軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百四十八話 精霊王様達との宴会 下

精霊王様達との宴会を開催して、風の精霊王のウインド様、光の精霊王のライト様、闇の精霊王のダーク様、火の精霊王のファイア様と改めて挨拶をした。残りの精霊王様は水と土の精霊王様か。結構大変だな。

蒸留酒の事で盛り上がる風、闇、火の精霊王様は放っておいて、水と土の精霊王様に目を向ける。

「次は僕のようだね。僕はウォータ、水の精霊王だよ」

爽やかなお兄さんが爽やかに挨拶してくれる。老若男女から好感を持たれるタイプのルックスだな。羨ましい。

「ウォータ様、よろしくお願いします」

「うん、よろしくね。裕太君のお陰で、死の大地に泉や水路ができた。僕達は気軽に動けないから、本当に感謝してるよ」

俺、ピンときた。精霊王様達の中で頼りになるのはこの人だ。何か困ったらウォータ様に相談しよう。……よく考えたら、精霊王様に相談する案件とかゾッとするな。そんな機会が無い事を願おう。

「いえ、俺は自分の為に行動しただけですし、シルフィ達の力を借りてばかりで……はは」

まず最初にベルと会えなかったら、ほぼ間違いなく死んでいたからな。

「それでもだよ。精霊は契約者が居なければ、簡単には力を振るえないからね。この土地は紛れもなく裕太君のお陰で聖域になったんだ。その事は誇っていい事だよ」

なんか、これだけ素直に褒められると照れる。ちょっと話を変えよう。精霊王様に会ったら聞いてみたい事があったんだ。

「ありがとうございます。あと、お聞きしたい事があるんですが、いいですか?」

「うん? 構わないよ、なんだい?」

「ありがとうございます。俺がこの世界に来た理由って分かったりしますか?」

「んー、この世界に来た理由か。今までも数は少ないがこの世界に突然異世界の住人が紛れ込んだ事はあったんだ。でも、どうしてなのかは僕達精霊王にも理由は分からないんだ。ただ超常を司る存在からの干渉である可能性は極めて低い。世界を繋ぐような行為を、僕達から隠れて実行するのは不可能と言っていいからね」

薄々気づいてはいたけど、勇者召喚とかそう言ったパターンではなかったようだ。戦争は頻繁に起こっているけど、世界の滅亡とか魔王の登場とか、そんなイベントがまったく無かったもんな。最初の敵は冒険者ギルドのギルマスだったし、嫌がらせにキレただけだったもんな。

「では、ただの偶然なんですか?」

「そうだとも断言できないんだよね。異世界人ってあっさり死んだりするけど、偶に大きな功績を残したりもするし、僕達にでも感知できないこの星の意思が、裕太君を呼んだのかもしれない」

「この星に意思があるんですか?」

「いや、僕達は確認した事がないね。ただ、僕達に分からないように人を呼ぶなんて、星の意思ぐらいかなって思っただけなんだ。ごめんね」

なるほど……偶然もしくは、よく分からない力が働いたって感じなんだな。全然分からん。

「そうなんですか。それでなんですが、俺は元の世界に帰れたりするんでしょうか?」

シルフィ達やベル達、ジーナ達も居るし、この場所にも愛着がある。でも地球にも未練があるんだよな。特に家族と友達と食と娯楽が重要なファクターだ。

仕事はクビになってるだろうから考えない。戻れたら謝りにぐらいは行かないとダメだろうけど。最高のパターンはこの世界と、日本を自由に行き来できる事なんだけど、どうなんだろう?

「んー、少なくとも僕達には無理だね。異なる世界と繋げる事は協力すれば可能だけど、どこに繋がるかを選べない。そんなに何度も世界を繋ぐような無茶はできないから、裕太君が居た世界につながる可能性は限りなくゼロに近いと思う」

やっぱり難しいか。でもゼロって訳じゃないんだよな。宝くじに当たる以上の幸運が必要っぽいけど。

「俺以外に来た異世界人はどうなったんですか?」

「僕達が把握しているのは九名。適応できずにすぐに死んだり、この世界に溶け込んだり、功績を成したりと自由にやってたよ。でも自分の世界に帰った異世界人は知らないんだ。ごめんね」

「いえ、ウォータ様が謝る事はありません。せっかくの宴会で暗くなるような話をしてすみませんでした」

「自分の故郷の事だから、知りたくなるのは当然だよ。ねえ、裕太君。突然自分の生活が壊れたんだ。悲しかっただろうし辛かったと思う。でも、理由は分からなくても、この世界で生きて行く事になったんだ。月並みな言葉だけど、幸せに生きてくれると僕達は嬉しいな」

うーん、この世界に来て速攻で、餓死と渇き死にの危機だったから、悲しんでる余裕は無かったんだよな。しかもファンタジーって事で、ちょっとテンション上がってたし……。

自分に嫁と子供がいたら話は違ってたんだろうが、ぶっちゃけ今のところ、泣きわめくほどの望郷の思いは無い。悲しいとは思うし、家族や友達も心配してるんだろうとか思う事もあるが、できるだけ考えないようにしてる。

たぶんあれだな、いつか何かの拍子で悲しみがどっと押し寄せてくると思う。帰れる可能性がゼロに近いって言われた今が泣き時な気もするんだが、元々そんな気もしてたし不思議と平気なんだよな。

「今はみんなのお陰で楽しくやれています。目標もありますし、しっかりこの世界で幸せに成るつもりですから、大丈夫です」

まずは美人で巨乳で、甘やかしてくれるお嫁さんを見つけないとな。

「それなら良かった。僕も軽々しく動けない立場だけど力になれる事もある。何かあったら相談にくるといいよ」

「その時はお願いします」

頭を下げながら思う。相談にくるといいよって、どこに相談しに行く事になるのかが逆に怖い。できるだけ自分達で片付けよう。ちょっと暗い話になってしまったので、軽く雑談して土の精霊王様に挨拶をする事にしよう。

…………挨拶がしたいんだが、土の精霊王様はガッツリ食事に夢中のようで、話しかけ辛い。自分の前にほぼ全種類の料理を少しずつ集めて、ゆっくりモグモグしている。……表情は分かり辛いが、そこはかとなく幸せそうだ。お酒は合間に挟む程度みたいだし、今は飲むよりも知らない料理に興味があるのかもしれない。

「ほら、アース。裕太君が挨拶したいんだって。食べるのを止めてこっちを向きなさい」

俺が戸惑っているとウォータ様が助け舟を出してくれた。ウォータ様の声に、クリンとこちらを向く土の精霊王様。食事に夢中で完全にこちらに気づいて無かったんだな。

「私はアース。よろしく」

何と言えば良いんだろう? 声帯を振るわせて出す音と言うよりも、どこか物質的だが透き通るような声で、アース様が自己紹介してくれた。あと名前はアースなんだ。土だからソイルかと思ったよ。

「裕太です。よろしくお願いします」

「うん」

……………………

何とも言えない沈黙が流れる。もしかしなくても、無口なタイプなのかな?

「料理はどうですか?」

「おいしい」

「何か気に入った料理はありましたか?」

「…………これとこれ」

「カルボナーラとナポリタンですか。パスタがお好きなんですね」

「うん、おいしい」

…………なんか不安になってきた。怒らせてりしてないよね?

「裕太君、心配しなくていいよ。アースは今、とてもご機嫌だからね。こんなによく話すアースは僕も久しぶりに見たよ」

俺が戸惑っているのが分ったのか、ウォータ様が再びフォローしてくれた。助かります。

「それなら良かったです。料理は沢山あるので、ドンドン食べてくださいね」

「ありがと」

そう言ってアース様は食事に戻った。たぶん、問題なく挨拶できたって事でいいんだろう。フォローしてくれたウォータ様にもお礼を言って、宴会の様子を見まわす。

酒飲みグループは、普段の六人の大精霊に三人の精霊王様が加わり、たいそう盛り上がっているな。酒の消費が早そうだ。

ベル達は料理と料理の間を飛び回り、楽しそうに料理を摘まんでいる。うん、ちょっとお行儀は悪いが、今日は広いテーブルに料理を敷き詰めているから、移動しないと食べられないよな。

そもそも聖域になって実体化した精霊って、どう変わったんだろう? 今は酒が入ってるから、明日にでも詳しく聞いておくか。

ジーナ達とフクちゃん達は……うん、問題なさそうだな。ちょっとジーナ達がフクちゃん達を甘やかし過ぎな気もするが、フクちゃん達も楽しそうだから問題ないだろう。見て触れるようになったんだ構いたいよね。

まだ料理やお酒が足りないって事もなさそうだし、俺もご飯を食べて軽く一杯飲むか。ん? ライト様がテーブルの上に立ち、一点を見つめて止まっている。目線の先は……プリンとアイスか……食べたいのかな?

「ライト様。プリンとアイスが気になるの?」

いきなり声を掛けてしまったからか、ビクッと飛び跳ねてしまった。精霊王でもビックリするんだな。それだけプリンとアイスに集中してたんだろう。

「な、なんじゃ。裕太か、妾は甘味など気になっておらんのじゃ」

プイっと横を向くライト様。そう言えばキャラを作ってるんだったな。ライト様の中で、甘味を食べるのは威厳的な事で問題と考えているのかもしれない。とりあえずこの宴会のホスト役としては、気を利かせて楽しんでもらわないといけないよな。

「そう? あのプリンとアイスは新メニューなんだ。ライト様に食べてもらって、アドバイスがもらえたら助かるんだけど……」

「むむ? 妾は甘味を食べたいという訳ではないのじゃが、裕太がそれほど妾のアドバイスがほしいと言うのであれば、試してやるのじゃ」

「ありがとうございます」

「では裕太。ゆくぞ」

ふわりと浮かび上がったライト様が、プリンとアイスに向かって飛んでいく。なかなか難儀な性格だよな。

「まずはプリンとやらを食すぞ」

玉兎の短い手で、どうやってプリンを食べるのかを密かに観察していると、器用に魔力でスプーンを操りプリンを口に運んだ。届かない手で悪戦苦闘しながらも、頑張ってプリンを食べようとする姿が見たかったんだが、対策済みだったらしい。それはそうだよな。長い時間生きているんだ。自分のできる事できない事は分かってるよね。

「あまい! ……悪くはないのじゃ。子供が喜ぶ味であろうな。じゃが、もう少し上品にすれば、妾達、大人にも合う味になるであろう」

一瞬表情が崩れたが俺の目線を意識したのか、感想とアドバイスをくれる。別に大人が甘味好きでも問題ないはずだが、ライト様の中の理想像では譲れないところなんだろう。耳をピコピコ揺らしながらも表情は真面目に、プリンを食べるライト様。かわいい。

「料理人に、ライト様のアドバイスを伝えておくね」

「うむ。新しくできたら、また試食してやろう」

また食わせろって認識でいいんだろうな。

「完成したら、また出しますね」

「うむ。よきにはからえ」

「ゆーた。べるもぷりんたべるーー」

俺がデザートコーナーに居る事に気がついたベル達が突撃してきた。あっ、ライト様がススっとフェードアウトしていく。

突撃してきたベル達を撫で繰り回しながらプリンとアイスを配る。……あとでライト様にも食べられなかったアイスとクレープを持っていこう。

ベル達もデザートに突入したし、もう少ししたらお酒を飲まない組は部屋に戻すか。その前に精霊王様達に頼んで、全員で集合写真を撮らせてもらえないか頼んでみるのもいいかも。ミーハーだけど、すごいメンバーが集まってるからな。