軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百七十話 お願い

ジーナと合流して冒険者ギルドに到着した。中に入ると大勢の視線が集まったが、前ギルマスの頃に比べるとだいぶマシになった。集まる視線に侮蔑やら恨みやらの視線が少ないだけで結構違うんだな。

「なんかすっげー見られてるよな?」

集まる視線にジーナが不思議そうに聞いてくる。サラ達は堂々としたものだ。キッカもジーナおねえちゃんどうしたの? っと首を傾げている。

子供達がだいぶ図太くなってしまったな。できるだけ危ない場面には立ち会わせないようにしてたつもりだけど、喧嘩を売られる事も無くなったからと、冒険者ギルドに連れて来ていたのは不味かったか? ある程度は社会勉強だと思ってたんだけど難しい。

「まあ、色々あったからね」

俺が答えると、俺の噂を思い出したのか少し考えた後に、なるほどっと頷いた。簡単に分かられるとそれはそれで悲しい。

「喧嘩を売られる事は無いから気にしなくていいよ。まずはジーナをギルドに登録するよ」

「あいよ」

度胸はあるのか、軽く答えるジーナを連れてカウンターに向かう。

「すみません、この子の登録をお願いします。それとちょっとギルマスとお話がしたいんですが、時間を貰えるか確認してもらえますか?」

「畏まりました」

ニコリと笑顔で請け負ってくれる受付嬢。そうだよね、普通はこうだよね。ちょっとエルティナさんの無表情も懐かしいと思ったけど、やっぱり普通に愛想がいい方が嬉しい。受付嬢が背後に居る職員をギルマスの元に行かせる。素早い対応だ。

そのままジーナの登録作業が始まる。職種はもちろん精霊術師だ。受付嬢さんもちょっとピクッっとしたけど、何も言わずに登録してくれた。

「ジーナさんは裕太さんのパーティー、精霊術師最強に加入と言う事でいいのでしょうか?」

ジーナが俺の方を振り返りマジで? って顔をしている。

「なにそのパーティー名、ありなの?」

気持ちをそのまま言葉に出された。ちょっと傷付くが気持ちは分かる。

「まあ、ギルドと揉めた時に勢いで付けたんだけど、分かりやすいでしょ。冷たい世間に精霊術師が最強って事を頑張って広めようね」

「……いや、言いたい事は分かるけど、直接過ぎないか?」

「なにいってるんだよジーナ姉ちゃん。精霊術師最強ってカッコいいよ。ねっ、師匠!」

マルコがフォローしてくれたが、俺自身もカッコいいと思って付けた訳じゃ無いので返答に困る。

「あ、ああ、まあ、そう言う事だから我慢してくれ」

「そ、そうなのか、分かった」

ジーナが空気を読んで納得してくれた。助かる。

「ではそのように手続き致します」

受付嬢のお姉さんが気を利かせて手続きを進めてくれる。これでジーナが精霊術師最強に加入する事が決定した。手続きを見守っているとギルマスの秘書っぽい役割のお姉さんがこちらに向かってきた。

「裕太さん、お久しぶりです。マスターもぜひお会いしたいとの事です。ホールに席を用意する事も可能ですが会談の場所はどうなさいますか?」

あー、そうか……密室での話し合いは嫌だって言ってあるもんな。でも毎回毎回普通の話を冒険者ギルドのホールでするのも嫌だし、今回は護衛を頼む話だから他の人に知られない方がいいだろう。

「いえ、普通にギルマスと話します。案内して頂けますか?」

「畏まりました、ではこちらに」

秘書っぽいお姉さんがちょっと驚いた顔をした。普通に話をするとは思って無かったようだ、腫れ物のように扱われているな。

「あっ、ちょっと待ってください」

ギルドの登録料を置いてジーナとサラ達に手続きが終わったら、売店で水着や欲しい物が無いかを見て時間を潰すように言う。余計なチョッカイを出される可能性もゼロでは無いが、ドリーが居るから大丈夫だろう。ニコリと微笑んで頷いてくれたドリーを見て安心する。

「お待たせしました。お願いします」

秘書っぽいお姉さんに案内されてシルフィと共に奥に進む。……ここか、前回はここで前ギルマスと揉めたんだよね。新ギルマスも同じ部屋を使っているようだ。

***

「裕太殿、迷宮の翼とマッスルスターが昨晩戻りました」

ギルマスが上機嫌で出迎えてくれた。これで五十一層以降の素材が手に入る目途が立ったんだから当然か。

「問題はありませんでしたか?」

「ええ、報告では五十六層からの山岳では、魔物の数が多く移動に時間が掛かるそうですが、探索自体は問題無いと報告を受けました」

数は力だからな。一度見つかるとワラワラと湧いてくる感じだから確かに大変だろう。

「そうですか。では俺は約束を果たしたと考えても構いませんね?」

ダメって言われても、納得はしないけど、確認はしておこう。

「はい、問題ありません。それで、冒険者ギルドから裕太殿に依頼をしないと言う約束は覚えていますが……もう少し冒険者を五十層以降に連れて行く気分になったりしていませんか? 無論、報酬は弾みます。それと空が飛べると言う報告を受けていますが、その能力があれば割の良い仕事があります。心の隅にでも留めておいて貰えれば嬉しいです」

……依頼はされていないが、気分を聞かれた。これは約束違反……ではないんだろうな。無理やりだけど。あとおじさんに嬉しがられても、俺は嬉しくない。

「そういう気分にはなっていませんね。それでですね、俺が今日来たのは新しく弟子を取ったのですが、その子の身内が迷宮都市に居るんですよ。その事をお伝えしておこうと思いまして」

「……それは、冒険者ギルドでご家族を護衛せよと?」

ちょっと困った表情のギルマス。契約の場に一緒に居たんだから知ってるよね? 演技か?

「冒険者ギルドがどう考えるのか俺には分かりませんが、契約の中に腕利きの護衛を派遣してくださると、契約していますよね。知らなかったら対策を取れないのではと伝えにきたんですが、余計なお世話でしたか? それとも迷宮の翼やマッスルスターが五十層を突破した今、契約を守る必要は無いと?」

やれやれと頭を左右に振ってみる。軽く両手を広げて肩をすくめてみたいが、それはやり過ぎな気がする。

「ふふ、裕太、嫌みっぽいわ。でも強気で話している感じが無理していてちぐはぐよ。前ギルマスの時はもう少し上手だったのにどうしたの?」

シルフィからツッコミが入る。なんだかとても楽しそうだ。前ギルマスの時は相手が嫌いだったから、演技でなく普通に強気に出ただけなんだよね。今のギルマスは、特に揉めた訳でも無いから、偉そうにし辛いよ。

「い、いえ、ですが冒険者ギルドの人員にも限界がありますので、ドンドン弟子を増やされますと、対応が難しくなってしまいますので……」

ギルマスが汗を拭きながら言う。まあ、分かっていて戸惑っているフリをしているんだろうな。気軽に引き受けると、問題が出るとか考えていそうだ。

「そこら辺は大丈夫ですよ。急激に弟子を増やす予定はありませんし、そんなに人望がある訳でもありませんから」

自分で言っていて悲しいけど、友達百人を目指すタイプでも無いしね。ちゃんとした精霊術師を増やすつもりはあるけど、素質がある人も少ないし、学校でも作らない限り一気に増える事は無いだろう。

「そうですか、そう言う事なら冒険者ギルドでも対応する事ができます」

せっかく契約したんだから、使える物はできるだけ使わないとね。あんまりやり過ぎて、険悪な関係に戻るのも面倒だから線引きはちゃんとしないとな。

「そうですか。ありがとうございます。では、俺の用は済みましたので、これで失礼しますね」

「あっ、裕太殿、少しお待ちください。ガッリ子爵の事はグランドマスターに報告し、王国にも抗議しました。何かしらの処罰は下ると思いますが、しばらく身辺にはお気を付けください」

そう言えばガッリ親子の問題があったな。侯爵と子爵が行方不明って情報はまだ届いて無いようだ。今日あたり届くのかな? ほぼ間違い無く俺の事を疑うだろうけど、冒険者ギルドが俺との関係をどうするのかで動きが変わるんだろうな。

俺と敵対を選べば俺が怪しいと騒ぎ立て、敵対しない事を選べば静観って感じかな。まあ、組織なんだし両極端にならないで、どっちにでも転べるように対策するんだろうな。

「分かりました、注意しておきます。ありがとうございました。では失礼しますね」

ギルマスに頭を下げて部屋を出る。再び秘書っぽいお姉さんに連れられてホールに戻る。ちょっとは冒険者ギルドにも協力して欲しいなーって雰囲気は出てたけど、概ね順調に話は通った。これである程度は安心できるだろう。

わざわざ護衛をお願いした事で、ピートさんとダニエラさんに、人質としての価値があるって思われる可能性があるのが辛い所だけど、何もしないのも問題だから難しい。

「では、失礼します」

「あっ、どうも、案内ありがとうございました」

秘書っぽいお姉さんとお別れして、視線を浴びながら売店に向かう。どんな水着があるのかな?

「いい水着はあった?」

固まって話し込んでいるサラ達を見つけ、声を掛ける。

「お師匠様、水着はあったんですが、サイズが大人用しか無くて、買う場合はサイズを詰めて貰わないとダメだそうです」

サラが状況を報告してくれる。冒険者ギルドの売店だし、水場の探索用の服って言ってたからな。子供サイズは確かに無さそうだ。

「サイズを合わせるのは時間が掛かるの?」

「いえ、単純な構造ですからそれほど時間は掛からないそうです」

「それなら問題は無いね。気に入った水着があったら買っちゃおうか。俺も水着を選ぶから、皆は決まったら先にサイズを詰めておいて」

俺の言葉にそれぞれが水着を手に取り、カウンターに向かう。水着コーナーは探索用だけあって際どい水着は一着も並んでなく、普通にガッカリだ。ビキニとは言わないけど、もう少し露出が欲しかったな。

男性用の水着を見る。なんの素材なんだろう? 光沢があってゴムみたいな質感だ。この世界にゴムはあるのか?

「師匠、どうしたの?」

俺が不思議に思っていると、マルコが声を掛けてきた。

「ああ、マルコ、もうサイズを合わせたの?」

「うん、おれはズボンだけだからすぐに終わったんだ。それで師匠はなにをなやんでたんだ?」

シンプルな短パンタイプの水着を選んだみたいだから、確かに早く済みそうだな。

「不思議な質感だから、この水着の布は何だろうって思ってね。マルコは知ってる?」

「ジャイアントトードの皮をかこうしたって言ってた。水をはじいて、しんしゅくせいもあるから水着にぴったりなんだって。すこし小さめなのがいいって言ってた」

「へー、そうなのか。ありがとうマルコ」

マルコの頭をワシャワシャと撫でながらお礼を言う。あの巨大なカエルの皮か……なんかちょっと嫌だな。俺だけトランクスを使うか? ジーナも来たのに普通のパンツは不味いか、セクハラ案件になりそうだ。

諦めて普通の膝丈のスパッツみたいな水着を選ぶ。ピタッっと皮膚に張り付きそうな感触が嫌だけど、この際、我慢するしか無いな。

お会計をすると、魔物の素材だけあって意外と高かった。特に女性用の水着は布の使用量と工程が多い分、男性用の三倍の値段だ。ブランド物でもないのに水着が三万後半って、ちょっとビビる。

後はベル達と合流して雑貨屋と武器屋に寄れば迷宮都市での用事は全部だな。サクッと済ませて村に鳥を買いに行こう。