軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百九十七話 ストレス発散

とりあえず、精霊王様から出された条件を達成する為に、昨日はシルフィに付き合ってもらって岩山の解体に向かった。一日で済ませる為に夜中まで頑張った。石材は十分に集まったから今日は穴掘りだな。

「今日、俺は開拓をするから、トゥルは手伝ってね。ジーナ達はシルフィと一緒にアンデッドの巣を潰しに行って、ベル達はグァバードのお世話と、拠点の見回りをお願い」

朝食が終わり、少しまったりしながら今日の予定を伝える。ベル達は別に遊んでいてもいいんだけど、朝に自分の仕事が無いとちょっと悲しそうな顔をするからな。大精霊達は思い思いに行動するから指示は必要ない。

「おしごとー」「キューー」「クーー」「みまわり……もやすぜ」

やる気を見せるベル達、因みにムーンはベルの頭の上でプルプルしている。あのプルプル具合だとやる気はあるように見える。フレアが燃やすって言ってるのは拠点に近づいてきた魔物に対してだよね? 雰囲気を重視して言葉が足りてないよ。

元気いっぱいに飛び去って行くベル達を見送り、ジーナ達もシルフィに連れられてアンデッドの巣に飛び去って行く。お弁当も持たせたし、忘れ物はないよな?

「じゃあトゥル、これからしばらく開拓が続くと思うけど、よろしくね」

「うん」

トゥルは自分からあんまりしゃべらないから、この機会に色々と話してみるのも良さそうだ。他の子達は比較的、やりたい事が分かりやすいけど、トゥルは物静かだからモフモフに心を奪われている時以外は分かり辛い。

「じゃあここから地面を掘るから、トゥルは地面を平らにして固めてくれ」

コクコクと頷くトゥル。今までベル達とは自然に会話をしていたから、改まって何かを話そうと思うと、ちょっと難しい。天気の話から入るのはなんか嫌だ。魔法のシャベルでサクサクと土を掘り起こし、収納しながら考える。

「トゥル、俺と契約してからどう?」

俺の質問に首を傾げるトゥル。話が抽象的過ぎたようだ。

「ここでの生活は楽しい?」

「うん」

「楽しいなら良かった。トゥルはどんな時が一番楽しいんだ?」

「みんなとごはんをたべるとき」

おうふ、モフモフって言葉が返ってくると予想してたから、ちょっと驚いた。そしてなんか嬉しい答えだ。

「そっか、みんなで食べるご飯は美味しいよね」

コクコクと頷くトゥル。

「トゥルは何が好き?」

「ちゃーはん」

「アサルトドラゴンのやつ?」

「うん」

この前、お米をまとめて炊いた時に作った奴だな。ニンニクたっぷりで、アサルトドラゴンをぶち込んでみたけど、いい出来だったんだよな。トルクさんの影響で、確実に俺も他のみんなもニンニク好きになっている。

俺が質問をして、ポツリとトゥルが返事をするような会話が続く。特に会話が盛り上がるって感じではないけど、何となく穏やかな時間で悪くない。

間に昼食を挟み、偶に遊びに来るベル達と戯れながら開拓を続ける。この場所の開拓を始めた頃に比べると、運動する事を体が覚えたのか、動きにキレが出て開拓のペースが随分早くなった。レベルアップの影響が一番大きいのは間違いないけど、それだけでは無い部分の成長は、頑張った感があって嬉しいよね。明日も頑張ろう。

***

「じゃあ今日はお休みだから、ジーナ達もベル達も好きにしていいからね。俺はちょっと出かけるけど、昼食はリビングに置いておくから温め直してみんなで食べるように」

拠点の拡張を初めて三日、ジーナ達はアンデッドの巣穴を順調に潰しているけど、そろそろ休みが必要だ。

「師匠は休まないのか?」

「俺もお休みみたいなものだよ。のんびりするから気にしないで、ジーナもゆっくりするといい」

「了解、じゃあ公園で遊ぶか。マルコ、どっちが遠くに飛べるか競争しよう。あたしもレベルが上がったからな、今日は勝つ!」

「ジーナ姉ちゃん、おれもまけないぞ!」

「お師匠様、ボールをお借りしていいですか? キッカとフクちゃん達と遊んできます」

「ああ、四人とも怪我をしないようにね」

ボールを渡しながら、一応注意しておく。テンションが上がると子供は無茶をするからな。

「ゆーた、べるたちはおにごっこするー」「キュキューー」「どかん」「ククーー」「まけない!」「……」

ベル達は土管の迷路で鬼ごっこか。追いかけっこはしていたけど、ルールが無いみたいだから教えてみたが、かなりハマったのか最近お気に入りの遊びだ。高速での鬼ごっこは中々見応えがある。

飛ぶのが得意なベルが有利かと思えば、意外とそうでもない。好奇心が強いと言うか、気移りしやすいと言うか、そんな性格を突かれあっちに行ったりこっちに行ったりと翻弄されている。

次はだるまさんが転んだを教えてみよう。頑張って静止している精霊達はとても可愛いはずだ。そう言えば水着を買ったのに、まだ使ってなかったな。次の休みにはプールで遊ぶのもいいかもしれない。

「うん、楽しんでおいで」

公園に向かうジーナ達とベル達を見送り、俺は蒸留所に向かう。

「ごめんねシルフィ。休みを作るって言ってたのに、今日もつき合わせて」

「問題無いわ。私は疲れないから休みは偶にで十分よ。それに、私が連れてきたのが原因だしね」

「助かるよ」

シルフィの好意に甘えて、とりあえずこっちの問題を処理しておこう。

「でも、別にそこまで気にしなくていいのよ、単なる性格でたいした問題じゃ無いんだから」

「まあ、そこまで気にしている訳でも無いんだけど、せっかく来てくれたんだから、楽しい方がいいだろ?」

「まあ、確かにあの子は喜ぶでしょうね」

肩をすくめながら言うシルフィ。しょうがないわねって感じだな。蒸留所に到着し中に声を掛ける。

「イフ、アンデッド相手だけど戦いに行く?」

「行く!」

おうふ、素早い反応だ。目がキラキラって言うか、ギラギラしていて怖い。まあ、契約したから戦えると思っていたのに、契約者はのんびり開拓してるからな。ちょっと予想外だったんだろう。力を振るう事には色々と制約がある精霊にとって、戦闘好きって苦労する性格だよね。

「じゃあ行こうか。ゾンビとスケルトン、どっちがいい?」

「うーん、殴り応えがあるのはゾンビだよな?」

腕をグリングリン回しながら答えるイフ。よしゃーやったるぜーって感じで大張り切りだ。

「ねえ、シルフィ。なんか殴るって言ってなかった?」

「言ってたわね」

「精霊なのに殴るの?」

「ええ、魔法一発で済むのに、わざわざ拳に魔力と炎を纏わせて殴りかかるのよ」

理解できないわと首を振るシルフィ。分かってたけど精霊にも色々なタイプが居るんだな。

「変わったタイプなんだね。でも戦うのが好きでも、精霊なんだから相手の攻撃は届かないよね? 一方的な戦いになるけど、イフはそれで満足なのかな?」

「前にイフが言ってたんだけど、何も分からずに一瞬で灰になるよりも、ちゃんと戦った実感がある方が相手も幸せだって事らしいわ」

いやいや、どうせ死ぬしか無いのなら、何も分からずに一瞬で灰になった方が助かるよね。……もしかして、イフって戦闘狂の自分の考えを元に動いてる? 自分なら戦って死にたい的な……。

なんて迷惑な……まあ、相手は魔物なんだし、申し訳ないけど犠牲になって貰うか。俺には大精霊の説得なんて無理だもん。イフもやる気満々だしさっさと行くか。

***

「じゃあ、俺とシルフィは後からついて行くから、イフが全部やっちゃって」

「おう!」

シルフィにキングゾンビの巣に案内してもらい、イフに全部を任せる。結局全部任せるのなら、自由に戦える許可を出せばいいんだけど、それはそれで怖い。とりあえず一緒に居ればヤバそうな時には止められるから、巣に突入するイフを追って俺達も中に入る。

「おらー」

イフの右拳が炎を纏い、ゾンビの頭を消し飛ばす。なんか何処かのアニメで見た事があるようなシーンだ。音に魅かれて集まってくるゾンビやスケルトンを楽しそうに殴りつけるイフ。弱い相手でも構わないのか、実に楽しそうだ。久しぶりの戦闘らしいから、それだけでテンションが上がっているのかもしれない。

高笑いを上げながら奥に奥に進んで行くイフ。おっ、ソルジャーゾンビが振り下ろした剣を拳で砕いた。なかなか魅せるな。さすが大精霊、炎でぶん殴っているのに拳が当たった所以外はいっさい延焼していない。

「おお、少しは手応えが出てきたな」

キングゾンビの部屋に突入し、大量の魔法や弓矢が飛んで来る。……俺に向かって。

それはそうだよね。相手からしたら、ちゃんと見えるのは俺とイフの両手に纏った炎だけ。もう犯人はお前だって言っても間違いが無いレベルだ。

確かに俺が契約しているイフが暴れているんだから、犯人は俺で間違いは無いけど、そこはかとなく納得がいかない。

「ありがとうシルフィ」

全ての攻撃を風壁で防いでくれたシルフィにお礼を言う。

「どう致しまして。それで、これからどうするの? 数が多いからこっちにもアンデッドが抜けて来るわよ」

さすがに二つの拳だけだと、大精霊でも数に押されるか。手伝った方がいいのかな?

「全部俺がやるから、防御だけしてな!」

参戦するか考えていると、イフから言葉が飛んできた。お手伝いは要らないらしい。

「そう言う事らしいから、お願いします」

「しょうがないわね」

そう言いながらシルフィが手を振ると、アンデッドの群れが押し返されて、一歩も進めなくなった。風壁の範囲を広げた感じかな?

「ええい、何をしておる。早くそ奴を始末するのだ!」

おお、キングゾンビの登場だ。いっこうに前進できないアンデッド達に業を煮やして出てきたらしい。ベルの風壁なら破られたかもしれないけど、シルフィの風壁を破るのは無理だろうな。

キングゾンビの命令に従い、こちらに向かってくるアンデッド達……後ろから押され、ゾンビがミチッっと潰れている。完璧にグロい。その間もイフがドンドンとアンデッド達をぶん殴り仕留めて行く。

「くっ、道を開けよ。行けっ、お前達」

キングゾンビの命令でアンデッドが左右に分かれる。そこに飛び込んでくる槍を構えたゾンビと、剣を構えたゾンビ。雰囲気的にゾンビジェネラルっぽいな。満を持しての登場だったが、あっけなくシルフィの風壁に弾かれる。

一瞬の静寂。なんか居たたまれないよね。俺の出番だ的に出てきたのに何も出来ずに終わるパターンって。俺も昔似たような経験をした事がある。姪っ子の宿題、しょうがないから教えてやるよって言ったのに、分からなかった時の切なさ。たぶん同じ感じだ。

「おい、貴様何のつもりだ!」

らちが明かないと思ったのか、キングゾンビが俺に話しかけてきた。

「ねえ、シルフィ。今の状況でも話には答えない方がいいのかな?」

俺自身が戦っている訳でも無いし、会話は有りなのかも。

「裕太が丸め込まれたら、裕太がイフを止める事になるわね」

「……黙ってるよ」

「それがいいと思うわ」

色々と話しかけてくるキングゾンビから目を反らし耳を塞ぐ。しばらくすると 埒(らち) が明かないと思ったのか、こちらに話しかけるのを諦め、イフをなんとかしようとしだした。自分に注意が向いたのが嬉しいのか、イフが更にテンションを上げる。

「ゆるさんからなーーー!」

最終的にイフと勇敢に戦い、破れたキングゾンビ。俺を見ながら血を吐くような言葉を放つ。イフ、なんで頭を潰さないんだよ。凄く気まずいじゃないか。

「ふいーー。まあ、こんなもんだな。中々スッキリしたが、今度はもう少し大物と戦いてえな」

イフがニコニコと戻ってくる。

「まあ、機会があったらね」

確約すると、ドンドン戦闘をしたがりそうなので言葉を濁し、大物の魔石だけ確保して脱出する。もしファイアードラゴンクラスと戦う事になったらイフに頼もう。