軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百八十六話 村開き 両替

精霊の村の村開き。遊びにきた精霊達を醸造所の精霊達以外の全員で出迎えた。遊びにきた精霊達はワイワイキャイキャイと楽しそうだが、その中にウインド様とライト様、二人の精霊王様が交ざっている。

色々と話を聞いたところ、中級精霊達は浮遊精霊や下級精霊に順番を譲るようないい子達なのに、二人の精霊王様は普通に乱入してきたらしい。

「な、なんじゃその目は。妾は今知ったのじゃぞ。ウインドに行こうって言われて付いてきただけじゃ。中級精霊達が浮遊精霊や下級精霊に順番を譲ったなど、褒めこそすれ台無しにするような事はせん!」

俺達のシラーっとした視線に気づいたのか、ライト様が短い手をピコピコと振り回しながら言い訳をする。うん、ライト様はそうだろうね。威厳や体面を気にして偉そうな話し方を選択するタイプだもん。知ってたら遠慮したはずだ。

「えーっと、僕も知らなかったんだよ? ただ面白そうだし、僕が乗せていった方が子供達が喜ぶかなって思ったんだ。ホントだよ」

ウインド様も短い手をピコピコ振りながら言っている。そうなんだろうな。ただ、中級精霊達がとってもいい子達だったから、ウインド様の悪乗りが浮き彫りになった感じか。せっかくの目出度い村開きだし、これ以上のツッコミは止めて楽しくいこう。

気を取り直して遊びにきた精霊達を観察する。浮遊精霊と下級精霊の集団……鼻血がでそうなくらいに可愛らしい集団だ。早く遊びに行きたいなーって感じでソワソワしている。

ああ、さっき赤ちゃんが見えたって思ったのは、間違いじゃなかったんだな。幼女なベルよりも更に小さい、ハイハイができるかできないかぐらいの赤ちゃんが、プカプカ浮いている。

「あうー」っとか「うっ!」っとか声を上げながらはしゃいでいる姿がヤバい。俺に母性があったらメロメロだっただろう。父性が疼く気もするが、こっちはベル達が占領しているので大丈夫……なはずだ。

赤ちゃん以外の精霊も可愛らしい。動物型が多いが、なんかちっちゃいハリセンボンみたいな子もいてバラエティが豊かだ。

「ねえドリー。今日きた子の中にも、植物タイプの精霊がいないよね。前にマリモみたいな浮遊精霊を見た事はあるけど、植物系統の精霊って少ないの?」

「いえ、遊びにきてはいませんが、植物型の精霊は沢山いますよ。むしろ、多いくらいです。ただ、植物型の精霊は意識が芽生えるのが遅いんです。中級精霊になってものんびりと漂ってる子が多いですから、ここにくる子は少ないと思います」

あー、なるほど。どんな姿を取るかによって意識が芽生える時間が違うのか。まだまだ知らない事が沢山あるんだな。

「そうなると、精霊樹の依代が遊びにくるのは時間がかかりそうなの?」

「精霊樹は特別な木ですから、そこまで時間はかかりませんね。楽園も賑やかになりますし、いずれ依代を作って遊びにくると思いますから、歓迎してあげてください」

一瞬、精霊樹の依代が遊びにきた時、俺がヨボヨボになっている姿を想像したが、そうでもなさそうだ。ちょっと安心した。

「話し合いに割り込んですまないが、子供達が待ちかねている。悪いが、遊びに行かせても構わないか?」

いかん、話が逸れてアルバードさんや子供達を待たせてしまった。精霊樹の事も気になるが、今は子供達に精霊の村を楽しんでもらわないとな。

「あっ、すまない。もちろん構わないよ。うちの子達も一緒に行かせるね。みんな、話を聞いてたと思うけど、遊びにきた子達と一緒に行って色々と教えてあげてね」

あせって簡単な指示を出してしまったが、ベル達とフクちゃん達は元気に返事をしてくれた。すぐに遊びにきた集団に突撃して色々と説明しているので、たぶん大丈夫だ。

シルフィ達とジーナ達は元々フォローに回ってくれる約束だから、全体のフォローの手は足りるだろう。ちなみにノモスも渋々な体を装っていたが、手伝ってはくれるそうだ。

「裕太の兄貴、あたい達は先に戻って準備したいんだぞ!」

あっ、そうだった。店に行っても店員がいなかったらどうしようもないよな。色々と村開きについてイメトレしてたけど、なんかグダグダになってるぞ。

「うん、先に戻ってくれ。シトリン、最初に集まるのは両替所だけど、すぐに準備できる?」

「……大丈夫」

ポツリと、だが力強く頷くシトリン。言葉少なだが密かな自信が感じられる。準備万端のようだ。

「ありがとう。みんな頼むね」

いっせいに自分の店に戻るルビー達。ごめんね段取りが悪くて。すぐにでも大丈夫だって言ってるけど、ほんのわずかでも時間を稼いでおこう。

「えー、みんな、今日は遊びにきてくれてありがとう。まだまだ店も少ないし、家も建ってないから村と言うには無理があるけど、みんなが楽しめるように準備をしたから、楽しんでくれたら嬉しいな」

いきなり挨拶を始める俺。精霊達はキョトンとした顔をしているが、一応話を聞いてくれている。

「みんな、今日を楽しみにしてたかなー」

右拳を天に突き上げながら俺が大声で呼びかけると、パラパラと返事が返ってくる。まだ戸惑っているようだな。当然だ、俺も時間を稼ぐための見切り発車だからな。とりあえずテンションで乗り切ろう。

「返事が小さくて聞こえないぞー。もっと大きな声で! みんな、今日を楽しみにしてたかなー」

「楽しみだったー」

俺がやりたい事を理解してくれたのか、ウインド様が大声で返事をしてくれた。なんか申し訳ありません。もう一度大きな声で質問をすると、ベル達を含めてちびっ子達が元気にお返事をしてくれた。

「美味しいご飯が食べたいかー」

「「「たべたいー(あうー、プー、ワフーン、ギュー)」」」

様々な鳴き声が混ざるから統一感はないが、ちびっ子達も理解したのか元気に返事をしてくれる。

「あまーいデザートが、たべたいかー」

「「「たべたいー」」」

「お買い物がしたいかー」

「「「したいー」」」

「公園で楽しく遊びたいかーー」

「「「あそびたいーー」」」

「みんなでおとまりはたのしいぞーー」

「「「たのしーー」」」

更に思いつく限りの言葉を叫び、子供達を煽っていく。最初はヒーローショーなんかの司会のイメージだったが、途中からニューヨークにいく、古い有名なクイズ番組みたいになってしまった。

「よーし、精霊の村! 村開きだー!」

完全に慣れたのか、ちびっ子達が楽しそうにお返事をしてくれる中、ウインド様、シルフィ、ディーネ、ノモスが爆笑している。ジーナ達は突然の師匠の奇行に困惑顔だ。申し訳ない。

「では、アルバードさん、後はよろしく」

テンションを上げて叫んでみたものの、終わらせ方が分からずアルバードさんに丸投げしてみた。アルバードさんの為に、場を盛り上げておきましたぜ!的な雰囲気を作ってはみたが、成功はしてないようだ。驚き固まるアルバードさん。

「……ここにくるまでに教えた事を守り、招待してくれた裕太に感謝して村を楽しむぞ。まずは両替所に出発する!」

さすがウインド様に振り回されている苦労人。すぐに立ち直ってちびっ子達を引き受けてくれた。ゾロゾロと両替所に向かう精霊達+ジーナ達。

「ねえ、シルフィ。アルバードさんってお酒は好きかな?」

まだ笑っているシルフィに質問する。

「えっ? いきなりどうしたの?」

「うん、ちょっと迷惑をかけちゃったし、帰りにでもお酒をお土産に渡そうかと思ったんだ。風の大精霊なら無理なく持って帰れるよね」

それ以前になんか疲れてそうだし、お酒が好きならそれで英気を養ってもらおう。元気になってウインド様の行動を抑えてくれると更に助かる。

「そうね、お酒は好きだから喜ぶと思うけど、お土産で持たせても帰ったら他の精霊に羨ましがられて落ち着けないと思うわ。それに案内役を買って出ると、楽園でお酒を飲んだ上に帰りにお土産まで貰えるって、案内役の立候補が激増するわね」

激増するって……精霊宮の職員さんの苦労も激増する訳だな。ちびっ子達の相手と酒飲み達の相手か、職員さんのブラック臭がプンプンしだす。

「……分かった。楽園にいる間に楽しく飲んでもらえるように差し入れしとくよ。アルバードさんは疲れてるみたいだし、のんびり飲めるように二日目の夜がいいね」

初日はウインド様もライト様もいるから、のんびりできないだろう。ウインド様と離れてゆっくりとできる夜だ。楽しんでほしいな。

「そっちの方が喜ぶでしょうね」

シルフィと話しながらキャイキャイとはしゃいでいる精霊達の後ろをついていく。最後に両替所の中に入ると、中ではちゃんと列に並び、楽しそうに自分が作った、精霊貨と銅貨を両替しているちびっ子軍団がいる。

今回は人数が多いので大銅貨を含めての交換だが、ちびっ子達はお金を手に入れて、満足そうにお金が入った布袋をいじくっている。口々に「ごはんたべるー」っとか会話が聞こえてくるので、両替したお金と交換で、ご飯が食べられる事は理解しているようだ。

ベル達やフクちゃん達も一緒に両替しているが、あの様子だと一緒にもう一回朝食を食べそうだな。全員の両替が終わり、ヘルプの為にシトリンも一緒に食堂に向かう。

「「「「いらっしゃい」」」」

食堂の中に入るとルビー、オニキス、エメ、サフィが全員をお出迎えしてくれる。その元気な声にちびっ子達も元気に返事を返す。前回の反省を踏まえて二列に拡張されたカウンターに、ちびっ子達を誘導して注文を受け付けるが、前回と比べて更に大騒ぎだ。

ベル達とフクちゃん達は料理を食べ慣れているが、ほとんど食事をした事がないちびっ子達は、絵があってもどんな食べ物かよく分からないようだ。ベル達がメニューの横に陣取り、ちびっ子達にアドバイスをしているが「これおいしー、こっちもおいしー」って感じだから役に立っているかは疑問だ。

色々と混乱はしているが、なんとか支払いと注文を終わらせて、引き換え札を手に喜んで飛び回るちびっ子達。アルバードさんやシルフィ達が、飛び回っちゃダメと軽く注意して席に座らせているが、楽しみでしょうがないのか、自分の席でもワチャワチャとはしゃいでいて、見ている分には大変微笑ましい。

精霊宮での騒ぎがなんとなく想像できるな。まあ、精霊宮の方は人数制限がされてないみたいだから、この食堂の騒ぎの何倍もすごいんだろうけどな。

「裕太、ボーっとしてないで手伝いなさい!」

シルフィが赤ん坊精霊にしがみ付かれながら、少しあせった声で俺に言ってくる。

「そうは言っても、飛び回っている子達に対して俺やジーナ達は無力だよ」

「席についている子達の相手はできるでしょ。頑張って!」

なるほど、確かにそれはそうだな。隣で待機していたジーナ達にも声をかけ、引き換え札をブンブンと振り回している精霊に近寄る。うん、いきなり三十人は多過ぎだったかも。