軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

歓待と慶事

関所に到着するとすぐさまモント率いる犬人族達が、盗賊達を見張ってくれることになった。

拘束したまま中央広場に集め、周囲を囲う形で見張り……壁にある歩廊からも見張るようにし、獣人国からの迎えが来るまではそれを続けることになるらしい。

盗賊達が死なないよう最低限の食事や焚き火も用意するが、それ以上の世話はしないとかで少し心配になるが……まぁ、モント達に任せておけば問題はないだろう。

モントはセナイとアイハンを慕っているからこそ盗賊を許せないようだし、犬人族達は同族を大事にすることを誇りとしているからこそ盗賊を許せないようだし……そこに一切の甘さはないだろうが、かと言って必要以上に厳しくもしないはずで……そこら辺に関しては信頼している。

そしてヤテン兄弟とその護衛には相応の歓待をすることになった。

かなり変則的ではあったが、わざわざ家宝を持ってきてくれた大事な客人であるのだから、相応の返礼はすべきだろう。

関所内部の一番良い部屋を用意し、料理もイルク村から人を呼んで作ってもらっての豪勢なものを用意し……メーア布などの土産も用意し。

もちろん護衛達にも相応の待遇での歓待を行うことになった……が、護衛の一部は獣人国に事の次第を報せるためにとすぐに関所を出ていったので、土産を渡すのが精一杯だった。

まぁ、それでも悪くはない品を贈っておいたので、満足はしてくれるはずだ。

そういう訳で夜、関所内部にある広い部屋……いくつものロウソクで明るく照らされ、豪華な作りの暖炉で暖められた迎賓用の一室で、婆さん達が用意してくれた料理の並ぶテーブルを、私とアルナー、セナイとアイハンとエイマ、そしてヤテン兄弟で囲うことになり……その中で私はこんな問いを投げかけた。

「そう言えば、あの盗賊達に何か仕事をさせるとか言っていたが……具体的にどんな仕事を任せているんだ?」

するとヤテン兄弟の長男、ライキリが美味しそうに食べていた煮込み肉を飲み下してから言葉を返してくる。

「……はい、彼らには森の管理を任せておりまして……彼らの手にかかると圧倒的な早さで森が広がる上に、良い木材が育つので欠かすことの出来ない存在なのです。

獣人国では争いが絶えず、毎年いくつもの城や砦が建造され……荒れた国内を慰めるための神殿もどんどん建立されておりまする。

そのため木材の需要はとても高く……彼らがいなければ獣人国の森は数年で消滅してしまうことでしょう」

「……なるほど、それは確かに大事なことだなぁ。

森がなくなれば木材以外の収穫もなくなってしまう訳だし……そう言うことなら確かに、ライキリ達に任せた方が良さそうだ。

ただの盗賊行為の罰則というだけではなく、獣人国としても得るものがあるという訳だしなぁ。

……罰則なのだから少しキツめに働かせるくらいでちょうど良いのかもしれないな」

私がそう返すとライキリは深く頭を下げ、ライマルもそれに続いて頭を下げ……結構な時間下げてからゆっくりと頭を上げて、食事を再開させようとした所で、セナイとアイハンが口を開く。

「そういうことならちゃんと言っておくね、仕事するように」

「でぃあすのいうとおり、しごとだけ、がんばるように」

「逃げるのも仕事しないのも遊ぶのもだめ、だめなことしたら森を捨ててもらう」

「ちゃんとはんせいして、みんなにゆるしてもらえるまで、がんばるようにいっとく」

するとライキリとライマルは目を丸くし、お互いの顔を見合ってから「わははは」と笑い、

「そうですな、お嬢様方の命とあればあの者達も従うことでしょうな」

「えぇ、えぇ、聡明でお美しいお二方には何人も逆らえますまい」

と、そんな言葉を口にする。

するとセナイとアイハンはにっこりと笑い……自分達の前にある料理を結構な勢いで食べていく。

早く食べてこの場を後にして、ライキリ達に約束したことを果たそうとしているのだろう……その勢いは結構なもので、その分だけセナイ達の口の周りが汚れてしまい……セナイの左に座った私と、アイハンの右に座ったアルナーが同時にナプキンを手にとって、セナイ達の汚れを拭う。

それでもセナイ達は勢いを緩めることなく食べ続け……食べ終えたなら二人同時にライキリ達にちゃんとした礼をしての挨拶をしてから席を立ち、どこかへと駆けていく。

それを見てエイマは追いかけたものかと躊躇し、こちらを見てくるが……ここは関所の中で安全は約束されている、盗賊達にもしっかり見張りがついているし、そこまでする必要はないだろうと、私とアルナーが表情や仕草でもってエイマに語りかける。

するとエイマは分かったと頷いて……目の前の木の実の山へと手を伸ばし食事を再開させる。

「いや、しかし、メーアバダル公には父共々お世話になってばかりで、改めて何か礼をしなければと考えてしまいますな」

そうやって再び始まった食事の席でライキリがそう言ってきて……私がどう返したものかと悩んでいると、犬人族のセンジー氏族の若者が大慌てといった様子で駆け込んできて、声を上げる。

「ディアス様! ディアス様ー! ちょっと前の日が沈む少し前、お隣からゲラントさんがやってきました!

大事なお知らせがあるとかで……ディアス様がいらっしゃるここまで行こうとしてたんですが、夜は危ないってことでオレが代わりに伝言を預かってきました!

今言っちゃって良いですか? すごくおめでたいことです!」

ゲラント……エルダンに仕える鳩人族がわざわざやってきたということはかなり大事な用のはずだが……大事でおめでたいこと、か、一体何事だろうか?

「それは……秘密にした方が良い話か? それなら別室で話を聞くが……」

と、私が返すと若者はその首をぶんぶんと左右に振る。

「なら今ここで教えてくれ、どんなめでたいことがあったんだ?」

私がそう言葉を続けると若者はその口を大きく開けてゲラントから預かった伝言を口にする。

「エルダン様の奥様が無事ご出産! とても元気いっぱいな男の子だそうでお隣は領を上げてのお祝いをするそうです!

奥様が無事出産出来たのも、元気いっぱいな……ご、ゴチャクナン? が生まれたのもディアス様と大メーア神殿のおかげだってことで、なんか凄い盛り上がってて、お祝いが落ち着いたらエルダン様達が神殿にお礼にいらっしゃるそーです!」

「おお、そうかそうか! 無事に産まれたか! それは良かった」

「これでエルダンの家は安泰だな! いやいや、本当にめでたいぞ!」

その報告を受けて私とアルナーはそう声を上げて笑みを浮かべて……お互いを見合って喜びを表現する。

ゴチャクナン……ご嫡男ということか。

つまりはエルダンの後継者が無事産まれたということで……それは物凄い騒ぎになっているんだろうなぁ。

そうやって迎賓室全体が明るい空気に包まれる中、ライキリとライマルも満面の笑みを浮かべて声を上げる。

「おお! エルダン様と言いますと噂のマーハティ公ですな! ペイジン商会の者達から聞き及んでおりますとも!

我らの同族、尊き血を引くお方! その方にご嫡男とはまっことおめでたいことですな!」

「ペイジン商会が春になったら交流を開始するとかなんとか……いやはや、獣人国としても喜ばしい限り!

そして……大メーア神殿とはここまでの道中で見かけたあの神殿のことですな? 嫡男授かるご加護の神とは……あやかりたいものですなぁ」

なんてことを言ってからライキリとライマルは、出産のことが耳に入った以上は自分達もお祝いしなければと、あれこれと話し合いをし始める。

贈り物をするか、それだけでなく使者を送るか……それ以上のことをすべきか、などなど。

その話はどんどん盛り上がり……食事と一緒にワインを出していたことも影響したのか盛り上がり続け、盛り上がった話は神殿についてまで及んでいく。

そして……、

「安産はもちろん嫡男を望む家は多く、公爵家に加護をもたらした実績ありとなれば、神殿への参拝を望む者も多いことでしょう。

であれば、我らの礼は決まったようなものですな……メーアバダル公のことを、神殿のことを獣人国で喧伝して回りましょう。

さすれば参拝客が多く足を運ぼうとするはずで、それはきっとメーアバダル公の益となるはずです」

「とはいえ有象無象に来られても困るでしょうから、その辺りの選定もヤテン家が取り仕切りましょう。

交流する価値のある家、財力のある家、メーアバダル公との友好を望む家の者を優先して……それらとの繋がりはきっとメーアバダル公に幸運を招いてくれるはずです」

なんて提案をライキリとライマルがしてくる。

それを受けて私がアルナーとエイマを見やると、二人は同時に頷いてくる。

元々、春になったら関所の門を開くつもりではいた……街道が出来上がり、休憩所や警備施設も出来上がり……迎賓館や神殿までなら他国他領の者が入ってきても良い環境が出来上がっていたからだ。

メーア神殿のことやその教えが広まることは、伯父さんが強く望んでいることでもあるし……そうやって少しずつ人を受け入れていって、多くの人や商人が行き交うようにしたいというのはエリーやゴルディア達が望んでいることでもある。

そしてその方針に関しては既に皆と話し合った上で決定していたことでもあり……アルナーとエイマが問題ないと考えているのなら、うん、ここで返事をしてしまっても良いのだろう。

「そういうことなら喧伝も取り仕切りもお願いしよう。

ただし取り仕切りに関しては不慣れな間だけという形になると思うので、そのつもりで頼む。

追々は誰でも行き来出来るようにしたいからな」

そういう訳で私がそう返すとライキリとライマルは、深々と頭を下げて、

「お任せください!」

「お役に立ってみせまする!」

と、そんな大きな声を張り上げるのだった。