軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

セナイ達の戦い

――――雪原を駆けながら 森人族達

何人かが魔法に屈し、何人かが逃げ出し、駆けるうちにはぐれた者もおり、森人族の戦力は半減していた。

前方には謎の敵がいて後方からも敵が迫っていて……戦力半減の上に危機的状況となっていたが、それでも前に進めば……やれるだけのことをやれば状況を逆転出来ると、駆け続ける誰もが信じて疑っていない。

信じて信じて、力いっぱいに駆け続けて、段々と息が荒くなり、白い息を吐き出すことになり、疲れからか足の動きも乱れ、音を立て雪を蹴り上げ……結果、自分達はここにいるぞと、強く示すことになり……すぐさま鋭い矢が一本、飛んでくる。

それを避けるために一人が転がり……少し間があってまた一本。

そしてまた一本飛んできたことで、森人族達は射手が一人になったと察する。

こちらから攻撃した訳ではない、魔法を使った訳ではない、なのに何故か射手が減っていて……森人族達はそのことを疑問に思いながらも、矢が飛んでくる方へと真っ直ぐに駆け続けるのだった。

――――少し時は遡り 馬に跨りながら セナイとアイハン

「……なんか変な魔法だね」

「ねー……なにかしようとしたみたいだけど、まりょくすくなすぎて、いみなかった」

敵の位置を魔力の流れや相手が放つ音、それから上空からの鷹人族の目で完璧に把握していたセナイとアイハンは、相手が近付いた分だけ馬達を移動させながら、そんな会話をしていた。

「ん~……私にはよく分かんなかった、向こうに魔力が返っていったのは分かったけど……アイハンに任せて良い?」

「いいよ、せないはこうげきしつづけて……こっちはまほうをしらべて、まねしてみる」

「うん、お願い、変な魔法で皆が困ったら嫌だし、調べてみて」

「でぃあすは、なるばんとさんのおまもりあるから、へいきだとはおもうけど……」

「ん~、多分皆なら平気だと思う、皆の方が全然凄い、マヤおばあちゃんの方がずっと凄い」

「うん、そうおもう……けどゆだんしないで、みんながくるまで、きょりをとろう」

そう言い合ってからセナイとアイハンは同時に頷き、それぞれ距離を維持しながら行動に移していく。

セナイは矢を射続け、アイハンは相手が使った魔法を解析し……ただ魔法を返すではなく、自分のものにしようと魔力を練り上げていく。

移動もただ真っ直ぐ移動するのではなく、少しずつ方角を変えて街道や休憩所、メーアの避難所に近付けないようにも気を使い……ついでに時間稼ぎもしようと、円を描くように移動していく。

変に移動をしすぎるとこちらに向かっているはずのディアスやモント達を困らせてしまうかもしれない……出来るだけ同じ場所に留まるようにしようとも気を使い……そうしながらしっかり攻撃と解析も行っていく。

最悪、移動方向に関しては犬人族達や鷹人族に教えてもらえば良いので何かをしながらでも問題なく移動が出来て……そうこうするうちに相手が疲弊しているということがその移動速度などから伝わってくる。

「……もう疲れちゃったの?」

「……みんななら、もっとがんばれるのに……」

ディアスやクラウス、犬人族と比較してのそんな言葉には、呆れの色がたっぷりと含まれていて……そうしてセナイ達は気を抜きかけるが、直後魔力の流れが変わったことで、2人の表情が変わる。

どうやら侵入者達……盗賊と思われる何者かは、追いつけないことに業を煮やし、弓矢や魔法での遠距離攻撃に打って出たようだ。

まず弓矢での攻撃。

魔法で風の道を作り、そこに射った矢を通すのはセナイ達と同じではあったが、道が不十分であり弓矢の出来が今ひとつだったこともあり、そこまでの威力も飛距離もなく……セナイ達に矢が届くことはなかった。

と、いうかそもそも狙いが定まっていない。

なんとなく矢が飛んできた方向に射返しているだけで、セナイ達の居場所を把握出来ていない様子だ。

これでは当たる方が難しく、セナイ達がなんとも言えない表情となっていると、今度は魔法での攻撃が飛んでくる。

それはたとえるなら魔力の矢といった代物だった。

魔力に力を持たせ、固めて鋭くし、勢いよく放つ。

弓矢よりは遠くに飛び、威力も落ちにくく……そして魔力に引き寄せられるようにしているのか、かなり正確に何本……何十本もの魔法の矢がセナイ達の下へと迫ってきている。

が、その正確さがまずかった。

「ねらいはまりょく! おおきなまりょくをはなって!」

あまりに正確な狙いだったため、すぐにアイハンが看破して声を上げる。

するとセナイが躊躇することなく魔力を放ち……魔法の矢はそれに引っ張られて何もない空中を射抜き、標的を傷つけるためか砕け散り……霧散する。

すると攻撃が失敗したことに気付いたのか、盗賊達は一斉にではなく、バラバラに時間差でもって魔法の矢を放ってきて……流石にセナイだけでは無理だと、アイハンも協力して魔法の矢の狙いを逸らしていく。

その間、2人は無言で……言葉もないままこれ以上ない連携をし、お互いのことを補い合い、圧倒的多数の相手の攻撃全てを無効化していく。

何度も何度も魔法の矢が放たれ、セナイとアイハンは余裕すら見せながらそれらを防ぎ……防ぐことに夢中になってしまい、愛馬への……シーヤとグリへの指示が疎かになる。

疎かになったことで困惑した馬達が速度を緩めるが……セナイ達はそれに気付かず、迎撃するのに夢中になってしまう。

それに最初に気付いたのはセナイ達防衛隊を手伝っていた……ハキハキと喋る鷹人族で、すぐに声を上げる。

「ちょっと! セナイちゃん、アイハンちゃん!? ちゃんと逃げなくて平気かい!?」

かなり上空からの声だったが、セナイとアイハンの耳であればしっかりと聞き取れるはず……だが、セナイ達よりも先に、馬に下げた梯子に張り付いていた防衛隊の犬人族達が声を上げて反応を示す。

慌てているからか言葉ではなく吠え声で、かなり力強いその声にようやくセナイ達は指示が疎かになっていたことに気付いて、慌ててシーヤとグリに距離を取り直すよう指示を出す。

……が、少し遅かった、魔法の矢を放たずに駆け続けた盗賊がいたようで、かなりの近距離まで迫ってきているのを感じる。

それも左右に広がっていて、こちらを包囲しようとしていて……馬が駆け出したのを見てか、矢を番え弦を引き絞り……馬の蹄の音や荒い息の音、犬人族達の声が響き渡る中でもセナイ達の長い耳にしっかり届く。

その矢を避けるべきか、魔法で防ぐべきか、しかしそちらに意識をやっていると今度は魔法の矢を防げないかもしれない。

まだまだ幼いということか、経験が不足していたのか……そんな躊躇がセナイ達の判断を更に鈍らせ、決断を遅らせてしまい……結果、かなりの数の矢が放たれ、一斉にセナイ達に迫り……そしてそこに凄まじい音と圧倒的な気配と、黄金色の輝きが飛び込んでくる。

「ディアス!」

「でぃあす!!」

それは愛馬ベイヤースに跨り、金色の鎧を身にまとったディアスだった。

鎧を輝かせ圧倒的な気配を放ち……そしてそれを支えるベイヤースにとってもセナイとアイハン、そして愛馬のシーヤとグリは家族であり、仲間だった。

そんなセナイ達が攻撃されていることに憤ったベイヤースが前足を振り上げる。

それはまるでお前らを踏み潰してやるぞと言っているようで……そんなベイヤースの背の上のディアスは片手で戦斧を握ったまま、もう片方の手で手綱を操ってどうにかバランスを取って落馬しないようにし……と、妙に絵になるポーズが完成した瞬間、ディアスの鎧が眩く輝き、特別な力を発揮する。

それはあらゆる攻撃を弾くというもの、あと少しでセナイ達に届くところだった矢の全てが弾かれ、セナイとアイハンと……2人の無事を確認したディアスが同時に安堵の表情を浮かべる。

それからディアスはセナイ達を安心させるための満面の笑みを浮かべてから……ディアスに続いて駆けてきた犬人族達と共に、盗賊を制圧すべく雪原へと突入していくのだった。