軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百二十七話 いつもと違う?

九十一層の様子を見て帰る途中にジーナ達に合流した。ジーナ達は既に四十層まで攻略を終え、次の攻略にはほぼ最前線の火山に足を踏み入れそうだ。五人中三人が子供の精霊術師パーティー、迷宮の最前線に到達。話題性抜群だな!

合流した後、全員でシルフィに飛ばしてもらい迷宮一層に向かう。飛んでいる間にジーナ達から様々な報告を聞いた。

マルコは新装備の魔法の盾について楽しそうに話してくれた。しかも結構無茶な事をしていた。ラフバードの攻撃を受け止め、オークの槍を弾き、体は流されたがトロルの棍棒もしっかりとガードできたそうだ。

トロルの棍棒って森の中で振り回して、結構太目の木をなぎ倒してたよな。そんなのを魔法の盾で受け止めようとしないで欲しい。一応、ウリやメラルに頼んで安全対策はしていたそうだけど、話を聞くだけで心臓に悪いから、そんなに眩しい笑顔で報告しないで。

最終的にはジャイアントトードも受け止めようとしたらしいが、ジーナとサラが説得して止めてくれたそうだ。マルコって俺が思っている以上に無鉄砲なところがあるのかもしれない。キッカも十分に力を付けたから、気が楽になって子供らしさが出て来たのかな? 喜ばしい事なのかもしれないが、冒険者としては不安要素だ。

ジーナにも新しい装備品の効果を聞いてみたが、攻撃を受ける事が無かったそうでよく分からないそうだ。四十層までほぼ無傷……他の冒険者が聞いたら自信がへし折られそうな内容だな。

索敵、奇襲、防御、攻撃……浮遊精霊と言えども全てが高性能だ。それに加えてメラルとドリーか、俺を除けば迷宮都市で一番強い戦力なのかもな。これでフクちゃん達が下級精霊に進化したら負ける方が難しくなりそうだ。

サラの報告では、今回もワルキューレに会ってまた誘われたそうだ。ジーナが俺が言った通り、自分達のメンバー以外と行動を共にする事が禁じられていると告げたらしいが、これだけタイミングよく接触してくるとかなり怖いな。次に接触してきたら俺から話を付けに行こう。ガッリ親子の二の舞も辞さない構えだ。

次にメルとメラルに話を聞くと、メラルには最近とっても充実していると言われた。工房ではメルとコミュニケーションを取りながら楽しみ、迷宮では魔物を燃やす。とっても楽しいと満面の笑みだ。イフと言いフレアと言い、どうやら火の精霊は戦闘狂タイプが多いらしいな。シバはどうなんだろう?

メルは色々と素材も手に入ったし、本格的に工房に籠って鍛冶に打ち込むそうだ。ファイアードラゴンの牙の短剣も、次に俺が迷宮都市に来るまでに仕上げると約束してくれた。迷宮を出たら直ぐに工房に戻るそうなので、先に雷のハンマーを渡しておく。ついでにあとでアダマンタイトも渡そう。腐るほどあるからな。腐らないけど。

高価な魔道具や素材を貰う訳には行かないと断られたが、師匠から弟子へのプレゼントと言う事で納得させた。その時にメルから師匠が弟子に贈り物をするなんて、めったに無い事なんですよって言われた。世間の師匠は精神が強いらしい。

最後にドリーに話を聞くと、一度もドリーが手助けをすることなく四十層まで到達。精霊術師としてしっかりと考えながら行動ができていたそうだ。さすが裕太さんの弟子ですねっと褒められて、結構本気で嬉しかった。

ジーナ達と合流できると、迷宮から出る帰り道がかなり有意義な時間になるな。次からもできるだけジーナ達と帰るタイミングを合わせたい。でも俺の場合は未到達の層の攻略だから、時間が読めないから難しい。

だいたいの報告を聞いた後は、思い思いに雑談をする。しかし俺の目から見るとかなり大人数で移動してるよな。精霊が見えなければ六人しか居ないけど、俺から見たらかなりの大集団だ。フルメンバーならエルトリュード大陸全部を敵にまわしても勝てそうな気がする。

「裕太、もうすぐ出口だけどそろそろ降りる?」

出口付近は人が多い。ジーナ達も居るしここら辺から歩いて行った方が良さそうだな。

「ありがとうシルフィ。ここから歩いていくよ」

シルフィに降ろしてもらいゾロゾロと出口に向かって歩く。人間六人+精霊十四人の総勢二十人の大所帯。いつの間にか行動を共にする人数がかなり増えた。

「ふー、やっぱり迷宮から出るとホッとするな」

迷宮から出て背筋を伸ばす。シルフィ達の御蔭で安全なんだけど、迷宮の中ではやっぱり緊張してるんだよな。

「なあ師匠、今日のばんごはんどうするの?」

宿に向かって歩いているとマルコが質問してきた。晩御飯かもう暗いし屋台も少なくなっている。

「うーん、もう遅いから宿に戻って魔法の鞄の料理を食べようか。マルコもそれでいい?」

「やったー! うん、おれ、それでいい」

俺の言葉にマルコが喜ぶ。ん? まわりでジーナ達も喜んでるみたいだな。ちょっと不思議に思っていると、ジーナが説明してくれた。今回の迷宮探索は時間が掛かった分、後半は携帯食料が中心になってしまって食事が侘しかったそうだ。ジーナ達に預けた魔法の鞄は時間が経過するから、料理をそのまま持って行くのは難しいもんな。

「湿原までは倒した魔物の肉が手に入ったからなんとかなったけど、三十一層からアンデッドしか居なくて大変だった」

ジーナがうんざり顔で追加の説明をしてくれた。アンデッドの層か、確かに食べられる魔物がいないから辛いだろうな。今日の晩御飯は豪勢にしよう。途中でメルとメラルと別れ宿屋に到着した。

「おかえり、怪我はないかい?」

「マーサさん、ただいま。みんな怪我一つなく無事ですよ」

「そうかい、それは良かったね。それでご飯はどうする? 火を落としちまったから、まともな料理は出せないよ?」

「食事は買って来たものがあるので大丈夫です。明日の朝食からお願いしますね」

分かったよとバンバン俺の背中を叩くマーサさん。結構痛いんだけど、マーサさんの手は痛くないんだろうか? まあいいか、ちょうどいいから今の内に頼みごとをしておこう。

「俺はちょっとマーサさんにお願いがあるから、ジーナ達は部屋に戻って休んでて」

ジーナ達にベル達を付けて先に部屋に戻す。

「マーサさん、俺達は二日か三日後には迷宮都市を出る予定です。材料と費用は出しますので大量の料理をお願い出来ますか?」

「ああ、旦那も楽しみにしているから何の問題も無いよ。それならベティに会う時間も取れるかい?」

ベティ? 確か商業ギルドのグルメ受付嬢だったな。そう言えば会いたいって言われてたんだった。

「明日の午前中はマリーさんの雑貨屋に行きますけど、それ以降ならいつでも時間を取れます。ベティさんの都合のいい時間で大丈夫ですよ」

「そうかい。じゃあ伝えておくよ。料理の材料は厨房に居る旦那に渡しておくれ」

「分かりました」

マーサさんに一礼して奥の厨房に入る。おっ、トルクさんとカルク君が後片付けをしている。なんか仲良さげだな。親子仲が良いのは良い事だ。

「トルクさん、ちょっと良いですか?」

「おお、戻ったのか。大丈夫だが何か用か?」

「ええ、二~三日後には迷宮都市を離れるので、前に頼んだ大量の料理をお願いできますか?」

ズザッっと音がした瞬間、俺の目の前にトルクさんが……この世界の人達は簡単に人の限界を突破してくるから困る。

「任せろ」

「え、ええ、お願いします。材料は何処に出しますか?」

「ここに出してくれ。材料を見ながらどんな料理を作るか考える」

「あっ、はい。お願いします」

なんかトルクさんから変なオーラが出てるんだよな。そんなに気合を入れなくても大丈夫なんだけど。チラッとカルク君を見ると、こちらを完璧に無視して洗い物をしている。関わり合いになりたく無いらしい。

「どうした?」

「何でもないです。すぐに出しますね」

迷宮の素材をトルクさんの目の前に並べる。今回は目新しい材料は無いんだけど大丈夫かな?

「これでお願いします」

……またトルクさんが固まったな。どんな料理を作るのか考えているんだろう。カルク君にトルクさんの事をお願いしてサラ達の部屋に向かう。さて豪勢に行くか。

***

「いらっしゃいませ、裕太様」

「ソニアさん、おはようございます」

雑貨屋に入るとスッと現れるソニアさん。俺が普通に返事をした事で、ちょっと残念そうだ。毎回驚かされているから、さすがにもう慣れた。どうせ昨日の間に俺が迷宮が出たって情報が届いてたんだろう。

「マリーさんはいらっしゃいますか?」

「はい、裕太様をお待ちしていましたので、直ぐに移動できます。解体倉庫にご案内致しますか?」

普通なら解体倉庫に行くんだけど、今回の場合はどうなるんだろう?

「えーっとソニアさん。素材を卸しに来たのは間違いないんですが、今回の素材はアダマンタイトがメインなんです。普通に解体できる魔物は無いんですが、いままでの解体倉庫でいいんですか?」

「……お茶をご用意致しますので、奥の部屋でお待ち頂けますか?」

「分かりました」

奥の部屋に移動して出されたお茶を一口飲む。俺が八十六層以降を目指すと知ってただろうから、アダマンタイトの事は頭にあったはずだ。全部がアダマンタイトってところが予想外だったのかな?

「シルフィ、マリーさん達の様子は分かる?」

「別の倉庫の手配をしているわね。鍛冶屋が集まっている場所の倉庫を、開けさせるつもりのようよ」

「そうなんだ。ありがとうシルフィ」

そうなると、少し時間が掛かるかな? ベル達は迷宮都市に遊びに、ジーナ達は冒険者ギルドに行ったから、少しぐらい時間が掛かっても問題無いか。

「裕太さん、お待たせいたしました」

少し待つと、マリーさんが部屋に入ってきた。

「いえ、そんなに待ってませんよ。こちらこそ急に来てすみません」

マリーさん達は情報を得て、俺が来るのを予想していたかもしれないけど、実際には俺がノンアポで突撃しているからな。謝るのは俺の方だ。

「いえいえ、いつでも気にせずに店にいらしてください。……それで裕太さん。アダマンタイトはどのぐらいの量があるんですか?」

「量ですか? えーっと、俺が普段納めている魔物と同じ位の量がありますね」

「それ程の量のアダマンタイトですか……裕太さん、申し訳ありませんが希少金属の相場にかなりの影響がありますので、捌くのに少しお時間を頂いても構いませんか? おそらく、国と鍛冶師ギルドとの話し合いになります」

希少金属が大量に流出すると、色んな所に波紋が広がりそうだな。まあ、俺にはどうでもいい事だ。マリーさんの好きなように捌いて貰おう。普段なら儲けにヨダレを垂らしているマリーさんが、真面目な顔をしている時点で関わりたくない。

「いつでも構いませんよ。素材を卸した後はマリーさんの自由にしてください」

「ありがとうございます」

深々と頭を下げるマリーさん。なんか戦争に利用されそうな雰囲気だよね。アダマンタイトで身を固めた軍隊とか出て来そうだ。まあ、どうせ俺が卸した薬草とかも戦争に利用されているんだろうし、今更アダマンタイトぐらいで文句を言ってもしょうがない。それよりも光属性の杖の相談をしよう。