軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動き始めた

――――王国中央部で

リチャードが軍を起こし、進軍を始めたのには相応の大義名分と目的があった。

大義名分は国内の再統一……元々進めていた貴族改革を更に前に進めるためというものだった。

未だに抵抗している貴族を誅し、そのついでに国内の砦などを点検していき、改革をより一層進めることで平民の生活を豊かにする。

しかしそれはあくまで表向きのこと、裏向きの目的もしっかりとあった。

国内の主要貴族の身柄を押さえながら西進し……一番の障害となるだろう、エルダン・マーハティを倒す。

これはリチャードと言うよりも黒幕の目的ではあった訳だが、リチャードとその周辺の中ではリチャードの目的ということになっていた。

更にこれには新道派の思惑も絡む、ギルドや西方商圏をなんとかしたいと考える商人達の思惑までが絡む。

結果として平民、神殿、商人の支持を得たという形となり、黒幕にとっても予想外の勢いを得ることになる。

もっと無理が出ると思っていた、その無理はリチャードを操った力でなんとかするつもりだった……が、その必要もなくなってしまった。

そしてこの進軍は平民の理解を得たことで順調に進むことになる。

元々リチャードが推し進めていた改革は、平民からの評判が良いものだった。

貴族の権力を弱め、王権を強め……騎士団に力を与える。

騎士団の中にも貴族出身の者は多かったが、その多くが平民で……実際にどうかはさておいて、平民達の間では平民のための改革だと噂されていた。

それを更に推し進めるための進軍となれば反対する者はおらず、元々平民は目的でもなかったので攻撃されるようなこともなく、その道筋には平民からの喝采が常にまとわりつくことになった。

またリチャードの軍はよく統率されていた。

命令違反などは皆無で、勝手な略奪なども行われず、それがまた評判を良くしていた。

国内での進軍でそんな馬鹿な真似をする者がいるのか? なんて声を上げる者もいたが、先の戦争では国内でもそういったことが行われていて……黒幕としては皮肉なことだったが、それが良い結果に繋がった。

更に言ってしまうとディアーネの存在も大きかった。

リチャードも将として悪くない才能を有しているが、どうしても経験が足りず、また特殊な状況にあるために本来の能力を発揮出来ずにいた。

一方ディアーネは才能に恵まれ経験も十分、自ら選びぬき鍛え上げた直属の部下がいるがために大活躍……直属の部下一人一人が将としての才能を有していたことも大きかった。

ディアーネ程ではないが、ディアーネの指示の下で軍を動かすくらいは余裕で出来てしまっていて……その部下達が軍全体に散らばることで統率の助けとなっていた。

更に言えば今回の作戦に速度は必要ない、じっくり確実に前に進み砦一つ一つを確保して状況を確認、必要とあれば改築をして……着実に支配地域を広げていく。

それには相応の予算がかかる訳だが、そちらについては一部の貴族の財産を没収することで賄っていた。

ほんの一部……先の戦争で参戦せず反省せず、改革にも従わないような連中のうち、リチャードがまだ手を伸ばしていなかった木っ端貴族などがその対象だ。

そうしてリチャード軍は中央部から西へと大きく広がりながら進んでいった。

北に南に、マーハティ領を包囲することを見越してとにかく広く。

数、時間、予算に余裕があるためじっくりと包囲網を広げていった。

一方でエルダン率いるマーハティ領軍にそんな余裕はなかった。

数で劣り、グズグズしていれば包囲網がどんどん広がってしまう上に、戦乱が長続きしてしまえば資金源たる商圏の動きも鈍ってしまう。

他の貴族の財産を奪うようなこともエルダンの権限的、性格的に不可能で、様々な面で不利を被ることになる。

有利な点があるとすれば兵士の質が良いことだろうか……その動きの鋭さ、力強さ、体力も圧倒的に勝っている。

まともにぶつかれば余裕を持って勝てるのだが……次第にそれが難しくなっていく。

しかしジュウハは諦めない、広く展開するということはそれだけ一点の戦力が薄くなるということ、砦を丁寧に確保していくということは、そこにいくらかの兵力を残していくということ。

ならばその身体能力を活かして素早く移動し、誰も予測していない角度からの奇襲を行い、砦を端から丁寧に落としていって戦力や物資を奪っていく。

そうやってじわりじわりと弱めていき、ここぞという所で本隊を奇襲出来ればと考えていた。

そんな風に奇襲をするのなら南からに限る、南には無人の砂漠が広がっていて、そこを経由して移動をしたなら、本隊の位置を完璧に隠すことが出来るからだ。

しかしジュウハあえて北からの奇襲の準備を整えていた。

南から来るだろうとあちらも読んではいるはずだ、当然対策もしているだろう。

だからあえての北とそう考えていた。

……もう一つ、ジュウハには別の考えもあった。

南から来るかもしれない勢力のために道を開けておきたかったという考えだ。

そのための航路を確保していて、十分な戦力を有し、今回の件のために動き出してもいる。

戦場に出てきてくれたならそれだけで頼りになる、確実に相手に損害を与えてくれるだろう、敵に利することは絶対にない……そんな勢力が。

きっと南から奇襲を仕掛けてくれるはず、砦を確保したなら破壊するかそのまま確保し続けるか、どちらにせよかなりの混乱を引き起こした上で、戦力を引き付けてくれるはず。

進軍はそこまで早くないかもしれないが神出鬼没で、海からの上陸を上手く利用しての戦果を上げてくれるはず。

ジュウハはそう考えていて、エルダンも似た考えで……そしてリチャード達もまた何かをやらかして来るだろうとは考えていた。

しかしそれらの予測はほとんどの部分で外れることになる。

当たっていたのは南からやってくるということくらいだろうか。

ある日突然、正体も掴めない集団が南……南海からやってきて上陸、あっという間に砦へと迫り、無血落城。

そうやって砦を確保したかと思えばあっと言う間に脱出し、気付けば気配も何もなくなっていて……ついでに砦内部の物資が綺麗さっぱりなくなっている。

そこから同じようなことが何度も何度も繰り返されることになり……リチャードの軍は流石に堪えきれず、対策を打つために動き方を変えることになる。

その動きはあまりに急激で凄まじくて……リチャード軍もエルダン軍も随分と驚かされることになるのだった。