軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百二十三話 実験

八十六層を探索して、自分が役に立たない事が判明した。初めての層でただ浮かんでいるだけなのも虚しいので、ベル達に協力してもらって色々実験を頑張った。幸い? な事に絶え間なくそこら中に雷が落ちまくっているので、実験しほうだいだ。

実験

一 純水

とりあえず俺の知識の中で一番確実な、ほとんど電気を通さないらしい純水を試してみた。七十層のシーサーペントの亜種を倒した時に、レインに説明していたから直ぐに作ってくれた。

地面に流れる水の上に、板状にした純水を設置する。その上に金属の欠片を置く。普通の水と純水が混ざらないかと思ったが大丈夫らしい。……基本的に純水に電気が流れるよりも地面に伝わる方が抵抗が少ないのか、雷が落ちてもほとんど金属の欠片には影響がない。

偶に何かの拍子に金属に電気があたるが、静電気程度の電気まで減少しているようだ。恐る恐る確かめてみるとバチッっと音がして手がしびれた。罰ゲームで使う電気ショックグッズよりも少し強いぐらいかな? 痛いけど耐えられないほどでは無い。純水の靴と手袋ならなんとか大丈夫か?

ニ 真空

ベルに頼んで真空の層を作って貰う。

ベルでは真空がよく分からなかったらしく失敗。シルフィ曰く、風で真空状態を保つのはとても大変らしいので、上手く行っても探索には向かなかった模様。

三 避雷針

トゥルに頼んで地中深くまで、金属の柱を生やして貰う。

効果は認められるも、全てが地中に流れる訳では無く水面がバチバチと音を立てる。うーん、落ちる雷の量が多過ぎて飽和状態なのか? 普通に感電しそうだし、ボコボコと避雷針を立てながら歩くのは大変なので却下。

四 共同作業

トゥルが地面を持ち上げ、レインが水分を抜いて、フレアが火で完全に乾かす。電気は流れて来なくなったが、こちらも手間が掛かり過ぎるので却下。地面を持ち上げるだけでも効果がありそうな気もするが、こちらも確信が持てないので却下。

他にも色々と試しては失敗を繰り返し、訳が分からなくなって、葉っぱの船をタマモに作って貰って、雷で焦げたりとバカな事をして実験は終了した。

「それでどうするの?」

シルフィが聞いてくる。なんか声に呆れたニュアンスが混ざっている気がしたが、ツッコんでも悲しい答えが返ってくるだけっぽいので流そう。

「とりあえず色々試してみたけど、上手く行きそうなのは純水を使った電流対策かな」

「一番最初に試した方法よね?」

「……うん」

結局それ以外にいい方法が思い浮かばなかったんだからしょうがない。色々頑張ったんだから結果だけではなく、過程も大事にして欲しい。直流と交流の違いすらよく分かってない俺にしては、頑張った方だと声を高らかにして言いたい。言わないけど。

「それで純水でどうするの?」

「えーっと、厚底の純水の靴と手袋をレインに作って貰って、後は地面に流れる水も俺の周りから逸らして貰おうかと思ってる」

純水の厚底ブーツみたいな靴にミトンみたいな手袋があれば、なんとかなるだろう。水の流れを逸らすのも、流れを変えるだけだから力はそれほど使わず大丈夫だそうだ。もし電流が流れても罰ゲームぐらいなら耐えられる。完璧では無いが、これで探索の目途が付いたと言う事にしておこう。

***

「どう?」

「とっても似合ってるわよ?」

シルフィ、なんで疑問形で半笑いなの?

「かっこいいー」「キューキュキュキューー」「すごくいい」「ククーー」「やるな!」「……」

ベル達が純粋な目で褒めてくれるのは嬉しいが、純水の厚底靴と純水のミトン……たぶんシルフィの反応の方が正解なんだろうな。

朝食を済ませて八十七層に出発する前に、雷対策の装備をレインに作って貰った。外見は誰も見ていないって事で諦めよう。自然の鎧みたいに厨二感は無いから気持ちは楽だ。あとは出発前にイフを召喚しておかないとな。

「ようやく出番か!」

イフを召喚したとたん、元気いっぱいに飛び出してきた。待ちかねていたらしい。

「うん、出番なんだけど、外はあんな感じなんだ。大丈夫?」

「ん? ああ雨なのか、問題無いぜ。雨なんかで俺の火は消せねえよ!」

ニヒルに笑うイフ。その姿を見たフレアがウットリしている。こうやって学習しているんだな。確かにカッコいいけど、大人でワイルド系美女なイフがやるからカッコいいんだよな。フレアが同じセリフを言っても微笑ましいだけだと思う。まあ、その事を伝えてもガッカリするだろうから言わないけど。

「それなら良かったよ。魔物はアダマンタイトのゴーレム。俺を襲ってきた魔物は全部任せるね」

「アダマンタイトか! 良いぜ、任せな!」

「ああ、頼むよ。あっ、この装備の効果も試したいから最初は少しこっちにも魔物を回してくれ」

「装備? その変な水か? 動きにくそうだな」

「キュキューキューキュキュー」

イフの問題発言にレインが一生懸命抗議する。ヒレをパタパタととっても可愛らしい。

「ん? レインが作ったのか? 雷を通さねえ? そいつはスゲエな。変って言って悪かったよ」

レインの抗議が通じたのかイフが謝る。レインがキューキューと言いながら頷いてる。どうやら許してあげたようだ。会話が終わるとフレアがイフに嬉しそうにご挨拶し、その後にベル達が続く。

「おう、元気そうだな。しっかりやってるか?」

ご挨拶するベル達をグリグリと撫でながら、一人ずつしっかりと受け答えをするイフ。住んでいた火山でも下の子達の面倒を見ていたって言ってたもんな。手慣れた感じでベル達を受け流している。姉御って感じだ。

「おし! 裕太、そろそろ行こうぜ!」

「分かった。じゃあ行こうか。レインは俺の周りの水を排除で、フレアは周辺の警戒。ベル、トゥル、タマモ、ムーンは宝箱と階段の探索だね。頼んだよ」

「みつけるー」「がんばる」「クーー」「……」

探索組が激しい雷雨の中に飛び出して行く。八十七層から英雄達は完全に探索していないから、宝箱も相当期待できるな。頑張って魔法の杖が入った宝箱を見つけて欲しい。

「よっしゃ、いくぜー」

イフも待ちきれないのか、俺を待つことなく雷雨の中に飛び込んでいく。……まあいいか、特に目的地が決まっている訳じゃ無いし、イフに付いて行こう……っと思ったけどもう姿が見えない。

「なんだよ!」

「なんだよじゃなくてね。俺が居ない所で魔物を倒されても回収できないんだ。アダマンタイトをそこら辺に放り出されたら、さすがにもったいないから、せめて見える位置で戦ってくれ」

再召喚して文句を言うイフに、お願いする。

「……んー、まあそうか。分かった。じゃあゆっくり行くから付いて来いよ」

良かった。話せば分かってくれるから、精霊って素晴らしいんだと思う。人間の戦闘狂タイプだと、知った事かで話が終わりそうだからな。

「あらためて、行くぜー」

右腕をグリングリンと振り回しながら雨の中に飛び出すイフ。慌てて追いかける俺。ゆっくり行くとの言葉通り直ぐに追いついたが、既に両手には火が灯っている。やる気満々だな。あっ、フレア、周辺の警戒ってそう言う事じゃ無いよ。

魔物が何処から来るのかを見張るのが仕事であって、周辺をギュンギュン飛び回って、イフを魔物まで案内するのは警戒じゃないからね!

「……魔物が奇襲して来そうになったら私が注意してあげるから、今回は好きにさせてあげたら?」

シルフィが苦笑いで俺に言う。……まあしょうがないか。フレアはイフが大好きだもんな。物凄くイフに負けた気がするけど、フレアも楽しそうだし今回は諦めよう。

「ありがとう、頼むね」

シルフィにお礼を言って、フレアに導かれて進むイフの後ろを追いかける。少し進むとオークのアダマンタイトゴーレムが三体出現。嬉しそうに殴り掛かるイフ。あっ、当たった拳の火が弾けるように消えた。

「さすがアダマンタイトだな! これぐらいの火じゃダメか。次はもっと熱く行くぜー」

自分の火が消えた事を喜ぶイフ。すぐさま両手の拳に火を灯し、俺の方に向かって来ていたオークを殴りつける。ガイン! っと鈍い音を立てて吹き飛ぶオーク。

金属と火がぶつかって、なんで金属が押し負けるんだろうね。火って密度が高まったら物質になるの?

「お前らの相手は俺だ! よそ見してっと火傷するぜ!」

まあ、ゴーレムでも火の相手をするより俺の方に来るよね。あと金属って火傷するの? 今回はツッコミどころが満載だな。ガインガインと音を立てながらボーっとイフの戦いを見守る俺。

「んー、こんぐらいが丁度いいな! あんまり熱くし過ぎると感触が無くなってつまらないからな。フレアも覚えとけよ」

コクコクとウットリした顔で頷くフレア。どうやらある程度手応えが残りつつも、アダマンタイトを溶かす丁度良い温度を見つけたらしい。何度位なんだろう?

「ねえシルフィ。変な英才教育が始まってる気がするんだけど、止めた方が良いかな?」

「止めても、見ているから勝手に覚えるわね」

「そっか……」

イフの実験の結果。ドロドロに溶けて前衛芸術作品みたいになりつつも、ぎこちなく動いているオークのアダマンタイトゴーレム。少し可哀想に思えるのは間違ってるのかな?

「そろそろ次に行くか」

ボロボロのゴーレムにサクッとトドメをさして歩き出すイフ。俺の方に少し魔物を回してくれってお願いは、すっかり忘れてるんだろうな。ある程度イフが満足するまで待つか。ドロドロに溶けたオークのゴーレムを収納してイフを追いかける。最後まで満足しなかったら八十八層で検証だな。

***

「またいつでも呼んでいいからな! 本当に呼んでもいいんだぞ!」

絶対に呼べって事ですね。分かります。

「今回は九十層で泉の家に戻るから、また次の機会に呼ぶよ」

「絶対だぞ!」

「ああ、大丈夫だ。じゃあ送還するからみんなによろしくね」

さっきまで暴れてスッキリ上機嫌だったイフだが、送還するとなったら次が気になったらしい。今までがよっぽど退屈だったんだろうな。ちょっと申し訳なく思いつつもイフを送還する。

まあでもアンデッドとの戦いと比べると今回のイフの戦いは見応えがあった。ドラゴン型のアダマンタイトゴーレムとの戦いとか特に凄かった。

激しい雷雨の中、拳に火を灯して巨大なドラゴンを殴り飛ばす美女。ちょっと高笑いがバーサーカーを連想させた事に目を瞑れば、神話の世界だったな。

ちょうど宝箱に案内してもらう時で、ベル達も見ていて大興奮! ヒーローショーさながらの盛り上がりだった。俺もあんな風にカッコよく戦いたいな。やっぱり武器がハンマーやノコギリだとちょっと切ない。