軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百二十一話 ピクニックって……

のんびりした空の旅も終わり泉の家に到着した。

「ゆーたー、おかえりー」「キュキュー」「おかえりなさい」「ククー」

先に送還しておいたベル達が飛び付いてくる。

「みんなただいま。サラ達をベッドに寝かせるからちょっと待ってね」

ベル達に断りを入れて移動拠点を出す。シルフィに頼んで浮かべたままベッドまで運び、そのまま寝かせる。飛んでたはずなのに起きたらベッドに寝ているんだから驚くかもな。フクちゃん、マメちゃん、ウリがサラ達を見守っている姿が微笑ましい。

サラ達をベットに寝かせた後、外に出て皆に帰還の挨拶をする。ワチャワチャと突撃してくるベル達を丹念に撫で繰り回し、ディーネ、ノモス、ドリーにただいまと言う……あれ?

そう言えば帰って来るとディーネがいっつも飛んでくるんだけど、なんか大人しい。成長したのか?

「なあ、ノモス、ドリー。ディーネはどうしたんだ?」

「くだらん事じゃ」

ノモスが一刀両断する。本当に何があったんだ? 不思議に思っているとドリーが苦笑いをしながら、教えてくれた。

「ディーネは少し 拗(す) ねているんですよ。今回の冒険者ギルドとの対決に呼ばれなかったのが、悲しかったみたいで」

成長はしてなかったな。……これはあれか? 仲のいい友達が自分を放っておいて、楽しい所に遊びに行った的なやつか?

うーん、確かに地味にショックなんだよな。俺も似たような経験があるし気持ちも分かる。大精霊がそれってどうなの? っとも思わないでも無いが、気持ちが分かる以上は 慰(なぐさ) めるべきだろう。俺が原因みたいだし。

「ディーネ、俺がディーネを呼ばなかったのは行動範囲が森だったからだ、そこに特別な理由は無いぞ。冒険者ギルドとの対決の付き添いもその流れでお願いしただけだし、行動範囲が水場だったら呼んでいたのはディーネだぞ。適材適所なんだよ」

「ほんと?」

若干(じゃっかん) 疑わしそうに聞いて来るディーネ。お姉ちゃんはどうしたんだよ、完全に拗ねた小学生になってるぞ。

「もちろんだ、ディーネが頼りになるのはみんな分かってるのに、わざわざ仲間外れなんかにしないよ。その証拠に此処に戻ったら、ディーネに頼みごとをするつもりだったんだ。ねっ、シルフィ」

「ええ、その通りよ。飛んで帰って来る間に色々考えてディーネに頼もうって話していたわ」

「そ、そう? ……そうよね。お姉ちゃんを仲間外れになんて、裕太ちゃんがするはずないものね。ごめんなさい、お姉ちゃんなんだか悲しくなっちゃったの」

ショボンとしながらディーネが言う。ちょっと心が痛む。

「い、いや。まあ、残されると寂しいもんな。俺も悪かったよ。ただ、強い力を持つ大精霊に頼り切るのは問題だから、できるだけ俺とベル達で何とかしようとしているだけなんだ。誤解しないでくれ」

「そうよね、お姉ちゃんに頼りっきりだと立派な大人になれないものね。分かったわ、お姉ちゃんがしっかり裕太ちゃんを見守ってあげるわね」

満面の笑みで宣言するディーネ、コロコロと表情が変わるな。あと、俺は確かに立派とは言えないがもう大人だ。

「それで、裕太ちゃんの頼みってなんなの? お姉ちゃん頑張っちゃうわ」

俺も仮眠を取りたいんだが、この状況で起きてから説明するよとは言い辛い。

「水路や池に魚や水生植物を入れたいと思ってるんだ。できるかどうかも分からないし、この泉を管理しているディーネの協力が必要だから、お願いしようと思ってたんだけど大丈夫かな?」

「もちろんよ。お姉ちゃんに任せて!」

ディーネがドンっと胸を叩き請け負ってくれた。話を聞いていたベルも、ディーネのマネをしてドンっと胸を叩く 仕草(しぐさ) をする。ベルはこうやっていろんな 仕草(しぐさ) を学習しているんだな。

「中心の泉は綺麗なままの方が嬉しいから、魚や植物は入れない方が良いかと思ってるんだけど、出来る?」

「うふふー。お姉ちゃんなら簡単よ。じゃあ、さっそく行きましょう!」

「ちょっと待って、まだ暗いしサラ達も連れて行きたい。俺も眠いから起きてからにしよう。あと、ドリー、水生植物の方は大丈夫かな? この水路や池で水生植物は育つ?」

「日差しを 遮(さえぎ) る場所が少ないので森と精霊樹がある区域以外は、種類を選ばないとダメですが何とかなりますね。でも魚のエサは分かりませんよ?」

確かに浅い水路にサンサンと降りそそぐ日差しは、種類を選ばないと辛そうだ。それと魚のエサか……。

「ディーネ、現在の死の大地に影響がない魚のエサになる虫とか分かるか?」

「うーん、成虫になっても作物を荒らしたり、毒を持っていないのなら判断はつくけど、お魚が食べる食べないは分からないわ」

ふむ。危険な虫じゃ無ければ大丈夫だろう。最初だから植物を重点的に確保して、魚は池用にメダカみたいな小魚が居れば確保しよう。いずれは水路の最終到達地点の泉を拡張するのも良いな。

沢山の魚を捕獲して放流すれば釣り堀になるかも。拠点でのんびりゆったりと釣り糸を垂らす……釣り道具を手に入れる事から始めないとダメだな。

なかなか大変そうだけどできそうなら挑戦したい。ベル達が水路を爆走出来なくなるのは可哀想だけど、障害物が増えたら増えたで新しい楽しみを見つけるだろうし問題無い。障害物レースとか。

「最初は水路には手を出さないで、育てやすい森の池に生態系を作るのなら何とかなりそうだね。みんなが起きてから川に行こうか。ノモスはどうする?」

「儂は用があるから行かんぞ。構わんだろ?」

たぶん聖域関連の用事なんだろうな。後でどうなってるのか聞いておくか。いきなり明日からここは聖域だ! とか言われたらビビる。

「用があるならしょうがないね。でも、何かあった時に俺が召喚するのは大丈夫?」

「うむ、問題無いぞ。だが、シルフィ達がおるのに儂が必要になる場面など想像出来んがな」

「まあ、そうだけど、土関連でトゥルの手に負えない事態が起きたら呼ぶよ」

「うむ、分かった」

土関連以外でノモスを呼ぶ状況ってどんな事態なんだろうな。シルフィ、ディーネ、ドリーでも手に負えない事態。大陸が崩壊するんじゃなかろうか? 確かに必要になる場面は想像出来んな。

「シルフィ、俺は仮眠を取るからサラ達が起きたら俺も起こしてくれ」

シルフィに目覚ましを頼んで寝室に入り眠りにつく。しかし帰って早々お出かけする事になった。本当は落ち着いてからにしようと思っていたんだけど、ディーネの様子を見るとしょうがないよね。まあ、楽しいイベントだから問題無い。しっかり休んで俺も楽しもう。

***

朝、シルフィに起こしてもらい、少し重い頭を振って眠気を飛ばし朝食の準備をする。とは言っても魔法の鞄から料理を出すだけなんだけど。

「準備が出来たから食べていいよ」

俺の言葉でみんなが朝食を食べ始める。俺は久しぶりに魚にしよう。豪腕トルクの宿は朝食が基本肉だからな。肉も好きだけど毎朝ガッツリ肉だと魚も食べたくなる。

「みんな食べながらで良いから聞いて。今日はシルフィに川、いや、森の池に連れて行ってもらうからね」

「池ですか? お師匠様、何か新しい訓練でしょうか?」

「いや、ピクニックみたいな物かな? 森だから魔物もいるだろうけど目的は池に入れる水生植物や魚を捕まえに行くんだ。死の大地の環境を整えないとね」

「ピクニックですか?」

「うん、のんびり植物や魚を確保しながらの森の散歩みたいなものだね。魔物もシルフィ達が居るから問題無いし、楽しみながらのんびりしよう」

「森での散歩ですか。迷宮の森の探索とどう違うんですか?」

………………どう違うんだろう? そうだよね、自然なんかほぼ毎日魔物付きで体験してるよね。食べるご飯も買い溜めした食料だからいつもと変わらないし、特別感がまったく無い。

極論かもしれないけど、ピクニックって自然から縁遠い人が、自然を感じる為にする行為なんだろうな。うんざりするぐらい命がけで自然と 戯(たわむ) れているのに、ピクニックってどうなんだろうね。

「えーっとね。今日は戦わなくて良いんだ。シルフィ達が全部やっつけてくれるから、安全な森の中の池で採取かな」

シルフィ達に目線でお願いすると、苦笑いで 頷(うなず) いてくれた。迷惑をかけてごめんね。

「なるほど、森の植物のお勉強と拠点の池用の魚や植物の確保が目的なんですね。お師匠様、私頑張ります!」

「おれもがんばるぞ!」

「キッカも!」

「……そ、そうだね。うん、頑張ろうね」

なんか思ってたのと違う。でもまあ、やる気が 漲(みなぎ) っているんだから、これで良いって考えよう。

「ゆーた、もりいく?」

ベルが大きなサンドイッチを抱えたまま、ふよふよと飛んで来た。ご飯に夢中なのかと思っていたが、ちゃんと話を聞いていたらしい。

「うん、森の池にみんなで行くんだよ。今日は小さなお魚さんや植物を採取するんだ。ベルも手伝ってね」

「うん!べる、おてつだいするー!」

「よろしくね。でもあんまり動くとお肉が落ちちゃうよ」

両手でパンを抱えたままブンブンとやる気を表していたから、挟まれた肉が落ちそうになっている。俺の注意でベルが慌ててお肉にかぶりつく。なかなかの食いしん坊っぷりだ。

幼少期の経験は大人になっても繋がっていくけど、ベル達が大人になった時に食べ物に 執着(しゅうちゃく) するような性格になってたら、俺のせいなんだろうな。

俺がいる間は食べさせるのは問題無いんだけど、死んだら食事とかどうするんだろう? なんか良くない経験をさせてるのかもしれないな。でも今更ご飯無しとか無理だ。俺がご飯を食べている時に物欲しそうな顔で見られたら罪悪感がハンパない。

精霊に食べ物を貢ぐ文化でも流行らすか? 色々考えておかないと不味い気がしてきた。シルフィ達にも話を聞いておこう。悩みが増えてしまった朝食が終わり食器に洗浄を掛けて収納する。

「シルフィ、拠点の森と似たような場所で、生物が住んでいる池を知ってる?」

「ええ、知ってるわ。そこに連れて行けばいいのね?」

「うん、お願いね」

あっさりと目的地も決まりノモスを除いた全員で出発する。予定と違って新鮮味の無いピクニックになりそうだけど、精一杯楽しもう。