軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エルダン達は

数日が経ってイルク村に戻ってきてからの日々は……いつも通りのものとなっていた。

ほぼほぼ変化なし、明確に変化があったのはエグモルトと神官達くらいだろうか。

エグモルトは古代の文明というか学問に失望したようで、それ以上のものを作ろうと奮闘している。

伯父さんが言うには学問とは何世代も、何百年をかけて構築するものなのでエグモルト一人でどうこう出来る話ではないそうなのだが……それでもエグモルトは誰かが第一歩を踏み出す必要があると気勢を上げていて……寝る暇もなく励んでいる。

神官達は……未だにあそこでの出来事を飲み込み切れていないらしく、それぞれ苦悩した様子を見せていた。

あの時のことを思い出し、神々からの言葉を思い出し、必死に記録し悩み……議論を深めているそうだ。

ここらに関してはベン伯父さんの範疇なので、伯父さんに任せていて……伯父さんが言うには悪くない方向に進んでいる、らしい。

「……他の皆にも話したんだがなぁ、皆意外と気にしていないんだなぁ」

自分達のユルトの前でフランシスをブラッシングしてやりながらそんな声を上げると、フランシスが声を返してくる。

「メァ~~」

「どうでも良いか……フランシス達も気にしないんだなぁ。

メーアもまた人だったらしいが……」

「メァメァ、メァ~メァメァ、メーァ」

「ふーむ……そもそも人かそうでないかの基準自体が勝手に作られたもので、自分達はあくまでメーアでしかない、か。

確かにその通りだ、どういう意図で生み出したのだとしても親の望む通りに育つとは限らないのが子供だしなぁ……。

……ま、モンスター退治はしているんだから、最低限の義務は果たしているという所だろう」

「メァ~メァメァ~」

「ああ、メーアも皆の服や家を作って貢献しているものな、メーア達がいなかったら今頃どうなっていたか、想像もつかないよ」

と、そう言ってブラッシングに、より力を込めてやるとフランシスは気持ちよさそうに目を細め……そのままウトウトとし始め、ブラッシングが終わる頃には完全に寝入ってしまう。

次はフランソワ、終わったら六つ子達、更に終わったら通りすがりのメーアとブラッシングをしてやって……ゆったりとした時間を楽しむ。

聖地に至って神々? に出会って世界の秘密を知って……。

だからと言って何かが変わる訳でもなくイルク村はいつも通り、なんでもない時間が過ぎていく。

広場でそうしていると村の皆の姿が視界に入り込む、駆ける犬人族や散歩をする婆さん達、ニャーヂェン族や皆から話を聞いたらしいゴブリン族の姿もあって……なんとも賑やかだ。

そんな賑やかな光景の全員が聖地やそこに関する話を気にした様子はなく……本当にいつも通りのまま過ごしている。

……皆大丈夫だろうか? と、変に気を回している私がおかしいと、そう言われているかのようで……本当に問題はないようだ。

しかしこうなってくると逆に、伯父さんの計画が上手くいくのか? と、不安になってくるのだけども、そこら辺は伯父さんに考えがあるから大丈夫らしい。

まぁ、最悪でも隣領には広まるのだろうけど……それ以上となるとなぁ、難しくなる気もするなぁ。

……そしてその隣領、エルダンの下にはサーヒィを使いとして向かわせてある。

……聖地に至ったことを知らせる手紙を持たせた上で。

流石に聖都どうこうを進めるのであれば、エルダンには相談をすべきで、聖地での体験の大雑把な内容だけでなく、最後に詳細は直接会って話したいとも書いておいた。

こうしておけばそのうちエルダンがやってくるはずで……あちらにあるという聖地のことを含めて、色々と話をするつもりだ。

全く無関係ではいられない、今後大きな影響を受けるだろう隣領には知らせるべきで……あとはついでにちょうど良いタイミングで獣人国から帰還するらしいジュウハの考えも聞きたいと考えている。

ジュウハならば今回のあれこれも上手く使いこなすはずだし、早めに知らせておくに越したことはないだろう。

そんな穏やかな日から数日が過ぎると、サーヒィが帰ってきてエルダンが来訪するとの連絡をしてくれる。

手紙を読んで目を丸くしたエルダンは、忙しいながらもすぐさま準備を始めてくれて、既に屋敷を出立してもいて、明日か明後日には到着するようだ

まさか今回のことでエルダンと敵対する……なんてことはないと思うが、それでも少しだけ緊張することになり……翌日の昼過ぎまでそれが続くことになった。

そういう訳で翌日の昼過ぎ、かなり急いで駆けつけてくれたエルダンとの会談を行うことになった。

今回は話す内容が内容だということで神殿で。

参加者は私、ベン伯父さん、エイマ、エルダン、そしてジュウハ。

護衛としてやってきたスーリオも参加したがっていたが、今回は遠慮してもらうことにし……神殿奥の部屋に椅子を並べて座ったなら、まずは中央テーブルの上に立ったエイマによる解説が始まる。

聖地がどういった場所なのか、どんな話をされたのか、私がそこで何をしたのか。

また私達が今まで出会ってきた聖地に関連する存在、小メーア、大メーア、トカゲに関する説明も行われた。

「……念の為確認するであるの、今の話は本当の本当で、ディアス殿達がその目にしたものであるの?」

説明が終わるといつになく真剣になったエルダンがそう問いかけてくる。

「ああ、本当だ。

……多分ベン伯父さんに頼めば今からでも聖地にいけると思うぞ。

行って同じ話をしてもらったり、色々なものを見せてもらったりも出来るはずだ」

私がそう返すとエルダンは、頭を抱えて沈痛な面持ちとなる。

次に反応を示したのはジュウハだった。

「それはまた……納得できる話ではあるがな。

だがまさかそう来るとはなぁ……先史文明がそこまで愚かだったというのも驚いちまうよ。

そうするとこの俺様は数千年に1人の天才ってことになる訳だ、俺様ならもう少しマシな末路を用意出来るからな。

聖地の連中も血なんかで決定権を与えるんじゃなくて賢さを見ろってんだよな。

まぁ、血なんかで力を与えているからそんなことになったんだろうが……」

頭の後ろで手を組んで椅子に背中を預けて……余裕があると言うか、呆れていると言うか……確かにジュウハならもっと良い解決策をどこかで思いついていたのかもしれない。

「はー……しかしそうするとどうするかね。

方針が色々と破綻しちまうなぁ、しかし知った以上は神々に不誠実なことはできねぇな。

エルダン様、改めて方針を練り上げましょう……出来れば神々に会った上で。

多くの人を巻き込み、その上に立つのであれば誠実さを失ってはいけません、かと言って全てを諦めてもいけません、ちょうど良い道を探っていきましょう」

更にそうジュウハが続けるとエルダンは頷いて……そうしてジュウハと共にベン伯父さんへと視線を向けるのだった。