軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百三十四話 小動物探索

急激に成長させた最初の森の状態が良くなったので、ドリーが木々に実をつけてくれた。季節感は無いが豊富に実が生ったので小動物を捕まえにシルフィに森に連れて来て貰った。

森の空気を胸いっぱいに吸い込むと、泉の家の森よりも複雑な臭いがする。たぶん植物の数や種類が圧倒的にこの森の方が多いんだろうな。俺の森もまだまだって事なんだろう。

「じゃあ、これからの予定を説明するね。まずベル達はこの森の探索。小さい草食動物を傷つけないように連れて来て欲しい。出来るかな?」

「できるー」「キューー」「つかまえる」「ククーー」

元気いっぱいに手を挙げて答えてくれるベル達。なんか幼稚園の先生になった気分だ。もう行って良い? まだダメ? っと待ちきれない様子でソワソワしているので、行って良いと許可を出すと猛スピードで森に突入していった。なんだかちょっと不安だな。

「えーっと、次はサラ達だね。サラ達は迷宮と同じようにフクちゃん達と協力して探索する事。小動物を傷つけないように捕まえる方法も考えておくように」

「質問してもいいですか?」

「いいけど、質問する時は手を挙げてね」

サラ達が物凄くキョトンとしている。ベル達の後だから何となく小学校の先生気分だったんだけど、この子達に分かれと言うのも無理があるな。

「えっと、質問してもいいですか?」

戸惑(とまど) いつつも右手を上げてやり直してくれたサラ。とってもいい子だ。

「はい、サラ君なんでしょう」

「は、はい。魔物や危険な動物はどうすれば良いんですか?」

「サラ君、良い質問だね。シルフィの話ではこの森には、ゴブリン、オーク、クレイジーボア、フォレストウルフが居るそうです。どの相手も油断しなければ勝てる相手なので、襲ってきたら倒してしまいましょう。今回は念のためにドリーについていって貰うけど、できるだけ自分達の力だけで頑張るように」

初見の相手だけど、クレイジーボアもフォレストウルフも魔法が効くし、近寄らせなければ何とでもなるらしいから、今のサラ達なら問題無いだろう。

「はい、師匠、質問!」

マルコも手を挙げて質問してくれた。学習できるいい子達だ。先生感激です。

「はい、マルコ君。なんですか?」

「倒した魔物はどうすればいいの?」

「……シルフィ。魔物の価値はどうなの?」

「さあ? 弱いから価値はそんなにないんじゃないかしら? オークのお肉は沢山持っているし魔石を確保しておけば十分だと思うわ」

……オークのお肉はもったいないが、俺もサラ達も解体はやった事が無いんだよな。サラ達に魔法の鞄を貸せば一発解決だけど、獲物が持ち運べない状況も経験させておくべきか?

うーん、サラ達は苦労している分、獲物を無理してでも持ち帰りそうだからな。今の内に諦める事も覚えさせておいた方がいい気がする。

「今回の目的は小動物の確保だから、魔物は魔石だけを取ってウリに埋めて貰う事」

「オークもですか?」

サラが驚いたのか手を挙げずに質問してくる。驚くと流石に忘れちゃうよね。

「うん、もったいないけどサラ達だけだと持ち運べないよね。目的を果たす為には持てない物は諦める事も必要だよ」

マルコとキッカもオーク肉を捨てて行くの? マジで? って顔だ。ちゃんと自分達で運べる量と、物よりも自分達の命だって言い聞かせておこう。

出来るだけ丁寧に 諦(あきら) める事の大切さを説明する。…………たぶん納得してくれたはずだ。なんか切なそうな顔をしていたが大丈夫だよね?

「そう言う訳だから目標は小動物の確保。しっかりと注意を払って頑張ってね」

「分かりました」「……わかった」「うん」

なんか心配だな。

「ドリー、悪いけどサラ達の事を頼むね」

「ふふ、分かりました。しっかり見守っておきますから安心してください」

ニッコリ笑って請け負ってくれたから大丈夫だろう。森の中で森の大精霊が付いていれば大抵の事は大丈夫だよね。森の中に入って行くサラ達を見送る。

「裕太ちゃん、お姉ちゃん達はどうするの?」

「んー、俺も探索したいんだけど子供達がここに戻ってくるよね。どうしようか?」

ここで待ってるだけってのもつまらないしどうしたものか……。

「ベル達は裕太をみつけるから問題無いわね。サラ達は私が風で案内するから大丈夫よ」

流石シルフィ頼りになるな。そのまま小動物を捕まえて来てって言ったら直ぐに捕まえて来てくれそうだけど、それは楽しめないから止めておこう。

「シルフィ助かるよ。それなら探索して小動物を探そうか」

シルフィとディーネを連れて森の中を歩く。……冷静に考えると日本に居た時も動物を探した事なんて無いし、生き物の気配を感じ取れる訳でも無い。……あれ? これってかなり難しい気がする。

茂みを探したり木の洞を覗いたりと、一生懸命探すが見つかるのは虫ばかりだ。なんか攻撃的でカッコいい虫もいて連れて帰ろうかと少し悩んだが、今回の目的は草食系の小動物だから 諦(あきら) めよう。

サラ達にも魔物を捨てるように言ったのに、俺が目的以外の物を持ち帰るのも 締(し) まらないよね。だけど角が剣みたいになっているカブトムシとか、ハサミがギザギザでメタリックに輝くクワガタとか、凶悪そうだけど超カッコいい虫が居た。次の機会には必ずゲットしよう。

「裕太、きたわ」

俺が木に登り洞を覗き込んでいると、シルフィがのんびりとした口調で話しかけてきた。何が来たんだ? 周りを見渡すが何もいない。不思議に思っていると茂みから一匹の狼が現れた。たぶんだけどフォレストウルフだな。

大型犬ぐらいの大きさで、保護色なのか暗緑色の毛皮を 纏(まと) っている。一匹が現れたと思うと背後からゾロゾロと十数頭の狼が現れ、俺が登っている木を完全に取り囲んで吠えまくる。

「完全に俺を狙ってるよね。実力差が分からないのかな?」

いくら俺が武術の素人でも、レベルも上がったしあの程度の魔物はなんて事無いはずなんだけど。

「うーん、裕太の場合は殺気も威圧感も警戒心も無いから、美味しい獲物だとしか思われて無いわね」

失礼な魔物だな。アサルトドラゴンにも勝てるんだぞ。もっと色々感じ取って欲しい。とりあえず殺気を出してみるか。

一匹のフォレストウルフに向けて殺すっと意識を込めて 睨(にら) みつける。……あれ? うるさく吠え回るだけだ。普通は俺の殺気に 怯(おび) えて、キャインっと鳴きながら逃げるパターンだろ。

「シルフィ、ディーネ、俺の殺気ってショボイの?」

「ショボイって言うより、出て無いわね」

「んー、裕太ちゃんの顔がちょっと真剣な感じになっただけかしら? でも木にしがみ付いて真面目な顔をしてもちょっと似合わないわねー」

……殺気ってレベルが上がっても出せる訳じゃ無いんだな。訓練とかが必要なのかもしれない。しょうがないから倒すか。魔法のノコギリを取り出し、木から飛び降りると一斉にフォレストウルフが飛び掛かってくる。

ヒョイっと避けながら正確に首を落としていく。動きも遅く感じるし俺もだいぶ強くなったんだな。半数ほど首を落としたところで、一匹のフォレストウルフが吠えると、こちらを警戒しながら素早く森に消えて行った。

とりあえず倒したフォレストウルフを収納して場所を移動する。暴れちゃったから小動物は逃げたり隠れたりしているだろうからな。せめて一匹は捕まえたいのに、ますます見つけるのが難しくなった気がして不安だ。

「裕太ちゃんも強くなったわねー。お姉ちゃん感心しちゃった!」

ディーネが俺を褒めながら頭をナデナデする。感心されているらしい。

「結構前からこのぐらいの事はできたと思うぞ?」

「そうなの? ……お姉ちゃん、よく考えたら裕太ちゃんが戦っているところって、ほとんど見た事無いわ」

なんかショックを受けて撫でられている手が止まった。確かにディーネの前で戦った事ってかなり少ないな。シルフィが居れば大抵の事は何とかなるから、ディーネの出番ってあんまりないんだよな。水辺で戦う事になったらディーネに頼むのもいいかもしれない。

「裕太、トゥルとタマモがこっちに来るわよ」

おっ、何か捕まえて来たのかな? シルフィも楽しそうに笑っているし、問題は無さそうだ。固まったままのディーネの手をどかして、トゥルとタマモの到着を待つ。

少し待つとトゥルとタマモがフワフワと飛んで戻ってきた。トゥルが両手で丸くて茶色の物体を持っている。あれが小動物なのか?

「つかまえた、もふもふ」「ククー」

トゥルが俺の前に捕まえたという丸い物体を差し出す。ボーリングの球ぐらいの大きさで茶色の毛皮。短い手足に、ピョコっと飛び出ている長い耳とまん丸な尻尾以外はほぼ球体だ。

とっても可愛いがまん丸な小動物は 酷(ひど) く怯えているのか、プルプルと震えている。確かにトゥルとタマモが見えないんだから怖いよね。いきなり見えない何かに捕まえられて、人間の前に運ばれたら怯えるのも当然だ。罪悪感が凄まじい。

「えーっと、トゥル、タマモ、連れて来てくれてありがとう。とってもかわいい子だけど、なんて動物か分かる?」

トゥルがコクっと 頷(うなず) き「たまうさぎ」っと答えてくれた。……玉兎なんだ。昆虫あたりから薄々と気が付いていたけど、流石異世界、変わった生物がいるな。でも可愛い。

俺が撫でようと手を伸ばすと、絶望したような目でこちらを見る。心が痛い。まあ、やってる事は動物の立場からしたら 拉致(らち) だもんね。しょうがないか。

でも玉兎って何を思って、どう進化したらこんなフォルムになるんだろう。まさしくファンタジーの産物だ。探したら三角や四角の兎も居るかもしれない……居たら面白いけど多分一番可愛いのは丸なんだろうな。三角とか地味に怖そうだ。

「えーっと、シルフィ、この玉兎がかなり怯えているから、気絶させる事ってできる? 寝ていた方がこの子も気が楽だよね」

「できるわよ」

シルフィが玉兎の額を指でツンっと弾くと、玉兎がコテンとして動かなくなった。何が起こったんだろう? たぶん空気で何かをしたんだと思うんだけど……まだまだ小動物を捕獲しないとダメだなんだ。聞いたら後悔する事になりそうだから止めておこう。窒息させたのとか言われたら罪悪感がハンパない。玉兎はシルフィに預けて、トゥルとタマモを褒めまくる。

「それで、この玉兎はどんな所に居たの?」

俺も小動物を捕まえたいから、どんな所に居たのか教えて貰おう。

「つちのあなのなかにいた」「クーー」

トゥルは地面を指差し、タマモは地面に下りて前足でタシタシと土を叩いて教えてくれた。なるほどそう言う所は兎と同じなのか。俺もいくつか穴を見つけたけど中には居なかったもんな。俺も諦めずに探し続ければ発見できそうだな。

「ありがとう、トゥル、タマモ、俺も穴をしっかり確認してくるよ。二人ももう少し小動物を捕まえて来てくれる?」

「がんばる」「ククークー」

頼もしく請け負ってくれるトゥルとタマモを見送り、俺も再び探索を始める。玉兎って可愛いよな。あんな子達が俺が作った森でコロコロとしてたら、絶対に 癒(いや) される。モフモフキングダムでも作るのも良いかもしれない。俺も頑張って見つけないとな。