軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百九十三話 ヴィータ

森で土と虫を確保して動物達はベル達やジーナ達に捕まえて貰い、泉の家に戻ってきた。結構な数の動物が増えたので、命の精霊を連れてくる事もできそうだ。聖域指定の条件も決まったし、なかなか順調な気がする。

まあ、フレアがオオカミやクマを捕まえてくるアクシデントもあったが、元の場所に帰したし眠っている動物達を思う存分モフりまくれて、結構楽しい。

サラ達が連れてきた動物を加えると、タヌキが九匹、キツネが十匹、シルキィが五匹、シカが三頭、ネズミが十匹以上……生態系に不安はあるが数としては十分だし、ジーナ達もベル達も本物の森で、動物探しを満喫したらしくご機嫌だ。本物の自然と戯れる機会は大切だな。

「裕太、精霊樹の北側の森でいいのよね?」

「うん、お願い。保護する予定のシルキィは分けておいて、三つの森の一番西側にお願い。残りの森二つは境を取っ払うからどっちでもいいよ」

「分かったわ。一応、動物別に離して寝かしておくわね。ノモスを連れて行って巣穴も作っておく?」

そう言えばキツネとかタヌキも巣穴が必要だよな。作っておいた方が何かと安心か。この森には穴も無いから、突然連れて来られて穴掘りから始めるのは辛いだろう。

「ありがとう。巣穴の方も頼むね」

シルフィが風に乗せたまま精霊樹の北側の森に動物を運んでくれる。後はこの大量の益虫とミミズだな。なんか三つの布袋がモゾモゾ動いていて怖いから早く放したい。

「トゥル、タマモ。虫を放したいから案内をお願い。ああ、ベル達とジーナ達は今日はもうやる事が無いから自由にしていていいからね」

自由行動と聞いて公園に遊びに行く子供達。他にやる事が無いからかもしれないが、公園が人気なのは素直に嬉しい。ちょっとニマニマしながら虫の布袋を担いで移動する。

「ここでいいの?」

「うん、ひとつのふくろのはんぶんぐらい」

案内された場所でトゥルが地面に穴を開ける。どうやら、ある程度距離を離してミミズを放せば、あとはトゥルが満遍なく移動させてくれるようだ。ミミズ以外の虫は森の中に全部放していいらしい。

森と畑と普通の土地の四か所にミミズを放し、トゥルとタマモにお礼を言って、動物の様子を見に森に向かう。

「シルフィ、どう?」

動物の様子を見ていたシルフィに声を掛ける。

「今のところ問題無いわね。ノモスが作った巣穴に寝かせているから、起きたら混乱するでしょうけど、まあ、なんとかなるわよ。でも一応、今から命の精霊を呼んで来る?」

あー、そうだよな。でも……イフ達が来たばっかりなのに、もう新たな精霊が増えるのか。ペースが早い気がする。でも命の精霊は重要だよな。肉食の野生動物も増えたんだし、アドバイスが貰えそうな精霊の協力が欲しい。なにより聖域に指定される条件だから、呼んで来て貰うしか選択肢は無いよな。

「面倒じゃ無ければお願いできる?」

「ええ問題無いわ。下級精霊と浮遊精霊は連れてくる?」

……んー、回復担当なんだよな。ジーナ達が迷宮に潜る時は、大精霊の誰かについて行ってもらうつもりだから、怪我の心配はしなくてもいいと思うんだけど……それでも自分達での回復手段を持っておくのは大事な事だよな。

「浮遊精霊はジーナ達の誰かと契約する事になるけど、大丈夫かな?」

「そうね、魔力の問題があるから、レベルが低いジーナは止めておいた方がいいわ。回復が担当だし、皆をよく見ているサラがいいわね」

シルフィもちゃんとジーナ達の事を見てくれているんだな。なんか嬉しい。確かにサラはしっかりと周りに気を配っているから、魔力的に問題無いのなら俺もサラが適任だと思う。

「サラに確認してOKなら、連れて来て貰うよ。俺の方はベル達も喜ぶから頼むね。じゃあ、サラに確認しに行こうか」

精霊達が楽しそうに飛びまわっている公園に到着する。サラは……おっ、居た。ジャングルジムでキッカと遊んでいる。

「サラ、ちょっといい?」

「あっ、お師匠様。大丈夫です。なんでしょうか?」

ジャングルジムの頂上からスタンっと飛び降りてきたサラ。ジャングルジムはそんな降り方をする物じゃ無いと言いたい。

「うん、あのね。生物が増えたから、命の精霊と契約するんだけど、回復ができる精霊だからサラにも契約してもらおうかと思ってね。サラも自分で契約したい精霊が居るかもしれないけど、どう思う?」

俺の言葉に真剣な表情で考え込むサラ。しばらく待つとサラが顔を上げた。

「お師匠様、回復が使えるのはとても助かりますし、私自身には何の問題も無いのですが、私でも複数の精霊と契約する事はできるんですか?」

「うん、サラの魔力なら問題無いよ」

フクちゃんと別れるところまで考えさせちゃったかな? 言葉が足りなかったかもしれない。ごめんね。

「分かりました。よろしくお願いします」

「うん、分かった。じゃあそう言う事だからシルフィ、お願いね」

「ええ、じゃあ行ってくるわね。夜には戻るわ」

シルフィがサクッと飛んで行った。

「シルフィが夜には連れて来てくれるって。サラは午前中に森を歩き回ったし、少し仮眠を取った方がいいかな?」

「いえ、ここに飛んで戻ってくる間に、お昼寝させて貰ったので大丈夫だと思います」

さすが子供だ。回復が早い。

「分かった。あんまり無理しないようにね」

「はい」

ジャングルジムに戻るサラを見送る。俺は何をしよう?

「師匠! てつぼうの技をおしえて!」

声に振り返ると、マルコがワクワクした目で俺を見上げている。すっかり鉄棒少年になってるな。まあ、時間もあるし、昨日約束したから教えておくか。飛行機飛びでいいな。

「分かった。じゃあ鉄棒に行こうか」

「やったー!」

飛び跳ねながら鉄棒に向かうマルコ。体に肉もついてきたし、明るくはしゃぐマルコを見ると、完全に普通の子供だな。

ワクワクした表情のマルコに見られながら、大人用の鉄棒に逆上がりで登る。ここでカッコ悪いところは見せられない。バランスを崩さないように鉄棒に両足を乗せて、窮屈な四股を踏むような形になる。

うん、ここまでは順調だ。あれ? いつの間にかギャラリーが増えてる。マルコの後ろにジーナが、ベルとレインもふわふわと浮かびながら俺を見ている。増々失敗ができなくなった。

今更だけど一発本番は怖い。夜中にでもコッソリ練習しておくべきだった。何としても成功させてカッコいいところを見せなければ。

頭の中で理想のイメージを描きながら、思いっきり体を後ろに倒す。小学生の頃は感覚でやってたけど、レベルアップのおかげか、しっかり自分がどんな状況なのか分かる。体が鉄棒の真下を通り過ぎた瞬間、足を外し体が前に投げ出される。最後に手を放すと体が飛ぶ。

上手く行ったか? 着地を決められたので、急いで背後を振り返る。おおー、思った以上に飛距離が出て鉄棒の下の砂場を越えてしまった。子供の頃はこんなに飛べなかったよな。

「すごい、師匠、なにそれすごい! おれもやりたい!」「すごいな師匠!」「ゆーた、かっこいいー」「キューー」

マルコとジーナが尊敬の目で俺を見ている。ベルとレインも大喜びだ。

「これが飛行機飛びだよ」

自慢げに技名を教える俺。たぶんドヤ顔をしているな。ジーナから飛行機ってなんだ? っと言うツッコミが入ったが、説明するのが難しいのでスルーする。

教えてとせがむマルコに、低い鉄棒でやり方を教えるが、隣の少し高い鉄棒でジーナも一緒になって練習している。ジーナまで食い付いてきたのは予想外だな。

ジーナは鉄棒の上で体勢を整えるのに苦労しているが、マルコは直ぐにコツを飲み込み、体勢を整える事ができるようになった。後は足や手を鉄棒から放すタイミングを覚えるだけだ。

しばらく練習に付き合うと、二人とも形になってきた。一番高い鉄棒は慣れるまで使用しないように約束しておくべきだな。

「そろそろ暗くなって来たし、夕食にするから家に戻るよ」

ちょっと飛び足りなさそうな二人と、公園で遊んでいる子供達に声を掛けて家に戻る。今日は沢山運動したから、美味しいご飯が食べられそうだ。

***

「裕太、ただいま」

夕食が終わり、サラと共にリビングで待っていると、シルフィが戻ってきた。……シルフィと一緒に居るのが命の精霊なんだろうな。ちょっと予想していたのと違う。

命の精霊なんだから、母性を象徴する豊かな膨らみを持った、優しそうな美女が来るって思ってたんだけどな……。美形は美形なんだけど、とても優しそうなおじさんがシルフィの隣にニコニコしながら立っている。

いかん、このままだとノモスの時の二の舞だ。せっかく来てくれたんだから表情を変えるな。礼儀正しく挨拶するんだ。例え見た目が普通のおじさんっぽくても、頭と肩にお餅のようなプルプルした物体を乗せていても、平常心だ。

「お帰りシルフィ。そちらの方が命の精霊さん?」

「ええ、命の大精霊よ」

「裕太と申します。よろしくお願いします」

「いえいえこちらこそ。僕はヴィータ、他の精霊達と同じく堅苦しいのが苦手でね、敬語は必要無いから、近所のおじちゃんって感じで気軽に頼むね。あはははは」

敬語は要らないって下り、六回目だな。そろそろ一発目からタメ口で行くべきなのか? いや、さすがに大精霊相手に一発目からタメ口は無いな。

本来なら敬語は要らないって言われても敬語を使うべきなんだよね。でも精霊は本気で嫌がる。こうなると最低限の礼儀として、許可を得てタメ口になるプロセスは外せないだろう。

「じゃあ、普通に話させて貰うね。よろしくヴィータ、来てくれてありがとう。俺の事は裕太って呼んでくれ」

「ああ裕太、よろしくね。死の大地に命が満ちる。命の精霊にとってこんなに楽しい事はないからね。もっと早く来たかったぐらいだよ」

あははと笑うヴィータ。なんかホッコリするタイプのおじさんだな。最近周りに女性が増えていたから、これはこれでちょっと良かったのかも。子供のマルコや蒸留所に籠りっきりのノモスだと、偶に寂しい時があるもんな。

美人が増えなかったのは悲しいが、気楽な話し相手が増えそうなのは嬉しい。ただ、エロい空気がまったく無いから、下の話が無理そうなのが残念だ。

「何言ってるのよ。あんまり早く呼んだら、あなた自分の力を削って無理するでしょ。準備が整って呼んだんだから、今から頑張りなさい」

「あはは、うん、そうだね。頑張るよ」

シルフィとヴィータが穏やかに話している。さて、そろそろサラも寝かせないとダメだし、肩と頭の上に乗っている物体についてツッコムか。