軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百九十九話 氷室

ベル達と遊んでから数日。俺は開拓し、ジーナ達は訓練とアンデッド討伐を繰り返した。

「ねえヴィータ、今日で聖域に必要なスペースの開拓は終わったんだけど、動物達の様子はどう? 追加で捕獲しに行っても大丈夫かな?」

「うーん、まだ落ち着いて無いから、まだ時間を空けた方がいいね」

「そうなんだ。エサは食べてるんだよね?」

「うん、食べてるよ。最初はかなり警戒していたけど、今はしばらく様子を見て、じっくり臭いを確認した後に、少しだけ口に含んで、また時間を空けてから食べてるね」

……なんだその行動は。日本の動物ってそんなパッチテストみたいな方法を取らないよね?

「とりあえず、凄く警戒しているのは話を聞いて分かったよ。このままエサを与えて続ければ、人に懐いたりするかな?」

「野性味は薄れるとは思うけど、それでも元が野生の獣だからね。簡単に懐く事は無いよ」

「やっぱりそうなんだ」

森を歩いていたらキツネやタヌキが寄って来て、撫でまくりってのは夢みたいだな。ま、まあ、自然の生態系を作る為に捕まえてきたんだし、そんなにショックじゃない。

例え、毎日、モフモフキングダムに行って全力で玉兎達に逃げられ続けても、グァバードにただの置物のように存在を無視されていても、全然気にしない。全然気にしてなんかいないんだ。

そう言えばグァバードがついに卵を産んだんだよな。ヴィータに確認したらちゃんと有精卵で、今は親鳥達が交代で卵を温めている。いずれはヒナが生まれるはずで、なんとか刷り込みがおこなえないか画策している。

しかし動物を百匹以上に増やすってのはまだ先になるな。グァバードを追加で買って来れば直ぐに達成できるけど、ヒナも増えるだろうし、グァバードばかり増えまくってもしょうがない。魔法の杖を見つけるのは時間が掛かりそうだし、余裕はあるか。いざとなったら森を増やしてそちらに、動物を確保すればいい。

「そう言う事なら俺は迷宮都市に行って、杖を探してくるかな。エサやりはこのままヴィータにお願いしてもいい?」

「うん、任せてくれていいよ。でもエサの補給はどうしようか?」

そう言えばそうだったな。エサのつもりで連れてきたネズミはまだ増えて無いし、お肉を定期的に運ばないと、争いになる。

魔法の鞄は置いて行けないし……精霊達に狩りをして貰おうにも、周りに食べられる生き物は居ない。死の大地の外まで行って貰うのは気まずい。どうしたものか……っていうかディーネに頼んで凍らせて貰うしか無いよね。

毎日ディーネに凍らせてもらえばいいかもしれないけど、そうなると氷室が必要だな。ただでさえ暑い死の大地。凍らせてもそのままだと直ぐに溶けてしまう。溶けて凍らせて繰り返すのは良くないはずだ。

トルクさんが持っているような、冷蔵庫に使える魔道具が簡単に買えるのなら問題は無いが、トルクさんが必死で頼み込んだって言ってたから、簡単には手に入らないだろう。

無難に氷室を作って、魔法の杖と一緒にマリーさんに頼めばいいか。氷室はできるだけ深く掘って、おがくずを敷き詰めておけば形にはなるだろう。

「明日、氷室を作るよ。そこに肉や穀物を保管しておけばしばらくは持つと思う。手間が増えるけど、頼めるかな?」

「ああ、氷室か、名案だね。それぐらいの手間なら何の問題も無いよ」

「助かるよ」

迷宮都市に行く前に一仕事増えたな。でも、氷室作りはちょっとワクワクする。子供の頃、テレビで見てなんで地下に氷を置けば半年や一年も氷が持つのか不思議だった。そんな氷室を自分の手で作る事になるなんて、ちょっと不思議で嬉しい。

***

「じゃあ、今日は氷室を作ります!」

シルフィに頼んでジーナ達をアンデッドの巣を連れて行ってもらい、俺は家の隣を氷室の予定地に決め、周りで遊んでいるベル達に宣言してみた。

「ひむろー?」「キュー?」「ひむろ?」「クー?」「なにそれ?」「……?」

氷室を知らなかったか。それなら言葉だけでは分からないよね。ベル達の頭上にハテナマークが浮かんでいるのが見える気がする。

「地面の下にお部屋を作るんだよ」

「べるたちのおへや?」

おうふ。ベル達の顔がちょっとワクワクしている。なんか気まずいけど、ちゃんと言わないと氷室がベル達のお部屋になってしまう。

「残念ながら違います。氷室はお肉やお野菜のお部屋だね」

「わかったー」「キュキューー」「りかいした」「ククーー」「なるほど」「……」

何となく理解してくれたようだ。ムーンは頷いているのかプルプルしているのか、ちょっと分かり辛いけどベル達が何も言わないから分かっているんだろう。

「そう言う訳なので、タマモ、ここの芝生を隣に移動させてくれ。三メートルぐらいのスペースを四角くお願いね」

「ククックーー」

タマモがちょっと不器用に敬礼をした後、「クー」っと鳴いて芝生を移動させてくれた。お礼を言って撫で繰り回す。

「今日も土木工事だ。悪いけどトゥルも付き合ってね」

「うん」

「ベル達はいつも通りグァバードのお世話と、見回りをお願いね」

「はーい」「キュー」「クー」「まかせなさい」「……」

お手伝いに張り切るベル達を見送る。

「トゥル。タマモが芝生をどかせてくれた地面に階段を作るから、崩れないようにできるだけ深くまで強く固めてくれ」

「わかった」

コクンと頷き地面に向かって右手を向ける。いつもなら直ぐに終わっているんだけど、今日は念入りに固めてくれているのか、時間が掛かっているな。

ハンドオーガーで井戸を掘った時は、そのまま地面を掘ったからいつ崩れるか怖かった。トゥルが居てくれると安心できるから助かるな。

「できた」

「ありがとうトゥル」

お礼を言って頭をワシャワシャとしておく。さて、魔法のノコギリで四角く螺旋階段を切り出すか。……四角くても螺旋階段って言うのかな? 螺旋って円だよね? ……まあいいか。

俺が地面を切り出し土を収納すると、トゥルが再び地面を固めてくれる。いい感じのコンビネーションだ。これだけ土を固めていたら、岩で補強しなくても大丈夫かな? いやいくら固まっていても土だと緩むか、形ができたら下から岩で補強しながら上がってこよう。

流石に井戸を掘るほど深くまで掘らなくてもいいよな。日本だと深くても四メートルから五メートルぐらいだった気がするから、暑い土地柄を考えて二十メートルぐらいでいいかな? いや、余裕を持って三十メートルぐらい掘っちゃうか。

手間が増えると言っても開拓ツールのおかげでそこまで大変じゃ無いし、余裕を持っておいた方がいいよね。上り下りはその分大変になるけど、利用するのはヴィータとディーネなんだし、飛ぶから問題無いだろう。

「ふー、このぐらいで十分だね。トゥル、北向きに横穴を掘るから、もう一度地面を固めてくれ」

「うん」

念入りにトゥルに土を固めて貰った後、魔法のシャベルで慎重に土を掘り出す。二メートルほど奥に掘り進みそこに部屋を作る。氷室なんだしあんまり広くしてもしょうがない。

高さと横幅は二メートルぐらいで奥は三メートルぐらいにするか。境界線に使っている二メートルの立方体の岩を設置して、穴を開けて部屋にするか。岩が支えれば土が崩れてくる事も無いだろう。

魔法のシャベルで土を掘り、空いた空間に魔法の鞄から岩を設置する。あとは岩を支えにするようにくり抜けば完成だ。

「トゥル、こんな感じだけど大丈夫かな?」

「うーん、じかんがたったらあぶない?」

トゥルがまわりをキョロキョロと見回しながら言う。……マジで?

「トゥルでなんとかできる?」

首を横に振るトゥル。無理なのか。

「じゃあ、ノモスに頼んだ方がいいかな?」

「うん」

じゃあ、ノモスを召喚するか。

「なんじゃ?」

「ああ、氷室を作ったんだけど、トゥルに聞いたら構造的にちょっと危ないみたいなんだ。悪いけど手を入れてくれる?」

結局ノモスに頼むなら、最初からノモスに頼めば良かったかな? まあ、氷室って事でちょっとワクワクできたからいいか。

「ふむ、確かに弱い部分があるな。時間が経つと一部が崩れて結局全てが埋まる。トゥル、よく分かったな」

グリグリとトゥルの頭を撫でるノモス。なんか珍しい光景を見た気がする。トゥルも嬉しそうだ。

「では、補強するか。裕太、設置した岩は邪魔じゃから収納しておけ。それと階段部分もやっておくぞ」

言われた通り岩を収納する。結構自信があったアイデアだったのに。少し寂しい。

「じゃあ頼む」

ノモスが軽く手を振ると、ゴゴゴっと鈍い音がして土が岩に変わる。たぶん階段部分も全部岩になってるんだろうな。

「うむ、これで大丈夫じゃな。では、儂は蒸留所に戻るぞ」

「あ、ああ、ありがとうノモス」

軽く手を振って飛び去って行くノモス。さすが大精霊、アッサリとやる事が大規模だ。さて、最後はノモスの手を借りちゃったけど、氷室は完成した。ディーネを呼ぶか。

「裕太ちゃん、お姉ちゃんの出番なのねー」

豊かな胸を張り、お姉ちゃん参上って感じで召喚されるディーネ。こういう仕草をベル達がマネをするんだよな。まあ、ディーネだししょうがないか。

「ああ、氷室を作ったから氷を準備して欲しいんだ。まずは地面に氷をお願い」

「わかったわー」

フイっとディーネが手を振ると水が生まれ、パキパキと音を立てながら凍りつく。その上にラフバードやオークの肉を並べる。氷の上を普通の靴で歩くのは結構大変だ。

「ディーネ、このお肉も凍らせてくれ」

「はーい」

パキパキと凍りつくお肉。瞬間冷凍って味が落ちないんだっけ? あとはこの上におがくずを撒けば何とかなるかな? でもおがくずを撒くと肉を綺麗するのが面倒かな。洗浄で何とかなる気もするが、氷室内全てを綺麗にするのも大変そうだ。

「ディーネ、この部屋の氷ってどのぐらい持つと思う?」

「んー、お肉を凍らせたまま保存したいのなら、氷室内の氷をもっと増やして、お肉も氷で覆えば何日とは言えないけど、当分持つと思うわー」

「お肉の周りを氷で覆ったら、取り出し辛くないか?」

「お姉ちゃんなら、簡単に取り出せるわ」

ふむ、エサをあげるのはヴィータに頼むとして、肉を取り出すのはディーネにお願いした方がいいかもしれない。

「ディーネ、ヴィータが必要な分のお肉の取り出しに協力してくれる? その時に溶けた氷を再び凍らせて欲しいんだけど、いい?」

「うふふーー。裕太ちゃんの頼みならしょうがないわねー。お姉ちゃんに任せなさい」

頼られるのが嬉しいのか、ドヤ顔がハンパない。まあ、ディーネのおかげなのは間違いないからお礼を言っておこう。これで動物達のエサは確保できたな。明日から迷宮都市に行くか。みんなにも伝えておかないとな。

「頼むよ。ありがとうディーネ。さすが大精霊だな!」「すごい」

俺とトゥルでディーネを褒めちぎり、満足したようなので地上に上がる事にする。ノモスが手を入れてくれた階段は、完璧だった。