軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

十一話 契約の効果と水の精霊

精霊契約した効果を確かめる為に、今まで倒せなかったゴースト系を討伐しに向かう。ベルを抱っこしてシルフィの後ろを歩く。契約してからのベルの定位置は俺の腕の中に決定したらしい。

「裕太。あそこで浮かんでいるのが分かる?」

「ん? ああ、確かに何かいるな。あれがゴーストかレイスなのか?」

「ええ。真ん中を陣取っている形がハッキリしたのがレイス。その周りにいる不安定で姿が歪んでいるのがゴーストよ」

いきなりゴーストとレイス、両方が現れたのか。真ん中にレイスがいるって事は、レイスがゴーストを従えた集団なのかもな。ゴーストは辛うじて人の輪郭が分かるぐらいで、レイスはブレも無く人型が安定しているように見える。

「それでシルフィ。どうやって倒せば良いんだ?」

「モンスターに近づいて、ベルに頼めば倒してくれるわ。なれてベルの攻撃方法を理解すれば、細かく選択する事で、裕太が望むような戦い方も出来るようになるわね」

なるほど。おおまかに敵を倒してってお願いすると、ベルが自由に行動して敵を倒してくれる。条件を付ける……たとえば派手な攻撃を使わないで倒すように頼むと、希望に沿ってくれる感じか。

「分かった。試してみるよ」

ベルを抱っこしたままゴーストとレイスに近づき、ベルにお願いする。

「ベル。あそこにいる魔物を倒してくれ。出来るか?」

「できるー」

ふわりと浮き上がり。右手を天に突き上げて自信満々に宣言する。気合十分だ。ベルがゴーストとレイスに向かって両手を突き出した。

「ふうじんらんぶー」

ベルが呪文を唱えると魔物を囲むように薄緑色の風の刃が大量に現れ、全方位から魔物に向かって襲い掛かる。粉々だ。

呪文は風刃乱舞で良いのかな? なんか和名の呪文だけど凄い威力だ。ゴーストやレイスが切り刻まれて、消滅したのに未だに攻撃が続いている。完全にオーバーキルだな。魔物を倒すのに最適な威力の呪文が分かれば、無駄が無くなりそうだ。

ようやく呪文の効果が切れた。ベルが胸元に飛び込んできてキラキラとした瞳で見上げてくる。これは褒めろって事だよな?

「おおー、ベルは凄いな。カッコ良かったぞ。ありがとう」

何とか誉め言葉を絞り出し、ベルの頭を撫でる。ベルは褒められてテンションが上がったのか、腕の中で騒いでいる。本気で父性に目覚めそうで困る。

「んー、これだと魔石を見つけるのは難しそうだな」

戦闘跡に近づき周りを見渡す。風の刃が至る所をえぐり、地面はボロボロだ。

「あら。元々ゴーストやレイスには魔石は無いわよ。だって実体がないんですもの」

「えっ? じゃあどうやって存在しているんだ?」

「さあ? 現世に対する 執着(しゅうちゃく) かしら?」

シルフィ、適当だな。……でもそれって魔物じゃなくて幽霊なんじゃ? 深く考えたら怖い事になりそうだから、魔物って事で納得しておこう。

「しかしベルの魔法は凄かったな。下級精霊でこれだけ強いとなると、シルフィはどれだけ強いんだ?」

「ふふ。私は風の大精霊。位に恥じないぐらいには強いわよ」

シルフィの顔が得意満面だ。大精霊か……ベルよりも三つも位が上なんだよな。凄そうなこと以外は想像もつかない。

「早く契約出来るように頑張るよ」

「楽しみにしているわ。さあ、今日はもう遅いんだから早く戻って休みましょう。明日の朝には水の精霊を連れてくるんだから寝坊しないようにね」

「ああ、そうだったな。分かった戻ろうか」

ベルの魔法の威力にすっかり明日の事を忘れてたよ。早く戻ってさっさと寝ないと。

井戸に戻りシルフィとベルに別れを告げて、岩穴に潜り込もうとするとベルも一緒に付いてきた。せっかく契約したんだから今日は一緒に寝るんだそうだ。

下が岩で快適じゃないと言うと、俺の上で寝るから問題ないらしい。迂闊に寝返りも打てない事が決定した。

***

目が覚めると真っ暗だ。少しは慣れたけど、安全な場所が作れたら是非とも窓を取り付けたいな。朝日に照らされて爽やかに目覚める。良い感じだと思う。

まあ、その前に柔らかい寝床の確保だな。体がバッキバキで辛い。光球を浮かべ俺の上でまるまって眠っているベルを、起こさないように抱っこして体を起こす。

そうだった。今日は水の精霊を呼んできてくれるんだったな。早めに外に出ておこう。出入口を塞いでいた岩を収納して外に出る。薄暗いな。まだ日が登り切っていないみたいだ。

シルフィを呼んでみるが出てこない。まだ戻ってきていないんだろう。腕の中でもぞもぞとベルが動き出す。

「おはようベル」

「ゆーた。おはよー」

元気な挨拶だ。パチリと目覚めて直ぐにエンジン全開。少し羨ましいな。

「よく眠れたか?」

「うん。よくねたー」

「それなら良かった。俺は身だしなみを整えるから、そこら辺で遊んでいてくれ」

「はーい」

ベルが離れたので、固くなった体をほぐし、口の中を含めて全身に洗浄を掛ける。寝ぐせと衣服のシワを出来るだけ伸ばして身だしなみ完了。適当だがしないよりはマシだろう。

朝食は……どうなるか分からないけど、水が綺麗になったらお湯を沸かして、インスタントラーメンを食べよう。

よし。お湯を沸かさないと駄目だから、コンロを作っておくか。食器も必要だな。手頃な岩を取り出し、ノコギリで加工する。二度目の作業だから手慣れたものだな。あとはノミで空気穴を開けて……コンロは完成だ。

ラーメン用のドンブリとお箸も作っておこう。手頃な大きさの木材を正方形に切り出し、ノコギリでおおまかに形を整える。スパスパ切れるから簡単だな。

大まかに形を整えたら、ノミで凹凸を削り形を整える。魔法のカンナで表面を薄く削れば完成です。急ごしらえだから多少不格好だけど実用には十分だ。

「おもしろいー」

興味深げに見守っていたベルが、ドンブリを持って様々な角度から眺めている。

「ベル。落とさないようにね」

「わかったー」

どんぶりの何がそんなに面白いのか、頭にかぶったり上に乗ってみたりと遊んでいる。まあ、楽しいのなら良いか。今の内にお箸も作ってしまおう。

二本の固い枝を取り出し、サバイバルナイフで慎重に形を作る。先の方が細くなるように削るのが難しい。何とか形を作り、表面にカンナを掛けて完成。

改めて魔法の道具は凄いな。切れ味が素晴らしいからスパスパと短時間で加工できる。問題は切り過ぎた時と、自分を切りつけた時だな。注意しないとスパっとやっちゃったら酷い事になりそうだ。

「あー、しるふぃかえってきた!」

ベルの声に空を見ると、シルフィともう一人。ん? まわりに何か飛んでるな。なんだあれ? 悩んでいるとシルフィが目の前に。相変わらず凄いスピードだ。

気になっていた謎の飛行物体は……八十センチに満たないぐらいの、水色のイルカだ。つぶらな瞳がとても可愛い。飛んでるけど。

「えーっと。お帰りシルフィ。そちらの方が水の精霊さん?」

「ただいま。そうよ。水の大精霊ディーネよ」

大精霊が大精霊を連れてきちゃったよ。こんな所に大精霊が二人もいて良いのか?

「ディーネっていうの。よろしくね」

イルカに気を取られて見逃していたが物凄い美人が目の前にいた。綺麗な青い髪。真っ白で透き通るような肌。青い瞳はわずかに垂れていて、おっとりした雰囲気の美女だ。

何より母性の象徴がハンパない。これぞ巨乳。飛び込んでいきたい。思わずシルフィと見比べてしまう。

「ちょっと裕太。挨拶もしないでじろじろ見て。しかも私とディーネを見比べたでしょ」

ヤバい。ばれてる。

「い、いや。そんな事無いよ。ディーネさん。森園 裕太です。わざわざ足を運んでくださり本当にありがとうございます」

「あらあらどうもごていねいに。ディーネでいいのよ。敬語もいらないわ。裕太ちゃん。よろしくね」

ちゃ、ちゃん付けなんだ。なんか口調がゆっくりでのんびりした雰囲気の人……精霊だな。

「何勝手に話を進めてるのよ。ちょっと裕太。絶対に見比べたでしょ」

「シルフィちゃん。小さなことで怒っちゃ駄目よ」

「ちょっとディーネ。私は小さくないわよ。普通。普通サイズよ。あなたが無駄に大きいだけでしょ」

シルフィ。小さいってそういう意味じゃないと思うよ。俺が口に出したら酷い目に遭いそうだから言わないけど。でもシルフィって気にしてたんだな。今後気をつけよう。

「ええっと。ディーネ。改めてよろしく頼む。それでそこで飛んでいるイルカは何なんだ?」

空を飛んでいるイルカを見て聞いてみる。いつの間にかベルがイルカにまたがっているのは、どうしたら良いんだろう? キャッキャと楽しそうに笑っているし、イルカものんびりと漂っている。問題無いのかな?

「ああ、そうだったわね。この子は水の下級精霊よ。シルフィちゃんから話を聞いて一緒に連れてきたの」

下級精霊って幼女の姿だけじゃないんだ。衝撃な事実だな。イルカの話をしているとこちらに近寄ってきたので、軽く頭を撫でる。ひんやりスベスベで気持ちが良い。

「裕太。人型でない下級精霊は喋れない子もいるの。でも言葉は理解しているから、普通に話しかけると良いわ」

シルフィの機嫌も直ったのか、アドバイスをくれる。確かにイルカの口で話すのは難しそうだ。

「俺は裕太。よろしくな」

イルカは俺の手に頭を擦り付けてグリグリしてくる。可愛い。

「あっ。そうだ。この子はウインドベル。俺と契約してくれている風の下級精霊です」

「べるだよー」

ベルがディーネの豊満な部分に飛び付き、顔をうずめながら挨拶している。本気で羨ましいな。

「あらあら。可愛いわね。ベルちゃん。よろしくね」

「はーい」

なんか水の大精霊が来て、賑やかになったな。これからどうなるんだろう?