軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

東西の邂逅は

私が知る範囲だと隣領の獣人達は獣人国から誘拐されてきた者達とその子孫であるらしい。

建国王が一度大陸統一を成していることから、その時代からの住民達もいそうではあるが……ヒューバート曰くその可能性は低いそうだ。

歴史学者が唱える説の一つに、獣人差別が悪化した結果、獣人達が反乱を起こし大陸西部を占領し独立、そうして獣人国を建国したというものがあるそうで、隣領や他の地域……獣人を一切見かけない王国東部の獣人達はその時にほぼ全員が獣人国に移り住んだのではないか、反乱に参加したのではないか……その後の差別の中で排除されてきたのではないか、ということなんだそうだ。

そういった差別や暴力を厳禁としている聖人ディアの教えはどこに行ったんだと思ってしまうが、新道派なんてものが生まれてしまっていることからも、古い教えを守ろうとしている人達の方が少数派なのかもしれないなぁ。

そんな経緯を踏まえた上で変な空気で見合ってしまっている獣人国出身のセキ達と、隣領出身のスーリオ達の間柄を考えると……存在を知っているが顔を合わせたことのない親戚、みたいなものだろうか?

実際モントに蹴られても尚スーリオ達は何を話して良いのか分からないという顔をしていて、セキ達は商人としての経験からなのか笑顔での挨拶は出来ているが、耳を伏せて尻尾を垂れさせて、どうして良いか分からず怯んでしまっている印象だ。

私達メーアバダル領を挟んで日々を送っている西の獣人と東の獣人が何とも言えない空気を作り出していて……だからと言って私がここで何かするのも変に思えてそちらには触れずにエリーに小声で話しかける。

「そう言えばエルダンの母親も獣人国出身なんだよな? そうすると……いずれは故郷に顔を出すとかいう話になる……んだよな?

隣領から東関所、東関所からイルク村、イルク村から西関所までの街道はもう出来上っていて……それでその、そういうのはどういったタイミングで行われるものなんだ?」

するとエリーはどう返したものかと数秒悩み、それから言葉を返してくる。

「どのタイミングでかと言えば、メーアバダル領の準備が出来次第ってことになるんじゃないかしら?

お互いにその時を待っているんでしょうし」

「その時を待って……? いや、行きたいのであればそう言ってくれさえしたら準備でも協力でもいくらでもするが……?」

「マーハティ公や母君があちらに行くとなったらその身の安全を保証する必要があるし、歓迎の宴とか式典だって必要になるし……マーハティ公達は私達にそういった負担をかけないよう遠慮してくださっているのよ。

ペイジンさん達が隣領に行く分にはそこまで気張らなくても良いけど、それでも護衛や案内は必要になるでしょうし……両者がうちで会談したいと言い出したら迎賓館の準備だって必要になるじゃない?」

「うーむ、そう言われるとそうか……。

街道があるからそこを通ってくれで終わる話ではないのか」

「そういうこと。

それと東西の獣人さん達が出会ったのなら、どうしたって交流が始まる訳じゃない?

悲劇で離れ離れになった人達が再会して友好を深めたとなったら、次には商人を始めとした人の行き来や物の行き来が盛んになる訳で、盛んになればなるほど問題が起きてくる訳で……それに私達がちゃんと対処出来るのか、対処をするための準備が整っているかっていうのは大事なことなのよ。

通行税取り立てのための人員だって確保しなければならないし、街道を通ってる間の安全を保証するためにモンスター狩りを積極的に行わなきゃいけないし、鬼人族さん達に迷惑がかからないよう領土の境に見張りを立てなければならないし……。

そのためには人も武器も何もかもが必要で、マーハティ公達はそれら全てが整うその時を待ってくれているのよ」

「ふーむ……そういうことか。

それで現状、一体何が足りてないんだ?」

「んー……足りていると言えば足りているし、足りていないと言えば足りていないし?

関所に関してはクラウスさんやモントさんに任せて、警備はお父様とサーヒィさんや犬人族ちゃん達に頑張ってもらって……歓迎はアルナーちゃんやお婆ちゃん達に任せればなんとかはなるわね。

ただそればかりになると他のことが出来なくなっちゃって、日々の生活やイルク村の維持が出来なくなるから、行き来する人数を限定するとか、機会を月に数回と限定するとか、そういった制限が今の状況では必須になるかしら。

それでも問題ないと許可を出すのか、もうちょっと準備が整うまで待つのかはお父様次第ね。

マーハティ公やペイジンさん達が、早く向こうに行かせろとか早く向こうで商売させろとか言ってこないのは、そういった面でお父様に負担をかけてしまうということを分かっているからだと思うわ。

メーアバダル領が破綻してしまえば全てが台無し……両者共に良い緩衝材かつ橋渡しになってくれているお父様を失いたくないと考えているのでしょう。

……ただ関所にせよ街道にせよ維持費がかかるから、それを回収するためにいつかは無制限での開放をしなければならないでしょうね。

人手も手間もかかるけど、その分だけ通行税が入るし交易が盛んになればそれ以上の収入があるし……それこそが街道を作った本来の目的でもあることを忘れないでいて欲しいわ」

「ふぅぅぅむ、なるほどなぁ。

……そういうことなら代表の皆と相談して、それともう一度両方の関所を確認してから考えてみるとするか。

特にクラウスに任せている森の関所はあんまり行けていないからなぁ……人の行き来が盛んになっても問題ないか、しっかり確認しておかないとだなぁ」

私がそう言うとエリーはそれが良いと頷いてくれて……そして私達の会話中、ずっとぎこちない会話を続けていたセキ達とスーリオ達が何故か私達の方を見てから頷く。

「ではこっちの交流とかもディアス様の準備が終わってからということで」

「ああ、それで問題ない」

それからセキとスーリオの順でそう言って……どうやらお互いに会話をしながら私達の会話をしっかりと聞いていたらしい。

聞いていて自分達の交流は行き詰まっていて……そういう訳で後の自分達というか、これからの展開に丸投げしようとしているようだ。

そんなセキ達を見て半目になったエリーは腕を組んで大きく胸を張り、それから静かに重い声を上げる。

「セキ、サク、アオイ、この私がそんな有様を許す訳ないでしょう。

どうしても上手くいかないというのなら、スーリオ達と一緒に行動して鍛錬なり勉強なり一緒にやってきなさい。

それから食事も一緒に摂って……何なら隣領の話でも聞いて商機を掴んできなさい。

大事な接待ということで倉庫の上等なワインを使っても良いわよ、アンタ達が飲むのは許さないけど」

するとセキ、サク、アオイの3人は何かを言いたそうにするが、こうなったエリーに何を言っても無駄だとこれまでの経験で学んでいるのだろう、何も言わずに頷いて、中々様になっている仕草でスーリオ達に向かって一礼をしながら、

「では、これから同行させていただきます」

「よろしくお願いします」

「夕食はおいっしいのを用意しますよ!」

なんてことを言って行動を開始する。

それを受けてスーリオ達は少しだけ戸惑った様子を見せながらも受け入れて、そうして6人は一塊となって歩き出し、何故だか胸を張っての大威張りでどこかへと歩いていくモントの後を追いかけていくのだった。