軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アルナーの

ジュウハとの話し合いを経てのもう一度の話し合い。

ジュウハには一端宿の部屋に移動してもらっての会議となる。

今回は特に言うこともないと不参加を表明するものもいて……アルナー、エイマ、クラウス、モント、ソマギリ、ゴルディア、ベン伯父さん、マヤ婆さんが参加となった。

そしてジュウハから聞いた話が共有されて……それぞれが頭を悩ませ始める。

色々と打てる手はあるのだと思う、だがどれが最善かと言われると中々答えを出せなくなるもので、皆の頭の中にも色々な案が浮かんでいるのだろう。

会議の場は酒場の奥の部屋、長テーブルに椅子が並んでいて……そんな椅子に腕を組んで座っているアルナーが鼻息をふんすと吐き出してから、声を上げる。

「そういう時の男は止めても止まらないものだ。喧嘩をしたいのなら好きにやらせておけ」

喧嘩とは全然話が違うと思うのだけども……と、誰もがそんな顔する中、アルナーは言葉を続ける。

「そしてディアスの意見を聞かないというのなら、こちらも向こうの意見を聞く必要はない。

逆に利用してやれば良い、王都に行ってなんとかしたいがそう簡単にはいかないって状況なんだろう?

ならエルダン達が行動を起こすまで待って、行動を起こして大騒ぎとなって……王都の連中がそっちの対応で手一杯の所を奇襲したら良い。

そしてリチャードを何とかし、そのままエルダンたちと和解させるなりする。

その際にリチャードには新道派に従わないなりの約定を結ばせて、エルダン達にとって有利な形にしてやると良い。

その手柄でもってエルダン達には大きな貸しを押し付けて……私達の一人勝ち。

そんなに難しい話ではないだろう?」

……それは、どうなんだろうなぁ、手放しで賛成とは言えないが、決して悪くない現実的な意見とも言える。

他の皆も似たような考えらしく、なんとも複雑そうな顔で良いとも悪いとも言えないでいる。

そうして誰もが頭を悩ませる中、最初に声を上げたのはソマギリだった。

「ニャーヂェン族としては反対する理由はありませんな。

むしろ以前提案した奇襲策に近い案でありがたいばかりです、必ずやお役に立ってみせましょう」

それに続いたのはエイマだった。

「……こちらの立場としてはエルダンさん達に味方したいですが、戦争反対の立場から味方になりきれません。

リチャード王子のやり方では敵対するしかないけども王国に反乱を起こしたい訳ではありません。

ならばリチャード王子を止めて別のやり方でエルダンさん達に味方するというのが一番なのは確かでしょうね。

王子に対しては公爵の義務を果たしたとして筋も通せますし……多分ですけど、どういう形であっても内乱を止めたとあれば国民の皆さんにも感謝されると思います。

これまでエルダンさん達にお世話になったことに対しては物資を融通することでお返ししていけば良いと思います。

いつの間にかそれが出来る状態になっちゃってますからねぇ……。

ただ奇襲するにしても物資を融通するにしても、海が必須になりますので、ゴブリン族さん達にも話を通しておくべきでしょうね。

協力が確約されたなら……うん、アルナーさんの方針で悪くないと思います」

ああ、食料にせよ奇襲のための移動にせよ、ゴブリン達の協力は欠かせない訳か。

彼らが戦争に巻き込まれたくないとなったら破綻する訳だし、確かにその確認は必要だろう。

と、言う訳で話し合いは一旦中断、私が話を聞くに行くこととなり、一端その場を後にして村に滞在しているイービリスへと声を掛ける。

流石にその場で聞く訳にはいかないので酒場まで来てもらって、そこで協力を願い出ての答えは、

「任せてくれ、全面的な協力をしよう」

というものだった。

ならばということでイービリスも話し合いの場に参加してもらい……席についたイービリスが声を上げる。

「我欲のための戦争であれば反対したかもしれん。

しかし争いを止めて国内をまとめるための、民のための公爵としての仕事と言うのであれば反対する理由はない。

我が一族も総出で協力することを約束しよう。

もちろん対価は頂戴するがな、それさえ貰えれば若者達もこぞって参戦してくれることだろう」

その言葉はとても力強く、ありがたいもので……皆も笑顔でイービリスのことを迎えてくれる。

そうして改めて皆を見て、アルナー達が今のうちにと用意してくれた茶を飲んでから、話を続けていく。

「大体の方針はアルナーの案で行くとして……後はどの機に動くか、だな。

いつ戦いが始まるかはエルダン次第で、私達に決められることではないとして、戦いが始まってすぐなのか、ある程度状況が動いてからなのか、それとも戦いの終盤になのか。

……出来れば本格的な衝突前に動きたい所だな」

私がそう言うと何人かは頷いてくれるが、一部の者達はそうではなく、特に不満そうな顔をしているモントが言葉を返してくる。

「とは言え、全く何も進んでいねぇ状況じゃぁ王都ががら空きともならんからなぁ。

ディアスの気持ちも分かるが、全くの被害無しで済まそうってのは……都合が良すぎるんじゃねぇかな」

「それはまぁそうだが……」

私がそう言って頭を悩ませていると……またアルナーがふんすと鼻息を吹き出してから言葉を返してくる。

「ならばゾルグ達を動かそう。

ディアス達は海から王都に向かい、その間ゾルグ達が陸から工作を仕掛ければ良い。

以前獣人国に侵入した時と同じだ、あんな風に動き回って両軍を翻弄してやって、注意をしっかりと前線に向けさせながら、まともな衝突はさせずに時間を稼ぐ。

その翻弄が上手くいけばいく程、振り回せば振り回す程、相手の意識は前線に向くはずだからなぁ。

……何なら獣人国にも話を通してみたらどうだ? エルダン達の陣営の中で足止め工作でもしてもらえば良い。

獣人国のためにあれこれと動いてやったんだ、そのくらいしてもらっても構わないだろう?」

一同の目がアルナーを見る。

どの目にも驚きの色が浮かんでいて……私としても驚きが隠せなかった。

いや、元々アルナーは賢かったが、ここまで鋭い意見を出せる程だっただろうか?

妙に策略慣れしていると言うか、よくもまぁこんな手を思いつくものだなぁと言うか……。

「鬼人族であれば誰もがこういうことを考えたことがあるものだ。

今はそのつもりはないが、一昔前はどうやって王国に泡を吹かせられるかとか、どうやって打ち倒そうかとか、そういったことで毎日のように頭を悩ませていた訳だからなぁ。

遠征班自体がそういう侵入だとか工作だとかをやっていた班である訳だし……その上で、ディアスから戦争の話をあれこれと聞かせられてきたからな。

そこから考えればこのくらいは何でもないだろう。

実際にどれくらい食料や武器、人員を用意するだとか、海をどうやって移動するだとか、どこからどう奇襲をかけるだとか、そういった細かい部分は指示出来ないしなぁ……大したことはないだろう」

私の表情を読んだのかアルナーがそう言ってきて……私達はただただ感心することしか出来ず、そんな視線を受けたアルナーはどこか嬉しそうに顔色を良くし……そうしてもう一度ふんすと鼻息を吹き出して見せるのだった。