軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

中将

「やはり生まれが全てを決めるな。そうだろ、司令官」

軍服に輝く階級章は、中将のものだった。

軍に在籍してダラダラ内政ゲームをやるだけで、俺はたった数年で中将になれる。

戦場を必死で駆けずり回る兵士たちが、やっと階級を一つあげる間に俺は四つも階級が上がっていた。

これが貴族というものだ。

麻雀のようなゲームをしている俺は、対面に座る司令に話しかける。

「あ、伯爵。それです。あ、裏ドラも乗りました」

だが、捨てた牌を待っていた司令官に、俺は直撃を食らうのだった。

「嘘だろ!」

この司令官、ゲームが強すぎて俺は負け越している。

ウォーレスやセドリックなど、丸裸にされて今月は金欠で俺に泣きついてくる始末だ。

ティアとマリーが司令官を睨んでいた。

「私とこの化石が手を組んで、どうしてリアム様が負けるのか!」

「てめぇ! いかさましてんじゃないだろうな!」

――いや、いかさまして負けたの俺なんだけどね。

俺が点棒を司令官に渡す。

「ここまでやって負けるのか。司令官、何か勝つコツがあるのか?」

「私は運が良い方でしてね。おかげでこんな大艦隊を率いてゲームをして儲けています。ま、大事なのは運と――流れを読むことですかね」

「流れか?」

「流れを作ってもいいですけどね。それより、次もやりますか?」

負け越しているが、そもそも金額など俺には関係ない。

「いいだろう」

ティアもマリーもヤル気だ。

「今度こそ丸裸にしてやる」

「リアム様、合図の確認をしましょう」

堂々といかさまをする俺たちに勝つ司令官――やはりただ者ではなかったな。

何というか、師匠と同じ臭いを感じる。

師匠――元気にしているだろうか?

相変わらず行方が分からないので、俺は心配している。

司令官は思っていた。

(――何でいかさまをしているのに、こいつら食いついてくるんだよ!)

リアムが堂々といかさまをしているのもあるが、圧倒的に強いのは司令官だ。

そもそも、麻雀のようなゲームの台を用意したのは司令官だ。

いかさまで金持ちの貴族から金をむしり取ろうとしたら、食らいついてきて焦っていた。

リアムの剣の師である安士と同じ――詐欺師の部類だ。

(簡単な仕事だって言っていたじゃないか!)

元々、司令官は貴族の出身だ。

家の事情、帝国の事情、その他諸々の事情で司令官という立場にいるだけだ。

士官学校での成績も悪かったが、実家の力でここまで出世してきた。

(というか、こいつら絶対におかしいって! 何だよ。好き勝手にしているのに軍で昇進するとか――俺なんか、出世するために賄賂が必要だったのに!)

一度前線にも顔を出してきたが、その後はまたリアムが開発している惑星に戻ってきた。

しばらくそこで待機を命じられ、暇なリアムは内政を頑張っている。

(何なの? 何で自分の利益にならない領地を発展させているの? やっぱりこいつとは合わないわ)

性格の不一致を感じながら、司令官は次のゲームを始める。

すると、ゲームを見守っていたユリーシアがタブレット型の端末でメールをチェックしていた。

「リアム中将、この近くの領主より増援要請が来ています」

「またか? 規模は?」

「一千隻を希望しています」

「暇そうな連中を派遣しろ。それからゴミは全て回収しろ」

「では、すぐに派遣します」

派遣を決めると、リアムはゲームに集中するのだった。

「さて、どれを捨てるか」

(別に周辺の小領主の頼みなんか聞く必要もないんだが)

そもそもリアムの艦隊は暇なため、周囲への助力が今の仕事だった。

時々、国境にも援軍を出している。

リアムが国境配備の司令官たちに媚びを売るためだ。

(ま、基本的に本人は動かないし、俺も暇だからいいけどさ)

「伯爵、それロンです」

「何だと!?」

またリアムに勝つ司令官だったが、そのゲームはギリギリ勝てる程度に留まった。

リアムがダラダラ過ごしている頃。

バークリー家では準備が整いつつあった。

三十万隻を超える大艦隊。

率いるのはカシミロの息子と、参謀としてドルフが側につく。

実質的にドルフが中心となって艦隊を動かす事になっていた。

宇宙に整列する大艦隊は、バークリー家の実力以上のものを用意した。

エリクサーをばらまき、レアメタルを大量にかき集めた。

傘下の海賊たちを随分と失ったが、代わりに軍から数万隻の艦隊を味方として得ることが出来た。

当初の予定より数は少ない。

だが、質と数――両方揃った艦隊だ。

「ドルフ、この艦隊でバンフィールド家を潰せるんだろうな?」

幹部――カシミロの長男であるその男の言葉に、ドルフは深く頷いた。

「この艦隊で駄目なら、誰もリアムを止められないでしょう」

「そうだな。――よし、出撃だ!」

三十万を超える艦隊が、バンフィールド家に向かって出撃する。

その頃、バンフィールド家でも動きがあった。

いつものようにブライアンが仕事をしていると、焦ったセリーナが近付いてくる。

ほとんど廊下を走っており、侍女長としてどうかと思うブライアンだったのだが――。

「ブライアン、バークリー家が動いたよ。あいつら、本気を見せてきた」

「な、何ですと!? リアム様がまだ戻られていないというのに!」

こうした戦いの際、当主が修行中で不在時の時は狙わないのが暗黙のルールだ。

何しろこれでは騙し討ちに近い。

そんな行為をするということは、バークリー家がそれだけ本気という意味だった。

「リアム様には連絡をした。すぐに軍に知らせな」

「わ、分かりました!」

この日のためにバンフィールド家でも軍事力を増強してきた。

しかし、セリーナは不安そうにする。

「それにしても三十万を超える大艦隊だって? バークリー家を甘く見ていたね」

リアムが軍事力に力を入れてきたとは言え、バンフィールド家の艦隊は九万隻に届かない。

そこから戦力として出せるのは――七万隻。

相手の戦力は四倍を超えている。

「リアム様がいないのもタイミングが悪いね」

バークリー家のなりふり構わない行為に、セリーナも苛立ちを覚えるのだった。

そんな様子を楽しそうに見ているのは、誰にも気付かれない案内人だ。

「――そうだ。慌てろ。リアムが来れば助かると思っているだろうが。お前たちに待っているのは死だけだ」

バンフィールド家の全てが滅びる様を想像し、案内人は声を上げて笑うのだった。

「リアム、早く来い! いや、全てが消え去った後に来るのもいいな。お前が絶望する顔を見せてくれ!」

配属先となった宇宙港。

そこにやって来たのはトーマスだ。

「リアム様、相変わらず精力的に動かれているそうですね」

――これは急造の宇宙港を見て、嫌みを言っているのだろうか?

暇潰しで建造したので問題も多いが、必要機能は所持しているはずだ。

「こんなの暇潰しだ。それより、今日は何の用だ?」

「はい。実は艦隊向けの商品を運んできましたので、商売の許可をいただけたらと思いまして」

艦隊のクルー向けに商売をしたいらしい。

「好きにしろ」

一応は帝国領なので、俺がトーマスから儲けのいくらかを受け取るのは危険だ。

喧嘩を売ったら駄目な相手には売らない。

悪徳領主として、その辺りは心得ている。

「ありがとうございます。では、すぐにでも――」

トーマスと話をしていると、宇宙港にサイレンが鳴り響く。

「何だ?」

すぐに俺のところにユリーシアから通信が入ってきた。

「どうした?」

『輸送船団が現れました。敵対するつもりはないようですが、あまりに急にワープしてきたので警戒しています』

「どこの馬鹿だ」

『――クラーベ商会とニューランズ商会です。パトリスと名乗る商人が、急いで中将に面会したいとのことです』

何かあったのだろうか?

俺の御用商人が、大量に輸送船を出して何を考えているのか?

トーマスを見ると青ざめていた。

「まさか! ――リアム様、もしやバークリー家が動いたのでは!?」

――またバークリー家だ。

いい加減に嫌になる。

俺が旗艦に乗り込むと、ブリッジでは慌ただしい声が飛び交っていた。

「補給と整備が終わった艦艇の数は!」

「現在約一万隻です!」

「かき集められるだけかき集めろ!」

ティアが中心となって指示を出していた。

その様子を見ている司令官は腕を組んで黙っている。

「司令官は落ち着いていますね」

「――慌てても意味がない。こういう時は落ち着くべきだよ。勝率を少しでも上げたいのならね」

「それもそうですね」

数が集まりきらない内に出撃しようとするティアに声をかける。

「ティア、艦隊が揃うまで出撃はするな。それから、クラーベとニューランズが補給物資を山のように持って来たぞ。配ってやれ」

「リアム様!? で、ですが」

「俺の領地には突撃は禁止して時間を稼ぐように伝えろ」

切れ者の司令官が言うとおりだ。

落ち着いて対処すべきだろう。

マリーがブリッジに駆け込んでくると、すぐに俺に報告してきた。

「リアム様! バークリー家の艦隊の数、おおよそ三十万隻とのことです。それから、ワープする宙域に帝国軍が待ち構えているとの情報があります」

「帝国軍だと?」

俺たちが利用するワープできる宙域を塞ぐように、帝国の艦隊が待ち受けているらしい。

――何がしたいんだ?

ワープ可能宙域。

リアムを待ち受けるのは、不良軍人の集まりであった。

バークリー家や兵器工場から提供された艦艇の数は三万隻に届く。

中には古い艦艇もあるが、その数は大艦隊と言って間違いない。

旗艦のブリッジには、貴族出身の将軍たちがいた。

軍服を派手に改造し、胸には勲章をいくつもぶら下げている。

「今頃は大慌てでこちらに向かっていることだろうな」

「バークリー家が本気になれば、あの小僧もおしまいだ」

「帝国軍の戦いというものを見せてやろうではないか」

笑っている将軍たち。

だが、オペレーターが叫び声に近い大声を上げる。

「司令! て、敵が攻めてきました!」

「もう来たのか? では、相手をしてやるとしよう。小僧に通信を繋げ!」

だが、通信を繋ぐと、出て来た顔はリアムではなかった。

眼帯を付けた軍人――歴戦の将軍という風格を持つ男がモニターの画面に登場する。

「き、貴様は!?」

将軍が慌てると、相手が先に口を開く。

『――貴官らの行動は軍規に違反している。よって、これより我々が貴官らを拘束することになった』

「な、何!?」

『すぐに戻れば許してやる。そうでなければ、我々が相手になってやろう』

集まったのは国境配備されている正規艦隊だ。

他にもかき集め、その数は四万隻になっている。

「我々に逆らうというのか!」

『違うな。帝国に逆らっているのは貴官たちだ』

「あ、あの小僧に味方するというのか!」

『――バークリー家に勝たれては困るのだよ。これ以上、貴族たちを優遇されては軍を維持できない。それに、伯爵には個人的な恩もある』

貴族の将軍たちが優遇されるため、割を食う軍人たちが多かった。

それでも何とかなる国力はあったが、不満を溜め込んでいる軍人は実に多い。

貴族の将軍が叫ぶ。

「こ、攻撃しろ!」

だが、相手は余裕すらある。

『そうなると思っていたよ』

こうして、貴族の艦隊はリアムとは違う正規艦隊に攻撃を受けて全滅するのだった。