軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

メーアバダル防衛隊

――――雪原を駆けながら セナイとアイハン

連携しての狩りを始めたセナイとアイハンには、実のところ裏の目的があった。

それはメーアバダル草原を守ること。

ドラゴンや狼、獣や侵入者から守ることで……子供達の中でだけ自分達のことを、メーアバダル防衛隊と呼んだりもしていた。

それを始めたきっかけはディアスのした昔話で……セナイとアイハンが昔話を聞く中で、自分達にはディアスの真似もジュウハの真似も出来ないだろうと思い知ったからだった。

ディアスの真似が出来ないのは仕方ないとしても、ジュウハのように色々なことを思いつくことが出来ないし、相手の考えを読むことが出来ないし、相手の行動の裏を読むことが出来ないというのが致命的に思えてしまった。

もしかしたらこうかも? と、思うことは出来ても、それを信じて行動するなんて到底不可能で……自分で自分の考えや読みを信じきることが出来ない。

もしディアスがいなくなったら……ディアスが老いて戦えなくなったら、そんな自分達が、次世代の者達がどうにかしなければならない。

ディアスもいない、ジュウハもいない、そんな中でまた戦争が起こったら、ドラゴンがやってきたら……自分達はメーアバダル草原を守れるのだろうか?

そんな考えは前々からあった。

勉強をすればする程、エイマやオリアナに様々なことを学べば学ぶ程、自分達には無理だと……無理だけどもどうにかしなければならないという思いがあって、それが今回行動に移されたという訳だ。

こういった考えを持っているのは、自分達だけではないのだろうとセナイ達は確信していた。

クラウスもモントも洞人族達もエリーやゴルディア達も、恐らく同じようなことを考えている。

だからクラウスは森の中の東関所をどんどん改良している、森の中にもいくつもの罠を仕掛けている。

モントも西関所をどんどん改良している、下手な城よりも立派な要塞になっている。

洞人族達は対ドラゴン用の武器をどんどん作っている、最近では犬人族でも扱えるようにした投石機やバリスタも作り始めている。

エリーはそんなクラウス達を助けようと色々な物資を買い付けているし、ゴルディア達は戦乱や騒動に繋がりそうな情報を見逃すまいと、日々ギルドの者達に連絡しての情報収集と情報網の構築を進めている。

皆が今の先にある未来を見据えての行動をしていて……そのことを自慢の耳で聞いていたセナイ達は、皆よりも自分達こそが頑張らなければと、強い決意を抱いていた。

だがその想いをディアスに正直に伝えても、賛成はしてくれないだろう。

ディアスは優しいから。子供はそんなことを気にしないで遊んでなさいと言うに違いない。

そして自分達がその言葉に甘えてしまうだろうこともセナイ達は分かっていて……だからこそ、その想いと目的を秘密にしての行動を開始したのだった。

狩りの中で自分達を鍛える、狩りをしながら草原を見回って、何もない草原の中のちょっとした地形の変化を見つけ、地理を把握する。

一人でディアスのようになるのではなく、皆でディアスのように……ディアスに並べるくらいに強くなろうとも考えているが……何万人もの帝国兵ですらそれが不可能だったことを思うと、それはかなり難しそうだ。

それでも自分達なりの方法を見つけるしかない、そのために自らを鍛え、色々なことを経験していく必要がある。

クラウスやモント達と模擬戦をしてみるのも良いかもしれない、エルダンの下を訪れて隣領兵との模擬戦も良いかもしれない。

ペイジン達がやってきたなら、教えを乞うのも良いかもしれない……アクアドラゴン戦では活躍してくれていた。

アルハルからは既に学んでいる、モントとはまた違った帝国のやり方と、ニャーヂェン独特の戦い方はとても勉強になる。

イービリスを始めとしたゴブリン達からも学んでいる、彼らの戦い方はどこかディアスと似ている上に、セナイ達が知らないことをよく知っているので学ぶことが多い。

もっともっと学んでいかなければ、もっともっと大人にならなければ。

なんてことを考えながら愛馬を駆けさせていると、上空を旋回しながら周囲を見回していたサーヒィが高度を下げてきて、声をかけてくる。

「……前方に何かいるぞ、モンスターじゃない、人じゃない、雪を掘り返して草を食んでる……獣か?

うちの家畜じゃないし、黒ギーでもないし……ああ、あの感じはどっかの山でよく見かけた連中だな」

そんな言葉を受けてセナイ達は、まず愛馬に速度を緩めるように指示を出してから目を細め……その動物を視認しようとする。

もっと近付いてしまえばはっきり見えるのだろうけども、食事をしているだけの動物を驚かせたくはない。

自分達はメーアバダル防衛隊ではあるが、モンスターでも侵入者でもないものまで攻撃しようとは思っておらず……むしろ新しい仲間のことは歓迎したいと考えている。

臆病な草食動物がわざわざやってくるということは、それだけこのメーアバダル草原が安全だという証拠であり……その動物の姿が見えてくると、なんとも言えない誇らしい気分になることが出来る。

「……ラクダに似てる? ラクダより首が長いね」

「あしもからだもほそくて、けがふわふわ、けいかいしんがつよそうだから、これいじょうはちかづけないね」

と、セナイとアイハンが声を上げると、セナイの懐に潜り込んでいたエイマが顔を出し、じぃっと前方を見つめ……それから2人に声を返す。

「アレは多分ビクーナって動物ですね、山とかに住んでいて草食……仲間を守ろうとする意思が強いので家畜化は出来ないとかなんとか。

本で読んだだけの知識ですが、本で書いてあった通りの体格で、挿絵そっくりの姿してますし、恐らく間違ってないと思いますよ」

そう説明されてセナイ達は更に嬉しい気持ちとなる。

メーアバダルにやってきた新しい仲間もまた、仲間を守るために戦う者達だった。

草を食み、仲間を守り、他者に屈さず、誇り高く生きる者だった。

「そっか、じゃービクーナも草食べて良いよ、メーアバダルの仲間だから。いっぱい食べてもらって……そして増えたら狩っちゃおう」

「おにくたのしみだねー、けがわもよさそう、けがほそいみたいだから、きっといいおりものになるよ」

「……あ、やっぱり狩っちゃうんですね。

まぁ、増えすぎても草を食べすぎて困っちゃうから仕方ないんですけど……ビクーナ達も大変な土地にやってきちゃいましたねぇ」

セナイとアイハンの言葉に、エイマがそう返し……そしてセナイとアイハンとエイマと、サーヒィと縄梯子の犬人族達が笑い声を上げる。

笑って笑って、仲間が笑っているのが面白いから更に笑って、笑うのが楽しくて。

そうやって満足するまで笑ったセナイ達は、愛馬達に踵を返させ、イルク村へと帰還するのだった。