軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゴブリンとの会談

思っていた以上に早い再会だったけども元気だったか? とか、海はどうだった? とか、そんなことをイービリスと話しながら小屋へと足を進めていると、そこにカーベランに跨ったエリーが物凄い勢いでやってくる。

それに続いてアイーシアに跨ったエイマや……かなり遅れて犬人族達が曳く荷車に乗ったヒューバートなんかも合流し、小屋に入ろうとする私達を制止してから、荷車に載せていたテーブルや椅子を並べての会談の場作りを始める。

これから色々話し合う訳だし、魚などを持ってきてくれた訳だし、それなりの場で歓迎すべき、ということらしい。

絨毯を敷いてテーブルを置いて、テーブルの上に花瓶などを置いて椅子を並べてそこに座り、いくつかの書類をテーブルの上に広げる。

その書類は港の使用権や領地に関するもので……荒野の南端をゴブリン達の土地にするとか、あるいはもっと広い範囲をゴブリン達の土地にするとか、いくつかのパターンがあったが……それを見たイービリスから待ったがかかる。

「待って欲しい……実は大入江の周囲を我らの領土とすることを一族の長達と話し合ったのだが……長達からその件について待ったがかかってしまったのだ。

我らはゴブリン……海の一族だ、陸で休ませて欲しいと思うが、土地の所有権を得たいとまでは考えてはいない、とのことだ。

……いざ陸の戦士達が攻め込んできた時に守る為に陸で戦えるかも怪しいとかでなぁ、全く老人達は臆病でいかん。

荒野に関してはあくまで公の土地であり、そこに仮住まいを作らせてもらえればそれで良い……というのが一族の方針ということで決まったのだ。

公達の手が届かず、管理が難しいと言うのなら、我らの中から代官を選出し管理をしても良いが……土地の所有権はあくまでメーアバダル公であるとしてもらいたい。

王国の威光を身勝手に使うようで面映ゆいが、どうか愚かな我らをその広き心でもって許して欲しい」

「……もちろんそういった内容の書類も用意しているが……良いのか?

私が公爵として土地の所有権を認めたなら何代先になっても、王国が在な限り領土の所有権を主張出来るのだが……」

その言葉に私がそう返すと、イービリスはニカッと笑い、

「事情が変わりかの地に住めなくなったのならその時はその時だ、新たな土地を探せば良い。

それまでに培った経験と知識でどこかの島に拠点を作っても良いかもしれん。

我らゴブリン族は勇気ある冒険家! 変化を恐れずただ受け入れ、前に進もう!

老人達がそうくるのならば若者である我らはただ前を向いて不安を振り払うのみだ!」

と、そう言って大きな笑い声を上げる。

「そうなると荒野の南部……まだ何も手を付けていない一帯を私達の領土として管理し、そこにイービリス達の居住地を作るという……この一番文字数の多い書類を使うことになりそうだな。

港の所有権は私達にあるが、ゴブリン達にも使用権があって、違法でない範囲なら自由に商売や交易をしても良い。

……昔王国がもっと大きかった頃、遠方の土地では王国法ではなく、その土地ならではの法律で運営している自治領土なるものがあったそうでな、それに近い形になる……らしい。

詳しい解説は後でヒューバートがしてくれると思うが、ゴブリン族が不自由なく暮らせるよう、配慮したいと思う」

「そうか……! 公にそう言ってもらったこと我ら一族は深く感謝し、そして安堵することだろう!

本当に器の大きな人物と出会えて我らは一体どれ程の幸運に恵まれているのだと思うばかりだ!」

私の言葉にイービリスがそう返し、嬉しそうに牙が並ぶ口を開けて笑った折……少し離れた所でこちらの様子を見ていたゴブリン族達から安堵の声やため息が上がる。

今回イービリスが連れてきた面々は、前回の面々とは全く違っている。

まだどう見分けて良いかも分からないゴブリン族相手に、どうしてそれが分かるのかと言えば、帰還時全員が身につけていたはずのザリガニの鎧を身につけているのがイービリスだけだからで……なんとなく女性かな? と、思う大柄かつ柔和なゴブリン族や、明らかに若いと分かる小柄のゴブリン族の姿もある。

そんなゴブリン族は先程からずっと恐る恐るというか、警戒しながらこちらの様子を伺っていたが……その警戒が先程の安堵の声などで解かれたようだ。

「……ああ、彼らについての話もすべきだったな。

彼らはゴブリン族の中でも特に我と近い一族……親戚みたいなものと思ってくれたら良い。

帰還後の宴で大いに語った我らの冒険譚を聞いてここに行ってみたいと言い出した者達で……自分も冒険譚の世界に行ってみたいと思う者、嘘だと疑い事実であるならば現地に連れていってみせろと騒ぐ者、純粋に我のことを心配して同行してくれた者などを連れてきたと言う訳だ。

かなりの人数となってしまったが、そのおかげで早く到着することが出来てな……もう少しこなれたなら海からここまで丸一日程で到着出来るかもしれんな」

と、イービリスがそんなことを言い、私が「なるほど、親戚なのか」なんてことを言いながら周囲を見回す中、私の背後で聞き耳を立てていたエリーが、物凄い勢いで私の側へと突っ込んできて声を上げる。

「丸一日ですって!?

海から川を遡ってたったの丸一日!? そ、それならもしかして、生きた海産物をここまで連れてくることも可能ということなのかしら!? たとえば樽に海水を入れてその中に……とか!

イービリスさん! もしそれが可能ならとんでもない商機になるわよ!?

そのまま売っても良いしイルク村で加工しても良いし……内陸で新鮮な海魚なんて、宝石同然の価値になるわよ……!」

「生きたまま……は、難しいだろう。

無論、そういったことが可能な生物もいるにはいるが、ほとんどが呼吸出来ずに息絶えるに違いない。

そう、呼吸だ、我らも海の中で呼吸をしているのでな……停滞し淀んだ海水の中で呼吸を繰り返していると海水が濁るのか腐れるのか呼吸が難しくなってな……いずれは死に至るという訳だ。

そんなことをするくらいなら命を断って血を抜き、冷えた海水か氷かで冷やして持ってきた方がマシだろうな。

それであれば丸一日経っても痛むことはあるまい」

イービリスがそう返すとエリーは興奮した様子でイービリスの手を取って、それでも十分だとか食料が一気に豊かになるとか、商いが捗るとか喜びの声を上げ続ける。

そんなエリーの態度を受けてイービリスは満足そうに頷き……それからエリーに付き合い会話を始め、会談は少しの間だけ中断となるのだった。