軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百五話 メラルの相談

マリーさんとの話し合いが終わり、部屋に戻るとメラル? と言う精霊が居た。どうやらベル達が連れて来たらしい。友達かな?

「こんにちは。俺は裕太。メラルって呼んで良い?」

飛んで来たベルを抱っこしながらメラルに話しかける。見た目はサラ達ぐらい、小学生ぐらいの少年だ。まあ、俺よりも年上なんだろうけど、少年に敬語は違和感ありまくりだから勘弁してもらいたい。

「うん。噂には聞いてたけど、本当に精霊が見えて話せるんだな」

噂? 噂になっているのか。まあ、見えて話せるのは物凄く珍しいらしいって言ってたから、噂にぐらいなるのかもな。

「うん。見えて話せて、ついでに触れるよ。それでどうしたの? 遊びに来たのなら大歓迎だけど、何か用事?」

元々は元気が良さそうな少年なんだけど、今は少し沈んだように見える。何か悩みがあるのかもしれない。

「ああ。悩んでいたらベルが、裕太なら力を貸してくれるって……手伝ってくれるか?」

「ゆーたはすごいの!」「キュー」「だいじょうぶ」「クーー」

あれ? もしかしなくても俺がメラルの悩みを解決する流れ? ベル達の期待の視線が微妙にプレッシャーだ。

「えーっと。まあ、話だけでも聞かせてくれる? 俺としても精霊にはお世話になっているから、出来る事なら手伝うよ」

「助かる」

「うん。まあ出来ない事は出来ないけどね」

精霊の悩みとか想像がつかないから、予防線ぐらいは張りたい。

「出来ないなら出来ないでいい。俺は迷宮都市にある鍛冶屋に代々祭られているんだけど、その鍛冶屋で問題が起きたんだ」

「精霊を祭るの?」

神様みたいな感じみたいだ。日本でも色々と祭っていたしおかしくは無いのか?

「ああ。俺は火の精霊で鍛冶屋の初代は精霊術師でもあったんだ。それで鍛冶屋の 炉(ろ) は常に火が燃やされ、そこを住み家に代々鍛冶屋の跡継ぎと契約して来た」

へー。代々引き継がれる契約か。そんな事もあるんだな。

「でも、子供がみんな精霊術師の才能があるわけじゃ無いだろ? よく今まで繋がって来たね」

「裕太。全員が全員って訳じゃ無いけど、才能もある程度引き継がれるのよ。たぶんだけど一握り(ひとにぎり)の優遇されている精霊術師達は代々が精霊術師とかじゃないかしら」

なるほど。蓄積されたノウハウと、長い間その家族と契約していたから、その家のやり方に精霊が慣れてるんだろうな。俺の疑問にシルフィがサッと答えを教えてくれる。

そうなると野良の精霊術師はほとんど駄目なんじゃ。上手く行くには天才的な才能か、名門の家に弟子入りって感じか?

まあ、法律がある訳でもない。情報をバラ撒くよりも自分達で独占して利用するのも、当然と言えば当然だ。俺だって単純な俺の方法が世間に広まったら怖いから、教える相手は選ぶつもりだ。

でももう少し世間の精霊術師の評判も気にして欲しかったな。名門とかになってると、冒険者など我ら名門の精霊術師がなるものではないっ! とか言ってそうだな。想像でしかないけど。いや、嫌な奴なら精霊は見捨てそうだからどうなんだ? 実際に確認してみないと分からないか。

「何となく理解は出来たよ。ごめんね。話の腰を折って」

「いや。理解してもらった方が話しやすいから構わない。それで、半年ほど前にその鍛冶屋の主人が病で天に旅だった」

旅立ったって死んじゃったって事だよな。メラルも悲しそうな表情をしていたから、契約者だったんだろう。

「問題は 跡取(あとと) りの事なんだ。主人にはメルって言う娘が一人しかいない。鍛冶の腕は確かなんだが、俺と契約出来なくて悩んで苦しんでる」

えーっと、娘さんがメルで精霊がメラル。微妙にややこしいな。祭っている精霊に 因(ちな) んで名前を付けたのか? あと娘が鍛冶とか違和感が半端ない。

「その子には精霊術師としての才能がなかったの?」

それだと俺にはどうしようもないよ。

「いや。精霊術師としての才能はあるんだ。でも、先々代の頃に俺は中級精霊に進化したから、魔力が 足(た) りなくてメルだと契約出来ないんだ」

「魔力が 足(た) りないのが契約出来ない原因だって気づいてないの?」

「そうなんだ。先代は若い頃に冒険者にも手を出してたから、魔力も上がっていて問題が無かった。でもメルは魔力が原因だと気づいていないから、代々伝えられている魔力までしか上げていない。だから自分が女だからとか、鍛冶師として俺に認められていないと考えて苦しんでいる」

なるほど。代々受け継いできたのなら、契約に必要な魔力も分かってるんだな。でも進化したからズレが生じたって事か。

「メラルの契約者は中級精霊に進化した事に気が付かなかったの? 存在感が増しそうだし、魔物と戦ったら魔法の威力の向上とかで、分かりそうだけど」

「鍛冶屋を継ぐ時に俺と契約するから、違いが良く分からなかったみたいだ。炉に居る時はそんなに魔力を使う事も無いからな。俺が進化した時の契約者も鍛冶以外には 無頓着(むとんちゃく) で、調子が良いなぐらいにしか思ってなかった」

話を聞くと俺にも簡単に対処出来そうだ。しかしメラルが進化した時の契約者が、ちゃんと確認していれば何の問題も無かったんだろうに。調子が良いなで終わらせちゃったのか……。

「それなら大丈夫だね。取り敢えず魔力が 足(た) りていないって事を伝えて、必要ならパワーレベリングに付き合えば良いだけだよね。でも魔力の伸びが途中で止まったりしたら、俺にはどうしようもないよ?」

「そうして貰えれば助かる。魔力もメルの家系は代々高いから、よっぽどでなければ契約出来るまでは上昇するはずだ。もし途中で止まってしまったら……その時は、しっかり話し合いをしたいから、力を貸して欲しい」

魔力も血筋で伝わるのか。魔術師も血筋に 拘(こだわ) ってそうだな。

「うん。それぐらいなら構わないよ。でも、メルには精霊関連で俺が教えた内容を、秘密にして貰わないと 困(こま) るんだ。約束を破った場合はメラルにメルを見捨てて貰うって脅すけど大丈夫?」

「メルが約束するのなら大丈夫だ。あの子は約束をむやみに破ったりしない。もし破ってしまった時は俺も責任を取る」

そんなに真剣な顔で言われると俺もちょっとビビる。 自決(じけつ) とかしないでよ。

「そんなに思いつめられると怖いから、ちゃんと決めておこうか。メルがもし約束を破ったらメラルがメルの側を離れる事。約束を破った事を俺に知らせてくれる事でいいよ。シルフィ、問題ないよね?」

「良いんじゃない。精霊は約束を破ったりしないから、安心しなさい」

「自分で言うのは何だけど、俺が心配なのは人間の方なんだよね。でもメラルが大丈夫って言うのなら信じるよ。明日の朝に行けばいい?」

「ああ、最近ずっと鍛冶の腕を上げようと工房に 籠(こも) っているからな。明日の朝、迎えに来ればいいか?」

「そうだね。準備しておくから迎えに来てくれたら助かるよ」

「分かった。あと追加で悪いが、メルに精霊術師としての手ほどきも頼めないか? ベルが教えてくれた話はとても為になったんだ」

精霊とのコミュニケーションの事か。別に悪用する人物でなければ問題無いよな。

「秘密が守れて、悪用しないのなら問題無いよ」

「助かる。俺が悪用など絶対にさせないから安心してくれ。じゃあ俺は戻るな。明日は頼む」

ペコリと頭を下げて飛び去って行った。夕食に誘う暇もなかったな。

「ゆーた。えらいー」「キュキュー」「いいこ」「ククー」

メラルが帰ると、ベル達がふわふわと寄って来て口々に褒め称えてくれる。どうやらメラルの頼みを解決できると言った事が良かったようだ。褒めてくれたお礼にベル達を撫で繰り回す。

「そういえば、シルフィ。契約していなくても、あんなふうに精霊が人間の為に 動(うご) く事があるんだね。精霊はあんまり人に関わらないイメージだったから少し驚いたよ」

「あら。私も裕太に関わったでしょ。メラルもその鍛冶師の家系を気に入ってるのね」

家系を気に入るか……初代がよっぽどいい人だったのかな? メルって子の事も大切に思っているみたいだし、愛着があるのかもしれない。

「それもそうか。じゃあ明日はメラルの所だね」

「そうね。……ねえ、裕太。明日はお休みよね。サラ達は出かけると思うけど、どうするの?」

「あー、そう言えばそうか。シルフィはサラ達について行ってもらいたいから、俺の方はディーネとドリーに頼むよ」

「分かったわ」

「お願いね。そろそろ夕食だからサラ達の所に行こうか」

マリーさんに紹介状を貰ったけど、大工の所に行く時間は取れるかな? ちょっと時間が掛かりそうだ。

***

「待たせたか?」

朝食を済ませてディーネとドリーを召喚して事情を説明していると、メラルが迎えに来た。

「丁度良い時間だよ。ん? どうしたの?」

メラルがなんか驚いてる。

「いや、大精霊が増えていて驚いただけだ。こんなに大精霊と契約して何がしたいんだ? 世界でも手に入れるつもりなのか?」

いきなり大袈裟な事を言われた。世界征服? ……出来るのか? 昔誰かが世界征服は男のロマンだって言ってた気がするけど、男なら目指すべきなのか? 世界征服。

「この子がメラルちゃんねー。私はディーネよ、よろしくねー。お話は裕太ちゃんから聞いたから、お姉ちゃんに任せておいて。精霊と鍛冶師の娘、言葉を交わす事も出来ない秘めた愛。素敵だわー。お姉ちゃん頑張っちゃうんだから」

「お、おい。なんかおかしな話になってるぞ。どんな説明をしたんだ? おい。無視するなよ」

「裕太、裕太! 何を考えているのか知らないけど、助けを求められてるわよ」

世界を征服して玉座で高笑いしていると、シルフィの声が聞こえて来た。

「ん? シルフィ。どうしたの?」

「何を考えているのか知らないけど、あれを放っておいて良いの?」

シルフィに 促(うなが) されて顔を向けると、何故か愛について熱く語るディーネと、こちらに助けを求めるように必死で手を伸ばすメラルが居る。その周りではベル達が勉強になるって雰囲気でコクコクと頷いている。カオスだな。

「なんであんな事になってるの?」

「知らないわ」

本当に知らないの? なんか関わり合いになりたく無いわって雰囲気がプンプンするんだけど。ドリーも明後日の方向を見ているし。取り敢えずメラルを救出しよう。

「ディーネ。ちょっと落ち着いて。メラルが 困(こま) ってるよ」

なんだよ愛の逃避行って、どんな話をしていればそのワードが出て来るのか想像できないよ。

「えっ? あらあら、ごめんなさいね。お姉ちゃん、ちょっとだけ夢中になっちゃったわ」

グッタリとしたメラルを見て、ちょっと冷静になったディーネ。まわりで「あいはむてきなの!」「キュキュー」「とうひこう」「ククーー」っと話し合っているベル達が心配だ。

「ま、まあ、そろそろ出かけるから話はまた今度にな」

「そうね。メラルちゃん、また後で話しましょう」

顔が絶望に染まるメラル。ごめん。メラル。言葉の選び方を間違えたよ。悪かったからそんなに恨めしい表情で見ないで欲しい。

「メラル。出発するから案内をお願いね」

「わ、わかった」

シルフィにサラ達の事を頼んで宿を出る。なんか出発前から疲れたよ。