軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

セキへの相談

「そんな色っぽい感じじゃないですよ?」

モントの下に向かう女性を視線で追いかけていると、いつの間にか側にやってきていた、キコの息子達……セキ・サク・アオイの三兄弟の長男、セキが声をかけてくる。

どうやら私の表情から考えていることを読んだようで……セキにまで分かってしまうのか。

「……そうなのか? 私はてっきりそういうことなのかと思ったのだが……」

と、私が返すとセキは、頭の上の耳を揺らしながら両手を頭の後ろに回して背を伸ばし、カラカラと笑いながら言葉を返してくる。

「あっはっは、マジで違いますって!

あれは……恩返しって言ったら良いんですかね? 何度も何度もドラゴンを討伐してくれて、村が壊滅するかもってとこを救ってもらったんですから、その恩返しをしたくなるってのは普通のことじゃないですか。

むしろ恩返しさせてくれないと気持ち悪くなるっていうか……見返りもなんにも求められないものだから変な思惑があるんじゃないかって不安にまでなっちゃうんですよ。

だけどモントさんは、すげぇきっちりしてるっていうか……何かお礼をしようとしても賄賂は受け取れないって態度を崩さないんで、近くの人は困っちゃってるんですよ。

で、せめて何か手伝いたいって言うんで、ああいう人がやってくるんです。

だから純粋な恩返しのはずですよ……まぁ、そんなモントさんに惹かれてる人がいたとしてもおかしくないとは思います。

関所の主ってだけで好条件なのに、賄賂とか要求しない生真面目さもあって、紳士でもありますから……どっかに良い人いると良いんですけどねぇ……。

……さっきの人はかなり若い感じですから、仮にくっついたら驚きすぎて腰が抜けちゃいそうですね」

「ふーむ……なるほどなぁ。

そんな風に慕われているモントなら、外交を任せても平気……なんだろうかなぁ」

「え? 外交? 外交ですか?

いや……どうでしょうね、外交とかにそこまで詳しくないんでハッキリしたこと言えねぇですけど、モントさんは向いてないと思いますよ?

真面目なのは良いんですけど、頑固過ぎるっていうか……軍人肌過ぎるのも良くないんじゃないかなぁって」

「……モントではダメか。

そうなると……うぅん、獣人国で暮らしているセキから見て、誰なら獣人国との外交に向いていると思う?」

「ん~、そーですねぇ……。

ダレル夫人さんとか? いかにも王国貴族らしい人ですし、仕草とか凄いんで悪くないと思います。

あとはー……エリーの姉貴ですかね?

なんだかんだ獣人国にも詳しくなりましたし、あのペイジン商会ともやり合えてますし、ディアス様の身内な上に、商人としての損得勘定を切り分けた交渉も出来ると思うんで、悪くないと思いますよ」

「……まさかここでエリーの名前が出てくるとはなぁ。

他はどうなんだ? たとえばカニスとかエイマとか、獣人国なら獣人に任せても悪くなさそうだが……」

「あ、ダメです、獣人はオススメしないです。

獣人同士の交渉だと何よりもまず種族の優劣っていうんですか? 生来の力の強さとかそういうので立場が決まって、そういうのを踏まえた……相手に合わせた礼儀って言うんですかね? そこら辺を完璧にやらなきゃいけなくなるんで、なんでもない交渉でもすげぇ難しくなりますよ。

人間族はそういう縛りの外にいるっていうか、獣人じゃないからこそ獣人の礼儀が通用しない……適用しなくて良い相手と見なされるはずなんで、楽になると思います。

王国と言えば人間族ってイメージもありますから、交渉相手が人間族嫌いだったとしても人間族の人に任せた方が良いと思います」

「なるほど……そういう考え方もあるのか。

……あー、エリーの生き方が受け入れられないとか、そういった問題が起きたりはしないのか?」

「あぁ~、はいはい、それは無いですね。

なんでかっていうと、獣人から見ると人間族の男も女も大差ないっていうか、男女の見分けさえ出来ない人もザラなんで、大体の人が気にしないと思います。

あえて言うなら匂いで嗅ぎ分けたりするんですけど、姉貴はそこら辺分かってて、香水とか香辛料で嗅ぎ分けを難しくしてるんで問題ないですね。

獣人の中には性別以外にも感情とか健康状態とか、そういうのを嗅ぎ分けて交渉に使うのもいるんで、しっかり対策してるんですよ。

まー、ペイジンさん達は鼻が特別良い訳ではないんで、ちょっと話が変わってくるんですけど……それでも護衛の人の鼻使ったりはしますからね」

「なる……ほど。

セキがそう言うのなら、エリーが適任なのかもしれないなぁ……。

あとはエリーの気持ち次第だが……そこは本人に聞くしかないか。

……ありがとう、助かったよ。

ところで商売の方はどうだ? 獣人国のその後も……問題なさそうか?」

と、私が問いかけるとセキはニッカリと笑って、心底嬉しそうに最近の様子を報告してくれる。

「順調も順調! 最高ですよ! 特に最近は鉱山開発の成功もあって順調ですよ!

以前は血無しだなんだって文句つけて商いさせてくれないとこもあったんですけど、成功したとなっての掌返し!

鉱山の稼ぎに食い込んでやろうとしているのか、別人みたいな態度であれこれ買ってくれてますよ。

そうやって顔を繋いで良好な関係をーとか考えてるんでしょうけど、それはそれこれはこれって感じで、対応してます」

と、そう言ってからセキは咳払いをしてから私に近付いてきて……誰かに聞かれないようにと周囲を警戒しながら、小声で話の続きをしてくれる。

「獣人国全体としては……良くなった部分もあるし、悪くなった部分もあるし、ですね。

今は春で、畑だなんだで忙しいんで争いとかは落ち着いていて……治安もまぁ、改善してますね。

んで、騒動のそもそものきっかけのヤテン様ですけど……まぁまぁ微妙な感じです。

鉱山開発にまで成功したディアス様を侮ってたという批判もあるんですけど、鉱山投資を進めてもいたんで、その点では成功してるんですよね。

うちの母ちゃんも投資を進めてたんで、かなり評判上げた感じで……穏健派の筆頭みたいな感じの母ちゃんが発言力得た結果、落ち着いた部分もあるし、だからこそ反発してる連中もいるし、みたいな感じです。

ただ血無しを産んだことで批判されがちだったのが、だいぶ変わってきたんで……母ちゃんとしては楽になってると思いますよ。

あとはヤテン様次第じゃないですかね……何もしないで黙っている方でもないはずですし……。

あ、そうだ、その血無しの仲間っていうか、母ちゃんの下で勉強してた連中なんですけど、明日にはこっちに到着するって話です。

本当は母ちゃんが連れてくるつもりだったらしいんですけど、国がそんな状況なんで遠出が出来ないとかで、母ちゃんの部下が連れてくるそうです。

母ちゃんがまた張り切っちゃって……読み書き程度で良いはずなのに、礼儀作法に踊りやら歌やらあれこれ仕込んじゃったせいで、来るのが遅れちゃいましたけど、その分だけ使える連中になってるはずです。

……とりあえずオレ達の部下って感じで商売させていきたいんですけど、良いですか?」

と、そう言ってセキは、期待に満ちた視線をこちらに向けてくる。

恐らくは始めて部下を持てるかもしれないと、上の立場になれるかもしれないと期待しているのだろう。

セキ達は若く、皆の弟分みたいな所があったからなぁ……三兄弟の長男としては色々と思う所があったのかもしれない。

「本人達の希望次第だが……そうだな、行商をしたいと言うのならセキ達に任せることになるだろう。

ただ誰もが商売に向いている訳ではないだろうから、その点は配慮してやってくれ。

……もう少しで来ると言うのならしばらくは行商を休んで、彼らの世話係をしてもらうのも良いかもしれないな。

案内をしたりこちらの生活を教えたり……やってくれるか?」

私がそう言うと、セキは満面の笑みで大きく頷き……近くで話を聞いていたのだろう、サクとアオイもやってきて、拳を握り込んでの歓声を上げる。

それから3人は拳を突き合わせて無言の会話をし……そこでようやく私は、3人が少し成長していることに気付く。

筋肉がついて身長も伸びたのだろう、まだまだ少年らしい顔立ちだが、確かな成長を見せていて……キコが見たなら喜んでくれることだろう。

内面も以前よりも大人びた印象を受けるし……子供というのは成長が早いものだなぁ。

そんなことを考えた私が3人の頭を撫でてやると……子供扱いをされたことが不満だったのか渋い顔をし始め、それからもっともっと稼いでやるぞと、私の評価を変えてやるぞと3人は、一段とやる気を漲らせ始めるのだった。