軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

襲来を前にして慌ただしく

セナイ達の畑の冬囲いに、畑の収穫に、フランソワと犬人族達の出産に、寒波とモンスターの襲来に……。

一斉にやってきたそれらの騒動に対し、私達はすぐさま話し合いを行い、そうして皆で手分けをしての対処をすることになった。

モンスターの襲来に関してはクラウスとマスティ氏族達が担当する。

モンスターがやってくるというイルク村の北側……村からかなり距離を取った位置にユルトを建てて、そこでモンスター達を待ち構えての迎撃をしてもらうという形になる。

フランソワ達が無事に出産を終えられるように、アリ一匹すらも見逃すことなく討伐し、何があっても絶対にイルク村には近寄らせない! と、鼻息を荒くしていたので、きっとやり遂げてくれることだろう。

出産に関してはアルナーとカニス、マヤ婆さん達が担当する。

集会所を出産のための産屋として綺麗に掃除し、香で清め、寝床やらを整え、必要な道具やら薬草やらを一箇所に集めての対処をするそうだ。

私は出産に関しての知識が全く……欠片程も無いので、全てを任せて、アルナー達が良いと思うようにしてもらうことにした。

畑の収穫はシェップ氏族、センジー氏族達が担当する。

主な作業は芋掘りになるので、穴掘りが大好きで大得意な犬人族に任せておけば、寒波が来る前に問題なく終わらせてくれるに違いない。

寒波対策……というか、寒さ対策はエリーとベン伯父さん、犬人族の女性や子供達が担当する。

エリーが進めていた冬服作りを一旦中断し、冬寝間着……を作る程の時間は無いので、簡単な造りの、体を覆う為のマントのような布作りをして貰うことになる。

何着かの冬寝間着と、何着かのマントは今日までの間にアルナーが用意してくれていたのだが……今回の寒波がどの程度の寒さになるのか分からないのと、赤ん坊が生まれるのもあって、念の為に数を増やしておいたほうが良いだろうということになったのだ。

今回の寒波は一時的なものだろうとのことなので、一晩二晩を越えられる分があれば良いとのことだ。

セナイ達の畑の冬囲いは、私とエイマ、セナイとアイハンが担当する。

寒波が来る前に仕上げる必要があることなので急ぎつつ……セナイとアイハンが望む形、満足する形にしてやる必要がある作業だ。

私がこの作業を担当するのには、村の中央にある広場で待機し、不測の事態があった際にすぐに対処できるようにしておく、との理由もある。

冬囲いの作業が終わったら、畑の側に置いてある戦斧を手に、出産が無事に終わるまでの寝ずの番をする覚悟だ。

ともあれまずはセナイ達の畑の冬囲いだ。

話し合いだ何だと時間を使ってしまって、時間はもう昼過ぎ。

明日の朝には寒波が来るかもしれないのだし、急いで終わらせなければ……。

……と、そんなことを考えながら干し草の束を抱えて畑の方へと向かうと、セナイとアイハンとエイマが協力し合いながらの作業を始めていた。

干し草を畑の土に隙間なく被せていって、ロープや杭、石を使ってしっかり固定する。

そうやって土の下の根を寒さから守ってやって……土の上の部分はこれから作る干し草の屋根で守ってやる訳だ。

その程度のことで厳しい冬の寒さから守れるのかと疑問だったが、セナイとアイハンによると問題ないとのことだ。

……まぁ、薄い布だけのユルトでも十分な暖を取る事が出来ているし、草木達のユルトだと思えば悪くないのかもしれない。

干し草に覆われつつあるセナイ達の畑には、くるみを始めとしたいくつかの木の種と、果物の種、サンジーバニーの種が植えられていて……春の終わり頃に芽を出したくるみ達や果物や、夏の終り頃に芽を出したサンジーバニーは、細いながらも立派な幹を構えていた。

この若木達を寒さから守ってやって、一年二年……あるいはもっと多くの時間をかけていけば、いつか大きく育った木から実が採れるようになる……訳だが、そうなるとこの畑には根本的な問題があるような……?

作業の様子を眺めるうちにそんな疑問をいだいた私は……担いでいた干し草をセナイ達の側に下ろしながら、地面に両膝をついて一生懸命に小さな手を動かしているセナイ達へと声をかける。

「なぁ、セナイ、アイハン。

この畑……木を育てるにしては狭くないか?

このまま木が大きくなると、手狭になってしまうと思うのだが……?」

そんな私の疑問に対し、セナイ達は私が持って来た干し草に手を伸ばしながら答えを返してくれる。

「ここは苗畑だから良いの」

「なえぎを、そだてる、なえばたけ」

「大きくなったら別の場所に植え替える」

「きのあかちゃんのはたけ、おおきくなるまでここでまもる」

「そうやってイルク村を良い木でいっぱいにする!」

「きのみでいっぱいの、ゆたかなむらにする!」

「木の実がいっぱいあれば皆元気になる!」

「うまれてくる、あかちゃんも、おなかいっぱい!」

セナイ達の想いと力の込められたその言葉に、エイマがにっこりとした笑顔を浮かべる中、私は「なるほど」と頷いてから駆け足でもって倉庫の側に積んである木材の下へと向かい、屋根を作るのに良さそうな木材を見繕う。

苗木だとかの話は、正直よく分からなかったが、兎にも角にもセナイ達が村の為に頑張ってくれているということはよく分かった。

そういうことならばセナイ達の好きにさせてやって……私はその手伝いをするだけのことだ。

見繕った木材を肩に担いだら、畑へと戻り、セナイ達やエイマの指示に従って作業を進めていく。

干し草を敷き詰めてしっかりと固定し、木の棒で屋根を作って若木を囲い……しっかり固定してから屋根に干し草を被せて、もう一度しっかりと固定する。

若木一本に一つの屋根という形で、セナイ達の畑を干し草の屋根でいっぱいにしていって……全ての若木を屋根で覆い終えたら、隙間などがないかの確認を一つ一つしっかりとしていく。

そんな風に作業を進めていって、セナイ達の畑全体の冬囲いが終わったのは陽が傾き始めた夕刻のことだった。

夜になる前に終わることが出来て良かったと、ほっとため息を吐き出してから……疲れ切った様子のセナイとアイハンをユルトで休ませる為にと抱き上げると……セナイとアイハンが、どういう訳か嫌だ嫌だと両手両足を突っ張り、顔と体を振っての抵抗をし始める。

私とセナイ達に抱きしめられていたエイマが一体どうしたのだろか? と首を傾げていると、セナイとアイハンの視線が集会所へと向けられて……次の瞬間、産屋となった集会所が騒がしくなり始める。

出産は明日か明後日になるとの話だったが、もう始まってしまったのだろうか……?

と、そんなことを考えながら私は、セナイとアイハンをがっしりと抱きかかえて、有無を言わさずに私達のユルトへと足を向ける。

「フランソワ達と赤ちゃん達のことが心配なのは分かるが、それでセナイ達が風邪を引いてしまっては元も子もない。

今日はもうユルトで休みなさい、夕食はユルトの中に用意してあるのを好きに食べて良いそうだぞ」

「アルナーさんとマヤさんがついているのですから……フランソワさん達は大丈夫に決まってますよ!」

足を進めながら私とエイマがそう言い聞かせていると、そこへ布の束と毛皮の塊を抱えたエリーが凄まじい勢いで駆けてくる。

「あーもう、あーーもう! なんとか間に合って良かったわー!!

はい! これがセナイちゃんとアイハンちゃん、エイマちゃんの防寒布ね!

とりあえずはこれに包まっておいて!!

お父様はこっちの毛皮ね! なんだか如何にも山賊!! って仕上がりになっちゃったのだけど、何しろ時間が足りないのだから今回はこれで許して頂戴な。

鎧代わりって訳じゃないのだけども、まぁまぁそれなりの防具としても使えるはずよ。

これから寝ずの番をするのでしょう? これを着てしっかりがんばってね」

そういって毛皮の塊を私の肩にかけて、防寒布とやらをセナイ達にかけようとしたエリーは、セナイ達の様子を見るなりその目を丸くする。

「……ってあらやだ、セナイちゃんとアイハンちゃんは一体どうしたの? そんなにぐずっちゃって……。

あっあー! もしかしてアルナーちゃんが居なくて寂しいのかしら?

も~、しょうがない子達ね~!

そういうことなら今晩は私が一緒に居てあげるわよ! ほらほらこれに包まって……お家に帰ったらすぐにご飯を温め直してあげるから、寝る前にしっかり食べないとだめよ!」

そう言って防寒布ごとセナイとアイハンと、二人の腕の中のエイマを抱き上げたエリーは、セナイ達にも私にも有無を言わさずにユルトの中へと駆け込んでいく。

そうしてセナイ達の代わりに毛皮の塊を手にすることになった私は……本当に山賊のそれにしか見えないその毛皮の塊を、渋々身に着けるのだった。