軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百四十二話 額縁

泉の中に属性の杖を設置する柱を六本建設した。透き通った泉から噴水を囲むように現れる六本の柱は、結構カッコいい。あそこに杖を設置してそれぞれの属性が浮かべば、まさしくファンタジーだ。そのあとにグァバードのヒナの様子を見に行って、グァバードの水浴び場を作る事になった。

「ヴィータ、今から水を流して見るから、もしもグァバードが流されたりしたら教えてくれ」

「分かった」

すでに水路に入り込んでいるグァバードもいる。野生を失ったのか確実に警戒心が足りて無いな。まあ、ゆっくりと水を入れるから大丈夫だろう。

ストッパーにしていた岩を少し横にズラすと、新しい水路に水が流れ込んでいく。……水の勢いが結構早いな。水路の角度をつけ過ぎたらしい。あとでトゥルに微調整してもらおう。水がグァバードのところまで到達すると、グアグアと騒ぎ出すグァバード達。水が来て嬉しいのかな?

逃げ出さずに水に向かっていく姿を見ると、たぶん喜んでくれているんだろう。流れ込んだ水が水浴び場に溜まり、グァバード達がワラワラと集まってくる。

「ヴィータ、少し水場が小さかったか?」

「はは、今は集まって狭そうだけど、いずれ落ち着いたら自分達の都合がいいように使いだすから、大丈夫だよ」

問題無いならいいか。なんか密集し過ぎて暑そうだけど、作った甲斐はあったって事だな。じゃあそろそろ、待望のグァバードのヒナと戯れよう。野生動物達と違って、逃げ出さないはずだ。

「グアッ!」

……俺がヒナに近づくと、羽を大きく広げて威嚇するように鳴くグァバードが一羽……メチャクチャ警戒されている。なんだよ、普段は俺が心配する程警戒心が無いのに……。

「裕太、無理強いはダメだよ」

「無理強いはしないけど、ここまで警戒されるとは思わなかったよ」

「母親だからね」

別に危害を加えるつもりは無いんだけど……言っても分かってくれないんだろうな。なんか異世界に来て、精霊以外の動物から完全にそっぽ向かれている気がする。

「…………とりあえず、おとなしく家に戻るよ」

「それがいいね。もう少し大きくなったら親も警戒しなくなるから、その時に会いに来るといい」

「ああ、分かった」

……鳥ってすぐに大きくなるイメージがあるんだけど、ヒナと呼べる間に戯れる事ができるんだろうか?

***

「ゆーた、べるたちがんばったー」

俺が家に戻ってすぐにベル達も戻ってきた。もうすぐお昼だからちょうど良かったな。いや、お昼だから戻って来たのか。

「お帰りみんな。何か変なところはあった?」

口々に色々な報告をしてくれるベル達。動物達の事や、植物の事、大きな池の様子や、新しく開拓した場所の様子を楽しそうに報告してくれる。

「ご苦労様。拠点の外はどうなってた?」

昼間なのでアンデッドは出ていなかったが、デスリザードやデススコーピオンなんかはチラホラ居たそうだ。討伐はベルが風の刃で刻んで、フレアが燃やしたそうだ。可哀想なぐらいに完全に消滅させられてるな。

「よく分かったよ。みんなありがとうね」

お礼とヒナと戯れる事ができなかった気持ちを込めて、ベル達を撫で繰り回す。

「よし、じゃあそろそろお昼にするよ」

「おひるー! ぷりん?」「キュキュキュー」「あいす」「ククーー」「くれーぷだぜ!」「……」

お昼と言うよりも、デザートの方がメインになってるな。

「デザートを食べるのは構わないけどお昼ご飯の後にね。それとお昼に食べたら夜は食べられないけど大丈夫?」

「そうだったー」っとベルが言い、頭を寄せ合って相談しだした。デザートをお昼に食べるか夜に食べるか、真剣な顔をして相談している。……もうすでに今日は沢山お手伝いをしてくれたから、特別に二つ食べてもいいよって言いたくなる。でも約束した翌日から例外を作るのは、教育に良くないよな。俺が悩んでいる間に、ベル達が結論を出した。

「おひるにたべるー」

「分かった。じゃあご飯が終わったら出すね」

喜ぶベル達を連れてリビングに移動すると、ジーナ達もリビングで待っていた。昼食を食べながら模様替えが上手く行ったか聞こう。テーブルに料理を並べ昼食を始める。

「ジーナ、サラ、マルコ、キッカ、部屋は居心地よくなった?」

「んー、あたしはそんなに変わらないかな。元々いい部屋だったし、小物が増えて多少女の子っぽくなった……かも?」

ジーナが最終的に自信が無さそうな表情で言う。

「私達は切り花を飾りました。タマモさんに声を掛けたら、木の枝から綺麗なお花を選んでくれたんです」

「キッカはおにんぎょうさんを、つくえにおいたの!」

「おれはかざるものは買ってなかったから、見てた!」

うーん、これはどうなんだ? お花を飾るのは大変女の子らしいが、部屋が変わるほど小物は増えて無いみたいだな。まあ、最初っから飛ばす必要は無いか。これからも買い物をする機会は沢山あるんだ。徐々に物が増えれば、自分の好みや欲しい物も見つかるだろう。最初の一歩って事だな。

「そうなんだ。じゃあ時間が余っただろ。何をしてたの?」

「あたしの部屋に集まって、師匠から貰ったサラとキッカの魔道具の確認と、キッカが早く動けるようになったから、移動中どうするかを話し合ってたんだ」

「かぜのくつだと、つかれないし、はやくあるけるの!」

歩いて進む迷宮だと、移動時間がかなり掛かるからな。キッカが素早く動けるようになれば、効果は高いだろう。

「お師匠様、お昼が終わったら、みんなで隊列を組んで移動速度を合わせてみるつもりなんですが、構いませんか?」

「うん、構わないよ。でも移動速度が上がるからって、全力で進む事だけを考えたらダメだよ。迷宮には魔物も居るし罠もあるんだ。フクちゃん達が警戒してくれると言っても、無理はしない範囲で移動速度を考えるように」

師匠らしく、ちょっとカッコ良さげな事が言えた。ジーナ達も頷いているし、ちゃんと考えて移動速度の検証をするだろう。難しい話はこれで終わりにして、簡単な雑談をしながら昼食を続ける。

「ごちそうさまー」

食事を終えたベルが、俺の前まで飛んで来る。

「ぷりんーー」

だよね。魔法の鞄からプリンを取り出しベルに渡す。いつの間にかベルの背後には列ができているな。フクちゃん達もデザートか。一応、デザートは一日一回で、お昼に食べると夜は食べられない事を説明しておこう。

結局ジーナ達も含めて全員がお昼にデザートを食べる事になったので、リクエスト通りに一つ一つ手渡しをする。美味しいご飯にも喜んでいるけど、デザートだと喜びが一段階大きい気がするな。

みんなが、美味しい美味しいと言いながら、デザートを食べている姿は雰囲気が良くて好きだ。……変な事を思いついてしまった。今、全員がデザートを食べているって事は、俺が夜にデザートを食べるように選択すれば、夜には独り勝ちではなかろうか?

……子供達に見せびらかしながら一人でデザートを食べる。いかんなクズの発想だ。バカな事はしないで、俺もみんなと一緒にプリンを食べよう。

***

ジーナ達が検証に出かけ、ベル達はお仕事が終わったから公園で遊んでていいと送り出した。ベル達はともかく、ジーナ達にはもう少しやる事のバリエーションを増やした方が良いかもしれない。

アンデッド討伐に行くか、訓練かお休み。ジーナとサラには料理があるが、マルコとキッカの生活にはもう少し起伏が必要だと思う。何か考えておくか。

まずは予定通り額縁を作ってしまおう。全部で二十三枚書いてもらったんだよな。メルとメラルに絵を二枚渡しているけど、二人の分も一応額縁を作っておくか。

額縁に装飾するのは難しいから、シンプルに木を切って、ガラスをハメ込めるようにすればいいか。……あれ? ディーネに水分を抜いて乾燥してもらった木は沢山あるんだけど、額縁に向いた木とかあるのか? あとニスとか塗らないとダメな気がする……。

とりあえず木の事はドリーに聞いて、ニスとかは後で買ってきて塗ればいいだろう。まずは作ってみる事が大事だな。そう言えば額縁だけじゃなくて、公園の遊具にも塗料を塗っておいた方がいいだろう。シドさんにでも相談してみるか。

「裕太さん、なにか用事ですか?」

「うん、近場なのに召喚してごめんね。えーっと、額縁を作りたいんだけど、この中でどの木が一番額縁に向いてるか分かる?」

「額縁ですか? 額縁は作った事が無いので分かりませんが、木目が詰まっていて曲がり辛い木がいいと思います。この中ではこの木ですね。よく家具にも使われているはずです」

「なるほど、ありがとうドリー」

「他にも何かお手伝いする事はありますか?」

「……もしかしてだけど、加工した木と木の接合とか出来たりする?」

「そうですね、木と木を接合するぐらいならできますよ」

ニッコリと微笑むドリー。その笑顔には確固たる自信を感じる。

「それなら、パーツを作り終わったらまた召喚するから、手伝ってもらっていい?」

「分かりました」

ドリーを見送ってパーツ作りを始める。しかし、木と木を接合してくれるのは助かるな。木と木を釘で繋ぐよりも綺麗に作れそうだ。

必要なパーツは裏の板と、表のガラスと裏の板がハメ込める枠組み。あとは……なんて言う名称か分からないけど、表と裏が分離しないようにするストッパーだな。最近はだいぶ慣れたけど、真っ直ぐ平らに切るのは難しいから、何か定規になるような物が欲しい。

……宝箱が使えそうだ。直線だし、高さもあるから魔法のノコギリがズレにくそうだ。表の枠は四つに分割して作ればいいし、なんとかなりそうだ。

……………………正直、額縁作りって簡単そうだと思って侮ってました。今まで大きい物ばっかり作ってたから、修正が簡単だったけど、小さい物を作るのって思った以上に大変なんですね。

裏の板とガラスをハメ込む段差が物凄く難しい。切れすぎるノコギリって便利だけど細かい作業に向かない。途中でようやく他の道具を使う事を思いついた。開拓ツールのレギュラーである、魔法のシャベルとノコギリが便利過ぎて、他の道具を使おうって思いつかないのは良く無い癖だな。

開拓ツールの彫刻刀の小刀を使うと安定して木を切り落とす事ができ、なんとか全てのパーツを切りそろえる事ができた。道具にも適材適所って言葉が当てはまるんだな。あと小刀って書いてあるのに二メートルまで大きくする事ができるんだよね。矛盾を感じるよ。

さて、準備ができたしドリーを召喚しようと思ったが、ノモスにガラス板を作ってもらわないとダメだから、蒸留所に行くか。

「ドリー、準備ができたから力を貸してくれ。あとノモス、今、手が離せるか?」

「分かりました」

「ん? まあ、構わんぞ」

蒸留所から二人を呼び出し、やってほしい作業の説明をする。

「私はこのパーツを結合すればいいんですね」

「儂はそのパーツにピッタリとハマるガラス板を作ればいいんじゃな」

「うん、頼むよ」

……俺が苦労して作ったパーツをいとも簡単に繋げるドリー。わずかな歪みも簡単に修正してくれた。その額縁に合わせてノモスがピッタリのガラス板を簡単に作ってくれる。全部、ノモスとドリーに頼めば一瞬で額縁ができたんだろうな。でも、俺が作ったって事に意味があるんだ。そう言う事にしておこう。