軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

占いの結果

マヤ婆さんの占いを受けて、各地で準備が始まった。

両関所で、鉱山で、イルク村でも進み……何もかも順調ながら私はなんとも言えない不安を抱えていた。

「マヤの占いを信じて動けば大丈夫だ、そんな顔をするな」

やれることはやったとユルトの中で鎧の手入れをしていると、弓の手入れをしていたアルナーがそう声をかけてきて……私はうぅんと唸ってから言葉を返す。

「マヤ婆さんの占いは信じているし、やれることはやったし、自分達のことには不安はないのだけどなぁ……」

なんて私の言葉にアルナーは、もう何度も言ったことだからとあえて何も言わず、心配性だなぁと微笑んで見せてから作業に戻る。

占いで予言されたのはドラゴン達の襲来で……それもかなりの数でもってメーアバダル草原全体にやってくるらしい。

……だけどもイルク村は狙われないそうで、今回はイルク村以外の各地が危険……らしい。

なんだってまた一番重要かつ弱点であるイルク村を狙わないのかはドラゴン達にしか分からないことで、あくまでマヤ婆さんの予測でしかないのだけど、散々狙って私に妨害されての失敗が続いたから他を狙い始めたのではないか? とのことだった。

イルク村を直接攻撃するのではなく、各地の施設を攻撃して被害を出せば、私達の力を削り取れるのではないか、イルク村を攻撃するのはその後で……とか、そんな感じだ。

確かにドラゴン視点で見るとこの2年間、私や仲間達にやられ続けていて、何の成果も上げられていない。

一体全体どうしてこの草原にやってくるのか……肉を食べに来ているのか、伝説にある通り金貨や財宝などを奪いに来ているのかは分からないが、ただただやられるばかりでドラゴン達が得た物は何も無い。

2年もそれが続けば他を狙い始めるというのも、まぁ分かる話ではある。

西側関所に関しては心配する必要はないだろう、ドラゴン狩りの経験もあるモントが指揮をしている上に、多数のバリスタが配置されていて、事前に来ることが分かっていれば余裕を持っての撃退が出来るはずだ。

同じく攻城兵器だらけとなっているらしい鉱山も問題ないだろう。

迎賓館は今からではどうにも出来ないが、言ってしまえば一つのユルトがあるだけの場所でしかないので、壊されたとしても問題はない。

東側関所は森の中ということもあって不安が残るが……そういった時に備えてクラウスなりの準備をしていたらしいし、セナイとアイハンがいくつかのバリスタと一緒に向かってくれるらしいので、なんとかなる……はずだ。

まぁ、東側関所もいざとなったら捨てて撤退しても良い場所ではあるし、クラウスならその辺りの判断を間違うことはないはずで、問題は無いと思う。

セナイとアイハンにはアルハルとパトリック達が同行してくれることになっていて、アルハルならばセナイ達を抱えて逃げ隠れすることも出来るそうで……逃げたり隠れたりすることを得意としているアルハルならばセナイ達の安全を確保してくれるはずだ。

更にはイービリスを始めとしたゴブリン達も援軍として駆けつけてくれた。

流石にゴブリン達に草原を駆け回ってもらうのは大変なので、両関所とイルク村に待機してもらう形になるけども、それでもアクアドラゴンがやってきた際には頼りになるだろう。

前回のアクアドラゴン狩りでは大活躍だったからなぁ……アクアドラゴンに関してはイービリス達に任せてしまっても良いくらいだ。

援軍として駆けつけてくれたゴブリン族の数は35人で……イービリス達の大冒険とドラゴン狩りに憧れた若者達がやってきてくれたらしく、どのゴブリン達もやる気が漲っている。

更にはエルダン達も援軍を編成中らしい、東側関所とイルク村の防衛に協力したいとのことで……どれくらいが来るかは分からないが、エルダン達が協力してくれるのならいざという時に逃げ先にもなりそうで、ありがたい話だ。

援軍も来て準備万端、不安になるようなことは無いように思えるが……問題なのは鬼人族の村だった。

鬼人族の村にも当然この話はしてある、ルフラやゾルグ、族長のモールも真剣に受け止めて準備を進めてくれている。

……が、鬼人族の村の全員がそうではなく、根拠がマヤ婆さんの占いであることに不信感を募らせているらしい。

それだけの数のドラゴンがやってくるなんて聞いたことがないとか、鬼人族の村にいる占い師の占いでは全く違う結果が出たとか……ここ最近ドラゴンの被害が無いこともあってかあまり真剣にはなってくれていないようだ。

もちろん全員がそうではなく、モールに従う者もいるし、ゾルグに従う者もいる、ルフラも若者を集めて動いてくれているらしいし、これまでのマヤ婆さんの結果を受けて信じてくれている者もいるらしいが……村人全員での一致団結という形にはなっていないそうだ。

……そんな状況で私達から援軍を、という訳にもいかないだろう。

ここで変に何かをしようとすると別の狙い……占いを理由にしての謀略があるのではないかと疑われるかもしれない上に、マヤ婆さんによると援軍や助力は最後の最後……私達の領域を攻撃してきたドラゴン全てを討伐してからでないといけないらしい。

何故かと聞けばそれが占いの結果だから……鬼人族の今後のため、成長のために助けてばかりというのも良くないらしい。

と、そんな理由でもって何も出来ない状況となってしまっているのが、私がどうしても不安になってしまっている理由だった。

「……ディアス達がやってくる前から私達はここで暮らしていて、何度もドラゴンとやり合ったりやり過ごしたりしているんだ、心配するな。

ディアスは自分のことだけ考えていれば良い……それにだ、今回の襲撃で一番大変なのはディアスとベイヤースだぞ、大丈夫なのか?」

「まぁー……私はなんとでもなるだろう、ベイヤースにはかなり頑張ってもらうことになるが、大変そうなら他の馬に頑張ってもらうなりするつもりだし、問題ない……と思うぞ」

アルナーの言葉にそう返した私の役目は、領土全体の防衛だった。

ベイヤースに乗って領内を駆け回り、ドラゴンを見かけ次第対処して……どこかが危機となったらそこに駆けつける。

隣領でやっているという常に各地を移動し続けての警備を行っている巡行騎士を真似る形で、どこを守るとかは決めずに、その時その時の判断で動き回る感じだ。

安産絨毯も常に鞍に乗せ、重傷者が出たならそこに駆けつけるつもりで……領民となった鷹人族が草原全体を見回っての連絡をしてくれるので、素早い対応が可能なはずだ。

一番重要な場所であるイルク村を離れることも少しだけ不安ではあったが、イルク村の防衛はアルナーとゴルディアが指揮を執ることになっているので、なんとかなるはずだ。

それだけでなくイルク村の防衛には……、

「イルク村のことは任せておけ、マヤ達もかなりの戦力となってくれるだろうし、40ものドラゴンが来たとしても問題ないだろう」

と、アルナーが言う通りマヤ婆さん達までが参戦することになっていた。

物凄く驚かされたのだが、マヤ婆さんは占いだけでなく他の魔法……攻撃に使うような魔法も得意としていたらしい。

それをイルク村に来てからも研究を続けていて……鬼人族の力と合わせることで、強力な攻撃魔法へと進化? したのでそれを使おうということのようだ。

と、言っても年齢が年齢で、いくら魔法が得意と言っても戦いに参加するなんてとんでもない話で、今までのように参加しないことが当たり前だった訳だけども、それでもマヤ婆さんなりに練習や準備をしていたようで……ついでに他の婆さん達にも魔法を教えて、ちょっとした魔法部隊が完成してしまっていたんだとか。

不足する魔力はアルナーが魔力を込めた宝石を使うことでなんとかし、移動は犬人族達が曳くメーアワゴンや荷車に乗ることでなんとかし……1人だけでは大した威力にはなららしいが、それを12人で使うことでかなりの高威力となるそうで、ドラゴンを狩ることすら可能……らしい。

私としては婆さん達には地下の避難所で大人しくしていて欲しかったのだけども、

「皆が大変な時に大人しくしてばかりは申し訳なくてねぇ」

「この歳でドラゴン狩りなんて、ワクワクするじゃぁないの」

「マヤ様に厳しく指導されたからね、足手まといにはならないよ」

「老いたあたし達だけ生き残ったってどうしようもないじゃないの、若者こそ守ってあげなきゃ」

なんてことを言いながら準備万端な姿を見せられた上に、アルナーやベン伯父さん、ダレル夫人とフェンディアにまで説得されたら、反対しきることは出来なかった。

たっぷり魔力が込められた宝石をはめ込んだ杖を手にし、メーア布にドラゴン素材を組み合わせた作ったらしい黒色ローブを身にまとい、マヤ婆さんの趣味らしいとんがり帽子を被った12人の婆さん魔法部隊……。

これもまた不安を抱く理由ではあったのだけど……マヤ婆さんが指揮をすると言われると妙に安心してしまったりもする。

まぁ、魔法部隊を編成しようと思ったのも占いの結果あってのことなのだろうし、そこはマヤ婆さん達を信じるとしよう。

マヤ婆さん達を信じて鬼人族を信じて……そして皆を信じて、私に出来ることを頑張っていくしかないのだろう。

「まぁ、マヤの占いによるとまだ少しの猶予がある……それまではゆったり体を休めておくと良い。

今から気を張りすぎると疲れてしまっていざという時に力が出なくなってしまうぞ」

と、アルナーにそう言われて私はその通りだと頷いて……あれこれ考えずに鎧の手入れだけに意識を向けるのだった。