軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地中に住まう神

アルナーやクラウス達は無事に全ての小人達を倒していたようだ。

けが人もなく完勝と言って良い内容で、それでこちらに合流しようとしてくれたようだ。

「……こりゃぁオレ達の魔法とか技術とかとは全くの別モンですぜ。

地面を砕いて出てきたそうですが、うぅん……本当にそうならもうちっと痕跡が残っているはず。

地中が荒れた様子もねぇですし、もしかしたらオレらの知らない何か、移動に関するような魔法でここに出てきたって可能性も……」

洞人族の若者達も当然無事で……合流するなりあの巨大メーアが出てきた辺りの地面を調べ始めて、そんな声を上げてくる。

「ふぅむ……メーアが魔法を使えるなんて話を聞いたことはないし、そもそも地中から現れたというのも妙な話だし、そうするとやっぱりあれは偶然大きく育ったメーアとかではないんだろうなぁ」

ザリガニの甲殻が散乱する一帯で地面を見つめながら私がそう言うと……懐から出てきて、地面に降り立ち、辺りをピョンピョンと飛び回りながら調べていたエイマがなんとも言えない顔をし、それから口を開く。

「以前、セナイちゃん達がこの草原の地中に何かがいて、力を吸っているから木々が生えないと、そんなようなことを言っていたんですけど、もしかしたらあの巨大メーアがこの辺りの大地の力を吸っていたのでしょうか?」

その言葉を受けて私は、なるほどと頷いてから口を開く。

「力を吸っている何か……か。

……ドラゴンを倒す度に現れるメーアモドキもメーアの姿をしていて、確か主がどうとかそんなことを言っていたな。

ああ、そう言えば……この草原でずっと暮らしている鬼人族は、ドラゴンが現れたら隠蔽魔法で隠れて、倒そうとはしないそうなんだよ」

「ん? えっと? 鬼人族さんですか?」

私の言葉が唐突に思えたのかエイマはそんなことを言いながら首を傾げて……私はこくりと頷いてから言葉を続ける。

「以前黒ギーが増えすぎているって話が出た時に聞いたんだが、この草原には定期的にドラゴンがやってくるが、鬼人族はそれを倒そうとはせずに隠れてやり過ごすそうなんだ。

それでもいつの間にかドラゴンは草原からいなくなっていて……鬼人族は王国軍が倒しているものと思い込んでいたようだが、戦争中の王国軍がそんなことをしていたとは思えないし、一体誰がドラゴンを倒したのかってずっと気になっていたんだよ―――」

気になってはいたが、調べてどうにかなることでもないだろうしとずっと放置していた事柄が、直感的にと言うかなんと言うか……私の頭の中で一つの答えとなって組み上がる。

「―――つまりはまぁ、あの巨大メーアが倒していた……ということなんだろうな。

そんなドラゴンを私が代わりに倒したからメーアモドキが出てきてお礼というか褒美というかでサンジーバニーをくれて……その時に主の傷が癒えるだのなんだの言っていたから、主……巨大メーアはドラゴンとの戦いで重傷を負っていて、それで力を吸っていた、のかな?

ここが昔から草原だったことを考えると毎回毎回、毎年のように重症を負ってしまっていて、力を吸い続けなければ死ぬとかドラゴンを倒せなくなるとか、そんな追い詰められた状態だったのかもしれないな」

「ああ、なるほど、それは納得出来る話ですね。

メーアは元々この辺りで暮らしていたそうですし……この草原や鬼人族を守るため、じゃなくてメーアを守るための存在があの巨大メーアやメーアモドキという訳ですか。

そうなると……あの巨大メーアは、メーアの上位存在と言いますか神様とか、そんな存在になるんですかね?」

と、エイマがそんなことを言った時だった。

飛び散ったザリガニの甲殻を拾い集めていたマスティ氏族の一人が、大きな声を上げる。

「そりゃもちろん神様ですよ! だって神殿に祀られているじゃないですか!

ドラゴンを倒してくれる神様なんて、これからボク、毎日神殿で祈っちゃいますよ!」

その大きな声は周囲一帯に響き渡り、私は苦笑しながらその言葉を否定しようとする。

イルク村の神殿にメーアが祀ってあるのは伯父さんが決めたことで、本当に神様がいるから……いると思っているからそうした訳ではない。

伯父さんも……私も、神殿という存在とその教えの重要さは理解しているのだが、本当に神と呼ばれる存在がいるかは懐疑的で……悪いことだとは思いながらも大事な教えを広めるために、そういった存在を利用している部分があったりもする。

そもそも本当に神様なんて凄い存在が本当にいるのなら世界は平和なはずで、私の両親が殺されることも戦争が起きることもなく……世界は今とは全く違う状況になっていたはずだ。

教えと祈りと、そのための場は大事だと思う……だけども盲信はしない。

それが私の考えで、勝手にというか思いつきで神殿にメーアを祀った伯父さんも似た考えのはずで……そのことをどう言葉にしたものかと躊躇していると、周囲からわっと声が上がる。

「神様がディアス様を助けに来てくれた! 神殿のおかげだよ!」

「オレ、毎日祈ってて良かった!」

「遠目で見たけど、神様ってでっかいんだなー」

「あ、俺も見た見た、村に帰ったら自慢しよう」

「流石ディアス様だよなぁ、神様と一緒に戦ったなんて」

「イルク村……いや、メーアバダル領は神様に愛されているんだなぁ」

「空からも見ていたが、何なんだよあの大きさは……!」

それはマスティ氏族がほとんどだったが、ジョー達やサーヒィ達の声も混ざっていて……鬼人族の面々も、遠くを見通せるその目で巨大メーアを見ていたのか興奮を隠せないようすだ。

興奮を隠せていないのはペイジンやゴブリン達、スーリオ達も同様で、賑やかさの中で、それぞれに声を上げる。

「これはおとん達にも伝えなきゃいかんでん! 神様に愛された安住の地! ドラゴンに怯える必要のない広大なる草原! 移住希望者も殺到するに違いないでん!

いやしっかし、まっさかこの目で数多いる神々の一柱を拝むことができるなんて……あっし、感動で涙が出そうだでん!」

と、ペイジン。

「おお……おお……! まさかまさか陸の神々と邂逅出来るとは、ドラゴンと戦いまでした我らの冒険譚はここにこれ以上ない完結を見たぞ!」

「この素晴らしい物語は百年、二百年先まで語り継がれるに違いない!」

「早く海に帰ろう! 家族にこの話をしてやらなければ!」

「陸の神は鱗ではなく毛で覆われている……なるほど! 道理だな!」

「そして強い! かの神は神々の中でも屈指の武神に違いない!」

「おおお、陸の神よ! 海神様達に我らが活躍をお伝えください!」

と、ゴブリン達。

「……ま、マジか、神様って本当にいるんだな……」

「……これから毎日神殿にいかなきゃ……」

「エルダン様への物凄い土産話ができちゃったな……」

そしてスーリオ達。

皆の興奮は止まらない、メーアと縁深い鬼人族達もこれからもっとメーアを大事にしようとか、家族皆でイルク村の神殿に祈りに行こうとか話していて……すっかりと下手なことを言えないというか、流れを止められない空気が出来上がってしまう。

そうして苦笑していると私の肩にピョピョンと飛び乗ってきたエイマが、私の内心を察してか声をかけてくる。

「良いじゃないですか、祈るのも信じるのも自由ですし……ベンさんなら皆さんを上手く諭して落ち着かせてくれるはずですよ。

……改めて思いますけど、本当にベンさんがディアスさんの伯父さんで良かったですね、このことを利用してどうこうとかはしない方ですし……。

神殿が絶対的な味方というのは、統治者としては心強いばかりですよ、その上とても優秀と言いますか、有能な方ですし。

こんな事態が起きる前に神殿をある程度の形に仕上げてくれて、神官達を集めてくれて……その上、祀っているのがメーアって……。

まるでこのことを知っていて準備してくれていたかのようじゃないですか! 本当に凄いですよねぇ!」

その言葉を受けて私はまさか……という顔をする。

するとエイマもまさかそんな……という顔をして、二人で黙ってしまっているとアルナーが駆け寄ってくる。

「ディアス! ドラゴンを二体も倒したんだ! 今日は宴だぞ!」

更に甲殻を集めていた洞人族の若者も駆け寄ってくる。

「ディアっさん! こいつは良いぞ! 軽くて脆いがそん代わりに加工しやすいし、何より耐水性が抜群だ!

これから水路やら船やらを作っていくならこれは頼りになるぞ!

惜しいのはこれだけだと大きな船を作るには足りねぇってことだが……それでもまぁ、これだけあれば良いもんが作れるだろうよ!」

アルナーと洞人族の発言を受けて、今夜は宴だ、良い素材が手に入った、更には神様に会うことも出来て今日は最高の日だと皆は盛り上がっていく。

盛り上がりながらも甲殻の回収やドラゴンの解体、村への連絡とそれぞれの仕事をし始めて……そんな皆を見て私とエイマは、一旦この疑問は置いておくかと気持ちを切り替えて、それぞれの作業をし始めるのだった。