けど、頼むから男を惑わすような小悪魔にはならないでね。

「フレア、えーっと、みんながいる場所に危険な物を持ち込むのは駄目なんだ。ベル達はケガをしないかもしれないけど、俺やジーナ達がケガをしたら嫌だろ?」

ケガをするメンバーに自分を含めるのはちょっと恥ずかしいな。でも、魔道具でなにかしらの事故が起こって、近くに誰も居なかったらケガをする自信がある。家の中では1人で行動することも多いし、危険物はしっかり回収しないと怖い。自宅に人生のスパイスは要らないよね。

「……ゆーたにまかせるんだぜ!」

少し考えたあと、俺に任せてくれると言ってくれた。しっかり周りの人間のことを考えられるフレアはすごいな。ルアー用の3本針の釣り針に釣り糸を結び付けて、鉤縄とか言って喜んでいた俺とは大違いだ。

俺はフレアと違って自作の鉤縄を振り回して、自分の手にぶっ刺さるまで危険ってことに気がつかなかったもんな。今考えると、とてつもなく恥ずかしい。

「ありがとうフレア。ちゃんと確認するから安心してくれ」

「おう!」

元気にお返事して、フレアはウロコの回収に戻っていった。いつの間にか結構な量のウロコが運ばれてきてるし、そろそろ収納しておくか。