軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一段落

あれから数日が経った。

あの日にソマギリが落ち着かない様子を見せていたのは、どうも役割を与えていないことが原因のようで……しっかりとした役割というか地位というか、そういったものを欲していたらしいということが分かってきた。

欲してはいるものの、要求する立場ではないし図々しいし、しかし何かしなければならないし……と、あれこれ考えた果てに、自分に出来る最大の手段として情報を提供しようとしていたらしい。

現状、それを断った形になってしまっていて……それも良くないだろうということで、皆で話し合った結果、各地のニャーヂェン族には色々な仕事を頼むことになった。

まず人手不足だった仕事の手伝い。

最優先で人員が回されることになったのは行商だ、人が増え生産量も消費も増えて、行商の回数も増えて……エリーもセキ、サク、アオイ達も忙しいばかりで休む余裕がない。

それではよくないだろうということで、それぞれの関所から20人程の人員を行商に回してもらうことになった。

エリーと一緒に隣領を回る組、セキ達と一緒に獣人国を回る組。

商売自体を任せることは出来ないが、荷物の運搬や護衛なら問題なく任せることが出来て……ついでに各地での情報収集なんかもしてもらうことになった。

ニャーヂェン族はそういった仕事が得意なようだし、特に獣人国ではおかしな騒動が続いているし……変なことに巻き込まれないためにも情報収集は必須だろうということになった。

以前からセキ達は出来る限りの情報を集めてくれていたが、あくまで行商が目的であり、そういったことを得意としている訳でもないので程々の結果となっていて……専門でやってくれる人がいるなら、行商に集中出来るしありがたい、とのことだった。

他国で勝手にそういったことをして、変に揉めてはいけないと事前にペイジン達に確認を取ったところ、全く問題ないし手伝いもするとの返事があったので、ペイジン達と連携してもらうことにもなっている。

情報収集は隣領……エルダンの所でも行われることになっていて、こちらもエルダンに許可をもらっての収集となっている。

連携し協力し、何かあればすぐにエルダンに報告する……ということになっていて、エルダンもジュウハも歓迎してくれているようだ。

隣領に行くだけでなく、更に足を伸ばしてもらってエルアー伯爵の所にも数人、向かってもらっている。

王都で頑張ってくれているというエルアー伯爵、領地には息子を残して管理してもらっているらしいが、それでも本人不在ということでいくつかの小さな問題があるようで……その解決の手伝いみたいなことをしてもらうことになった。

もちろんこれも伯爵……というかその息子に許可をもらってのことで、ついでにエルダン達に送ったようないくつかの攻城兵器も送っておいた。

エルアー伯爵の領地にもドラゴンが来る可能性がある訳だし、王都ではかなり頑張ってくれているとの話を……ピゲル爺からも聞けたので、そのお礼という感じだ。

他にもニャーヂェン族には、荒野の管理もしてもらうことにした。

これからどんどんゴブリン族が木材を運んでくれるし、彼らが乗ってきた船が入江に停泊している。

それらの管理と……運用できるのなら運用をしてもらう必要があるので、そのためだ。

入江周辺にはゴブリン達が作っている施設というか、町? みたいなものもあるので、追々はその管理も任せたいと思っている。

犬人族の中にはイルク村を離れたがらない者も多く、イルク村から一番遠いらしい入江ともなると尚更で……海軍の研究をしていて船旅の経験があって、ゴブリン族とも交流のある彼らなら適任なのだろう。

魚が好物という話でもあるし、ニャーヂェン族にとっても悪い話ではないはずだ。

と、こんな話をしたところソマギリは、目を輝かせて耳と尻尾を立てて、

「お任せください! その期待に全身全霊と一族の誇りをかけて応えてみせます!」

なんて声を上げて喜んでくれたので良い結果だったのだろう。

まぁ、スーリオなんかは元帝国人の新人にそこまで任せるのかと驚いていたけども……元帝国人だからこそ、そんな遠方からやってきてくれたからこそ、不安なく暮らしていけるようにしてやりたいと思う。

そのスーリオは、かなりの大荷物でもってやってきてくれた。

送った武器などのお礼ということで、食料や砂糖に香辛料、それと酒、向こうの高価な衣服に絨毯。

そしてかなりの数の家畜も連れてきてくれて……追々、それらのための厩舎の建材や職人、しばらくの間の飼料なんかも届くらしい。

連れてきてくれた家畜は白ギーにガチョウ、それとロバと馬と軍馬で……かなりの量を用意してくれたようだ。

本来ならヤギも連れてくることになっていたらしいが、ヤギは体の大きさの割に食べる量が多いらしく、一帯の草を食べ尽くしてしまう可能性もあるとかで同じくらいの価値の別の家畜に変えてくれたらしい。

白ギーなら食事量は確かに多いが、ミルクなど相応の物が手に入るし、馬や軍馬も相応の仕事をしてくれるから、その方が良いだろうとのことだった。

ガチョウは草以外の餌でもなんとかなるし……うん、ありがたい気遣いだ。

そんな家畜達の一部は、ピゲル爺に世話をしてもらうことになった。

……色々な知識と経験があるはずのピゲル爺だが、あまり表立っての仕事はしたくないらしい。

船に乗せて連れてきたヤギと、他の家畜の世話をしながら暮らしたいんだそうで……皆の賛成意見もあってそうすることになった。

ヒューバートにダレル夫人、フェンディアにベン伯父さん辺りが特にそういう意見を出していて……ピゲル爺の前の仕事を知っているからこその意見なのだろうなぁ。

まぁー……うん、私からどうこう言うつもりはないし、どんな内容であれ仕事をしてくれるならありがたいということになって家畜を任せることになったのだけど、そこでちょっとした出来事があったりもした。

そのきっかけはエゼルバルドだった。

元気な子供が生まれて、父親となったエゼルバルドは子育てに忙しいらしく、食事をしているかユルトの中で子守をしているかで、あまり姿を見なかったのだが、子供達がそれなりに成長したことで余裕が出来たらしく、姿を見せるようになり……ピゲル爺に興味を持つようになったようだ。

「メァメァメェ~ア、メァ、メァ~」

との声を上げたエゼルバルド曰く、心が傷ついている人を癒やしてやるのもメーアの大事な仕事……であるらしい。

そういう訳でエゼルバルドはこの世のどんな存在よりも可愛い我が子の世話を手伝わせてやると、そんなことを言い出したようで……親バカが過ぎるというか、本当に効果があるかも分からない話だったが……良い結果にはなったようだ。

毎日毎日可愛がるだけでなくしっかりと子メーアの世話をし……子メーアの世話をする以上は、汚れたりすることもある訳だけど、それを嫌がることなく笑顔でこなし、子メーア達もピゲル爺に気を許すようになり、一緒に過ごすことが多くなった。

そのうち元々連れていたヤギと子メーア達を連れて、杖片手に家畜の世話をして回るピゲル爺という光景が見られるようになり……たまにチャイやエイマと神学的な議論をしている以外には、特に意見や提案を出すこともなくなっていった。

ニャーヂェン族のことや法律のことにあれこれと口出ししたのは、危機を察しての対応というか、すぐにやらなければ後で大変なことになると考えてのことであったようで……逆に言うとピゲル爺が何も言わないでいるということは、問題なく様々なことが進んでいるという証明でもあり、そういったピゲル爺の姿を見たヒューバートは、いつになく深い安堵のため息を吐き出していた。

まぁ、膝から崩れ落ちるようなことはなくなったようだし、良いことなのだろう。

……なんてことを考えながら村の中を見回っていく。

人が増えて施設が増えて、初期の頃の面影はなく、本当に賑やかだ。

村人だけでなく野生のメーアも当たり前に訪れてくれるようになって……どこを見てもメーアの姿を見ることが出来る。

メーアバダルの名に恥じない光景になってきたというか、ようやく胸を張れる光景になってきたというか……うん、この光景を見ているとなんとも言えない満足感に浸ることが出来る。

そうしてしばらくの間、村の光景を眺めていると……私の左右から同じタイミングで犬人族が駆けてくる。

そしてまず右から、

「ディアス様ー! 白ギーの出産が始まりそうですー! 安産絨毯お願いしまーす!」

という声、そう言えば何頭か妊娠していたんだったか。

そして左から、

「ディアス様ー! セナイ様達が使者様にお会いになったそうですー!」

使者とはつまりメーアモドキのことで……そうか、ドラゴンをたくさん倒したのだからやってくるか……すっかり忘れていたな。

そんな二つの報告を受けて私は、まずは報告をしてくれた犬人族を撫でて労ってから少し考え……とりあえず出産対応だなと、安産絨毯の下へと駆けていくのだった。

――――その頃 王都王城で リチャード

ドラゴンの襲撃と王の失踪。

二つの大事件を受けても日常が保たれていたのは、王の印章が残されていたことと、民がそれを望んでいたからだろう。

王の失踪なんて前代未聞の大事件、通常であれば相当な動揺が走るはずなのだが、むしろそれを歓迎している向きすらあり……リチャードは様々なことに呆れながらも、どうにか状況を立て直していた。

王に呆れ、民に呆れ、こんな状況でも権力闘争を止めない貴族達に呆れ……湧き上がる怒りを抑える気のないリチャードは、ならばこの空気のまま……勢いのまま改革を推し進めて、お前達に目にもの見せてやると一種の開き直りのような精神状態へと至っていた。

そんな状態でもって政務をこなし、戴冠式の日程を定め、その日のために準備を進めて……と、そんな日々を過ごすある日の夜、自らの寝室に戻ると室内に何者かの気配を感じる。

暗殺事件を受けて警備を強化したはずだがと、腰に下げた剣へと手をやっていると、その気配が動き始め……そして何の躊躇もなく、その姿を晒す。

「お前は……?」

一人の若い男。

見たことあるような無いような……服装からして王国貴族ではあるようだが、見覚えがないということは下級貴族であるはずで、そんな男が一体何故寝室に?

と、思考を巡らせる中でリチャードは記憶の底にあったある事件をふいに思い出す。

何故今その事件を思い出すのか? それが目の前の男とどんな関係があるのか……? いや、もしかして?

「お前、ディアスに潰されたという……?」

それは戦争中のこと、リチャードが創設した若英部隊が起こしたやらかしの一つ。

乱暴狼藉を働き、それをディアスに見咎められ潰されて……玉無しの異名を生み出したあの事件の中心人物。

そんな輩が何故ここに?

という疑問をリチャードが抱いた折、ニヤリと笑ったその男は、装飾煌めく宝剣を持ち上げながら口を開く。

「……こう見えて聖地巡礼を終えていましてね、お力になれるのではないかと参上しました」

その言葉にリチャードが呆れ果てる中、男は宝剣を抜き放ち……そしてその力を、神具に違いない奇跡に近い力を発揮してみせて、リチャードは否が応でもその言葉を信じざるを得なくなり……なんとも言えない重い気分で、男の言葉に耳を貸すことになるのだった。

・第十六章リザルト

【領民】333人 → 672人

内訳

ピゲル爺

鷹人族 族長ホーラオを始めとした一族全員 122人

ゴブリン族 13人

ニャーヂェン族 族長ソマギリ含めて一族全員 203人

【メーア】44人 → 48人

内訳

夫婦メーアのパルト マルト その子のミルト、メルト

家畜【白ギー】 11頭 → 17頭

これから出産する数は含まず

家畜【ガチョウ】80羽前後 → 140羽前後

食事などで日々増減中

家畜【馬】44頭 → 56頭

軍馬とハルジャ種含む合計頭数

家畜【ロバ】2頭 → 8頭

家畜【ヤギ】9頭 → 10頭

ピゲル爺のヤギ

家畜【ラクダ】3頭のまま変化なし

客人【隣領のスーリオ達】が滞在している

客人【ゴブリン達】が滞在している

施設【竈場】の改良が進んでいる

施設【洗濯場】の改良が進んでいる

施設【ユルト】の数が限界に近い

施設【ドラゴン素材の家】が建ち始めた

隣領から様々な物資が届き、倉庫を拡大増築する必要がある。

ドラゴン素材や魔石が飽和状態だ、なんらかの活用をすべきだろう。

……春はまだまだ始まったばかり、するべきことが山積している。