軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百五十八話 亜種

六十六層の海中を探索し、シーサーペントの胴体を三分の二ほど切り裂いて大量の血をバラ撒いたので、魔物がきたそうなので、逃げ出した。

あれから三日……六十九層の海に潜っている。想像以上に海が広く、探索するポイントが絞り辛い為に探索に時間がかかる。その結果、それぞれがバラバラに分かれて、効率的に海の中を探索する事にした。

「ゆーた、べるみつけた! たからばこー」

小島でシルフィとディーネと待機していると、ベルが元気いっぱいに海から飛び出してきた。

「おー、今回はベルが一番だね」

「きゃふーー」

俺の言葉にベルが大喜びで一回転する。別に賞品が出る訳でも無いんだけど、ゲームをした方が楽しいだろうと、一斉に宝探しに向かって、一番最初に誰が見つけるかを競争している。

一番多く見つけているのはレインで、水の精霊だけあって海中での行動はお手の物らしい。ベル、タマモが同じぐらいで一番少ないのはトゥルだ。トゥルの発見が少ないのは、偶にフラフラとタマモの後ろにくっ付いて行ってるせいな気がする。

「じゃあ、皆を召喚するね」

「はーい」

レイン達を召喚しベルの案内で宝箱に向かう。出る魔物も三日も戦っていれば倒し方も分かりサクサクと討伐できる。シーサーペント相手の騎士の決闘みたいな戦い方は怖いので止めた。少し時間がかかるが普通に戦った方が楽に倒せる。

「ここーー」

ベルが自慢げに指差す場所には……穴? 海底の岩の下に穴が開いている。ベルってこういう見つけ辛い場所の宝箱をよく見つけてくる。不思議な才能だよな。穴の中を覗くと金色に輝く宝箱が……。

「金の宝箱だね。凄いねベル」

「えへー。べるすごい」

俺だけでなく他の精霊達にも褒められ、ベルは鼻高々で大喜びだ。金の宝箱はレアなんだよね。ゲームでは虹色の宝箱とかもあるけど、この世界の迷宮はどうなんだろう?

「じゃあ、レイン、おねがいね」

「キューー」

宝箱がレインの操る海水で浮き上がり海上に運ばれる。罠がある宝箱もあるし、何より海中で宝箱を開けると中のお宝が海水まみれになる。最初は普通に宝箱を開けて金銀財宝が海水まみれになってしまったからな。洗浄の魔法で綺麗にしたが、入っている物によっては壊れる可能性もある。海上に持って行って宝箱を開けるのが無難だ。特に金の宝箱には良い物が入っている可能性が高いから、用心しないとね。

グングンと海底から宝箱が浮き上がり海面に出る。ディーネが海の上で立てるように魔法を掛け、海面も平らにしてくれる。気遣いが細やかで本物のディーネか疑いたくなる気分だ。水場だとやっぱり水の大精霊は凄いんだ。お礼を言うとディーネはとっても上機嫌だ。

「じゃあシルフィ、おねがい」

「わかったわ」

宝箱を開けるのはシルフィに頼んでいる。水の中の宝箱って完全に密封されているから、内部の様子がまったく分からない。今までの経験上、鍵や罠がついている宝箱は四分の一……解除する技術が無くても幸運を信じて開けたくなる確率だよね。

俺が宝箱から離れると、シルフィが風で宝箱を包み込み宝箱を開ける。開けた瞬間、宝箱の中から透明な液体がこぼれる。毒かな? 今回の宝箱は罠付きだったみたいだな、ショボいけど。

「あらー、裕太ちゃんこれ凄いわよ」

ディーネがドロっと垂れた液体を球状にして凍らせた。

「何が凄いの?」

「うん、これってポイズンドラゴンの毒液よ。この量が水に溶けだせば周囲の生物が一瞬で死滅するわー。気化しても甚大な被害が出るわねー」

凄いって言うより物騒だ。毒っぽいのは分かってたけど、ドラゴンの毒で超強力みたいだ。全然ショボくなかったな。そしてその物騒な毒を俺が収納しておくらしい。

変な物を手に入れてしまったな。強力な毒らしいし使い方によっては役に立ちそうだけど、使う機会があるのかが疑問だ。

「ゆーた、これ、たべる?」

毒の事を考えているとベルに話しかけられた。食べる? ベルの方を見るとベル達が宝箱の中を興味深そうに覗いている。お宝の事を忘れてたな。

「宝箱の中に食べ物が入ってたの?」

食べ物のお宝? 初めてのパターンに興味を惹かれ宝箱の中を見ると、大きなマスクメロンが一つ。なんか魔力を帯びているのか光っているが、形と色合いはマスクメロンだ。金の宝箱にマスクメロンか……食べたら泳げなくなったり、特殊な力が身に付いたりするのかな?

「あら、それって精霊樹の果実よ」

「えっ? これがそうなの?」

「ええ、間違い無いわ」

異世界ではマスクメロンが精霊樹に生るのか……地球とは随分違うな。まあ、果実が光っている時点で違うのは当たり前か。そもそも普通のマスクメロンだと宝箱の中で腐ってるよね。この宝箱にも時間停止機能がついてるのかな? 後で確認するか。

「でも、ドリーに頼めば手に入るから、ちょっと残念だね」

「まあ、そうかもね。でも、あっても困るものじゃ無いんだし持っておけば?」

それもそうか。命の精霊と契約できれば大抵の事は何とかなりそうだけど、死んでなければ何でも治る果実は無駄にならない。マリーさんに卸してみようかと一瞬思ったけど、魔力草と万能草であの騒ぎだもん。精霊樹の果実とか出したらどうなる事か。使う機会があるまで魔法の鞄に収納だな。

「わかった、持っておくよ」

「たべないー?」「キューー?」「おいしい?」「クーー?」

……ベル達が精霊樹の果実に興味津々だ。もう、食べちゃうか? でも、宝箱の中で長年眠っていた果実をベル達に食べさせるのもな、お腹を壊す事は無いだろうけどちょっと不安だ。

「この果実と同じ物が、お家の精霊樹に生るから食べるのはその時にしようか。待てる?」

「まてるー」「キューー」「もぎたて」「クーー」

良かった、食べられるのであればいいみたいだ。ベル達を偉いねと撫で繰り回す。俺は褒めて伸ばすんだ。たっぷりベル達を褒めまくっているとシルフィが話しかけてきた。

「それで、これからどうするの? 宝箱の探索を続ける?」

んー、どうしようかな。六十九層も結構見て回ったし、そんなに取りこぼしも無いだろう。大量に神力草を手に入れたけど、無くなったらまた来る事になるんだし、今回で全部を見つける必要もないか。

迷宮の翼やマッスルスターの人達が、海底の宝箱を次々と発見するって事も無いだろう。迷宮に潜って結構経つからサラ達の事も気になる。そろそろ戻ろう。

「七十層の階段も発見してるしそろそろボスを倒して帰ろうか、迷宮都市でも色々とやる事があるからね」

「そう、それもいいかもね。じゃあ直ぐに向かう?」

俺以外はみんな元気だし、俺も皆が探索している間にのんびり待ってただけだし余裕だ。さっさと倒しに行っちゃうか。

「うん、じゃあ直ぐに行こうか」

「ボスと戦うんだし自然の鎧を身に付けておけば?」

……うーん、本で見た感じだと英雄達も苦戦したみたいだし、自然の鎧を身に付けておいた方がいいか。って言うかもうベル達が準備万端だから着るしか選択肢は無いよね。

「じゃあ、自然の鎧をお願いね」

「はーい」「キューー」「あんぜん」「クーー」

自然の鎧を身に纏い、シルフィに頼んで空を飛んで七十層に続く階段に向かう。

***

「あれがシーサーペントの亜種か。なんか黄色いよね」

ボス部屋は六十六層から六十九層の海ほど広くは無いが……シーサーペントの亜種が暴れられるぐらいの広さは十分あるようだ。大きな湖って感じかな?

そこから鎌首をもたげたシーサーペントの亜種がこっちを見ている。本で読んだ時、ボスがドラゴンじゃ無いんだって驚いたんだよな。ウオータードラゴンかシードラゴンみたいなドラゴンが出て来そうな状況なのにね。

五十層のファイアードラゴンは特別で、次に出て来るのは百層とかかな? そもそも迷宮って何層まであるんだろう? 百層の後も続くんだろうか?

「裕太、来るわよ」

おっと考え事をしている場合じゃ無いか。

「レイン、トゥル、教えた通りにお願いね」

「キュー」「がんばる」

うん、やる気満々で頼りになる。返事と同時に俺の前に水の壁が現れ、その向こう側に鉱物の尖った槍が幾つも生える。うん、作戦通り完璧だ。

レインとトゥルの仕事に満足しているとシーサーペントの亜種が「シギャー」っと叫んで、幾つもの電撃を放ってきた。

ピカッっと光って向かってきた電撃は、トゥルが生やした鉱物の槍に吸い込まれるように命中し、地面の奥深くに流れる。問題無いみたいだ。地面の中で鉱物をネット状にしたのも効果があったのかな?

レインに頼んで作ってもらった純水の壁には、電撃が届く事すら無かった。純水をレインに説明するのはとっても苦労したのに……。純水って電気をほとんど通さないんだぜって、シルフィとディーネにドヤ顔したのに、効果を発揮する前に全部終わったら悲しい。

「へー、裕太が言った通りになったわね。あんな方法でカミナリを避ける事ができるなんて思わなかったわ」

シルフィが感心した顔で頷いている。理科の実験みたいな知識だけど、感心してもらえると嬉しい。後は攻撃が問題なんだよな。海水に入ると感電するらしいし、純水で体を包んで貰う事も考えたが、完全に電気を遮断できるわけじゃないので却下した。

電撃が防がれたのが納得いかないのか、連続で電撃を放ってくる。シーサーペントの亜種が、痺れを切らして近づいて来るのを待つのも面倒だし、今回は開拓ツールの出番は無しだな。

「ベル、タマモ、やっちゃって」

「いえっさー」「ククックー」

敬礼して飛んで行くベルとタマモ。シーサーペントの亜種の左右に分かれ、一斉に首元を攻撃する。風の刃と海藻の刃が、シーサーペントの亜種の首元を深く切り裂く。

うーんAランクの魔物の亜種だけあって、一撃で首を落とすのは無理だったようだ。流石に頑丈なんだな。それでも完全な不意打ちを首元に受け、血を噴水のように撒き散らしている。何が起こったのか分からずに混乱するシーサーペントの亜種にベルとタマモがもう一撃を加え、首を完全に切り離す。

開拓ツールに拘らなければ、このクラスの魔物でも簡単に倒せるんだよな。なんかジレンマだ。さっさとシーサーペントの亜種を収納して戻るか。その前に頑張ったベル達をしっかりと褒めまくらないとな。