軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初飛行

フランが空からの捜索に参加するとなって、ナルバント達はいくつかの対策を立ててくれた。

まずフランが乗るカゴを頑丈なものにする、そして中にはクッションになるメーア布をぎゅうぎゅうに敷き詰める。

カゴの取っ手をサーヒィ達の爪で掴みやすい形にし……取っ手とサーヒィ達の足を結ぶ紐も用意する。

その紐があればうっかり取っ手を離してしまっても安心で……それでいて強度をサーヒィ達の爪でも切れる程度にすることで、必要だと判断した時には切り離すことも可能となっている。

そして最後の手段というか、いざ落下してしまった時のために動く、特別な仕掛けも施してあるそうで……詳しくは分からないのだが、カゴが落下して、カゴの中にたくさんの空気が通ると、その仕掛けが発動するようになっているらしい。

布の傘が開いて、それが勢いを殺してくれる……とかなんとか。

カゴ自体が頑丈でフランの体重もまだまだ軽いので、その傘が開いてくれたら落下の衝撃はほぼ無くなるんだそうだ。

更にカゴを飛ばす時は二人組……サーヒィと奥さんの誰かが同行することになっていて、サーヒィに何かがあって落としてしまったとしても奥さんの誰かがカゴを掴んで落下を防ぐ、ということにもなっている。

そこまでされたら文句も言えないというか……仕事に嘘をつかないナルバント達にも大丈夫だと言われたら納得するしかなく、そういう訳でカゴが完成した夕方前、早速フランの初飛行が行われることになった。

村の広場の中央にカゴを置いて、そこにフランが乗り込み……直後フランシスとフランソワ、他の六つ子達が駆け寄る。

「メァメァメァー! メァメァメァ!」

よく決断した、頑張ってこいよとフランシス。

「メァン……メァメァメァ」

気をつけて……頑張ってらっしゃいとフランソワ。

そして六つ子達が「メァメァメァメァ」「ミァミァミァミァ」と元気いっぱいに声を上げて……カゴにも激励をしているつもりなのか、カゴにゴツゴツと頭突きをしたりもする。

そしてフェンディアとパトリック達、神の使いであるメーアが空を飛ぶとあってか、地面に跪いて、両手を振り上げたり組んだりと不思議な格好で祈りを捧げ始めている。

その顔は感動しているのか涙まじりのなんとも良い顔となっている。

「……まさかメーアが空を飛ぶとはなぁ……」

続いて他のメーア達や村人達がカゴの周囲に集まっていく中、少し離れた位置に立つ見学にきていたゾルグがそう声を上げて……隣に立つ私が言葉を返す。

「私としては今でも反対なのだがなぁ……まぁ、ここまで来てしまったなら仕方ないかな」

「気持ちは分かる、メーアってのは本来臆病なもんだしなぁ……。

……まぁこっちでも捜索はしているから、それっぽいメーアを見つけたらすぐに使いを寄越してやるよ」

「ああ、助かるよ……早く見つかってくれると良いのだがなぁ……」

「そうだな……。

ああ、それと族長がよ、お前に話があるから顔を出せって言っていたぞ」

なんてゾルグの言葉を受けて、私は珍しいこともあるものだと小さく驚きながらも頷く。

「なんでも礼がしたいんだそうだ。

お前のおかげで……いや、細かい話は族長から聞いた方が良いか、とにかく悪い話じゃねぇから、安心して行くと良い」

「ああ、分かったよ」

続くゾルグの言葉に私がそう返すと……ゾルグは周囲をキョロキョロと見回してから、首を傾げて声を上げる。

「そう言えばあの……ゴブリン族だったか? 連中はどうしたんだ? 姿を見ないが」

「ああ、ゴブリン達なら最近はずっと洞人族の工房に入り浸っているよ。

あそこで今、ザリガニの素材であれこれと作っていてな、それの完成が待ち遠しいらしいんだ」

私がそう返すとゾルグは半目になりながら言葉を返してくる。

「ザリガニってアクアドラゴンのことか?

再生能力のおかげかたくさん甲殻が手に入ったが……あれの強度は正直そこまでじゃないだろ? 何作ってんだ?」

「今はゴブリン達の鎧だな。

ザリガニの甲殻は水に強いとかで……水の中でも錆びたり劣化したりしないそうなんだ。

それでいて軽くて水の流れも上手く受け止めてくれるとかで、ゴブリン達が装備するにはこれ以上ない素材なんだそうだ。

更に水分を逃さないというか、ゴブリン達の皮膚……じゃなくて鱗の水が蒸発しないよう上手く中に封じ込めてくれるとかで、ゴブリン達に限っての話ではあるが陸上で使うにも適しているらしい。

これから荒野を突破しての帰還になるから、そのための装備でもある、ということだな」

「ははぁ……なるほどねぇ。

その装備が出来上がるのが楽しみで、工房を離れられないって訳だ……まぁ、気持ちは分かるがな。

……荒野でも水路やら作ってるんだったか? 荒野にも草が生えればありがたいが……どんな状況なんだ?」

「水路はじわじわ出来上がっていて、一応水量も増えつつあるらしい。

更に今、洞人族の何人かがザリガニが開けた大穴を調査していて……そこから出てくる水を新たな川にしたなら、環境が変わるはず……とかなんとか。

荒野のことはヒューバートに任せているから、詳しい話は直接聞くと良い」

「……ヒューバートか。

悪いやつじゃぁないんだがなぁ……男であの体力はちょっと考えものだよな。

せめて乗馬が上手くて弓が引ければ良い結婚相手を紹介してやれるんだが……ああも男気がないとなぁ」

と、そう言ってゾルグは頭をガシガシと掻く。

その声にヒューバートを馬鹿にしているとかそういった意図は含まれておらず、純粋に心配してくれているようで……出来ることならヒューバートに良い相手を紹介してやりたいと、そう思ってくれているようだ。

「ヒューバートは私達よりもうんと賢いし、色々なことを知っていて、実務経験も豊富だ。

稼ごうと思えばかなりの金額を稼ぐことだって出来るだろうし……そういう男気もあって良いのではないか?」

私がそう返すとゾルグは、首を左右に振ってから言葉を返してくる。

「言っていることは分かる、そういう金の稼ぎ方で家族を養えるってことも分かる。

それでも考え方というか文化は別と言うかなぁ……稼ぎとは別にいざという時、何かがあった時、頼れる柱であって欲しいと、そう考える連中が多いからなぁ。

馬に乗れて弓さえ引ければなんとかなるのが草原だからな……暇を見つけてそこら辺を教え込んでやるとするかな」

そう言ってからゾルグは、フランに声をかけるためか出発準備が進むカゴへと歩み寄る。

その背中は以前見たものよりも大きく見えて……結婚が決まったこともあってか、一気に大人になったというか成長したなぁと感慨深くなる。

ゾルグの結婚式もそろそろだったか……ジョー達とイルク村に滞在している鬼人族の女性達もそろそろかと考えていたし、ザリガニの甲殻などを結納品にしたならそこら辺の話も正式にまとまってくれるはずだ。

捜索が無事に終わったならそういった話も進めていって……冬が来る前にはまとめておきたい所だな。

……と、私がそんなことを考えているとサーヒィの、

「よし、準備完了! 日が暮れる前にさっさと初探索を済ませちまうぞ!」

との声が上がり……メーア達が行ってこい、頑張ってこい、無事に帰ってこいとの思いを込めた「メァメァメメァー!」との声を上げ……そしてフランがカゴに乗り込み、紐でしっかり固定され、サーヒィが取っ手を掴み、紐で取っ手と足が繋がれる。

そうしてサーヒィの翼が大きく広がり、力強く振られて……、

「メァーーーーー!」

とのフランの一声が上がると同時に、空に向かって一気にぶわりと飛び上がるのだった。