軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

私の家族達

「ディアス、その神殿とは一体どんな所なんだ?」

とんでもない伯父さんの言葉に私達が唖然としてしまっていると……アルナーからそんな疑問の声が上がる。

「あー……神殿がどんな所というとだな、なんと言ったら良いのか……」

アルナーにそう返しながら、さて、どう説明したものかと頭を悩ませていると、伯父さんから、当然説明出来るよな? 間違ったらタダではおかないぞ、との視線が送られて来て、その視線を受けた私は懸命に頭を働かせながら……神殿についての説明を口にする。

かつての建国王と共に聖地に至った聖人ディアは、聖地で神に会い、神から根源たる知識といくつかの神具を賜った。

建国王がその知識と神具の力でもって国を興し、王国領土を平定すると、聖人ディアは王に仕えるのではなく神殿を作り、神殿にて神の知識を広める道を選んだ。

聖人ディア亡き後、神殿は王国の各地に建てられることになり、それらの神殿に仕える神官達は、聖地にて眠る大地の神の教えを人々に広め、導く為に日々尽力している。

聖人ディアの教えの中には、神がどういった姿でどんな存在であるのかなど、神についての詳細が一切無く、またその意味、意図が分からない教えが数多く存在していて、神が一体何者であるのか、意味、意図の分からない教えの真意が何であるのか、そういった探究をするのもまた神官達の仕事である。

「―――と、まぁ、そんな感じだな」

そんな私の説明に、なるほど、とアルナーが頷いて……まぁ、そんな所か、と伯父さんも頷いてくれる。

そうして伯父さんが、私の説明を補足する形で、

「王国内に数多く存在する神殿のうち、王都と東西南北のそれぞれに建てられた大神殿は、その大きさに見合った権威を持っていて、そのうちの一つ、東の大神殿の神官長がこの馬鹿の両親、儂の弟夫婦だったという訳だ。

だというのにこの馬鹿面は全く……」

と、ボヤくようにして吐き出していると、先程からずっとなんとも言えない顔をしていたイーライが口を開き、力の無い言葉を口にする。

「ま、待ってくれ。

兄貴の両親が大神殿の神官長だなんて、そんな……。

大神殿といったら……あのクズ共の巣窟、本拠地じゃないか……!」

神官達を指してクズ共と言っているのか、それとも神殿に住む何者かを指してそう言っているのか。

私の記憶の中では、神殿、神官はそんな風に言われるような存在では無かったはずなのだが……私が戦争に行っているうちに、神殿で何かあったのだろうか?

と、そんなことを私が考えていると、イーライを宥めるような声色で伯父さんが言葉を返す。

「……まぁ、そこの若いのがそう言いたくなるのも無理は無い。

今や神殿は……いや、神官共は落ちるとこまで落ちちまったからなぁ」

そんな言葉を枕に始まった伯父さんの話によると、私が生まれる何年も前から神殿は、内輪揉めをしてしまっていたらしい。

聖人ディアの教えをそのまま守り続けようとする古道派。

聖人ディアの教えを自分達に都合の良いように解釈し、改変し、利用しようとする新道派。

神殿の神官達はそれら二つの派閥に別れての論争、権力争いをしていたのだそうで……私の両親と伯父さんは古道派に属していたんだそうだ。

そしてその争いは年月が経つに連れて激化していき……激化する争いの中で新道派が台頭。

古道派はじわじわと勢力を失っていって、神殿から王国から聖人ディアの教えが失われていってしまって……そんな中、伯父さんは聖地に足を運び、神に教えを乞うことで争いを解決しようと考えた。

両親に後のことを任せて聖地を目指しての旅に出て……そうして王国に帰ってきたなら……、

「弟夫婦の家は綺麗サッパリ無くなっちまって、古道派も何処へ行ったのやら綺麗サッパリと消えちまって……新道派が好き勝手やってくれたおかげで、神殿は荒れ放題の腐り放題の変わり果てた姿に。

せめて弟一家の消息だけでもと思っても、やれ一族諸共死んだだの殺されただのとそんな話ばかり聞こえてきて……それでも諦めずに情報を集めて、集め続けて……。

そうしてようやく、ようやくだ、ディアス。お前の消息を掴んだと思ったら、古道派神官長の一人息子が……よりにもよって戦地で人殺しに励んでいたと聞かされた儂の気持ちが分かるか? えぇ?

なんとしてでもその馬鹿面を一発二発、いや百発は殴ってやらねば気が済まぬと考えていた訳だが……」

イーライを宥めるような声から、私を責める険しい声へと声色を変えながらその思いを吐き出した伯父さんは、そこで一旦言葉を切り、アルナーのことをじっと見つめて……そうしてから言葉を続ける。

「……だが、こうして嫁を貰って、それなりに真っ当な暮らしをしておったようだし……殴るのは勘弁しといてやろう。

ここに来るまでに見た光景も……中々どうして悪くなかった。

そこの羊っ子に、耳っ子、犬っ子共も……ディアス、お前の家族なんだろう?

ならまぁ、あの馬鹿夫婦も……大地に還りながら満足しておるだろうよ」

そう言ってから伯父さんは、アルナーの手を取り、

「お前さんもこの馬鹿が旦那じゃ苦労するだろうが、どうか面倒を見てやってくれ。

よろしく頼むよ」

と、笑いかけながら声をかける。

そんな伯父さんのとんでもない内容の話に、私も皆も驚かされてしまったというかなんというか……どう返したら良いのやらと困っていると、アルナーが伯父さんに、

「こちらこそ家族として一族として、よろしくお願いします」

なんて挨拶をし始めて……その挨拶を耳にしたからなのか、ここに来てからずっと、俯いたまま何も言わずにいたエリックが突然の大声を上げる。

「ちょぉぉぉーーっと待ちなさいよ!

アンタ何をシレっとお嫁さん面で伯父様に挨拶しちゃってるのよ!!

アンタがこの人の妻だなんて冗談じゃないわよ! この人の妻はこの私よ、私!

私がこの人と結婚するって二十年も前から決まってるのよ!!」

私をこの人と呼び、指差しながらそんなことを言うエリックに、私はたまらず声を返す。

「……いや、待て、エリック。

私がお前と結婚するとは一体何の話だ……?」

「な、何を言ってるの……!

あ、あの時言ってくれたじゃない? 私が大きくなったら指輪を買ってくれるって」

「うん……? うんん……あの時?

……もしかして、あの誕生日の時の話か?

確かに今は金が無いから、大人になったならその時に好きな指輪を買ってやると、そんな約束をした覚えがあるが……」

「それってつまりはプロポーズしてくれた訳でしょ!!」

『なんでそうなる!?』

エリックの脈絡の無さ過ぎるその言葉に、私とイーライが思わず声を重ねる。

「お、お前、そんなくだらねぇ話をネタに兄貴の婚約者を自称してたのかよ!」

「何よ! どう聞いたってプロポーズじゃないの!!」

愕然とするイーライに、怒鳴り返すエリック。

「……ディアス、あいつ、男だよな?

ドレスを着て、エリーと名乗って……会った時からおかしな奴だとは思ってたんだが……」

「義伯父殿、あの子は魂が女の形をしているので……女の心を持っているのでしょう」

「あぁ? ……なるほどねぇ、魂と心か。

……まぁ、アレだ、アルナーさんよ、そんな他人行儀な呼び方するな。名前で呼ぶか、ディアスと同様伯父さんで構わん」

意外にも仲良く会話する伯父さんとアルナー。

「ねぇねぇ、父さん父さん!

この子達、新しい妹達なんだよね! お嫁さんも可愛いけど、この子達も可愛いー!」

「……お姉さん?」

「……おねえさん?」

「あ、ボクはディアスさんの娘じゃないですよ」

いつの間にかセナイ達の下へと駆け寄り、抱きしめ頬ずりしているアイサと、されるがままのセナイとアイハンと、セナイ達に抱きしめられたエイマがそれぞれ声を上げ……、

メァーメァーメァ。

メァメァ~~……。

と、こちらもいつの間にか合流したフランシス、フランソワが呆れたような顔で声を上げる。

賑やかになったもんだとか、落ち着きがないとか、どうやらそんなことを言っているらしい。

……そうして賑やかで落ち着きのない私の家族達は、それぞれ好き勝手に思うがままに、声を上げ続けるのだった。