軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

輸入

それからゴブリン族の何人かは陸上生活を見学したいということでイルク村に滞在することになり、残りの何人かは船を使った荷運びを続けてくれて……次々と海の品が届くようになった。

魚は塩漬けで、貝やエビは焼いた状態で。

そうやってイルク村の食卓がどんどんと賑やかになっていく中、嬉しい報告が飛び込んできた。

前々からイルク村や関所に滞在して働きながら交流してくれていた鬼人族の女性達とジョーやロルカを始めとした領兵達との結婚が正式に決定となったとの報告だ。

いや、正確なことを言うのならもっと前に決まってはいたし、ドラゴン素材を使っての結納も随分前から行われていたのだが、足並みを揃えると言うかなんと言うか……希望者全員の結納やらが終わるまで最終的な報告をしないことにしていたらしい。

結婚式は一斉にやるつもりで、そのための準備もしていて……そんな状況なのにいちいち一人一人報告していくのは私に負担をかけるだけ、なんてことを考えていたらしい。

嬉しい報告は何度してもらっても嬉しいし、手間でも負担でもないのだが……まぁ、うん、気を使ってくれたということなのだろう。

現在こちらで働いてくれていた鬼人族の女性は全部で11人、その中には結婚について悩み中というか、決断しきれていない人もいたのだけど、なんだかんだと最終的にその全員が結婚を決めてくれたそうで……3日後にその結婚式が行われることになる。

何故3日後かと言えば結婚に必要なものを今セキ達が買いに行っているとかで、それが届いたなら家族を招いての式を行い、イルク村のユルトだったり関所の部屋だったりで夫婦として暮らし始めるんだそうだ。

で、セキ達が何を買いに行っているのかと言うと……その答えは家畜だった。

イルク村や関所を行き来するジョー達の生活に馬は不可欠で、それだけでなく食卓も豊かにしたいのでガチョウが欲しいとかヤギが欲しいとか、白ギーが欲しいと声を上げた女性もいるようだ。

今日までイルク村で暮らしてみて、その間にどんな家畜が必要かを見極めて……それを結婚の条件にしたという感じらしい。

それを受けてジョー達がエリーやセキ達に家畜の購入を依頼し……それが届くのが3日後という訳だ。

その合計数はかなりのものとなっていてその目録を眺めながら、初期の頃と比べて随分と広く大きくなった厩舎の前でどう改築していったものか、なんてことを考えていると、頬に手を当てたエリーが声をかけてくる。

「とりあえず以前マーハティ公に頂いた目録にあった、ヤギ5頭と白ギー4頭とガチョウ30羽を受け取ってきたわ。

いきなり数を増やしすぎても問題でしょうから、残りは追々って感じかしら。

ただ……鬼人族のお嫁さん達が求めている馬は目録にはなくて、それでセキ達には獣人国での買い付けをしてもらっているの、外国で馬を買って良いものかと迷ったのだけど、セキ達が言うにはペイジン商会に頼めばどうとでもなるとかで……商会から関所に届いた手紙によると、問題なく用意してくれるとのことよ。

ただまぁ、突然の話ではあるから調教済みの軍馬とかは無理で、農耕用の品種になるそうよ。

それでも鬼人族の子達は構わないそうだから、とりあえずはその品種を11頭、買うことにしたの」

「なるほど……まぁ、鬼人族の女性達が納得してくれているなら、それで良いんじゃないか?

馬は馬だし……農耕馬なら畑やこれから手入れをする荒野でも活躍してくれるんだろうし、ありがたい限りだな」

「あ、一応言っておくけど、今回買った家畜はあくまで鬼人族の女の子達……というか、新しい夫婦達の個人財産だから、そのつもりでいて頂戴な。

今までの家畜は全部がお父様のものというか、イルク村の共有財産みたいになっていたけど、今回のは別で……その家畜をイルク村の用事で働かせる時はそのための対価、お給料なりを用意する必要があるから、覚えておいて。

……まぁー、村の厩舎を利用するならその代金と相殺、なんて形にできるとは思うけどね」

「ああ、分かったよ。

何か手伝ってもらう時には対価を用意するとしよう」

と、そんな会話をしたなら改めて厩舎を見て回る。

個人財産とは言え、厩舎は必要で世話のための道具は必要で……その辺りを増やしたり、あるいは関所で用意させたりする必要もあるだろう。

個人で厩舎を持ちたいなら洞人族に頼んでもらうことになり、そのための木材なんかも必要で……そのためには木材を買う必要があるとなったら、いくらくらいで売るべきなのかという値付けも行う必要がある。

今まではなんでもかんでも……ユルトも家具も村の共有財産だからと特に値段をつけてこなかったが、その辺りも今後は必要になってくるのだろうなぁ。

……ユルトって何気にメーア布で作っているから、大きさによってはかなりの値段になるのだけど、個人で気軽に買えるような値段になるのだろうか……? 下手をすると木造の家の方が安くなるのでは……?

なんてことを考えつつ、それから私はエリーと必要なものや作業の確認を行っていくのだった。

そして3日後。

そろそろセキ達が帰ってくるだろうということで村の西側で待っていると……何頭もの馬や家畜を引き連れたセキ達の馬車が街道の向こうからやってくる。

護衛の犬人族達が忙しなく周囲を駆け回るその列の大きさはかなりのものとなっていて、良く見てみると馬の数が……随分と体躯の大きい馬の数が11頭どころではなく、ぱっと見で20頭とかその辺りの数となっている。

多く買えそうだったから買ってきた……ということなのだろうか? それともペイジン達が気を利かせてくれたとかだろうか?

あれこれ考えていると馬車が近付いてきて……そこで御者台のセキの表情が暗いことに気付く。

いつも行商を終えて帰ってくる時は笑顔で、凄く嬉しそうに報告をしてくれていて……馬の数を見るに大成功のはずなのに、何故暗い表情なのだろうか?

軽く手を振ってみても反応は鈍く、あまりにも表情が暗いものだから心配になってしまう。

思わず駆け寄って事情を聞きたくなるが、待っていればすぐに到着するのだからと堪えて到着を待ち……そうして馬車が目の前までやってきて停止するとセキがいつものように報告を始めてくれる。

「……無事行商終わりました。

必要なものも買えましたし、色々良いものも手に入った……んですが、ちょっと嫌な報告もありまして、獣人国がちょっとやばそうなんですよ」

「おかえり、無事に終わったようで何よりだよ。

……で、獣人国がやばそうってのは何事だ? 何があったんだ?」

私がそう返すとセキは困ったような表情を浮かべて一瞬だけ言葉に詰まり、それから意を決したかのように口を開く。

「あくまでペイジンさん達から聞いたり噂で聞いたりした情報でしかないんですが……どうやら参議のヤテン・ライセイ様が失脚したというか、しかけてるみたいなんです。

それで国内の均衡が崩れつつあって、内乱……とまでは言わないんですが、それに近いことになりそうで……それでペイジンさん達から書状を預かりました。

詳しい内容はオレも聞いてないんですが、ディアス様にお願いがあるとかで……」

と、そんな話を聞いて私は驚くやら何やらで何も言えなくなってしまう。

ヤテンというと以前獣人国の代表としてイルク村にやってきて、友好関係を約束してくれた人物だが……それが失脚とは一体何がどうなっているんだ?

ヤテンが失脚したとなると、私達にも無関係ではないというかヤテンが約束してくれた友好関係はどうなってしまうのだろうか……?

それから少しの間、あれこれと頭を悩ませた私は、とにもかくにもペイジンからの手紙を読んでみるかと、セキから手紙を受け取り、早速それを開封するのだった。