軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

獣を狩ろう

領民の増やし方……。

うーむ、全く思いつかない。

私に学があれば何か思い付いたのかもしれないが、残念なことに私に学というものは欠片も存在していない。

他の領主は一体どうやって領民を増やしているんだろうなぁ……農業や戦争のことなら少しは分かるんだが……。

私がそんなことを考えながら唸っていると、アルナーは半眼で私のことを一睨みしてから声をかけてくる。

「先程から唸ってばかり、鬱陶しい男だな、お前は」

「……それは悪かったが、私も必死なんだよ。

領民を増やさなければ話にならないのに、その方法が全く分からんのだ」

「……領民領民とお前は言うがな、今の状態で領民を増やしてお前は一体その先どうする気なのだ?

ユルトは一つ、食料も干し肉がお前の分しかないのだぞ?それを分かっているのか?

人が増えた所で待っているのは餓死か、病死だぞ」

「ああっ!

りょ、領民が増えたらその分を鬼人族がくれたりは……」

「ふざけるな!

何故私達がそこまでしてやらねばいかんのだ!」

「や、やはり駄目か。

いや、すまん、今のは忘れてくれ。

しかしそうなると、領民の確保よりも先に家と食料をなんとかしなきゃいけないのか……。

メーアの毛との交換だけでどうにかなるもんでも無さそうだなぁ」

私はそうしてまた唸り声を上げながら頭を悩ませていく。

そもそも今の家と食料だってモールのお情けで貰ったようなものなのに領民の分など、どうしたら手に入るのだろうか。

領民に、家に、食料に、考えなければいけないことが増えたせいで私の頭の中は完全にこんがらがってしまう。

そんな状況の頭では考えても答えは出るはずも無く……それでも領主としてどうにか答えを探さなければと私は頭を悩ませて、悩ませ続けて……次第に私の性能の低い頭は熱を持ち始める。

これが噂に聞く知恵熱なのだろうか。

そうして私は湯気でも出るんじゃないかという程に頭を熱していって……完全に茹だってしまう。

そんな私にアルナーは溜め息とともに話しかけてくる。

「……はぁ、全くお前のような馬鹿者が領主をやってる領の領民になぞ私なら絶対にならないぞ。

……おい、馬鹿領主、これを受け取れ」

そう言ってアルナーは手の平程の大きさの……何か、粉のようなものが詰まった革袋を私に手渡してくる。

「それの中身はマタビの粉末だ、それを使え」

「マタビ?なんだそれは?」

「獣が好む香りを出す草のことだ、それを振りまけば香りを嗅ぎつけた獣が寄ってくる」

「へぇ、そんな草があるんだなぁ。

それで獣が寄ってくるから何なんだ?」

「……少しは自分の頭で考えたらどうなんだ、馬鹿領主。

獣を狩ればその肉が食料となるだろう?

肉以外にも毛皮や角が取れればそれも色々と使い道がある……ここで使わないのであれば村に持っていけば量次第だがユルトとの交換も可能だ。

そうして突っ立っているくらいなら男らしく狩りでもして、それで領民を集める為の地固めでもしたらどうだ」

「おお!

それは良いな!狩りは得意だぞ!

何しろ頭を使わないで済むからな!

ならば早速獣を狩ってくるとしよう!

……ユルトの手入れと、これから来るメーアのことはアルナーに任せて構わないか?」

「ああ、構わん。

世話係としてそれくらいはやってやるさ、繊細なメーアは馬鹿なお前には任せられんしな。

一応言っておくが……マタビの粉は遠くで使えよ、ここの近くで獣に暴れられても困るからな。

風下にずっと行って、こっちが見えなくなるくらいに離れたらそこで使え」

私はアルナーに向かって大きく頷き、分かったと返事をして、早速にと戦斧を担ぎながら風下へと向かって駆け始める。

草原をただただ無心で駆けていると、茹だっていた頭は冷えていって冴え渡っていくかのようだ。

これは狩りをしているうちに領民集めの方策も思いつくかもしれないなー、体を動かすって素晴らしい!

そうして草原をしばらくの間、駆け続けた私は先程居た場所から十分に距離を取ったのを確認してからアルナーに貰った革袋の口紐を解いていく。

革袋の口を広げて中を見ればそこには茶色の粉末が入っていて……ツンと鼻につく草のものとは思えない独特の匂いがそこから漂ってくる。

これを振りまけば獣が寄ってくるんだよな。

それでえぇっと?これをどのくらい振りまけば良いんだ?

アルナーは量については何も言ってなかったよなぁ……うーむ、とりあえず全部いっておくか。

これをそこら辺に振りまいて……いや、ただ振りまくのも芸が無い。

出来るだけ多くの獣に寄って来て貰いたい所だし……そうだ、高く放り投げるのはどうだろうか?

香りが風に乗って遠くまで届いてくれそうだし……うん、それが良い。

そうして私は口を大きく開けたままの革袋を風が強く吹くタイミングを待って全力で上へ向かって放り投げた。

その結果は目論見通りとなって、革袋から漏れ出る粉末達が風に乗って飛んでいく。

落下する革袋と共に風に乗らなかった一部の粉末が自分の頭に降り注ぐこととなってしまったが……まぁ問題は無いだろう。

後はこのままここで獣が寄ってくるのを待って、それを狩っていけば良い訳だな。

んー……何匹分くらいの毛皮でユルトと交換して貰えるのだろうか、1匹ってことはないだろう、5匹……いや、10匹くらいが妥当だろうか。

そうすると……とりあえずユルト10軒を目指すなら、100匹は狩らないといけないということになるな。

今日でいきなり100匹を狩るというのは流石に無理だろうし、何日かは狩りを続けることになりそうだな、まぁ狩りならば何日続けても苦にはならないし、十分なユルトが集まるまでやり続けるとしよう。

とそんなことを考えてると早速にマタビの効果があったのか、風下の方からドドドドドと音が聞こえて来て……そちらの方へと視界を向ければ黒く蠢く何かの姿が見えてくる。

どうやら獣が来たようで私は両手で戦斧を握ってしっかりと構えを取り始める。

果たしてどんな獣が来たのやら……随分と派手に足音をさせているし、これは大物が釣れたか?

ん?ああ、違う、あれは獣の群れだ、群れだから足音が大きかったのか。

……いやに数が多いな?10や20どころの騒ぎでは無いぞ……と言うか多すぎるだろう。

一体何頭いるんだあれは。

黒い毛皮の大きな二本の角を構えた牛のような獣は数え切れない程の数がそこにいて、一体この草原のどこからあれだけの数が現れたのやらなぁ……いやはや、マタビの効果恐るべしだな。

これだけの数の獣を狩れたなら一体どれだけのユルトが手に入るのだろうか……これはいきなりの目標達成もありえるかもしれないと私はやる気を滾らせながら戦斧を振りかぶる。

獣達はそんな私に一直線に向かって突進し続けて、私と獣との距離は段々と縮まって……。

そうして私と獣達の戦いの幕が開くのだった。